(問)イランの大統領選でアフマディネジャード氏が当選しましたが、一般的に強硬派と言われていて、特に核問題の解決・交渉への影響があるのではないかと言われていますが、どのようにご覧になっていますか。
(事務次官)世評、あまり本命と言われた方ではないので、必ずしもどういう考えの人物なのか、特に核の問題について、詳しくは承知していませんが、一般にイランでは保守派の勢力が非常に強いということですから、そういった勢力を代表した方ではないかと思っています。いろいろ分裂した形であるよりは、この新しい大統領が核問題について、我々はEU3(英仏独)の動きを支持しているわけですが、そういうEU3の努力と何らかの形で話し合いがつくのであれば、かえって政策を実施するという面では強い立場にあるのではないかというメリットも考えられないわけではないと思います。従って、我々としては、いずれにしてもウラン濃縮関連・再処理活動の完全な停止も含めて、イランが国際社会、特にIAEAにおける議論に何とか適切に対応していただきたいと思います。そのためにも新大統領が大きな役割を果たされることを期待しているということは現時点では言えるのだろうと思います。
(問)米国などは大分選挙自体に反発しているようですが、日本として対イラン外交がこれで変わるということはないわけですね。
(事務次官)日本の姿勢そのものは従来から取ってきている政策ですから、新しい大統領が選ばれて、その大統領に我々の立場が十分理解されて、何らかの形でそれが活かされることになればいいという期待を表明することが今は大切ではないかと思います。
(問)中国で旧日本軍の化学兵器で負傷する人が出ましたが、この問題で日中関係に影響があるのかどうか。また今後どのように対処されていくのでしょうか。
(事務次官)先週、日中総合政策対話を行い、総合政策対話の中身そのものは非公表ということですが、実は冒頭でこの問題を私の方から取り上げ、こういう事件が起きたことは非常に遺憾であるということを表明すると同時に、専門家の派遣を含めて我々としては誠意を持って適切に対応したいと思っているということは述べました。中国側はそういう点について、日本側がそのような態度を示すこと自体は、評価するとは言いませんでしたが、そういう感じで受けとめていたと思います。
(問)ハルバ嶺の施設はなかなか進まないようですが、何故進まないのですか。
(事務次官)相当の大事業ですから、いろいろな機材の持ち運びも含めて現地の方々の協力も得なくてはならないということもあります。また、危険性に十分対応しながらしていかなくてはならないという技術的な問題もあります。そういう安全性の技術的な側面、それから実際に人や物が動くわけですから、その上での手続き的な面、そういったものの十分なすり合わせが必要なのですが、そこに手間取っているというか、時間を要しているということなのだろうと思います。この問題は戦争中の負の遺産を処理するという話ですから、日本としては誠意を持って、且つ迅速にこの問題を解決していきたいと思っていますので、何とかその作業を急ぐようにということを中国側にも申し入れて協力を求めているところです。
(問)明日でイラクの主権委譲から1年になるのですが、日本のこれまでのイラクに対する支援、それから自衛隊の活動、それから今後の日本としての対応の仕方についてどのようにお考えなのか、簡単で結構ですからお願いします。
(事務次官)もともと、自衛隊による人道復興支援、そしてODA、これを車の両輪としてイラクの復興再建に全力を挙げて支援をしていくということでずっとやってきたわけです。そしてまた、イラクにおける政治プロセスを側面的に支援する、現時点で言いますと、憲法草案を作っている段階であると理解していますが、先般セミナーも日本で行いましたが、そういった側面も含め、政治的プロセスを支援するということをやってきました。これは全体としてみれば、少なくとも日本がやってきたことについては、地元の方では高い評価を得ていると思いますし、また、今後もそういった支援を続けてほしいという気持ちが非常に強く示されていると思います。ごく最近、ここにきて陸自の車両に被害が生じましたが、こういった事件を受けて、サマーワの方では知事、評議会の議長も一緒になって来られて、お見舞いと同時に自衛隊にこれからも頑張って欲しい、ああいうことをする勢力というのは本当に限られていることなので、大多数の人々は歓迎している、ということを言われています。全体として、今申し上げたようないろいろな努力というものは評価もされ、また、我々としても実際に携わってこられた人たちに本当に一生懸命やって頂いていると思っています。
(問)その関連で自衛隊の派遣について、撤退するか延長するか、それはいつ頃、どういう基準で決定するのでしょうか。
(事務次官)このあたりはまだ時間もありますし、現地情勢なども踏まえ、この現地情勢の中には治安情勢その他もありますが、そして何よりも現地の声、そういったものを踏まえて総合的に判断するということであり、今その判断をしなくてはいけないということではないと思っています。
(問)その辺は米国側ともう協議は始めているのでしょうか。
