(問)従軍慰安婦問題で、今日、衆院予算委員会の中で、米国の下院に提出されている日本政府の明確な謝罪を求めている超党派の決議案に対して、麻生大臣の方から、「客観的事実に全く基づいておらず甚だ遺憾だ」というような発言があったのですが、政府として、改めて、どこが客観的事実に基づいていないのかなど、説明をお願いします。
(事務次官)決議が米国議会でこれから公聴会を含めて議論されていくことだと思いますので、あまり個別の点に入っていくのは適当ではないと思いますが、我々が、今出ている決議案を見る限りは、とても客観的事実に基づいているとは思われない部分も入っていますし、表現上も問題がある部分があると思っています。従って、大臣の発言を正確には存じませんが、そういった趣旨のことを言われたのだと思っています。
(問)具体的にどの辺りが表現上問題があるとか、そこまでは。
(事務次官)決議案をよく読んで頂ければ、どこがおかしいというのかはおわかり頂けると思いますが、今それをいちいち取り上げてコメントすることは適当ではないと思います。むしろ、米国の方でそこのところをきちんと調べて、その上で客観的事実に基づいた形での決議案にして頂きたいと思います。
(問)この問題で、今年から民主党が下院を運営するようになりましたが、民主党の指導部と話し合いを持っていく予定でしょうか。
(事務次官)一般的に、この問題に限らず、米国議会との接触は常時大使館の方で行っており、また今議会は民主党が多数になっているわけですから、従来以上に民主党とのコンタクトは深めていく必要があると思っています。
(問)チェイニー副大統領が来日しますが、改めて、日本にとって、また米国にとってのその意義と、期待するものをコメント頂ければと思いますが。
(事務次官)チェイニー副大統領は、今般、日本とオーストラリアという、この地域において米国が最も信頼する同盟国を特に訪問されるのだろうと思います。他方、我々の方においても、米国がイラク政策の見直しをし、あるいはまた六者会合が一定の前進を見たという状況の下で、お互いにかけがえのない同盟国として、将来の同盟関係の維持のために、今このようなハイレベルで議論させて頂くということは、非常に有意義なことだと思います。非常に重要な日本外交のテーマとして、英語で言えばアライアンス・マネッジメントと言いますが、同盟関係の運営という意味において、トップレベルの方がおいでになって行うことは、このタイミングも非常に良い時期ではないかと思っています。
(問)その日程の中で、久間大臣との会談がセットされていないのですが、これは、日本としては非常に良い機会だと思うのですが、セットされたいという意思は。
(事務次官)この点は、米国サイドで、非常にタイトなスケジュールの中で、どの方とお会いになるかということを判断されたと理解しています。
(問)日本としては、やはり会った方が良い、希望としては出てくるという意識でしょうか。
(事務次官)日本としては、総理もお会いになり、官房長官、外務大臣もお会いになるということですから、スケジュールの中で、異議があるという話ではないと思っています。
(問)北朝鮮外務省が、安倍総理を名指しで批判しているのですが、これは朝鮮総連の捜索に関係する話なのですが、今後、日朝の作業部会を開くにあたって、作業部会の見通しと、今日の北朝鮮外務省の声明について、次官のお考えをお願いします。
(事務次官)六者会合に一定の進展があり、かつまた日朝作業部会を30日以内に行うという合意ができたこの段階において、ああいったコメントが出てくるということはいかがなものかと思っています。我々の総理大臣を名指ししてああいった発言をするということは、我々としては受け入れがたいことであると思っています。
(問)その北朝鮮の態度が、今後の日朝作業部会の見通しに何らかの影響があるということはお考えですか。
(事務次官)例えば作業部会をもうやらないとかそういうことを意味しているのであれば、はっきりと態度で示すのだと思います。どういう動機で言っているのかいちいち詮索するつもりはありませんが、北朝鮮としては、あそこに示されている内容のことを言いたかったということであって、作業部会をやめようとか、そういう趣旨で言っているとは理解していません。
(問)安倍総理は、今、北朝鮮に対しては圧力政策というのをとっていますが、一つは拉致問題の解決というのがどうしてもあるのですが、その姿勢と作業部会の進展というのは両立するものだとお考えですか。
