(問)今回の首脳会談の位置づけと、おそらく最後の小泉・ブッシュ会談になると思うのですが、2人の関係を振り返って改めてどういう感想をお持ちになるか、この関係が良かったということで、具体的に日本の外交にどういう良いことがあったか、その辺のことも具体例等思いつけば教えて頂いてよろしいでしょうか。
(事務次官)今ご質問の中にもありましたが、小泉総理になられてから、日米関係というのは一般に、小泉・ブッシュ関係と言われて、最高レベルで、大変強い信頼関係に基づいて日米関係が運営されてきたということはあると思います。大きな問題が色々とありましたが、この小泉・ブッシュ関係の下に、そういった問題が基本的には良い方向でまとまり、また実際にも実施に移されてきたと理解しています。具体的には、安全保障面で言えば、テロ特措法、アフガニスタン、あるいはイラクの関係が思いますし、また、日米関係そのものでは、米軍再編の問題等々の点についても、あるいはミサイル防衛についても、非常に堅実な進捗があったと思っています。今回の首脳会談というのは、そういったこれまでの日米関係の役割と意義というものを再確認すると同時に、これからまた更に日米関係がこの実績の上に発展していくということが、言ってみれば、方向性として合意されるということになるのだろうと思っています。日本の外交の基軸が日米関係であるということは、戦後一貫してあったことでありますし、そのことが、この小泉総理とブッシュ大統領の間で大変高い次元まで持ってこられたのではないかと評価しているところです。
(問)2人の関係のお陰で摩擦が抑えられたとか、あるいは解決する時間なり余裕が持てたという例は特にありますか。
(事務次官)もし、この2人の関係がなければ、実際に具体的な案件でも、そうは簡単にはいかなかったであろうなということは、我々実務を経験している者からはいくつかあるのですが、あまりそれを、本来は大変だったのだけどうまくいったのだと、こういう場で申し上げるのはいかがかと思います。一般論だけにさせていただきますが、我々としては、実務面で大変助かったということは、私自身も色々と経験しているところです。
(問)日米首脳会談と、麻生大臣が明日からモスクワに行ってG8外相会談が行われますが、テポドンに絡む危機の状態は去ってはいないという中で、この二つの大きな会談で、日本としては何を主張してどういうものがまとまっていくでしょうか。
(事務次官)テポドンの問題から言えば、日米首脳会談では、その時点でどうなっているか知りませんが、両国の強い懸念が議論としても当然なされるでしょうし、その他で、対外的にどう出るかは別にして、話し合いはされると思います。北朝鮮にとっても、日米がどういう反応をするかというのは、大変大きな関心があるところに違いないと思います。G8で外相会談、更には首脳会談もやがてあるわけですから、これが世界の中において主要な責任を持った国々が、この問題をどのように取り扱い、そういう態度を示すかというのは、これまた北朝鮮にとっては非常に大きな関心事であろうと思います。そういう意味で、日本としては、この問題についてきちんとした意見を述べ、また、理解を得るということをやって頂くことになるのではないかと期待しています。
(問)米国の議会の中で一部、ブッシュ政権に対して、米朝直接対話をすべきではないかという声があるのですが、その米国側が頑としてそれに応じない姿勢について、どのように思っていらっしゃいますか。
(事務次官)そういう声が聞かれることは事実ですが、その声が大きくなっているという風には、必ずしも思っていません。北朝鮮自身も、相当色々なことを駆け引きとして使っている部分がありますので、この点は米朝の対話というものが、良 い効果を生み出す見通しがあるのであれば、それは当然、話し合いの一つの手段として考えられることだろうと思います。ただ、今、どちらが良いのか、にわかに判断できないし、米国の中でも議論が分かれているところなのだと思います。
(問)北朝鮮が弾道ミサイルテポドン2号の発射準備とも受け取れる行動をしていることに関してなのですが、政府としては今どのように状況を把握されているのか、また、北朝鮮に対してはどのようなメッセージを呼びかける考えでしょうか。
(事務次官)諸情報を総合すれば、このミサイルを発射するという可能性があると見てもおかしくない状況が続いていますので、16日にわが方からも北朝鮮に対してこのことについて我々が非常な懸念を持っていることについて、強い警告といいますか、そういったことを申し入れたわけです。依然として我々は、もちろんこのような実験を行うべきではなく、何よりも六者協議に早く帰ってきて、核問題を解決するということが大切であるという立場には、まったく変わりはないということです。
(問)北朝鮮の狙いはどういうところにあると見ていらっしゃいますか。
(事務次官)正直なところ、北朝鮮はこういうことであるということは一切何も言っていませんので、そういったことは憶測以外の何物でもないと思います。いろいろ憶測しても仕方のないことで、ともかく、こうした実験をやることはやめろということを言うことが大切だと思っています。
