記者会見

事務次官会見記録(平成18年2月)


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事務次官会見記録(平成18年2月27日(月曜日)18時08分~ 於:本省会見室)

沖縄返還協定

(問)沖縄返還の際の交渉を担当されていた吉野元アメリカ局長のアメリカとの間で密約があったという風に証言なさっています。外務省の公式見解としてはそういう密約はなかったということですが、交渉当事者があったと言われることで、なかった、と言うのは歴史に蓋をするのではないか、という風に思うのですけれども、ご見解を。

(事務次官)これは事実関係が既に明らかにされておりますけれども、河野外務大臣のほうからその点について念のために確認したことはある訳です。その時には吉野元アメリカ局長は、そういう密約はなかったということを言っておられる訳です。我々としてはそこでもう確認した訳で、今そういうことを、つまり密約は実はあったんだということを今言っておられるというのは、どういうことなのかな、という風に思っているのです。我々としてはその確認した時点で交渉当事者もその点は密約はなかった、ということを言っておられるという事実をそのまま受け取っている訳です。

(問)改めてですね、今回新たにあったという風におっしゃった訳ですから、事実関係をもう一度確認されるということはお考えにならないのですか。

(事務次官)これは大臣が、当時の河野大臣がお聞きになった訳ですから、これは重い行為であって、その後また言葉が変わったからまた、あれはどうでしたか、と聞くのは如何かという風に思います。

(問)問題はその事実がどうであったか、というのが問題で大事なところだと思うのですね。今回、今のお話にありましたように元局長が河野大臣に、「ない」、と言った証言が外務省の根拠になっているとすれば、今回新たに、ある、という話をされていてそれには勿論歴史的背景もいろいろあるのだと思うのですが、改めて調査されるというのがひとつ真実を明らかにするという点で大事なのではないかと思うのですが。

(事務次官)元々密約はなかった、ということで外務省は一貫してそういう立場をとってきている訳で、「なかった」、ということについては勿論根拠があるからそう言っている訳です。当時の事情は私はつまびらかにしませんけれども、当時の交渉当事者であった吉野元局長にその点を確かめたらどうだ、という話も別途あったのでその点も念のため確かめたところ、「なかった」、ということなので、今ご質問にありましたけれども吉野元局長の発言だけを根拠に、密約はなかった、ということを言っている訳ではないのです。

(問)では外務省のほうに何か当時の密約はなかったことを証明するような文書なりが残っているということでしょうか。

(事務次官)密約がなかったということを証明する証拠というのはあり得ない訳です。密約があったという証拠はあり得ると思いますけれども、そういうものは何もないと、こういうことですから密約はなかったとこういうことであります。

(問)大臣が一度聞かれたことを重いとしてましたけれども、その重さとはどれだけのものなのでしょうか。歴史的な事実はあるかどうか、と確認することに比べたら問題にならないということなのでしょうか。

(事務次官)事実は今申し上げたように、元アメリカ局長のおっしゃったことだけを根拠に、密約はなかった、ということを申し上げている訳ではないのです。これはずっと経緯のある話で、外務省は一貫して密約はなかったという立場をとっている訳です、したがって今繰り返しになりますけれども、吉野元局長に確認したことは、念のために確認したと、こういうことになります。それをまた繰り返す必要はないということです。

(問)吉野局長が新たに証言されたことはさほど重要なことではではないということですか。

(事務次官)重要かどうかは分かりませんけれども、その後また確認する必要はないと思っております。

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イラン核問題

(問)イランの外務大臣と麻生大臣が会談されると思うのですが、タイミング的に微妙な時期だと思うのですが今日の会談でどのような成果を期待されるのですか。

(事務次官)今ロシアとイランは一生懸命話し合いをしているという状況がある訳で、国際社会としてはこのままこの事柄が安保理事会のほうに向かっていくのでは、或いはそういう方向で話をしたほうが良いのではないか、という一種緊張感をもって見られている訳ですから、ロシアとイランとの話し合いというのはそういう意味で非常に重要な意味をもっていると思います。この点についてどういう状況になっているのか、また、イランとしてどういう風に考えているのか、また我々の関心事項をきちんと伝えてですね、イランが国際社会の懸念にきちんと応えてもらえるように、ということから話し合いはされるのではないかと思っております。

