(問)週末、韓国を訪問された目的と成果を教えてください。
(事務次官)これは、羅鍾一(ラ・ジョンイル)前大使と私との間で、「日韓親善ネットワーク」という名前で、非公式の意見交換を率直に行うということで、第1回目の会合を済州島で行ったものです。参加者には色々な人がいるのですが、特定の固有名詞は言わずに、ざっくばらんに会うということで、経済界、学者、研究者といった人たち、そして若干の役人も入っています。いわゆるトラック2ということで、年に2回ほど集まり、内容は一切外に言わず、自由に意見交換をしましょう、日韓間に関係のあることは、政治から文化まで、国民性も含めて、大いに話し合って相互理解を深めましょうという会合でした。
(問)きっかけはどちら側から。
(事務次官)元々、羅鍾一(ラ・ジョンイル)前大使が現役の頃に、私と定期的に食事をしており、その時にそのような話になって、話を進めたものです。
(問)交互に、シャトルでということですか。
(事務次官)そうです。
(問)BDA問題について、今、北京でまたグレーザー米国財務省副次官補が中国と協議を行っているのですが、情報はありますでしょうか。
(事務次官)特に入っていません。一所懸命、技術的、手続き的なことを詰めているとは聞いていますが。
(問)次回会合の見通しは、たぶんBDA問題の決着の時期と重なると思うのですが、どのように見ていらっしゃいますか。
(事務次官)そこのところの話が詰まらないと設定のしようがない、北朝鮮はそういう態度だろうと思います。
(問)4月の温家宝国務院総理の前あたりを希望しているという報道もあるのですが。
(事務次官)我々は、そういった手続き的なことで休会に入ってしまったことは遺憾なことだと思っていますから、できるだけ早くその問題を解決して、第1段階、第2段階の具体的な内容について議論を交わしていきたいと思っています。
(問)ワシントン・ポスト紙が、拉致問題と従軍慰安婦問題を並列に扱うかのような社説を書いていますが、その社説に対する見解と、慰安婦問題連絡委員から照会等あるようですが、今後どのように説明していくお考えですか。
(事務次官)この問題については、総理も明白に、慰安婦の方々が置かれた極めて悲惨な状況については、非常に心の痛む思いがするという気持ちを表され、その上で、更に、河野談話を継承すると言っておられるわけですから、それに尽きると我々は思っています。
(問)拉致問題と比較して述べられることについてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)ご議論を色々と立てることは可能でしょうが、我々は全然別の問題であると思っています。
(問)ワシントン・ポスト紙の社説は、政府の出した見解書の方が河野談話を弱める内容であるというような論調で論じているので、必ずしも前々のことを言って批判しているというより、最近の動きを一応追いかけた上で、河野談話を弱めるような動きがあると言っていますが、その点についていかがでしょうか。
(事務次官)「弱める」というのがどういう意味か知りませんが、「河野談話を継承する」と言っているわけですから、何故そのように言われるのか、私には理解できません。いちいちそういったことについてコメントするつもりはありません。
(問)BDAをめぐる金融制裁解除についての受け止めと、六者会合に与える影響についてどのようにお考えですか。
(事務次官)基本的には、BDAにある北朝鮮の口座について、米国側から、ご承知のように、マネーロンダリングの疑いがある云々ということで凍結されたものを、今回解除して、中国銀行内にある朝鮮貿易銀行の口座に移すということで最終的な判断をされたわけです。これからマカオ当局が、厳密にマカオの法に基づいてそれを行うということです。私の理解では、これは基本的には米国及び中国の法執行の問題として今回の措置が行われたということだと思います。その法執行が、今、この最終判断を受けて現に行われつつあるわけです。これが六者会合にどのような影響を与えるかということですが、とりあえず、六者会合は今日開催されているわけで、そういう意味では、少なくともそれを妨げるような方向には行かなかったことは事実だろうと思います。ただ、重要なことは、六者会合において、初期段階の更に詳細な具体化の問題及びその後の段階の問題について具体化するための話し合いが行われるわけで、北朝鮮が誠意を持ってそれに対応しようということを見ていかないと、今回のこの法執行が現実に良かったのかどうか、この点については、にわかに判断することはできないと思っています。
(問)全面解除の話が出ているわけですが、全面解除していいのかどうか、あるいはタイミングが早すぎるとか、そういったご懸念はどうでしょうか。
(事務次官)これは、米国、中国の法に基づいて行われる話ですから、我々がこれを早すぎるとか間違っているという立場にはないと思っています。
(問)現実に、北朝鮮の要望に沿った形に見えるのですが、米国は譲歩したというような印象もあるのですが、その点、どのようにお考えですか。
(事務次官)米国が相当な期間をかけて調べて、その結果に基づいて行っているわけで、妥協したとか譲歩したとか、そういう類の話ではないと思っています。
(問)先程の話で、北朝鮮が初期措置あるいは次期段階の措置に応じるかどうかが焦点というお話でしたが、これまでの部会の協議、あるいは今日1日の協議が始まっていますが、こういった協議を見て、北朝鮮が初期措置及び次期段階措置について、応じてくる手応えというか可能性についてはどのように思われていますか。
