記者会見

報道官会見記録(要旨)(平成21年5月)


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報道官会見記録(平成21年5月27日(水曜日)17時00分~ 於:本省会見室)

第9回ASEM外相会合の結果について

(報道官)今月25日及び26日、ハノイでアジア欧州会合、ASEM第9回外相会合が開催されました。初日は中曽根大臣、26日は橋本副大臣が出席をしました。この会合にはアジア側より16か国、アセアン事務局、欧州側からはEUの27か国及び欧州委員会の外相等が出席をされました。2日間の議論を踏まえて議長声明が発出されております。25日に北朝鮮が行った核実験を受けて議長声明の発出に先立って、別途北朝鮮への核実験に関する声明が発出されたのは、ご案内の通りです。日本政府としての評価としては、まず第1点目として、会合の初日の朝に発生した北朝鮮の核実験を受けて、中曽根大臣の主導によって北朝鮮の核実験に関する声明が発出され、アジア・欧州の外相が一致して強いメッセージを発出できたと思っております。2点目として、新型インフルエンザが現在世界各国に拡がっている中、日本政府が資金拠出を行った、ASEM新型インフルエンザ対策事業の開始式に中曽根外務大臣が出席をし、国際協調の重要性を訴えると共に、我が国の協力をタイムリーな形でアピール出来たことが、アセアン諸国を含め、各国から高い評価を受けたと考えております。3点目は、アジアと欧州という、ユーラシア大陸を包括する43か国の機関が一堂に会する中で、議題は多岐に亘った訳ですが、経済金融危機、気候変動といったグローバルな課題、国際情勢、地域情勢について活発、且つ有意義な意見交換が行われたということ、そしてまた、日本政府にとりましても、多くの参加国の外相等と二国間会談を行うことが出来た、そのように考えております。

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特別展示「日英交流事始(ことはじめ)―幕末から明治へ―」について

(報道官)日英外交関係についての行事でございますが、日英外交関係の出発は1858年に調印された、日英修好通商条約でございます。昨年、日英関係は150周年を迎えた訳でございますが、その英外交関係の始まりを回顧する事を目的に、特別展示、「日英向交流事始(ことはじめ)幕末から明治へ」というものを、外交資料館飯倉別館展示室で、6月2日から9月30日まで行うことにしました。このような機会でもなければ、飯倉別館にいらっしゃることもないかと思われますので、時間があれば1度、足を運んでいただければと思います。

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北朝鮮の核実験

(問)北朝鮮の核実験を受けて国連、安保理で議論が始まったようですが、日本政府の姿勢として新しい制裁を行うかどうかその点改めて如何でしょうか。

(報道官)まず昨日の動きとして安保理理事国全体会合は開催されていませんが、関係各国間での非公式な会合日米を含めてP5を中心とした会合が行われました。そうした非公式会合を通じて決議の採択を目指している要素について様々な議論が行われました。日本政府の方針としては、引き続き関係国と緊密に連携して強い決議の採択を目指したいと考えています。強い決議を目指して日本として積極的に参画していくということです。新たな決議案の内容ですが、今の時点で余り踏み込むことは差し控えますが、基本的には北朝鮮の今回の核実験が決議1718に明白に反するということ、核・不拡散体制に対する重大な挑戦であるということは、おそらく一致した理事国の認識があると我々は思っています。何れにしても強い安保理決議を迅速に採択して、国際社会の使命を果たすということです。回りくどい言い方をしていますが、そこで大事なことは安保理決議1718号は、明確に北朝鮮に対する措置を定めている訳ですが、その決議や今回の議長声明で述べられている内容を繰り返すだけではなく、追加的メッセージを発出したいと考えています。現時点で申し上げられることは以上です。

(問)強い決議という意味合いは、繰り返しではない、追加的なメッセージが入るということでしょうか。

(報道官)そのとおりです。

(問)追加的メッセージは、まだ新たな制裁とまではいかないのでしょうか。

(報道官)そのご質問については私がこの会見の場でコメントするのは差し控えたいと思います。

(問)核実験の事実関係なんですが、色々な国によってマグニチュードの数値が違っていたりとか、成功だったのか失敗だったのか色々な見方が出ているかと思いますけれど、政府として、あれは確かに核実験だったのかとか規模はどうだったのかとか、その事実認定について現時点でどう把握していらっしゃいますか。