(問)ロシアでウラン濃縮をするというロシア案については、前向きな提案だという意見と、ロシアを利するだけだという、いろいろな見方がありますけれども、日本政府としてはロシア案を受け入れるべきだという立場で交渉に臨まれるのでしょうか。

(事務次官)ロシア案というのはイランの外で、具体的にはロシアの中だと思いますけれども、ウラン濃縮活動をやるという話であって、それには条件があってイラン国内ではそういうウラン濃縮関連の活動は一切やらないということが前提になります。その前提の部分がないのであれば、いくらロシアとイランで話し合いがされても、それは直ちに支持するということではない訳です。

(問)イラン側がロシア案に何らかの合意をしたということはまだ入ってないという理解でいいのでしょうか。

(事務次官)イラン側が記者会見で正確ではありませんが、実質的に合意した、或いは基本的な合意ができた、というようなことを言っているようですけれども、ロシア側ではそういう合意ができたということは少なくとも言っていないように思います。協議を継続するのだと。協議継続という点では両者ともに同じでありますけれど。したがって、その合意が基本的なところでできたかどうか、これはまだ我々として確認しておりません。

(問)外相会談でも質すと。

(事務次官)質すというか、どういうことですかということを聞くのだと思います。

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米軍再編問題

(問)米軍再編に絡んでなんですけれども、グァムへの移転人数を従来より上積みするというような話もありますが、これについては外務省にそういう連絡なり情報なりが入っているでしょうか。

(事務次官)そういった数字が実際に案として話し合われているということは聞いておりますが、これはまだ、そういった案も含めて検討中であるという風に理解しております。

(問)非常に漠然とした聞き方で恐縮ですが、今回の交渉、普天間基地の移転先の問題と時も含めて防衛庁主導というような見方もありますけれども、これについて外務省として今回の役割についてどう考えますか。

(事務次官)報道ではいろいろ防衛庁主導と報道されていますけれども、防衛庁とは十分に話をしながら、また官邸とも連絡を取りながら今まで話をしてきていると理解しています。

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事務次官会見記録 (平成18年2月20日(月曜日)17時02分~ 於:本省会見室)

政府系金融の見直し

(問)政府系金融の見直しについてなのですが、JICAを共管しようという動きが出てきているみたいですが、外務省としては外交とは切り離さないというボトムラインがある中で、この「共管」というのは、外務省にとって受け入れられる案なのでしょうか。

(事務次官)この「共管」というのがどういう意味なのか、ひとつはその辺りの問題もあると思います。今やっていることは、円借款の分も含めてODAが外交政策の一環として戦略的に有効に活用されるということが大事な点で、その点については、今、検討会も含めて議論がされていて、今ご指摘のように、JICAの機能について、どういう風にすればいいかというところが問題になっているわけです。我々としては、従来、円借款の部分はもともとJBICの中で行われていたわけであって、しかもその機能自体は充分評価されているところだと思うので、そういったものを維持しつつ新しくその円借款の部分はJICAに移ったときに、どういう風にやっていくのかというところを議論しているわけです。JICAの無償とか技術協力の部分もあるわけで、そこを今共管にしようとかという考え方があるという風には承知していないところです。

(問)すると共管しても、外交、要するに外務省が関わっている部分ですね、これは、基本的に維持できると、そういう風なお考えですか。

(事務次官)ですからそこは、どういう風にすればいいのかという、新しくJICAに円借款が付け加わって、それがどういう意思決定で、どういう風に実施機関として機能していくかというところは、特に財務省、経産省にも関係ありますが、外務省も含めて、今、検討をしているというところです。その場合に「共管」というのはそもそもどういう意味であって、というような意味で議論しているわけではないのです。どうすれば一番有効に実施できるかという観点、それから今までもJBICの中で円借款が実施されてきたやり方そのものについてご批判があるとは承知していませんので、それを基本的に維持しながら、どういう風に新しい組織の中で機能していくか、機能させていくかということを今、検討しているところです。

