(問)先週、訪米されていましたが、テロとの闘いに関して米国側の日本への期待と、北朝鮮のテロ国家指定に関して次官の側から色々と立場を説明されたと思いますが、それに対する先方の反応などについてお伺いしたいのですが。
(事務次官)テロとの闘いの問題については、米国側からはこれまで日本が行って来た活動に対して非常に高く、米国のみならず有志連合参加国のメンバー及び国際社会から非常に評価されているし、実質的に極めて重要な役割を果たしているという実質的な意義と、それからまた、象徴的な意味においても日本が非常に困難な状況の中でああいった活動を続けて来て、これからも続けようと努力していることを非常に評価するという話でした。つまり、実質的にも象徴的にも大変意義のある活動であるということで、是非何とか継続して欲しいという強い要望でした。
それに対して私からは、「今、福田総理を始め、福田内閣として、もちろん政府与党もそうですが、全力を挙げて、なるべくその活動を継続出来るように努力しているところです。ただ国会の状況は大変厳しいものがあります。」ということを説明しました。
それから、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の問題については、米国側として色々な要素を考慮しつつ、どのようにするかということを検討している様ではありますが、政府内では色々な意見があるということです。今、議論はしているが勿論、方向性は決まっていないということで、タイミング、或いはどのようにして解除していくかといったことは何も決めていないという返答でした。
他方、我々からは皆様よく御存知の拉致の問題が、遺憾ながら全く進展していないという状況、或いは最近ではシリアの核の問題について北朝鮮が関与しているのではないかという話もありますし、そういう状況の下で指定を解除するのは適当ではないということを強く申し入れたところです。
(問)北朝鮮とシリアの関係については、先方はどのような説明をされたのでしょうか。
(事務次官)その問題については、今、自分達としても一生懸命、調査・検討、情報収集をしているという、一般論としての話がありました。
(問)テロとの闘いについて継続したいという意向がありながらも、中断は避けられないという状況になっていると思うのですが、そのことについては米国側の理解が得られたという認識でしょうか。
(事務次官)米国側は「中断しても已むを得ません」とは勿論言わない訳ですが、自分達としては活動が継続されることを非常に強く期待しているということを言っておりました。他方、在京米国大使館からは今言われたような点は情報として十分把握した上で、そのように仰っているのだと思います。
(問)11月1日から、北朝鮮を巡る核の問題で、無能力化の作業に着手していくということですが、今後、日本政府の関わり方、例えば資金の提供ですとか、専門家の派遣といったところについて現時点でどう考えていくのか、訪米を踏まえて教えて頂けますか。
(事務次官)無能力化の内容そのもの、それをまたどのように実施していくかという細部を私は議論した訳ではありません。これは別途、佐々江アジア大洋州局長が訪問しておりましたので、そういった点は話し合いをしたと思います。とりあえず米国の専門家が再び行くようですが、他の4か国が参加するのかどうか、我々としては参加することに関心を持っています。また、それが着実に進展していく場合に、日本として関与する余地があるのかどうか。今、言われた財政的な面も含めて、関与することが適当なのかどうか、これはこれから検討していかなくてはいけないことだと思っており、まだこういう風に行くという方針を決めた訳ではありません。
(問)参加することに関心をお持ちということで、何か現時点で障害になるものがあるとしたら、一番に何が挙げられるでしょうか。
(事務次官)北朝鮮がそれを受け入れるかどうかという問題はあるでしょうね。
(問)先週の、金大中事件で、韓国政府の申し入れがまだですけれども、今日中にも大使が何かしらの考えを日本側に伝達することがあるのでしょうか。
(事務次官)まだそこは未定というか、時間調整、時間も含めて日程調整がまだ出来ていないと聞いています。今日中にあるかどうかということについては、可能性は否定しませんが、まだ調整は出来ていないということです。
(問)なかなか日程が決まらない、その障害になっている理由は何でしょうか。
(事務次官)どういう理由か分かりませんが、日程はまだ調整し得ていないということです。
(問)防衛省の守屋前防衛次官の証人喚問がありましたが、谷内次官もご一緒に仕事をなさって来たかと思います。今日の証人喚問を少しはお聞きになられたかと思いますが、ご感想を教えて頂けますか。
(事務次官)事務次官会議でもご一緒していましたし、仕事の面でも随分お付き合いのあった方ですから、ああいった形で答弁されているお姿を見ると、色々と感慨深いものがあるということだけに留めたいと思います。
