記者会見

事務次官会見記録(平成19年6月)


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事務次官会見記録(平成19年6月25日(月曜日)17時03分 ~ 於:本省会見室)

慰安婦問題

(問)日程によると、明日、従軍慰安婦の謝罪決議案を外交委員会の方で採択する見通しですが、この件について外務省としての理解はどのようなものでしょうか。

(事務次官)所謂、従軍慰安婦と言われる方々の問題につきましては、安倍総理がゴールデンウィークの際に米国に行かれまして、非常にはっきりと心情を述べられました。辛酸を舐められた方々に対し、人間として心から同情を持つと同時に、悲惨な状況に置かれた方々に対して申し訳ない気持ちで一杯であるということを言われました。これは、安倍総理の人間としてのお気持ちであると同時に、総理大臣としてもそのような気持ちを持っておられるということを示しており、私としてはそれに更に付け加えて何か申すべきことがある訳ではないので、それに尽きると思います。

(問)関連してですが、韓国の一部団体がそれについて、すごく批判をしているのですが、日韓関係という意味ではどのようなことが懸念されますか。

(事務次官)総理のお気持ちを明確に示されている訳ですし、その点については理解をして頂きたい、素直に受け止めてもらいたいと思います。

(問)この問題はかなり長い間、色々と取り組んできたと思いますが、ワシントンの日本大使館には、多分、本省から色々な指示が出て対応されてきたと思うのですが、お話できる限りで結構ですので、どのような対応、対処をされてきたのでしょうか。

(事務次官)在米大使館が加藤大使を中心として、議会関係者との公式の話合いの場でも、十分、我が方の考え方を説明して参りましたし、また、非公式な形でも率直に大使を含めて館員の皆さんが議会関係者を中心に色々と話合ってきたところです。そのようなことにより、少しでも日本の立場、或いは日本国民の気持ちを理解してもらえるように努力してきました。

(問)結局、努力してきたにも関わらず、明日、採決という運びになったのですが、対応自体は不十分だったということなのでしょうか。

(事務次官)これは米国議会がお決めになることなので、我々の努力が十分であれば採決はなかったし、十分でなかったら採決になるという関係にあるものだとは思っておりません。米国議会がご判断されることだと思います。

(問)この件に関して、今月14日の米国のワシントンポスト紙に日本の衆・参両院の議員さんを始めとして、紙面に意見広告を出しておりますが、これが及ぼした影響については、どのように見られているでしょうか。

(事務次官)これもどのような影響が、それぞれの議員さんに影響したのか、また、それがどのような結果として出てくるのかということについて、日本政府としてコメントすることは適当ではないと思います。

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北朝鮮問題

(問)ヒル国務次官補が日本から帰り、ワシントンで「(六者会合の再開は)7月の第2週、10日くらいが望ましい」ということを言っているのですが、そういったことは日本側に伝えられていたのかということと、日程を調整する中国の方から現時点において、何らかの打診はあったのか。その2点をお願いします。

(事務次官)ヒル次官補が北朝鮮に行かれて話し合われたことについて、我々は、色々お聞きしましたが、ヒル次官補から聞いた話ですから申し上げるのは控えます。それから、中国からそういう話があるのかということですけれども、議長役ですから当然、日程の調整は、中国が中心におやりになることですが、私自身は今、中国からこういう話があるという報告は受けていません。

(問)明日、IAEAが入り、今日、北朝鮮がBDA(バンコ・デルタ・アジア)の問題で、入金が確認されたので合意を履行するといったことをメディアを通して発表しています。このように活発化する中、今日の官房長官の会見で「六者会合や外相会談には早い」といったニュアンスの発言があったのですが、今の状況を受けて次官としてはどういうご意見でしょうか。

(事務次官)初期段階の措置が大幅に遅れているわけですから、やはりそれを着実に着手し、特にIAEAの専門家のきちんとした監視、検証が出来るだけ早く行われるということが、まず重要だろうと思います。そのプロセスにおいて、これから六者会合、専門家の会合、閣僚会議というものの必要性が生じてくるのであれば、それはそれで考えるということです。ともかく、北朝鮮がまず初期段階で約束していることをまず着手する、そしてそれを着実に実施していく、ということが大事だろうと思っています。

(問)今、次官は六者会合と閣僚会合の予定が生じるということについて述べられましたが、閣僚会合の必要性というのは具体的にどういうタイミングになれば、必要だということでしょうか。

(事務次官)北朝鮮が実際に初期段階の措置を実施していく過程で、そういった閣僚会議が、更に次の段階もあるわけですから、そういう意味で「必要だ」ということが、各国とも共通認識になってくれば、それはそれでやる価値があるということで、我々としても、実施の方向で考えることだろうと思います。