(問)麻生外務大臣は、もし発射をすれば国連安保理で開催を求めるとおっしゃっているのですが、日朝とか六者という枠組みでは、例えば日朝平壌宣言に反するというファクトはあると思うのですが、国際的に弾道ミサイルの発射を規制する条約はないと思うのですが、安全保障理事会を開くように要請する根拠はどう考えているのですか。
(事務次官)これは、今おっしゃった日朝平壌宣言の中にもミサイルの問題は入っているわけですから、これは明らかに違反していると思いますし、六者協議においても、協議が9月に共同声明を出して、この地域における平和と安定ということについて、これをいかにして確保するかという観点から共同声明が書かれているわけですから、言ってみれば、その前提となるところが崩れかねないという話です。従って、そういった問題は、もちろん日朝だけの問題でもないし、六者だけの問題でもないわけで、国際社会全般に与える影響というのは非常に大きいわけです。それからもちろん不拡散という観点からもそういった問題は懸念される点です。従って、それを安保理で議論するというのは、当然有り得ることであると思っています。ただ、まだ実験を行ったわけではないので、必ず安保理に持っていきますとかそういう話ではないと思いますが、当然、選択肢としては考えられることであるというのが大臣の趣旨ではないかと思っています。
(問)要するに、不拡散ということを根拠に、六者協議ではないから、ミサイルと合わせて、過去の問題も含めて、安保理に持っていくということになるのですか。
(事務次官)その辺りは、当然、ミサイルに核を積めるかどうかという問題は別途あるわけですが、当然、理論的には繋がるような話です。ただ、今のご質問の趣旨は、ミサイルを撃った場合にどうするかということですから、それは当然、ミサイルの話を持っていくということであると思います。最初に申しましたが、地域の平和と安定に関わる問題ですから、当然、安保理で議論して然るべき問題であるとは思います。
(問)ミサイルを撃った場合、国際法上問題があるとお考えでしょうか。
(事務次官)ミサイルを撃つ場合は、当然、、漁船とかいろいろな活動をしている船に悪影響を与えますから、事前に警告を出して安全なところに撃たなくてはいけないわけです。およそミサイルを発射してはいけないという国際法があるわけではありませんが、他方、もし発射するのであれば、当然、いろいろな事前警告とか、そういったものを出さなくてはいけないのです。これは国際法の要請するところだと思います。そういったことはまだ、行われていないわけですから、そういう点も懸念の材料であるということです。
(問)仮に、日本の領海あるいは領土に落下した場合の対応についてお願いします。
(事務次官)それは状況に応じて考えなくてはいけないわけですが、事故で落ちるケースですとか、まさか日本を狙ってくるということはあってはならないことですが、その状況を見て判断しなくてはいけないことだろうと思います。
(問)人工衛星だと前回は言っているのですが、そういう主張をしたとしても、対応に変化はないのですか。
(事務次官)前回も人工衛星であるという主張をしたのだと思いますが、ミサイルの技術そのものは、基本的には大差はないと承知していますので、先程の平和と安定という観点から言えば、同じ事であると言っていいと思います。
(問)イラクの自衛隊撤退問題に関してなのですが、今日の朝、閣僚会議、そして局長級協議が午後に行われていますが、治安権限移譲をイラク政府が発表した場合の日本政府の対応について、どういった形になるか教えて頂けますでしょうか。
(事務次官)イラクで発表が行われて、その上で日本がどうするかということは、従来からの政治プロセスの進展等々、条件を4つ挙げて、そして総合的に判断すると考えているわけです。イラクの政府から何らかの権限移譲に関する公表があれば、それを踏まえて、今言った条件を基に考えるということであり、スケジュールとしてこうするということを今の段階で予定しているわけではありません。
(問)見通しみたいなものもまだ伝わってきていないのでしょうか。
(事務次官)イラクでどのように発表されるかということについては、イラク政府によって為されることですので、今、私がここでこういう風に承知していますと申し上げるのは適当ではないと思います。
(問)今、日韓EEZ交渉中だと思うのですが、報告はありましたか。
(事務次官)今のところありません。
(問)EEZ交渉で、今回の日本側の目指すところというか、目標はどの辺に置いていますでしょうか。
(事務次官)6年ぶりなので、その間の様々な状況の変化もあると思うのです。政治的な背景も含めて。そういうことも踏まえて、日韓両国がこの問題について、境界を画定した方が良いというところについては、両国とも同じ問題意識を持っていますので、この問題意識に基づいて、双方の基本的な考え方を今回ぶつけ合って、その上で、ではどうやったら解決ができるのかということを話し合おうということです。6年ぶりではありますが、新たな交渉が始まるというようなことで。ただ、先程申しましたように、今のところは解決したいという問題意識は持ってやりましょうということです。今回、これで、やはり話しても仕様がないねということにならないように、なんとか話し合いの歯車がかみ合っていくようにしたいということは、事務的には希望しているわけです。