(事務次官)いえ、米国を含めて関係国、現在28ヵ国が現実に軍隊を派遣していると承知していますが、こういった国々との連絡はやってきていますし、またそういった国々からは、日本がサマーワできちっとした復興支援活動をしていることについては評価もされ、また、謝意も表明されているというのが現状です。だから、そういったことも踏まえながら、これから考えていくという風に思っています。
(問)先ほど、現地の声として、これからも自衛隊に頑張ってほしいという言葉があったということですが、これは「これからも」というのは来年以降もという意味も含めたものなのでしょうか。
(事務次官)「これからも」ですから、どの程度含んでいるのかはその人によって違うだろうと思いますが。
(問)今日、ムサンナー県に対する草の根無償支援が発表されましたが、当初、イラクへの支援として決めた50億ドルの有償・無償の枠は使い切って、その他ということになるのですか。
(事務次官)そこの部分はどういう位置づけなのか承知しませんが、50億は15億が無償で35億が円借款ということで、15億についてはほぼ使い切ったということだと思います。35億ドル分の円借款については、これからまさに今いろいろと手続きを進めているという状況であろうと思います。草の根無償の部分は、その15億の中なのか、正確な位置づけは経済協力局に確認して頂いた方がよいと思います。
(問)確認したところ、それは別ということなのですが、つまり50億ドル以外に今後もそういう経済協力、支援というのを続けていくおつもりですか。
(事務次官)それ以外の草の根無償の少額の支援というのは、これはその目的に応じてあり得ることだと思います。今申し上げた50億ドルの枠以外のものは一切認めないとかそういうことではないのだろうと思います。
(事務次官)先般、5月13日から15日まで第一回日中総合政策対話がありましたが、その際に6月中に次回の対話を行うということで意見の一致を見ました。これを受けて、今週23日及び24日に東京において第二回日中総合政策対話を実施する予定です。この対話は私と戴秉国・中国外交部副部長との間で、中長期的観点に立ちまして日中二国間関係、地域・国際情勢等について対外非公表ベースで忌憚のない意見交換を行うものです。以上です。
(問)これはどの位の時間を取っているのですか。
(事務次官)予定では10時間以上ですが、やり方次第ではもっと延びるかもしれません。
(問)中身的には第一回とどのような違いがあるのでしょうか。
(事務次官)特に違いはありません。前回もほとんどの問題について対話しましたので、今回は言い足りなかった部分やもっと詳しく説明する必要があるものについて更に対話を行おうということです。最も、頻繁にやっていこうということですから、これがあると暫くないとか、そういうことではないと思います。
(問)北朝鮮は六者協議に7月復帰するということを金正日総書記が言っていますが、その政策対話の中でも中国に対して働きかけを要請することもあるのでしょうか。
(事務次官)北朝鮮の問題は当然話題になると思いますし、その流れの中で議長国的役割をしている中国への期待というのは当然表明することになると思います。
(問)北朝鮮の金正日総書記は7月中の再開もという話をしましたが、7月再開の可能性がぐっと高まったと考えていいのでしょうか。
(事務次官)今までそういう具体的なタイミングというのは言ってなくて、北朝鮮側は「自分達は一度も拒否したり参加しないと言ったことはない」ぐらいがせいぜいな発言だったと思いますから、そういう意味ではより具体性が高まってきたと思っています。
(問)再開に向けて残されたハードルは何ですか。
(事務次官)北朝鮮側の事情と言いますか、それについての判断というのは大きいと思います。特に、米国から、自分たちの立場といいますかステイタスというか、そういうものが尊重されなくてはいけないという事を言っている様ですから、その辺りの判断というのは一つあるのだろうと思います。
(問)日韓首脳会談が行われますが、六者協議への北朝鮮の復帰について、韓国に対して果たして欲しい役割というものはありますか。
(事務次官)首脳会談でどういうやり取りがあったのかはまだ聞いていませんが、韓国は南北間の交流、対話、いろいろとスケジュールも組んでいるようですから、そういった流れの中で六者協議への北朝鮮の復帰というのは当然働きかけていただきたいと希望しています。
(問)22日に国連改革のG4の外相会合が行われるということですが、これは提出に向けての最終段階の協議になるのか、それとももう少し米国側の提案などもよく話し合ってみるのか、どういう位置づけですか。
(事務次官)もともとG4は今月中に枠組み決議案というものを出すという考え方で来たわけですが、そういったプロセスの中で今まで構想を明らかにしてこなかった米国が御承知のような案を出してきたという状況の下でどうするのかということです。特に米国は6月中に決議案を出してくることには慎重にして欲しいというか、ネガティブに考えているわけですから、その辺りを踏まえて全体としてどうするのかということは話し合うのだろうと思います。そういう意味では大詰めなのだと思います。それでG4が全体的にどういう大局的な判断を下すか、あるいはそういうところでどのような考え方になるかは、ちょっと会ってみないとわからない部分はあるのだろうと思います。