(事務次官)我々の立場は、基本的に対話と圧力であり、今回の作業部会というのは、まさに対話として今回実現の運びに至ったということです。この対話が今回成立するというのは、これまで日本政府がとってきた政策というのが当然前提にあってやる話ですから、今までとってきた、いわゆる『強硬策』なるものがネガティブな影響を与えているとは思いません。
(問)日朝の作業部会ですが、これまでは包括的な協議という形で3つのテーマを並行的に取り扱ってきたと思うのですが、3つの作業部会では、やはり国交正常化問題よりも拉致問題を先に日本側としては議論したいという立場でよろしいでしょうか。
(事務次官)今回の作業部会で、おっしゃるように3つの話し合いの枠組みというのはかつては考えていたわけで、それを一体どのようにするのかということも当然話し合いになると思います。また、どのようなことから議論していくかというのは、まさにこれから調整しなくてはいけないところだと思っており、どれが必ず先にこなくてはいけないとかいうことを今申し上げるのは適当ではないと思います。北朝鮮と話し合っていくべきことだと思いますが、我々としては、拉致問題をずっと横に置いたまま国交正常化の問題を一所懸命話し合うとかいうことはあり得ないことだと思っています。
(問)来週明けには、先程米国の話がありましたが、今度はロシアから首脳がいらっしゃるわけですが、先月には次官もモスクワに行かれて非常に幅広い対話をされてきたと思うのですが、今度首相が来られるということで、幅広い対話をされると伺っています。閣僚の方も他にもいらっしゃるように思うのですが、その辺の、全体の、今回の訪日に向けてのイメージ、どのような方がいらっしゃるのかということと、それに向けてどのようなことを期待されているのかということをお願いします。
(事務次官)できるだけ色々な問題について話したいと思いますし、また、特に経済関係の分野で閣僚の方がご出席できる人がおられれば、できるだけ多く来て頂いて、日本側の然るべきカウンターパートの方と大いに議論して頂きたいと思っています。重要なことは、中・長期的な展望を持ちながら、21世紀の日露関係を明るいものにしていきたいということについては、前回、私が行きましたときもラブロフ外務大臣とかデニソフ第一次官がまさにそういう問題意識を共有して頂けましたので、そういった前向きな姿勢で色々な問題について議論をしていく、そしてまた、それと同時に、懸案の領土問題という大きな問題をどのように解決していくのかについても、またハイレベルで率直にご議論して頂きたいと思っています。
(問)先日の民放の報道番組で、麻生大臣が、領土問題の解決に関しては政治決断だと、それに関連して、自分としてはプーチン大統領の任期中がそういう時期だと思うという趣旨のご発言をなさっているのですが、それについて次官はどのように思われますか。
(事務次官)大臣がそうおっしゃっていることですから、当然、そのような考えであるということだと思いますが。
(問)次官も同じような考え方をしていると。
(事務次官)はい。
(問)実際、今回の会談で、どの辺の部分を進められたいとか、そういう具体的なものというのは。むしろ大枠で話し合っていきたいと。
(事務次官)今回、話し合うということで、総理レベルの人が来られるわけですから、今それを予断するようなことは申し上げない方がいいと思います。そのレベルで、まさに先程、政治的判断の問題というご質問もありましたが、そういうレベルで話し合って頂くということだと思います。
(問)麻生大臣が3日の京都市の講演で、米国のイラク政策に対して、「非常に幼稚だった」という発言をしていたのですが、これについてまず次官の率直な受け止めと、日米関係への影響などありますでしょうか。
(事務次官)イラクについては、2003年3月に武力行使が始まり、そのこと自体は短期間に大きな初期の目的を果たしたと思いますが、その後の政治プロセス、あるいは治安状況の改善といった点については、色々と米国も努力はされたけれども、なかなか思うように事態が進展せず、従って、そこにおいては、米国政府でも非常に苦悩に満ちた試行錯誤が行われてきたのだと思います。そうした試行錯誤のプロセスについて、大臣なりにお考えがあってああいう表現を使われたのだと思いますが、大臣のお気持ちとしては、武力行使そのものが間違っていたとか、あるいはまたイラクの安定化のために米国が一所懸命努力しておられることを否定しているというものではありません。かつまた、日本政府はそういった米国及び関係諸国の努力と協力しながら、ご承知のように、自衛隊あるいはODAを通じ、イラクの安定化のために努力してきたわけであり、そういった努力をこれからも続けていくということであります。米国との関係でも、今まで通り、協力をできるだけ続けていきたいと思っており、その点は特に変更ないということです。
