(問)従軍慰安婦を巡る米国下院決議が、日本時間明日未明にも行われる公算が高まっていますが、この問題は日米関係に過去にない影響を与えるのではないかという見方があります。決議された場合、外務省はどのような対応を取るのでしょうか、或いは日米関係に与える影響をどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)この問題については、先般の連休の際に安倍総理が米国に行かれて、議会関係者にもきちんとお気持ちを示され立場も表明され、それで米国としては一定の理解が得られたと思っておりました。今回、決議案が通るという状況にありますが、我々としては今までの日本政府の基本的な立場、或いは気持ちを理解して頂けるように努力して来ました。これからも引き続き、その点についての理解を求めて行きたいと思っております。
(問)参院選についてですが、自民党が大敗するという結果になりました。これからイラク特措法を含め、外交上どのような影響が出るとお考えですか。
(事務次官)選挙そのものは政治の世界で行われていることで、与党の幹部の方々も今回の選挙については真摯に受け止めて今後の対応を考えて行くということですから、我々としても、そのような前提で総理・外務大臣の指示の下に外交を進めて行きたいと思っております。今まで安倍政権の下で我々が進めてきた外交政策を大きく転換させなくてはいけないというような問題があるとは特に思っておりません。基本的な路線は続けて行くという考えです。
(問)北朝鮮が選挙期間中に劣勢が伝えられている安倍政権を当然否決すると言って批判を繰り返しています。今後も選挙結果をあげつらって、自国の正当性を強調するプロパガンダを出してくると思いますが、日本政府としては対北朝鮮政策に変わりはないという考えでよろしいでしょうか。
(事務次官)北朝鮮の問題については、我々は基本的に「対話と圧力」ということで一貫しております。これからも当然、基本路線は続けて行くということです。今、プロパガンダということを仰いましたが、そのようなことも含めて、北朝鮮は色々な言い方をして来ると思いますが、それと北朝鮮政府が何を考え、日本との間に何を望んでいるかという話はまた別な話だと思います。我々としては冷静に対応しつつ、核・ミサイル・拉致問題等、共通の問題の早期解決のために、これからも真剣に取り組んで行きたいと思います。
(問)六者会合の首席代表者会合が終わりましたが、大した成果もなく終わったのではないかとの観測もありますが、どのような認識でしょうか。
(事務次官)今回の会合は、「初期段階の措置」について北朝鮮が着手し、実施をしているという状況の中で行われ、リストの申告の問題等も色々話をしましたし、今後どのような段取りとするかも話し合われ、次の会合への予定分には手を付けたということだと思います。ここまで来るには、色々な経緯があり、不満や遺憾なこともあるのですが、ここまで来たということで、朝鮮半島の非核化という大きな目標に向かって、これからも努力を続けて行くということだろうと思います。
(問)今回の首席代表会合の後、8月末までに作業部会を進めるという報道が出ていますが、日朝の作業部会については、今の段階で8月のいつ頃行うか決まっているのでしょうか。
(事務次官)これから調整していくということだろうと思います。
(問)日朝作業部会ですが、拉致・核・ミサイルを包括的に解決した後でなければ、国交正常化については難しいというのが、日本の従来の立場だと思います。日本がまたそのような主張をした場合、朝鮮側とまともな協議が出来ない可能性もあると思われるのですが、その点について、次の日朝作業部会では北朝鮮側にどのような対応を望みますか。
(事務次官)何がまともな協議なのかは良く分かりませんが、何れにしても、今述べられた我が方の基本的な立場を変えるわけにはいきませんし、やはり、拉致・核・ミサイルの問題は解決しなくてはなりません。六者会合では今、核の問題が議論されているわけですから、作業部会では拉致の問題もきちんと取り上げます。それがもう解決済みであるということを言われると、それこそ話になりません。少しでも早く変わるように、強く迫るということが大きなテーマの一つだと、そのように思っております。
(問)米国とインドの原子力協定が大筋で合意したと報じられているのですが、今後、日本として承認するのかという立場についてお聞かせ下さい。
(事務次官)報道等は承知しておりますが、双方から詳しくどのようなことなのか、今後どうするのかということも含めて、情報を十分に入手した上で我が方の対応を考えるということだと思います。