(問)中国の船が日本の領海に侵入したことに関して、日本政府としてはどのように交渉し、今後どのように対処していくのでしょうか。
(事務次官)既に中国側に抗議も申し入れております。我が方の立場は、あそこは言うまでもなく日本の領土であって、日本の領海ですから、ああいった形で侵入することは、我々としては受け入れる訳にはいかないので、抗議をしたところです。
(問)今週訪米されるとのことですが、どのような人に会い、どのような議題で話をするのか、もう少し具体的にお聞かせ下さい。
(事務次官)基本的には、ネグロポンテ国務副長官と副長官、次官レベルとの対話を行います。戦略対話とは言っていませんが、次官対話と言いますか、定期的に年に2回は行おうとしています。確か今年は春、ネグロポンテ副長官が訪日しておられますので、今度は私が行く番ですから、日米関係、国際情勢全般等、双方に関心がある問題について自由に意見交換をしようということがメインであります。それと同時に折角の機会ですから、ホワイトハウス、国防省、或いはシンクタンクにも若干、知り合いがいますので、そういった方々とも意見交換をして来たいと思います。テーマと言うか、話題になるところは、それぞれのところに応じたものを議論するつもりで、特に議題設定していくということではありません。
(問)議題は特に設定しないということですが、日本政府にとっての当面の課題であるインド洋での給油活動についてはどういう立場、説明等、どのようにされるのでしょうか。
(事務次官)多分、米国側は国会での議論も含め、現状はどうなっているのか、それから我々から言うと米国サイドは、これは別に政府だけではなく、日本にどういうことを期待しているのか等の話も聞いて来ようと思います。話題になることは、何でも議論しようと思っております。
(問)北朝鮮の問題ですが、非核化が進めば米国がテロ支援国家指定を解除するのではないかとの流れがある訳ですが、それについて日本側は、どのように念を押すというか、申し入れをする予定なのでしょうか。
(事務次官)我々の態度は変わっていないので、北朝鮮が非核化をきちんと実施することと同時に、日米関係に悪影響を及ぼすような形になってはならないということは申し入れてあり、米国側もそのような認識だと思いますから、そのことを踏まえて話し合いをして来るのではないかと思います。それから、佐々江アジア大洋州局長が別途、訪米してヒル次官補等々と話をしますから、あまり重複しないように話をしたいと思っております。
(問)今回の訪米ですが、福田総理の訪米日程を米国側と詰めたいという話はあるのでしょうか。それとも未だ、国会日程が流動的なので、今回はかなり難しいという認識でいらっしゃるのでしょうか。その点についてお聞かせ下さい。
(事務次官)総理ご自身が訪米するお気持ちはあると思いますが、そのことを踏まえて日米間でどういう話し合い、対話を行っていけば良いのかというのは、例えば電話で話をするとか、それからまたレベルでも、総理のみならず外務大臣等色々あろうかと思いますので、その辺りは米国がどう考えているのかということも含めて話し合いをしていきたいと思っております。
(問)北朝鮮のテロ支援国家指定解除にあたって、日米関係に悪影響を及ぼさないような形でということは拉致問題の進展を、ということだと思うのですが、それがない限り日本としては、テロ指定の解除を容認しないということになるのでしょうか。
(事務次官)法律自体は米国の法律でありますから、その解釈の問題として出て来たものについて、それは容認出来ないという風に言うのかどうかは考慮を要するところだと思いますが、我々としては、従来から言っているように日米関係に悪影響が出ないような形で、その法の運用をしてもらいたいと思っておりますから、今はそこを強く言い続けることが大事だろうと思っております。
(問)非核化の作業や段取りは、専門家チーム等が入って進展する中で、指定の解除に受けた手順、条件等を今回詰めたいというようなお考えはあるのでしょうか。
(事務次官)解除するということを前提、或いはそれを段取りとしてプロセスを議論するつもりは私にはありません。
(問)在日米軍の駐留経費の負担問題なのですが、例年、削減をどうするのかという話がありますが、改めて現時点での日本政府のお考えをお聞かせ下さい。
(事務次官)今これは、防衛省、防衛施設庁が米軍との話をしつつ、労働組合と話をしておられると理解しています。今、交渉の最中ですから、あまり内容に立ち入って外務省が言及するのは適当ではないと思っております。
(問)中国共産党の新指導部が発足しましたが、ご覧になって受け止めがあれば、ご感想をお願いします。
(事務次官)これから更に、全体の結果がどういうものであり、どういう報告がなされるのかよく見た上で話をしたい思いますが、何れにしても、私も存じ上げているような人が常務委員にもなられましたし、日本関係の人達も予想どおり、例えば王毅前駐日大使は中央委員に選出されたようですから、そのような点は良かったなと思っております。特に、これは問題だなという風に私個人で気づいた点はありません。何れにしても、よく研究させて頂きたいと思います。