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対イラン融資制限

(問)日本の金融機関が、イランに対する新たな融資を制限する方針を固めたという情報があります。元々はFT(フィナンシャル・タイムズ)が流したのですが、日本政府としてこれに関与なりはあるのでしょうか。

(事務次官)この問題は今、イランの核の問題も非常に国際的に関心を深めており、我々としては基本的にはやはり「対話と圧力」ということは、イランについても適用されると思いますので、考え方として金融の問題も一つの大きなテコになり得ると思います。これは国際社会全体の動きの中で、日本の金融当局及び金融機関もそこを考えていくということだろうと思いますが、具体的に今、どこまでの段階に行っているかは申し上げる立場にありません。

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事務次官会見記録(平成19年6月18日(月曜日)17時05分~ 於:本省会見室)

北朝鮮問題

(問)今日、東京地裁で朝鮮総連に対して627億円の支払い命令が下されたのですが、朝鮮総連は領事機能を果たしているという見方もあり、外務省としてこの件について何かご感想があればお願いします。

(事務次官)これは司法当局が判断されたことなので、外務省として特にコメントすべきことではないと思います。

(問)今後の日朝関係への影響は無さそうでしょうか。

(事務次官)当然、北朝鮮は不快感を表明するだろうと思いますが、我々は日朝間の大きな懸案そのものについては、これからも求めていくという点で変わりないです。

(問)週末に北朝鮮がIAEAの査察団を受け入れると、IAEAから連絡したということで、それに対する外務省としての受け止めと、今後の六者会合再開に向けての現在の見通しをお話下さい。

(事務次官)大臣も仰っていますように、色々と最初のステップが今とられつつあるということだと思います。御存知の通り初期段階の措置は基本的に3つありますが、そういったことがもう既に大変遅れていますので、出来るだけ早くとられることが重要であると思います。
 もちろん、それに対応して五ヵ国側は、エネルギー支援の問題もある訳ですが、そういったものが早く全体として終わって第二段階に進み、議論が進められていくことが望ましいと思っています。

(問)エネルギー支援の話ですが、次のステップの見返りとしての支援について、日本は拉致問題の進展を前提条件としていますが、今国会でも委員会等で塩崎官房長官の少しずつ言い始めているのですが、改めて進展とは何を指すのか、ということを教えて下さい。

(事務次官)進展がどういうものであるか、一生懸命定義づけして、そうしたら多少なりともエネルギー支援でもするというようなことを議論すること自体、あまり生産的なことではないと思います。大事なことは我々が要求しているように、全ての生存している方々及び家族の人を一日も早く日本に帰して頂くことです。我々としてはそれを求める訳で、その関連において「進展」と我々が判断しうるものがあるかどうかということだと思います。
 どういうことであったら進展かどうかというのは、我々が判断させてもらう。大事なことは先程申し上げたことです。

(問)今の段階で明確に政府方針として決めることではないということですか。出方次第でその都度判断していくということでしょうか。

(事務次官)相手が小出しにして、例えば調査を一緒にやりましょうとか、その類のことを言われて、それで進展であると判断するのは、普通は考えられないと思っています。

(問)六者会合の再開について、7月下旬にでもという一部報道があるのですが、それまでのスケジュール感はどう捉えているのでしょうか。

(事務次官)スケジュール感というのは、はっきり言ってないと思います。どうも北朝鮮側がそういうことを言っているというのは報道で承知していますが、まず初期段階を早く実施するということが先決であり、そもそも関係のないBDAでこれだけ時間を費やしたのですから、出来るだけ早くするということで、六者会合をどうするかということとは別のように思います。

(問)インターファクス通信等で北朝鮮の措置として、寧辺の核施設の封印を次の六者会合の前に行うという考えを北朝鮮側が示しているそうなのですが、日本としても次官も従来仰っているように「まずは行動を起こしてから」という理解でよいのでしょうか。

(事務次官)そういうことだと思います。六者会合をやるとすれば、初期段階の措置がきちんと実施されたということを確認して、その上で第二段階の議論に入るということが大事だと思います。

(問)「実施された」というのは、初期段階が「完了した」という認識でよろしいのでしょうか。

(事務次官)そのように思います。

(問)この関係で明日、米国のヒル次官補が来日する予定ですが、現時点で米国とはどのような議論をして、どのようなものを期待されているか教えて頂けますか。

(事務次官)初期段階、次の六者会合、それから第二段階といったものをどう考えていくのか、全体としてどれだけ物事の進捗を図っていくのか、その点について米国はどう考えているのかといったことを聞きたいと思っています。