(問)米国政府側から、大臣の発言の趣旨を尋ねるとか、そういった反応はありましたでしょうか。
(事務次官)そのようなプロセスがあったかどうか知りませんが、いずれにしても、色々と米国も心配するかもしれませんので、その点については、事務的に説明はしてあると聞いています。
(問)最近、久間大臣の発言ですとか麻生大臣の発言など、閣僚の、特に米国との関係においての辛口の発言が続いているのですが、そういった状況についてどのように見ていらっしゃいますか。
(事務次官)今申し上げましたが、米国も一所懸命努力していますが、やはり、政治プロセスあるいは治安状況等のイラク全体の安定化という点については、努力している人たちの気持ちからすれば、なかなか思うようにいかないので、そういった点については反省する点もあるでしょうし、また、どうしたらいいのだろうかということも考えているという中で出てきたご発言ではないかと思っています。
(問)8日からまた六者協議が始まりますが、それを前にヒル米国国務次官補が今日来日するということで、改めて、期待と見通しについてお願いします。
(事務次官)去年の12月に、ご承知のように、1年3ヶ月ぶりで再開された六者協議が、期待があったにも拘わらず、成果を上げることなく休会したわけです。その12月に行った議論が無駄にならないように、かつまた、ご承知のように、今回はベルリンで米朝協議があり、更には北京での金融協議も米朝間であったわけで、そういった話し合いのプロセスが生かされて、今度の休会明けの六者協議では、それが具体的成果として表れることを、我々としては強く期待しています。見通しという点について言いますと、これは六者が参加して行う話ですから何とも言えませんが、我々としては、今回はやはり、日本国民との関係でも、少しでも成果を出さないと、六者協議そのものについて、こういう事を続けていて意味があるのかということになりかねませんので、やはりそういう点では、努力して成果を出していきたいと思っています。
(問)日本国民との関係というのは、それは日朝の接触なり作業部会というものができればいいという趣旨ですか。
(事務次官)それもありますし、今回は核の問題ですが、もちろんミサイルの問題もありますし、これは日本にとっては大変深刻な問題でありますから、当然、核の問題についても進展があるということを含めて申し上げたわけです。
(問)核の問題に進展があった場合、当然、見返りもやらなければいけない。北朝鮮が50万トン以上の重油を要求するのではないかという報道がありまして、それについて、日本がそれ相応の分担を求められた場合ですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)今、我々として申し上げられることは、拉致問題について長らく進展のない状況の中で、核についていわゆる初期段階の処置というものが何らかの形で示されたからといって、直ちに我々が、例えばエネルギー支援等の領域に加わることについては限界がある。今の時点で申し上げられることはそういうことだと思います。
(問)拉致問題は日本にとって核・ミサイルと同様に重要な問題なのですが、ヒル国務次官補も来日されますが、日本の認識を米国とどこまで共有できているかという点についてはどうお考えでしょうか。
(事務次官)米国との関係では、拉致の問題について、温度差や、あるいは受け取り方が違うとか、そのようには我々は思ったことがありません。これは家族会その他の救う会の皆様も、米国に行かれて、皆力づけられて帰ってきているわけですし、我々と受け取り方が違うという感じはないと思います。そういう点は十分理解して頂いていると理解しています。また、色々と外交努力も行って頂いていると思っています。
(問)中国の海洋調査船が事前通報してきた海域以外の海域で調査していることが明らかになったのですが、その点については、認識としてはいかがでしょうか。
(事務次官)非常に遺憾なことなので、我が方の経済水域で、本来認められるべき科学的調査を行うということであれば、これは事前通報があって然るべきであり、またそのように合意しているわけです。それはやはりきちんと守ってもらわないと困るので、その点についてどういうことなのかということを、事実関係を今確認しているところです。
(問)まだ詳しい回答はないのですか。
(事務次官)まだありません。