(報道官)事実認定といいますか、今回総理が声明を出された時に言われたことに尽きているのだと思います。それに加えて具体的に詳細な核実験の態様、これについては今政府の中で色々な形で情報収集をして、判断をするということになると思います。ただ基本的な政府の立場は、総理の言われたことに尽きていると思っています。

(問)韓国がPSIへの参加を表明して、北朝鮮がそれを受けて、宣戦布告と受け取る旨表明したということなのですが、これに対してはどう受け止めていらっしゃいますか。

(報道官)我々としては北朝鮮の声明にいちいちコメントをすることはしないという方針です。そう申し上げた上で、日本政府としては、北朝鮮が地域のあるいは国際社会全体にも波及し得る緊張を高めるような言動は控えるべきであると、そのように思っています。

(問)北朝鮮に対する日本独自の制裁措置なのですが、一部報道でOECDが定める金融取引の基準を強化するという報道があったのですが、事実関係は検討されていらっしゃいますか。 

(報道官)北朝鮮に対する対北措置のあり方については不断に検討しているというのがこれまでの日本政府の立場です。それが前提としてあって、今回核実験が行われたことを受けて今後どういう措置をするかということは、当然政府全体で判断することになります。しかし、まずは、総理がはっきりお答えになったと承知していますが、国連安保理においてしっかりと対応していくというのが今の基本的な方針であると思います。

(問)北朝鮮の核実験の情報について、日本政府に事前の通報があったかどうかということについて、昨日の大臣のぶら下がり会見の質問と答えがかみ合っていないということで、その後の対応が遅れたが故に非常に誤った印象を受け、今日の党首討論でも取り上げられましたが、日本が混乱しているようなイメージが広がってかなりの時間放置されたということについて、どのように感じられていますでしょうか。対応がまずかったのではないでしょうか。

(報道官)そういうご批判に対して、ご批判は謙虚に受け止めたいと思っています。同時に大臣のコメントは既にお伝えしたとおりですが、我々が公の会見の場で、申し上げることができるのは、昨日の繰り返しになりますが、日米間では緊密に連絡を取り合っており、その具体的内容については、米国との関係もあり、コメントは差し控えさせて頂きたいということです。

(問)例えば総理のぶら下がり会見などでは、言い間違いがあったりした場合には、その後記者クラブに対して、先程の会見は単語の言い間違えだったなど、そういった訂正連絡があるのですが、昨日の大臣のぶら下がりは夜になって、そのままホームページに掲載されるなどしたようですが、外務省としては、一端出た大臣の発言を訂正したくないということでしょうか。

(報道官)昨日起こったことに対しての批判は、謙虚に受け止めたいと思います。決して意図があって、こういうことになったということではありませんので、ぜひ誤解のないようにお願いします。大臣が昨日追加的にコメントされたとおりです。その時間が少し掛かってしまったことは、私としては反省しているつもりでございます。

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報道官会見記録(平成21年5月26日(火曜日)17時05分~ 於:本省会見室)