(問)いずれにしても外交と切り離すという結果ににならなければ、外務省としては受け入れると。

(事務次官)外務省としては、もともと、どういう風に実施するかという部分については柔軟に考えていますので、今申しましたように、ODAが外交政策の一環として活用できる形になるのであれば、それはそれでいいという考えです。

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シュタインマイヤー独外務大臣の訪日

(問)ドイツのシュタインマイヤー外務大臣等が来日されて、麻生大臣と会談されるわけですが、そこで当然、国連安保理改革の話が議題になると思うのですが、それについて、どういう期待をされているかお願いします。

(事務次官)私どもはもともとG4ということで努力してきたわけで、去年の秋にはそのG4の案が残念ながら総会における3分の2以上の票を取る見通しがないという観点から、それを投票にすることはしませんでした。その時の反省として、あるいは教訓として、やはり米国の支持を得るような案でなくてはいけないということから、その後も非公式に米国とは話を続けてきたわけで、G4の結束を維持しつつ米国も支持しうる案とは何なのかというところを、G4とも話し合っていかなくてはいけないと思っているわけです。ドイツは、あのG4案でいいじゃないかと、あれで勝負を賭けるべきだというお考えのようですが、残念ながら我々はそういう風には見ていないので、今言いましたような観点から、ドイツ側とも事務的にも話していきますし、大臣レベルでも、我々の今考えているそういった問題意識を伝えたいと思っているところです。大臣がどういう風にされるか、それは大臣のご判断ですが、事務的に言えばそういうことです。

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イランの核問題

(問)今、ロシアとイランの間で核問題についての協議が、確か今日から始まっているかと思うのですが、これから始まるのだと思うのですが、これについてどういう行方を、この協議によってどう想定されていらっしゃるか、お願いします。

(事務次官)ロシアとイランが話し合って、あれはイランの外で、ロシアの中でイランのために濃縮活動を行うということですが、そういったものが案として成立し、且つ国際社会に受け入れられるものなのかどうか、受け入れられるものになるのであれば、我々は勿論そういう考え方は良いと思いますが、いろいろと難しい問題もあると思いますので、そう簡単に話がトントンといくとは思いません。その後は、他方、再開した濃縮活動はどんどんイランの中で行われるということは好ましいことではないと思いますので、その両方を見ながら、我々としては対応を考えていかなくてはいけないと思っています。

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米軍再編問題

(問)米軍再編についてですが、現在、日米間でグアム移転の費用負担について議論が行われているとされていますが、来月には岩国で住民投票が行われますが、3月めど、当初目標とされた最終報告に向けて、住民投票がどういった影響を与えうるというお考えでしょうか。

(事務次官)住民投票のみならず、沖縄での地元の反応といいますか、お考え、それからまた米軍の中にも、米国サイドでもいろいろと議論があるようでして、そういったものはすべての要素として考慮に入れなくてはいけないことだと思うのです。そういったもの、他にも要素はあると思いますが、大雑把に言うとそういう要素が絡み合って、その中で日米両政府がどうしていくかという話なわけです。これが今、3月を目標に努力はしていますが、なかなか難しい問題がいろいろあるなというのが、現時点です。住民投票について今、その結果がこう出ればこうなるとかということを私の方から申し上げるのはあまり適当ではないかと思います。

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事務次官会見記録 (平成18年2月13日(月曜日)17時22分~ 於:本省会見室)

日中総合政策対話

(問)先週末、戴秉国中国外交部副部長と日中総合政策対話をされ、今後の対話の必要性という点では認識が一致したということですが、次官レベルの会談だけではなく、外相会談ましてや首脳会談まで繋げていくためにどういうやり取りがあったのか。あるいはどう進めていくべきだとお考えでしょうか。