(問)イランの邦人誘拐の関係ですが、パキスタン方面に身柄を移されたとの話がありますが、現段階でどのように把握され、どう対応されているのでしょうか。
(事務次官)今パキスタンにいるとかイランにいるというのは、現在、正に事件が継続中というか続いているところですので、あまりそう言ったことを申し上げるのは適当ではないと思います。そういうことを前提にした上で申し上げれば、新しい進展、少なくとも良い方向での進展があるとは聞いておりません。
(問)イランの邦人拘束事件ですが、本日の外務省の対策本部で本日行われたことや新たな情報等があればお聞かせ下さい。
(事務次官)結論的に言えば、特別、今申し上げるべき新たな進展はありません。状況は基本的に同じです。
(問)報道ベースですが、瀋陽で日朝の非公式協議があったと報じられていますが、次回の日朝作業部会に向けてのアジェンダ・セッティングについて次官はどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)作業部会の問題は、日朝間で特に拉致問題をどうやって進めていくのか、どうやって早期の解決を図るのかというのが一番大事なポイントであるので、そのことが課題であることに変わりはないと思っております。
(問)前回は雰囲気の向上、雰囲気が改善したという形で終わって、具体的な中身には入らなかったのですが、次回、中身をどう動かすかについてはどのようにお考えですか。
(事務次官)色々考えているのですが今、これを考えています等、手の内を申し上げる訳にはいきません。
(問)これまで作業部会は、六者会合でいつまでに作業部会を開催するという形で開かれて来たのですが、今後、日朝の作業部会は、米朝の作業部会と同じような形で両国が作業部会を開くということであれば開催していくという感じになるのでしょうか。
(事務次官)率直に言えば、我々はいつでも開催したいと思っておりますし、前回の作業部会で頻繁に会合しましょうということになったのですから、六者会合の際、或いはその前後ということに我々は全く拘っていないので、どんどん話し合いが進んで解決の方向に向かって行けばそれに越したことはないと思っております。
(問)六者会合は、次回、いつ開催する等決まっていない訳ですが、それとは別に日朝で協議をしようということになれば行われるということでしょうか。
(事務次官)作業部会で話を取り上げていこうということになっていますから、それ以外に更に必要なのかどうか日朝間で話し合って、もし必要だということであれば、何回も言うように、我々は解決するのであればどのような形のものでもやっていきたいと思っております。
(問)日朝作業部会ですが、年内開催は出来そうですか。
(事務次官)出来そうかどうか分かりませんが、当然、開催されるべきだと思っております。
(問)民主党の小沢代表が、国際治安支援部隊(ISAF)の民生部門に参加すべきだという考え方を明確にされたのですが、それに対する受け止めは如何でしょうか。
(事務次官)実際に、どういう風にご発言されたのか承知しておりませんので、あまり軽率なコメントをしてはいけないと思いますが、ISAFは基本的には治安維持活動なので、民生部門というのは実際に行っているのかどうか分からない部分があります。どちらかと言うとPRTの方がそれを行っているのではないかという理解があります。何れにしても、具体的な発言を承知しておりませんので、一般論としてそういう風に申し上げます。
(問)高村大臣は、週末のテレビ番組でISAFに参加することも可能だという見解を述べられたのですが、政府としては可能な場合もあるということなのでしょうか。
(事務次官)実際にISAFが行っている活動は、治安維持と一言で言っても色々な活動があるのだと思いますから、そこのどこに参加するかによって、法的な評価は違うと思います。それとは別に、実際に日本が参加することは効果があるのかどうか、現地で受け入れられるのかどうかという点も含めて考えなくてはならない話だと思っています。法的な問題だけではないのだろうと思います。
(問)現時点で参加について、何らかの検討作業は行われているのでしょうか。
(事務次官)ISAFに参加できないのかという視点から検討しているということはございません。
(問)薮中外務審議官のミャンマーにおける今日の動きと、具体的な成果はどのようなものがあるかお聞かせ下さい。
(事務次官)ミャンマー政府の要人との面会については、まだ実現したという話が入ってきておりません。アウン・サン・スー・チー女史を含めて、色々と申し込んではいますが、状況がご承知のような状況なので、予め予定をたて、どんどんお会い出来るという訳にはいかないという現状です。
(問)明日2日目ですが、もう帰国されるご予定は変わらないですか。