北朝鮮の核実験

(報道官)北朝鮮の関係で冒頭私から二点申し上げます。
 第一は、中曽根外務大臣は昨25日ハノイで、ASEMの外相会談の参加国の外相他に対して、この核実験に関する日本の立場を説明し、今回の北朝鮮の行動に対し強いメッセージを出すべく働きかけを行いました。その結果、本日日本時間の午後1時過ぎですが、第9回ASEMの外相会合の声明が独立に発出されております。そのポイントを簡単に申し上げますと、第一に、閣僚は六者会合の合意と関連の安保理決議及び決定に対する明白な違反を構成する今回の北朝鮮の地下核実験を非難する、二点目として、閣僚は北朝鮮が更なる核実験を行わず、また安保理決議及び決定を遵守するよう強く要請する、三点目として、閣僚は六者会合に対する支持を再確認し、北朝鮮に対し直ちに六者会合に復帰するよう求める、第四点目として、閣僚はまた、人道上の懸念に対処することの重要性を強調する。当然ですが、この点は正に日本政府にとって重要な拉致問題を念頭に置いた表現であることは間違いありません。以上のような結果が今回出た訳ですが、ASEMの外相会合においてアジア側は16カ国、欧州側はEU加盟国と同じですが27カ国の参加国の外相及び外相の代理が一致して北朝鮮を非難し、安保理決議の遵守、六者会合復帰、更に人道上の懸念への対処を求めるというメッセージを発出できたということは、我々として高く評価しています。このような声明を発出することが出来たのは、独立した文書で強いメッセージを発出するべきであるという主張を、中曽根大臣から各国の外相に対して表明した結果であると考えています。 もう一点目は、安保理の動きの関係ですが、国連では25日、安保理の非公式協議が行われ、その結果として北朝鮮の核実験に対する強い反対と非難を表明し、北朝鮮に関連する安保理決議に完全に従うよう要求し、また安保理決議につき、直ちに作業に開始することを決定した旨の発言が安保理議長から行われました。今後の予定ですが、これから議論することになると思いますが、いずれにしても日本政府としては関係国と緊密に連携しつつ決議の採択を目指していきたいと考えております。

(問)報道によれば、米政府高官が米東部時間24日に核実験の前に北朝鮮側から核実験を行うという通報があって、米政府は直ちに日本、韓国、中国、ロシア政府に連絡したと発言しているのですが、こういった連絡が事前にあったということでしょうか。

(報道官)今、ご指摘の報道があったということは承知していますが、日米間で緊密に連絡を取り合っている訳です。具体的なやりとりについては米国との関係もあり、詳細についてコメントすることは差し控えたいと思います。念のために申し上げますが、大臣の今朝の会見での発言について確認しておきたいことは、北朝鮮側から日本に対して「そういった事前通報はなかった」、ということです。

(問)朝の大臣会見での質問は、「米国や中国から事前通報があったか」と聞いたのですが。大臣は勘違いされたのでしょうか。

(報道官)勘違いと言いますか、そういう趣旨だと私は承知していますが。

(問)「中国や米国からなかった」のだと聞いていますので、大臣はそういった勘違いはしていないと思いますが。

(報道官)大臣が申されたことについては、北朝鮮との関係については明確に「事前通報はなかった」ということです。

(問)「北朝鮮からあったのか」ということではなく、「中国、米国からはなかったのか」、と聞いたのですが、勘違いなのでしょうか。大臣の発言を訂正されるのでしょうか。非常に重要なことですが。

(報道官)至急確認します。
:後刻、大臣がぶら下がり会見に応じた際に、今朝の会見における「私の知る限りでは、我が国への連絡はなかった」という発言は、「北朝鮮からの連絡」を念頭に置いていたものであった旨の説明がなされました。)

(問)安保理で強い決議の採択を目指したいということですが、具体的には、当然、制裁決議ということになると思いますが、その点は如何でしょうか。

(報道官)今の時点で申し上げたいことは、国際社会にとって今回の核実験は、核不拡散体制に対する重大な挑戦であるということで、安保理決議の明確な違反でありますので、我々としては、強い決議が必要だと考えておりますし、大臣も本日の国会答弁等でも申し上げておりますけれども、毅然とした対応、国連における安保理での議論を積極的に主導的に役割を果たしていきたいと、このような姿勢で今臨んでいるということです。

(問)強いというのは、各国では受け取り方が違うのではないかと思いますが、中国、ロシアが考える強いと、日米韓の強いとは、主観の問題になって来るかもしれないのですが、もう少し日本政府としての「強い」というのは、具体的にどのようなことでしょうか。

(報道官)安保理の中でしっかりと議論していかなければなりませんので、現段階で日本として、より具体的に踏み込んでどうこうというのは、我々としては適当ではないのではないかと思います。重要なことは、国際社会が一致して、ワン・ヴォイスで対応すること。コンセンサスで決議を採択するということが極めて大事だと思います。また当然中身ということが問われる訳ですけれども、昨日総理の発出された声明の中にも日本政府の認識は明確に示されている訳でして、そのようなことを踏まえて、決議案が採択されるよう働きかけていく、そういうことだと思います。