(問)米韓首脳会談が行われましたが、米韓の関係強化と六者協議の再開に向けた、韓国の役割をどのようにご覧になっていますか。
(事務次官)北朝鮮の問題については、これからも外交努力を強化し、平和的な解決をめざしていかなくてはいけない、そして、北朝鮮の核計画は認められないという共通の認識が再び確認されたということだと思います。外交努力という点から言うと、勿論中国も非常に大事な役割を果たしておりますが、これからも大いにやっていただきたいということです。韓国は、これから南北間のいろいろな意味での対話という言いますか、そういう場もいくつか予定されているようですから、是非韓国には今言ったような目的に向かって更に努力していただきたいと思っています。またそういうことが話し合われたのではないかと理解しています。
(問)首脳会談では、日韓関係について話題になったということですが、それについてお聞きになっていますか。
(事務次官)日韓関係についても相当時間を費やして意見交換が行われたと聞いています。具体的な内容もある程度は聞いていますが、韓国側がブリーフしたと承知していますので、それ以上の事を述べるのは控えさせていただきます。
(問)日韓の首脳会談が6月中にということで合意していると思うのですが、まだ日程は定まらないのでしょうか。
(事務次官)日程については現在鋭意調整中ということで、公表する段階ではないということです。
(問)確実に行われるというお考えでしょうか。
(事務次官)その方向で努力している、調整しているということです。
(問)日程はまだ発表されていませんが、どういう会談に今後していきたいとお考えですか。
(事務次官)今年に入ってから、日韓関係はいろいろと波風もあり、現在、関係が非常に良い状態であるということは言えない状況の中、隣国同士として、しかも韓国も国際的地位を高めているそういう状況ですから、この日韓両国がこの東アジアにおいて安定した関係を作っていき、未来志向で協力関係を作っていくということが非常に重要だと思います。その整理と言いますか、地盤を固めるということが当面の最大の課題ではないかと思います。
(問)他方、北朝鮮の核問題への連係プレーも焦点になっていますが、この点に関してはどういう話し合いを行うべきだと思いますか。
(事務次官)今、北朝鮮の核問題について述べましたが、平和的にこの問題をなんとか解決するということで、特に韓国はいろいろと接点を持っているので、是非韓国側で更に一段の努力をされて、この六者協議に北朝鮮が戻ってくるように努力して頂くということが、話し合いのテーマの当然重要な要素になってくると思っています。この首脳会談はいずれにしても非公式で、もともと首脳同士がざっくばらんに意見交換をしようということですから、当然、小泉総理あるいは盧武鉉大統領の創意で、活発な意見交換がされると理解しています。
(問)米韓首脳会談では北朝鮮が核を放棄すれば、エネルギーや体制の保証は可能だという認識で一致したそうですが、日本政府は前回の六者協議で核を凍結すればエネルギー支援に加わると表明していますが、この辺に方針の変わりはありませんか。
(事務次官)勿論、方針自体は従来から何ら変更はないわけですから、日本は特に平壌の共同宣言以降、日本の基本的な立場というのは維持しつつ、北朝鮮がなるべく早く六者協議に戻り、従来の国際約束も守るという形で、早く問題点の解消のための国際的な努力に加わって欲しいと言ってきているわけです。
(問)国連改革でライス国務長官が他のP5(常任理事国)に対して、決議案の提出を首脳会合以降に延期と言っているようですが、米国に対する対策と言いますか、どのようにこれから対処していくのでしょうか。
(事務次官)御承知のようにG4による修正案もでき、それを今各国に説明している段階です。その過程で、米国側としてはそれを今意見を求められれば直ちに賛成というわけにはいかないという事情があるのでしょうから、従って論理的には少し待って欲しいということになるのだろうと思います。我々としてはP5 (常任理事国)を含めて、いろいろな国々の意見も聞きながらG4の立場を推進することであり、且つ米国は国際社会の中、あるいは国連の中でも極めて重要な役割と機能を果たしているわけですから、その米国と少しでも立場と言いますか、アプローチが同じようなものになっていくように、更に米国との協議は続けていく必要があると思っています。
(問)提出をミレニアム・サミット以降にするという選択肢はあり得るのでしょうか。
(事務次官)これから努力して行かなくてはいけないということです。元々我々としては枠組み決議を6月中にも提出したいと思っていましたが、それについては、いろいろと難しい状況も出来つつあるという印象はあります。しかし我々としてはその目標を維持しつつ、どういう適切な判断をするタイミングが出てくるか、今この時点では申し上げられないということだと思います。
(問)米国はG4の説得によって賛成するという可能性はあるのでしょうか。