(事務次官)今までのところは、北朝鮮が基本的にそれを実施する方向で議論を進めているように見ています。
(問)米国の金融制裁ですが、拉致問題という側面からして、日米連携の元でプレッシャーを与えていたのが、今回解除されて弱まってしまわないかということに関してはいかがでしょうか。
(事務次官)拉致問題は、我々は我々として制裁措置を取っているわけですし、エネルギー支援の問題についても、拉致問題に進展がない限りは行わないということでやっているわけです。金融制裁の問題が、我々としては、国際的な北朝鮮に対する圧力の一環たり得ると思っていましたが、それが今回こういうことになったからといって、拉致問題への圧力が、強まったとはもちろん言えないと思いますが、致命的なことかというとそこはそうでもないと思います。これは米国も認めているわけですが、現実に、北朝鮮の色々な口座には問題があるわけですから、別に今回のものだけではないでしょうから、北朝鮮の対応ぶり如何によっては、また何らかの措置が取られることも、実際にはあり得ると思います。従って、そういう点も含めて見ていく必要があると思います。
(問)金融制裁の全額解除について、日本は米国側から事前に連絡は、どの程度受けていたのか、言えないところもあると思いますが、それはいつ頃だったのですか。
(事務次官)金融制裁について、北朝鮮が、これを解除しない限りは六者会合に応じないと言ってきたわけで、それが前回2月にあったわけです。その時に、金融制裁の問題というのは、当然、何らかの話し合いがあって、そういった六者会合の再開に繋がっているのだと思います。その間、我々としては、米国側と然るべきチャンネルを通じて話し合ってきていますから、その内容については申し上げられませんが、話し合いはきちんとやってきているとご理解頂きたいと思います。
(問)日本に今ある米国大使館の賃料がまだ払われていないという話があると思うのですが、これについて、今後、米国側に対して何かしら、催促というか、交渉というか、そういったものの具体的な予定等はあるのでしょうか。
(事務次官)これはもう随分前から米国側と問題意識を持って話し合ってきて、現在は、交渉の段階に入っていますので、なるべく早い解決を望みますが、解決の方向で交渉が行われています。内容については控えさせて頂きますが、解決に向けて努力するとご理解頂きたいと思います。
(問)時期を区切ってとかそういうことはお考えにならないのですか。
(事務次官)なるべく早くです。
(問)今日から日中歴史共同研究の2回目の会合が始まりますが、1回目から引き続いて、今回は、具体的にどういったテーマが協議されるのでしょうか。
(事務次官)今回どのようにするかというのは、私は聞いていません。
(問)日中歴史研究の関連で、まだ今回2回目が始まったばかりなのですが、米国で出ている慰安婦問題の関係がどのように影響すると思っていらっしゃいますでしょうか。
(事務次官)両国の歴史家が客観的な事実を探究し、客観的な事実は一つであっても解釈は違うわけですから、歴史解釈は違い得るので、そういったことを含めて、両方の見解を付き合わせて、どのような見解を持つのがより客観性を持っているのかという学者的な良心に基づいた議論がなされるわけで、慰安婦問題でどうであったかがそこを変えるとか、そういう類の話ではない、別の問題だと思っています。
(問)韓国の連合通信が、谷内次官と韓国の外交通商相第一次官の戦略対話が12日だと報道しているようですが、調整はついているのでしょうか。
(事務次官)だいたいその方向で調整していますが、決まったというわけではありません。決まれば公表したいと思っています。
(問)その際の話し合いのテーマの中で、例の米国の従軍慰安婦の決議の関係で、安倍総理のご発言に対して先方がちょっと反論しているようですが、その辺も対話の課題になってくるのでしょうか。
(事務次官)日韓間の戦略対話ですので、そういった問題を議論する場だとは思いませんが、韓国側がどういうことか話を聞きたいということであれば、ご説明する用意はあります。
(問)韓国側に説明する用意があるということですが、説明されるとするとどういうことを。
(事務次官)今日、国会で総理もご答弁なさっていますし、官房長官も会見で基本的なお考えを示しておられますので、それを説明することになると思います。いずれにしても、戦略対話の中身そのものは申し上げないことになっていますので、その辺りは推測して頂ければと思います。
(問)報道にあるように日本、東京で行う方向ということでよろしいでしょうか。
(事務次官)東京でしょうね。
(問)明日が事前協議で、その後7日から日朝作業部会が始まるわけですが、改めて、政府の基本方針についてお願いします。
(事務次官)日朝間の本格的な話し合いというのは久しぶりなので、我々の大きな関心事項であり国民も強く望んでおられると思いますが、拉致問題の解明・解決といった方向に向けて進展が図られるように、我々としてはできる限りの努力をしたいということが当然あるわけです。その関連で、北朝鮮も色々なことを話し合いたいと思っているのではないかと思いますが、いずれにしても、その辺りは、明日、非公式会合で予備的に接触しますので、議題その他を整理した上で、本格的な話し合いに入っていきたいと思っています。