(問)(国連決議)1718が強化されるのか、それとも全く新しい内容の制裁を考えているのでしょうか。

(報道官)今の時点では、1718と比較でどうかということは、私はコメントを差し控えたいと思います。

(問)それでは日本政府が何を具体的に求めているのか、全くメッセージが伝わらないのではないでしょうか。

(報道官)そのような受け止め方はして欲しくはない訳ですが、昨日の核実験、これに対して、先ほど冒頭で申し上げたようなこと、北朝鮮に対する非難の声を国際社会として一致して挙げるという努力を日本政府は率先してやってきている訳です。その上で且つ、これまでの決議の違反であるということも申し上げている訳です。この点についても、安保理理事国の基本的な共通の認識があるのだろうと思います。そういう共通認識を踏まえて北朝鮮に対して、北朝鮮の非核化ということに立ち戻らせなければならない訳です。そのために、どのような措置が必要なのかということを、よく五者でも協議をし、安保理の中で関係国と協議をし、一致を目指していくということだと思います。

(問)昨日に引き続き、北朝鮮は今日もミサイルを発射しているようですけれども、このミサイル発射については政府はどう認識しているのでしょうか。

(報道官)ミサイルの発射ということについては、一言で言えば、東アジアにおける地域の緊張を高める事態という要素があると思います。

(問)北朝鮮は軍事演習ではなく政治的な意図を持ったメッセージとして発射したという分析をされておられるのでしょうか。

(報道官)この北朝鮮の行動は理解し難いと思っておりますし、どのような真意で、何を考えてやっているのか、公の場で日本政府としてコメントするのは適切ではないと思っています。

(問)ミサイルの発射が緊張感を高めるということは、短距離であっても容認出来ないということでしょうか。

(報道官)そうですね。そういう行為は我々としては当然慎むべきだと受け取って頂いて構わないと思います。

(問)短距離ミサイルを2発撃ったという報道がある訳ですけれども、それは日本政府としては確認されているという前提で今、お話されているのでしょうか。

(報道官)その事実関係については、申し訳ありませんが確認させて下さい。

(問)北朝鮮が再度核実験をするかも知れないという指摘もあるのですけれども、その点については何か情報はありますでしょうか。

(報道官)色々な情報収集をしているのですけれども、インテリジェンスに関することについてはコメントを差し控えたいと思います。

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報道官会見記録(平成21年5月20日(水曜日)17時02分~ 於:本省会見室)

気候変動次期枠組交渉に関する交渉文書の発表

(報道官)日本時間本日午前気候変動に関する2013年以降の枠組に関する交渉文書が気候変動枠組条約作業部会議長より発表されました。この文書は本年末、12月ですけれどもCOP15、コペンハーゲンで採択される合意の内容について、気候変動枠組条約作業部会議長が自身の責任に於いて作成した交渉テキストという位置付けになっております。次回会合は6月になりますけれども、その場で交渉テキストについて議論が行われるということになっております。この文書には、先進国全体の削減目標、途上国が削減行動を登録する仕組みも含めて、次期枠組みの論点に関するオプションが記載されています。補足ですが、日本政府が4月に新議定書案を提出しておりますけれども、その中で提案をしてきた主要な要素としては、他の途上国やEUの主張、或いは米国の主張も色々な形で、オプションだとか或いは括弧付きで盛り込まれている訳ですが、共有のビジョン、いわゆる長期目標については、我が国の主張する2050年の半減、或いは10年から20年以内のピークアウトといった目標について選択肢の一つとして記載されております。もう一点先進国の約束ということですが、いわゆる国別総量目標の設定に関する指標についても、我が国の主張する緩和のポテンシャル、或いはその費用といった要素が考慮されるべきだという内容も含まれています。いずれにしましても、6月に開催される作業部会に於いては、我が国の基本的な考え方が交渉テキストに適切な形で盛り込まれるよう引き続き積極的に働きかけていくという所存であります。