(事務次官)勿論、我々は可能性がないと思ってG4案を固めた訳ではないわけですが、米国は直ちにはこの案には乗れないということだと思いますので、それであれば、どうすれば米国側とこのアプローチを共有することができるのか、それを正に話し合っていこうということだと思います。
(問)外相が明日から東南アジアを訪問されますが、この訪問の意義、狙いをお願いします。
(事務次官)いろいろ経緯があり、訪問することになりましたが、もともと日本にとっては非常に重要な国です。今度、訪問される国は、特に国連改革の問題、安保理改革もあれば開発の問題もありますので、いずれも重要な役割を果たす国であり、外務大臣レベルでこの重要な時期に話し合いたいということで設定されたものと理解しています。
(問)安保理改革がとりわけ中心になる議題かと思うのですが、こういった地域は比較的日本に理解がある地域なわけですが、そこをわざわざ選ばれてそこへ行かれる理由は。
(事務次官)ASEAN諸国でも、いろいろと安保理改革の問題については国内的に検討されているのだろうと思います。それと同時に、G4案も更に修正の可能性も出てきますし、ある意味で流動的になっている部分もありますので、日本の立場というものを、特に近隣国であるASEAN諸国と話し合うには非常に重要なタイミングだと思います。そういう流動的な情勢も踏まえながら、支持の取り付けに努力するということであろうと思います。
(問)一時、ナイジェリア訪問を検討されていたようですが、それをキャンセルされてこちらに来られた理由というのは。
(事務次官)そこはどちらかというと、こちらがキャンセルしたのではなく、先方の事情で、10ヵ国委員会でG4諸国の外務大臣にも声を掛けるという考えであったと思うのですが、その考え方は今回は取らないということになりましたので、その点では、行くべき理由がこのナイジェリアとの関係ではなくなったということであろうと思います。
(問)決議案の修正の問題ですが、これは時期的にはいつ頃までにとお考えですか。
(事務次官)これについては、様子を見ながらという面もありますし、また、特に拒否権の問題が焦点になっていると思うのですが、この点についてはG4の間でもそれぞれ立場、あるいは考えかたが違いますので、この調整がつき次第ということになると思います。その拒否権の問題について、それを緩やかな方向で修正するにしても、いろいろな考え方、アプローチがあり得ると思うので、そこがまとまらない限りは修正ということにはならないだろうと思います。
(問)一方、6月中に提出を目指したいということを表明されているわけですから、それを含めると6月中に調整を済ませてということだと思っていますが、それは必ずしもそうではないのですか。
(事務次官)調整が済まないと出せないでしょう。そういうこともありますので、我々としては、時間的にも、いろいろと議論の盛り上がりもあるわけですから、そういうモメンタムを失わないように考えていかなくてはならないと思っています。
(問)北朝鮮の核問題ですが、先週日米韓の首席代表がワシントンに集まって会合があり、週末シンガポールの防衛首脳会談で六者協議の再開について議論しており、現状で外務省として、北朝鮮が協議に出てくるのかどうか、六者協議の再開の目処をどのようにとらえていますか。
(事務次官)まず、目処が立っているかというと、まだ、いつまでにとか、いつ頃にという形での目処はまだ立っていません。他方、我々としては1年がかりで早くやろうと六者協議再開を呼びかけてきたわけですから、希望としては前から思っていますし、特にこの6月で1年ですから、そういう意味ではその希望は更に強くなっていると思います。北朝鮮も若干の六者協議に対する前向きな姿勢というか、参加しようという意味での前向きな姿勢の表明かなと思われることもありますので、我々としては希望を持ちつつ、更に六者協議への参加を働きかけていくということだと思います。
(問)次官が仰った前向きな姿勢と思われることとは、声明とかそういうものを指しているのですか。
(事務次官)例えば、ブッシュ大統領が「ミスター金正日」と言ったことについては、「留意する」ということがありましたが、それ以前はもっとひどい言葉を使っていたと思いますが、そういったことも例えば一つの例ではないかと思います。
(問)六者協議への参加について呼びかけていくというのは、何か北朝鮮に直接呼びかけるパイプが現在あるということですか。
(事務次官)パイプがないわけではありませんし、日本側が強く六者協議を再開すべきであると思っていることは、北朝鮮側がそれを素直に受け取るかどうかは別として、メッセージとしては十分届いていると理解しています。
(問)自民党の野田毅元自治大臣が中国に行かれた先週末、先日の呉儀副首相の総理との会談のキャンセル問題について、土壇場でキャンセルしたわけではない、外交当局間では前から分かっていたことだという見解を示しているのですが、この指摘についての見解をお願いします。
(事務次官)前からそれを聞いていたかどうかということについては、少なくとも私は聞いていませんでしたが、いずれにせよ、この問題についてはこれ以上コメントすることは生産的ではないということを官房長官もはっきりと述べておられ、その後発言もされていませんので、そういう意味で控えさせて頂きたいと思います。