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日韓排他的経済水域境界画定交渉

(問)日韓EEZ(排他的経済水域)の確定交渉が昨日と今日で行われ、まだ終わっていないかもしれませんが、日韓の協議の成果と今後の見通しについてお聞かせ下さい。

(事務次官)まだ協議中だと思いますが、いずれにしても報告をまだ受けていませんので、どういう成果があったのか、いわんやその見通しについては、まだ申し上げる段階にはありません。

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九州の光化学スモッグ問題

(問)福岡県の麻生知事が、光化学スモッグの件でこれから大臣のところに要望を持って来られます。その原因が中国からの汚染物質ではないかと言われていますが、これから中国に共同研究なり、何なりを働きかけていくお考えはあるのでしょうか。

(事務次官)麻生知事にお会いする予定ですが、よくお話を聞いて、またそれぞれ関係当局でも情報を集めているところですから、それを踏まえてどう対応するか考えていきたいと思います。原因がどこにあるかということとは別に、現実にそういう現象が起きている訳ですから、解決を目指して、やることは何でもやらなくてはいけないと思います。

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事務次官会見記録(平成19年6月11日(月曜日)17時05分~ 於:本省会見室)

クラスター弾禁止条約交渉

(問)一部報道で、19日からジュネーブで開かれる一定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の会合でクラスター弾の使用禁止条約について日本政府が関与しているという情報がありましたが、この事実関係と、外務省として現時点でこのクラスター弾についてどのような立場をとられているのか。

(事務次官)クラスター弾の問題については政府内で検討が行われてきているところですが、何らかの形で、今まで取ってきたアプローチに基づいた態度を大きく変える、方針を変更する等、そのようなことを決めたという事実はありません。従来、どのようなアプローチかと言えば、それは人道上の配慮、及び安全保障上の考慮という2つの点から慎重に考えていくというアプローチで来ておりましたが、そのこと自体については変わっておりません。他方、今のCCWのプロセスとそれとは別の有志国によるプロセスも在り、日本はそのどちらにも議論、或いは国際的な努力には積極的に参加していく、今回の議論についても参加していくということです。

(問)米国、中国、ロシア、イスラエルもそうですが、クラスター弾の色々な国際的な会合等に出席していないことについて、日本政府としてこのような国々へ働きかけを強めることはお考えでしょうか。

(事務次官)日本政府としても、そのような国々に特定の考え方で働きかける必要があるということになればそうだと思いますが、考え方自体が十分に整理されているとは認識していないので、今はまだそのような段階に達しているとは理解しておりません。

(問)ほぼ10年前に始まった対人地雷禁止条約のその動きがあって日本は有志国の枠で参加していますが、中国、米国、ロシア、インド、パキスタンというような国が後向きで対人地雷の問題が全然進歩、進展していないことが、クラスターの今回の議論にも影響しているのではないかとそのような指摘もあるようなのですが、その点は如何なのでしょうか。

(事務次官)地雷と比べてクラスター弾が「こう違う」等、そのような事から対応ぶりが自ずから異なってくるという関係にあるとは理解しておりません。何れにしても、今のクラスター弾の議論はクラスター弾の議論として、どのように考えていくのかという問題だろうと考えております。

(問)日本政府のアプローチとしては既存のCCWの枠組みと、オスロ・プロセスと両方の議論に参加していくということですが、より重きを置いているものはどちらでしょうか。

(事務次官)CCWの方が参加国が多いでしょうから、そちらの方で議論が深まり、より多くの国が参加することが大事だと思います。特に大手の国々には是非参加してもらいたいと思いますから、参加していないプロセスの中での議論が深まることが刺激になるという面もあるかもしれませんが、多くの国の参加する場において議論が進んで行くのが望ましいと考えています。

(問)今後の流れとしては、既存の枠組みの中での日本政府の立場を如何に反映していくかというところに議論を収束すると考えているのでしょうか。

(事務次官)日本がこの問題についてのメーンのアクターであるのかという点は、未だ議論も多分あるところですが、積極的な態度を取らないということでもないと思います。この辺りは防衛省の方もよく考えておられるだろうと思いますが、現時点では、日本は今後こういう方針でやっていくのだということが固まった段階に至っているとは思っておりません。

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日・カザフスタン原子力協定

(問)本日、カザフスタンとの原子力協定を明後日に始めるという発表があったのですが、改めてカザフスタンと原子力協定を結ぼうという意義と、日本としてどのようなことを目指していくのでしょうか。