(問)気候変動のことですけれども、日本が4月に出したもので逆に落ちたものというのは何でしょうか。

(報道官)そこまでの詳細は、関係の部署にお訊ね頂ければと思いますが今紹介をしたのは、我々として主たる重要なポイントだということで紹介したものでございます。

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次期駐日米国大使に関する報道

(問)米国の駐日大使についてルース氏という名前が報道されていますけれども、この人選についてどう思われますでしょうか。

(報道官)まだ正式に任命されたという訳ではありませんので、今の時点で公式にコメントするのは差し控えたいと思います。いずれにしてもオバマ新政権が発足して今は駐日大使が任命不在ということでございますが、適材適所の人材ということでオバマ大統領はその人選に努力してこられていると、そういう段階だと思っています。

(問)駐日大使の話ですが、今ルース氏であるかどうかという話がありましたが、日本政府としては北朝鮮の拉致問題など米政府に協力を得なければならない懸案があると思うのですが、次期駐日大使の人選が決まって、後の事としてどのような形で北朝鮮問題に取り組んでいくのでしょうか。

(報道官)今後米国に於ける任命手続きが進み、人選が完了した暁には当然新大使が着任される訳ですが、立派な方が着任をされると思っておりますし、米国に於いてしっかり着任をされる大使に対する説明が色々な形で行われるでしょうし、上院に於ける公聴会というプロセスを経て着任されるということになろうかと思います。我々としては、そうして着任される大使をお迎えして、しっかり日米同盟が基軸ですし、日米関係を更に前進させる為に東京におられる駐日大使と連携を密にして取り組んでいくということに尽きるのではないかと思っております。

(問)報道官ご自身はそのルース氏について、名前を知っているとか面識があるとかその点は如何でしょうか。

(報道官)全くありません。面識はありません。

(問)外務省内で関係を持っていらっしゃる方はおられますでしょうか。

(報道官)私自身、今それにお答えする材料を持っておりません。

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報道官会見記録(平成21年5月19日(火曜日)17時02分~ 於:本省会見室)

冒頭発言-スリランカ内戦の終結についての外務大臣談話発出

(報道官)スリランカ内戦の終結についての、外務大臣談話を発表します。我が国は、スリランカにおける政府軍と反政府武装組織「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」との戦闘が終結したことを歓迎します。また、我が国は、これまで25年以上に亘る内戦において失われた多数の尊い人命に対し哀悼の意を表します。我が国は、スリランカ政府が武器を置き降伏したLTTE要員に対し、法の手続きに則った適正な取り扱いを行うことを期待します。また、今後は多数の国内避難民への支援及び再定住に向けた取組、並びに国民和解のための政治プロセスの早期進展が重要であり、スリランカ政府が引き続きこれらの課題に取り組むことを期待します。我が国としても、スリランカ政府の国民和解に向けた取組を引き続き支援していく考えです。以上が外務大臣談話です。
 別途、官邸及び霞クラブでも貼り出しを出しておりますが、麻生総理は今朝ほど、ラージャパクサ・スリランカ大統領と電話会談を行っております。その内容は貼り出しのとおりですが、麻生総理からは今談話で申し上げたような趣旨を大統領に伝えたということです。それに対して先方からは、これまでの日本の支援に感謝するという話に加えまして、今重要な国内避難民の再定住を行う予定であると、またLTTE要員のリハビリテーションも開始していると、そして、政治的解決のための全政党との対話についても進めていきたいと述べられたということです。いずれにしても、一つの大きな節目を迎えた訳で、日本政府としては、これからが正念場と申しますか、国民和解のための政治プロセスの早期進展を支援していきたいと思っております。

(問)具体的に新たな支援として、検討していることはありますでしょうか。

(報道官)これまでの支援については、何度かこの場で、或いは大臣から申し上げたことがあると思いますけれども、国内避難民への人道的支援、これが喫近のニーズであるというこで、例えば日本政府としては、今月一日、最大400万ドルの緊急人道支援を決定して、実施に移しているところで、中身はテントや水の供給です。また、15日、追加支援として4700万円相当の物資協力を発表しております。併せて日本は明石政府代表を2002年10月以来、スリランカの平和構築及び復旧復興担当として任命して、日本としての貢献をしてきた訳です。現在、スリランカがこのような事態に立ち至ったということに対して、日本政府として、更にスリランカ国民融和、和解、政治プロセスの進展を引き続きサポートしていくことが非常に大事であると考えております。