(問)韓国が、境界画定の起点を従来と違って竹島にすると、話し合いの歯車はかみ合わないのではないかと、対立したまま終わるのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
(事務次官)従来、韓国の立場は、竹島を起点としないという考え方でしたが、それでも話し合いの歯車がかみ合うという感じではそもそもありませんでしたね。今回、仮にですが、そういう竹島を起点にする議論をされているのかどうかわかりませんが、出てきたからもう駄目とか、そういうものではないと思っています。もし仮にそういう議論をされるのであれば、それも踏まえて更に議論していこうと思っています。なんとか解決するにはどうしたらいいかということが課題だと思っています。
(問)今日、衆議院の拉致特別委員会で北朝鮮人権法、本会議に行くことになったのですが、実際に今、北朝鮮人権法が成立した場合、運用はどうなるわけですか。
(事務次官)ご承知のように、我々としては北朝鮮との関係では「対話と圧力」でやっていこうと思っているわけです。今回のこの人権法というのは、まさに圧力の一環としての政策の法的な根拠を新たに与えて頂くということだと思いますので、それを踏まえて、既存の法律もあるわけですから、そういった法的根拠も踏まえて、どういうことをしていくかというのは、これから状況に応じて考えていくということだと思います。ですから、この法案が成立したら直ちにこういうことをやろうと考えているわけではないですね。
(問)日中関係なのですが、最近、1週間2週間くらいでちょっと改善しているようなことが見られますが、今の状況についてどのように思われますか。
(事務次官)この間のカタールでの日中外相会談は、それこそ議論の歯車がかみ合った形だったと思いますし、大臣は現にそのこともあって、日中関係が改善する方向は見えつつあるということを言っておられるわけです。更に今回の、宮本大使の新任状捧呈の際に胡錦濤主席の訪日への期待、あるいはご希望というものは示されて、改善傾向が更に強められたと、我々としては見ています。日中関係は、両国とも世界の中で最も重要な二国間関係であるという認識はもともと持っていたわけですが、明らかにこの日中外相会談以降、上向きに転じているという認識は持っており、これを更に良い傾向として未来志向で強めて行ければと希望しています。
(問)米国とインドの原子力協定に対する日本政府の態度ですが、これに対して支持する方針を固めたという一部報道もあるようですが、今の政府のスタンスはどのようなものですか。
(事務次官)一言で言うと、まだ日米首脳会談でどういう議題を取り上げるのか、また、仮に米印合意が取り上げられるとしたら、日本政府としてどういう態度を示すのか、これは今、政府部内で調整中、考慮中であるということです。
(問)現時点では留保しているという段階で変わっていないですか。
(事務次官)検討中ということです。
(問)先週末にプーチン大統領がG8各国のマスコミと会談したのですが、領土問題について、全ての問題を解決したいという発言をされたのですが、このプーチン大統領の発言についてどうお考えですか。
(事務次官)日露間に存在している問題を全て解決して、未来志向で日露がこの21世紀において、世界の為にも両国間の為にも色々前向きな建設的なことが出来ればそれは大変結構だと思っています。
(問)一方で、1956年の日ソ共同宣言について、日本が一方的に履行を拒否したという発言をしていますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
(事務次官)その点は、むしろ逆ではないかと思っています。1960年の日米安保条約の改定があった時に、ソ連は、日本に外国の基地がある限り、また平和条約が結ばれない限り、領土を引き渡すようなことはしないということで、外国の基地があるという、言ってみれば新しい条件を付けてきた訳です。そういう意味では、それがある限りは北方四島は返さないと、ロシアから見ますと二島ですが、そういうことになりますので、それはちょっと立場が逆ではないかと思います。
(問)来週開かれる日本と韓国のEEZの境界画定交渉ですが、韓国側が韓国側の起点としている鬱陵島から竹島に変更するというような方針を固めたようですが、これについて外務省としてはどのように認めているのですか。
(事務次官)報道がどれくらい正しいのかよく存じません。それからまた、韓国政府がそういう風に従来からの立場を変えたとは聞いておりません。いずれにしても12日、13日と交渉をしますので、あまり交渉を予断するようなことは申し上げない方がいいのではないかと思います。
(問)今日、中央アジアと日本の外相会議が開かれましたが、今回、中央アジア各国を招いて開催したことの評価をお聞かせください。
(事務次官)中央アジア諸国は民主化、自由、市場経済などといったものを指向して、今、各国が努力をされているのだと思います。我が国としてもそういった方向が追求されるということであれば、我々としても大いに色々な形で支援する必要があるのではないかと思いますので、率直に外務大臣のレベルでそういった国々とお話することは有意義だと思います。本当は去年開催する予定だったのですが、御承知の事情で今年に延期されたということなので、日本で再開出来たということは良かったと思っています。