(事務次官)前提を置かさせていただきますが、この日中総合政策対話というのは双方共に内容は一切外に言わないという前提で今までずっとしてきましたし、今回もそうであります。従って今の御質問に対しては総合政策対話でどういう話し合いがされたかというよりも、日中間でどのような認識を持っているかということにお答えする形で答えさせていただきたいと思います。我々としてはいろいろな問題が日中間でありますし、また日中両国の国際政治あるいはアジアにおける国力、地位などを踏まえますと日中両国が未来志向でいろいろと問題の解決を図らないといけないし、また共同でいろいろ取り組んでいくべき問題もあるという認識であります。そのためには次官レベルだけではなくて、上のハイレベルでも議論を更にしていく必要があるのではないかということを強く認識はしています。ただ中国は、御承知の問題があるが故に、トップレベルでの会談に応じることはできないということで、その問題さえ解決すれば明日にでもそれは実現するのだという考え方を今も持っているという状況であります。そういう状況の下でどうするのかという点ですが、そこはやはり未来志向ということで、一世代あるいは今世紀にわたって日中両国は大いに協力しなければならないわけですから、これは単に両国民に対する責任であるのみならず、アジアひいては世界に対する責任でもあるということを、私共の方からは申し上げて、ハイレベルでの対話を実現すべきであるということは、これからも強くアピールしていきたいと思っています。

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日朝包括並行協議

(問)日朝交渉が先週行われまして、結果は事実上、ゼロ回答だったのですが、今後の協議を続けていくということに一案がありました。この協議を振り返っての次官の評価と今後どのように協議を進めていくことが最も効果的とお考えでしょうか。

(事務次官)日朝対話も我々としてはもっと頻繁にやって、お互い原則的立場だけを述べ合うのではなく、更に議論をかみ合わせていく必要があるのではないかと思います。ただ率直に申し上げて、前回の会合は我々としては大変意欲的に臨んだつもりでありますが、総じて言えば北朝鮮側の態度は基本的立場にとどまるという印象はあります。ただそれであきらめてはいけないので、適宜なるべく早くまた対話をやって、この問題点の解決に向けていろいろ頑なな部分もありますので、そういう所もなんとか努力してやっていく必要があるのではないかと思っています。

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イラン核問題

(問)イランの核問題ですが、国連安保理で付託が決まった状況ですが、日本の場合、アザデガン油田の権益を持っている状況にあるのですが、こちらへの影響をどうご覧になりますか。

(事務次官)安保理に持っていくという方向性としては皆そういう気持ちを持って決議を採択していますけれども、まだ具体的な対応について決まった話ではないと思います。いずれにしてもこのイランの問題については、我々としてはある程度北朝鮮との核の問題とも似たところがあるわけですけれども、「対話と圧力」という両面がやはりあるのではないかという感じは致します。イランの核の問題については、今まさにEU3始め各国が議論を更に呼びかけてこのイランの態度の変更を迫っているわけですから、今更に先へ進んで、やがて制裁になる、アザデガン油田がどうなるということを言う前に、イランの説得に努めるというプロセスが今続けられているし、またそれを一生懸命やるということだろうと思います。

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沖縄返還協定

(問)沖縄返還協定に関連して、最近、元アメリカ局長の吉野氏が複数のメディアで、あの時米国に支払った3億2000万ドルの中に、土地の原状復帰費用の400万ドルが含まれていたという発言をされているのですが、これについて外務省として改めて説明をする用意はあるのでしょうか。

(事務次官)この問題はある意味で説明は既にされている話であって、別に新しい状況が生じているという認識は持っていないわけです。吉野元局長については、以前にも、確か河野外務大臣だったと思いますが、その点についてはそういった密約はないと確認したわけで、今回、私共は報道された内容しか承知しませんが、もし報道の内容が事実だとすれば、どうしてそういうような事になっているのかという気持ちはありますけれども、私共の立場そのものは、従来からの通りであって変わっていないということであります。

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