(問)これまでの日本の明石代表等通じた仲介努力等が結果的に実らないような形で、行き着くところまで行って最終的にこういう結末を迎えて、その間非常に大きな犠牲も出ている訳ですけれども、日本政府の取り組みとして振り返られて課題とか教訓とか何かお感じになっていられるでしょうか。

(報道官)今この現時点での日本政府の見解というものは、大臣の談話に尽きていると思います。色々な見方が勿論あると思います。つまり今ご質問にあったように、この局面に於いては、最後のいわゆる軍事的なプロセスとして、武力によってLTTEが鎮圧されたということです。そういう事実があると思いますが、敢えて申し上げれば、このプロセスは、単にLTTEとの武力を伴った内戦ではなく、ラージャパクサ大統領自身がいみじくも言われている訳ですけれども、民族融和のための政治解決を進めると、正にこれからです。ご案内の通り多数派を占めるシンハラ族、仏教徒が中心ですが、それから少数民族としてのヒンズー教徒が中心となるタミル族、それだけではなくて更に重要な少数民族としての回教徒がいる訳です。ここで、スリランカが目指さなくてはならないこととしては、そうした多数民族と少数民族、全てがスリランカという国を本当の意味で政治的に融和、和解を勝ち取っていくということが、今正に課された最大の任務ではないかと思っています。そこに、日本だけで出来る話では毛頭ない訳ですが、これまで、日本としてこれまでスリランカとの長い友好協力関係というものがあった訳です。2002年の話ですが、日本にも是非協力して欲しいというスリランカ政府の依頼を受けて明石代表を筆頭に最大限努力して来たということではないかと思っております。

(問)鎮圧の過程でスリランカの一般市民の犠牲が出て、スリランカ政府の所業に対して欧米から批判もあがっていた訳ですけれども、人権NGOなどは、日本政府の対応は手ぬるいとの批判もしている訳ですけれども、今後どのようにスリランカ政府の人権侵害に何か追求していく考えはあるのでしょうか。

(報道官)今、人権侵害というようなご指摘があった訳ですけれども、先程も談話の中で触れたように、一つの重要な要素として大事なことは、武器を棄てて降伏をしたLTTEの要員に対して適正な取り扱いを行うことを期待すると、現に例えば人間の盾と言われて、市民がこのプロセスの中で人間の盾として留め置かれていた訳です。今やこの事態が終わった時に、一つの可能性としてスリランカ政府はスクリーニングが必要であると、国内の避難民であるという位置付けの下で、その中にLTTEの戦闘員が混じっているかも知れないというような訴えはある訳です。これまでも、スクリーニングは行われている訳ですが、そのようなプロセスの中で適正且つ、非人道的な扱いのないようにということは、日本もしっかり国際社会の一員として立場を明らかにしている訳ですし、これからも、スリランカ政府の国民の和解に向けた努力をサポートする中で、言うべきことを言っていくのは当然であろうと思います。

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報道官会見記録(平成21年5月13日(水曜日)17時02分~ 於:本省会見室)

在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定の締結の国会承認

(報道官)大臣談話を発表します。本日13日、在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定の締結について、国会の承認が得られました。本協定は在日米軍再編の中核となる事業に関するものであり、政府として、その成立につき努力して参りました。本協定は、抑止力を維持しつつ、地元沖縄の負担を軽減するために大きな意義を有しており、本協定の締結につき国会の承認が得られたことを大変喜ばしく思います。また、本協定は、日米両政府が在日米軍再編の着実な実施を通じ、日米安保体制を一層強化していくことへのコミットメントを明確に示すものにほかなりません。政府としては、今後とも、2006年5月の「再編の実施のための日米ロードマップ」に基づき、地元と誠意をもって協議しつつ、地元沖縄の負担の軽減に資する在沖縄海兵隊のグアム移転を含む在日米軍再編を着実に実施していく考えです。以上が大臣談話です。