(事務次官)昨年、8月に小泉前総理がカザフスタンに行かれまして、それでカザフスタン側と原子力協定の交渉を行う可能性について話し合われました。その際に核不拡散の問題、核物質の防護体制の整備等の条件が揃えば協定交渉に入ろうとそのようなことだったと思います。その後、カザフスタン側は我が方の勧めもありましてIAEAの追加議定書も締結しましたので、基本的にはそのような条件が整った、少なくとも交渉に入る準備が整ったということで、今回交渉に入ることになりました。カザフスタンは世界第2位のウランの埋蔵国ですので、この国との間で、最終的にはウランの平和的利用をカザフスタンと協力して何が成し得るのか、それをこれから正に議論して、日本自身も資源確保とともに、核の平和利用というところについてはカザフスタンと協力していこうということだと思います。

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事務次官会見記録(平成19年6月4日(月曜日)17時07分~ 於:本省会見室)

脱北者問題

(問)北朝鮮から漂着したとされる4人の身柄は、今後どういうプロセスを経ていくことになるのでしょうか。また、先程の参議院の拉致特委でも話題になっていましたが、北朝鮮から今後、大量の難民が来る場合も予想されると思いますけれども、日本はそれにどのように対処しようとお考えなのでしょうか。

(事務次官)現在、警察や入管当局でご本人たちの事情や希望などを聴取しているのだと思います。基本的にはご本人達の自由意思を尊重し、人道的な観点からどのように対応するかをこれから考える、もし、どこかの国に行きたいというのであれば、その基本を踏まえて対応を考える、ということだろうと思います。従って、今の事情聴取を基本的には見守るということでしょう。今後、大量の脱北者というのは、理論的にはありうると思いますが、今の状況で突然、大量の人が来られるというのは現実的にはあまり考えられないのではないかと思います。北朝鮮で何らかの大きな変化があった場合はありうるかもしれませんが、いずれにしても、いま非常に緊迫感を持って考えなくてはいけない問題だとは思っていません。

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北方領土問題

(問)昨日、プーチン露大統領が海外の記者団に「領土問題の解決は困難」と言ったそうですが、間もなく行われる日露首脳会談に与える影響はどのようにお考えですか。

(事務次官)影響と言いますか、ああいうことをプレスの複数の方に言われたわけですが、認識として非常に難しい状況があるということを言われたと思います。それは当然、前提として、首脳会談でも言われるかどうかは別として、そういう認識を持った上で臨まれるのだと思います。我々もこの問題は大変難しいという認識は持っているわけですが、他方、これは戦後の長年の課題であり、その解決のために知恵を絞っていかなくてはいけない問題だと思っていますし、その点はロシアも同様ではないかと思います。

(問)麻生大臣はプーチン大統領の任期中の解決ということを仰ってるんですが、次官としては来春までの解決の見通しをお持ちでしょうか。

(事務次官)見通しというよりも、我々としてはプーチン大統領が非常に強い立場にあるこの時期において、こういった問題を取り上げて突っ込んだ意見交換をし、解決の方向を探っていくのは大変意味のあることだと思っています。その結果がどの時点で出るかは、やってみないとわからないということです。

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クラスター弾禁止条約交渉

(問)一部の報道で、クラスター爆弾の禁止条約について日本政府が従来の立場を変えて、CCWの枠組みの中で今度はクラスター爆弾禁止を目指していくのではないかと言われていますが、この点は確かでしょうか。

(事務次官)リマでの会合を踏まえて、日本としても今後どのような対応をしていくかを防衛省において検討されていると思います。今は従来の態度を大きく変えたとは聞いていません。

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第88豊進丸拿捕事件

(問)富山の漁船がロシア当局に拿捕されたという案件で、今日、富山県の石井知事がいらっしゃいましたが、どういった要望があり、また外務省としては今後の対応としてどういうことをしていくと説明されたのでしょうか。

(事務次官)ご意向としては、一言でいえば、即時釈放に向けて最大限の努力をしてほしいというご依頼であったと受け止めています。我々としても出来るだけ早期の解放を求めて強くロシア側に働きかけていきたいと思っています。いずれにしても、拿捕された船員、船舶は一定の条件の下、出来るだけ早く解放するということは国連海洋法条約の規定にもあるわけですから、その点を踏まえてロシア側に対応して頂きたいと思います。

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日中首脳会談

(問)6月8日に日中首脳会談を行うことが決まったという報道がありましたが、事実関係は如何でしょうか。

(事務次官)現在、まだ調整中で、決まったということはありません。

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