(問)来月後半に安倍総理がインドを訪問されますが、それまでにはある程度の立場を示すのでしょうか。
(事務次官)方向感覚はそうだろうとは思いますが、どのような内容のことを明らかにするか、日本政府の対応を明らかにするかはこれからの検討事項だと思います。
(問)久間防衛大臣が、「米国の原爆投下はやむを得ない」という発言をされて問題になっておりますが、ある意味でこの発言は日米関係のタブーに触れたような話だと思うのですが、次官の受け止めは如何でしょうか。
(事務次官)別にこの問題が日米間のタブーだと私は思っておりません。事実としてそれはあったのですから。ただ、久間大臣のご発言自体については、久間大臣自ら謝っておられ、また撤回しておられますので、それ以上のことを私の方から申し上げるのは如何かと思います。総理も政府の最高責任者として、このことについて仰っていますから、それに付け加えることはありません。
(問)過去、原爆の問題で日本政府が米国にそれなりの抗議等をしたことはあるのでしょうか。
(事務次官)総理、外務大臣レベルでそのようなことを議論されたということは私は聞いておりません。
(問)米国側から、クレームをつけるということではないと思うのですが、発言内容についての照会、真意についての問い合わせ等は来ていないのでしょうか。
(事務次官)ないと思います。何れにしても私は聞いておりません。
(問)六者会合の関係で、ヒル米国務次官補が朝鮮半島の平和構築体制について、四者で協議をするという考えを示されたことについて、改めて次官の評価、受け止めをお願いします。
(事務次官)正直言って、ヒル次官補が正確にどういうことを言われたのか存じませんが、朝鮮半島には朝鮮戦争の休戦協定があります。それを本格的な終戦に持っていきたいという考えがあるのだと思いますし、一般論として東アジア、極東の平和と安全の問題については、やがて作業部会を通じた議論から結論が出てくることが望まれます。そういったものの一環として、四者で何かの共通の理解、合意があるということも考えられるということなのだろうと思いますので、「今すぐそれをやろう」とか、「やるべし」とか言っているのではないと、私は理解しています。
(問)IAEAの訪朝団が、もう北京を発っていると思いますが、今現在、日本政府への報告は、どのようなものが入っていますか。
(事務次官)それぞれの国がIAEAの調査された方々から、直接、間接に聞いた話というのは公表することが前提になっていませんので、控えさせて頂きます。ただ報道、或いは会見、ぶら下がりなどの形でお話になっていることは、実際、彼らの発言通り行われたのではないかと思っています。
(問)IAEAの、北京でのぶら下がりの内容によりますと、「いつ停止するか」という問いに対して、6ヵ国で決めるのではないかと言っています。その停止・封印について、改めて6ヵ国で協議をする場を設けるといった考え方になっているのでしょうか。
(事務次官)この問題は、今年の2月13日の合意文を見ますと、初期段階の措置は並行して行われるということになっています。60日以内というのも書いてあり、ご承知のように、その60日はとっくに過ぎていますから、我々としては一日も早く、初期段階として想定されている事項は実施されるべきであるという立場です。従って、六者会合はその時期を決める場ではなく、それはもう既に決めてある話なので、それを早く実行すべきであるということだと思います。
(問)今、初期段階の措置に向けて動きが少しずつ出ていますが、今現在の感触として、ヒル次官補が示していた7月10日前後という首席代表者会合のメドは、実現可能性はどの程度高まったのか、或いは厳しくなったのでしょうか。
(事務次官)常識的に言えば、厳しくなっているのではありませんか。
(問)何が原因だと思いますか。
(事務次官)みなさん、御存知なのではないでしょうか。
(問)IAEAの緊急理事会が9日に開かれるのではないかと見通しがあります。IAEA側のそういう手続きが、やはりヒル次官補の当初考えていた見立てより、少しずれているのではないかという認識でよろしいでしょうか。
(事務次官)その部分をヒル次官補がどのように認識していたのか、私は承知していません。従って、それとの関連で延びたのか否か、申し上げる立場にはありません。
(問)他方、北朝鮮側で何か後ろ向きな行動があったので延びているとか、そういう認識でもないのでしょうか。
(事務次官)あくまでも10日前後にという話は、我々が初めからそういうことで準備していた訳ではありませんので、その辺りの事情については、ご説明する立場にはないと思います。