(事務次官)今のところ、そういう予定であると承知しております。
(問)今、藪中さんは首都ネービードーの方に居るんですか。
(事務次官)そうだと思います。
(問)現地の大使館の方達とはお会いして、詳しく現地のお話をされたのでしょうか。
(事務次官)そういう時間はあると思います。
(問)山路APF通信社代表とはお会いになったのですか。
(事務次官)なったのではないでしょうか。
(問)今日の夜にかけて、ネービードーで軍政の外務副大臣と会うというようなことを伺っているのですが。
(事務次官)まだ、結果の連絡は入っていません。
(問)出来るかどうかも分からないということですか。
(事務次官)今はそういう状況ですね。
(問)ミャンマーへの対応には2つの側面があると思います。今回、長井さんという邦人が殺害されたという事実と、それから一般人のデモ隊に対して軍政が発砲なり、かなり暴力を行使したとこと。日本側が今後、何らかの強い措置を検討される場合に、そのどちらに力点を置いて考えておられるのか、その場合、その措置というものについて何か今の段階で具体的に選択肢がおありなのかの2点をお願いします。
(事務次官)どちらにプライオリティを置いているかというよりも、我々としては元々この、今起きている事態については、慎重に対応して欲しいと表明し、強圧的な措置、或いは実力行使をしないようにと非常に強く訴えてきました。その中で、日本人のフリー・ジャーナリストの方が犠牲になったということですから、その一般論として申し上げたことと、実際に被害が出ているということが重なっていますから、そういう意味では、日本にとっては、どちらが大事という話ではなくなっていると認識しております。こういったことは勿論、繰り返されてはなりませんし、これからの事態も非常に大事だと思います。少しでも軍事政権が、今申し上げたような行動に出ないようにするために、どのようにするのが一番良いのかを今、我々は検討しているところです。既にミャンマーとの関係は、ある意味で相当薄くなっています。例えば、貿易量も非常に少なくなっていますし、経済協力も本当に人道目的の、医療や人材育成等、非常に限られたものになっているので、制裁という点についても色々考える必要がありますが、強い措置を含めて検討するということであり、今、色々な幅広い選択肢を考えているところです。
(問)六者会合は2日間休会したということですが、この休会の理由について、次官はどのような見方をしていらっしゃいますか。
(事務次官)今度の六者会合で、首席代表者間で話をして、一応の共通認識をまとめたので、それを各国に持ち帰って、それぞれ政策決定のラインにいる上の方に上げて、それで良いのかどうかを確かめ、もし各国共それで意義がないのであれば、それをまとめるということで、その為に2日間休んだと聞いております。
(問)それはどこの国が上に上げるのですか。
(事務次官)それは各国がそれぞれ、上に上げるということです。
(問)すべての国が、ですか。
(事務次官)はい。
(問)日本は、合意内容はOKなのですか。
(事務次官)今、検討中です。
(問)現地の首席代表レベルでは、暫定合意したと言われていますが、次官は報告を受けられて、日本の主張としてはどの程度反映されたとお考えなのか、それから中国側は休会を2日程度にして、出来るだけ早くその承認をとった上で再開というか、最終的に公表したいとしていますが、政府としてはそれに間に合うように明日なり、早くお決めになるというお考えでしょうか。
(事務次官)私も報告を受けたばかりですから、これから更に上層部に事情をご説明し、コメントを受けるというプロセスが、今始まっているところです。あれで当然「日本側としてはOKだ」ということではないと思います。日本の問題ですが、これは日朝の作業部会、或いは日朝間の話し合いの問題と同時に、当然のことながら、核の問題についてそれぞれある訳で、それと日本との関わりがどういう事なのか、よく検討する必要があると思いますし、それが外に公表された時に、それがどのように国民世論、関係各国、或いは世界全体で受け止められるかということも、よく考えていく必要があると思います。そう簡単にサッと見てOKですという話ではないと思います。
(問)北朝鮮と韓国の南北首脳会談が始まりますが、日本政府としては拉致問題等も含めて、どういった成果を期待しているのでしょうか。
(事務次官)南北間でトップレベルの対話が行われるということは、非常に望ましいことだと思っておりますし、また、南北間というか、朝鮮半島における緊張が少しでも緩和する方向に、それが役立つことを我々としては望んでおります。また、韓国政府としては、この拉致問題を盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が取り上げて、その解決を強く言って頂けるということでもありますので、我々としてもその点については、それを多とすると共に、良い結果が出ることを望んでおります。