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北方領土問題

(報道官)今般、ロシアの査証を所持する日本テレビ・モスクワ支局長が取材のため択捉島に5月9日から13日までの予定で滞在し、同記者の択捉島訪問に基づく報道が昨夜放映されました。政府としては、我が国固有の領土である北方四島のロシアによる不法占拠が続いている状況において、我が国国民があたかも北方領土においてロシア側の「管轄権」に服したかの如き誤解を与えかねない行為を行うこと、またあたかも北方四島に対するロシアの「管轄権」を前提としたかの如き行為を行うことは、北方領土問題に関する我が国の法的立場と相容れないものと考えており、平成元年9月19日付けの閣議了解及びこれに関連する一連の閣議了解により、国民各位に対し、北方領土問題の解決までの間、いわゆる四島交流、自由訪問または墓参の枠組み以外による北方領土への入域を行わないように要請をしております。従いまして、今般日本テレビの関係者がロシアの「出入国手続」に従った形で北方四島に入域したことは、我が国の法的立場及び領土問題の解決を願う国民の総意と相容れず、また、これらの閣議了解に反するものであり、極めて遺憾であると考えております。更に、先に述べた閣議了解を尊重して入域を自粛してきている他の国民の皆様方との関係でも問題であると考えます。特に、元島民の方々は、領土問題に関する我が国の法的立場を害さないよう、四島交流等の枠組み以外で四島を訪問することを自粛し、自由に故郷を訪問できない状況に耐え続けてきています。今回の日本テレビの行為は、このような元島民の方々の心情を無視するような行為であり、極めて遺憾です。実際、本日、北方四島の元島民から構成される千島歯舞諸島居住者連盟からも、今回の入域は、元島民の北方四島への思いや北方四島返還運動を踏みにじる行為であるとして、「日本テレビ」及び「札幌テレビ」に対し強く抗議をされたと承知しております。この他にも、北方領土問題の地元である北海道の関係者や国会関係者からも、本件は元島民の心情を踏みにじる行為であり、厳しく対応すべきとの声も頂いております。また、今般の択捉島での取材に基づく報道を行ったことは、北方領土問題に関する我が国の法的立場について無用の誤解を与えかねず、極めて遺憾であると考えます。昨晩は、外務省の報道課長から先方の外報部長に対して、また今朝、同様に報道課長から日本テレビの外報部長に電話で申し入れをし、それを受けて私も今朝、日本テレビの報道局長に対し、只今申し上げたような日本政府の考え方、立場を申し入れたところです。改めて、この場で日本テレビにおかれても本件事案の重大性を十分認識頂きたいと思いますし、今後このような行動を繰り返すことのないよう速やかに再発防止のための措置をとることを強く要請するものです。日本テレビ側の速やかな対応を期待するものです。

(問)日本テレビ側は外務省に対してどのように説明しているのでしょうか。

(報道官)正確には、先方に照会して頂きたいと思いますが、私が今この申し入れを報道局長に伝えたことに対して、報道局長からは、今外務報道官からの申し入れについてはこれを真剣に受け止めて、今後の対応について検討します、という反応でした。

(問)過去に平成元年の閣議了解の前に、いくつかケースがあったと思いますが、これ以降に報道関係者が北方領土に入って、同様にビザの申し入れをしたという例はありますでしょうか。

(報道官)今、過去の事例の確認をしておりますから、今私の手元に、確たることを申し上げる材料がないので、また改めて確認させて頂きます。

(問)他方、報道する側には知る権利、国民の知る権利に応えるという使命があると思われますが、その点についてはどう思われますか。

(報道官)今回この事案について、日本テレビ側に対して申し入れをしたことの理由は今申し上げたことに尽きます。敢えて言い換えますと、北方領土問題という未解決の領土問題が厳然として存在しており、日本政府は、国民の総意を受けて、国民の支持を得た上でこの問題の解決に取り組んでいる訳です。加えまして、先日ようやく合意にたどりつきましたけれども、「出入国カード」という正に北方四島への入域に関する手続きについて、日露両国政府が双方の立場を害さないような形で、ようやく最近になり両国の合意に至り、今またそのおかげで、四島交流が再開出来るというような段階に立ち至ったばかりです。このような状況下、日本政府は、北方四島の入域の問題については慎重にも慎重の姿勢で臨んでおります。このため、北方四島の問題に対する日本政府の法的立場を害さないようにこれまでも努力してきた訳ですけれども、それをまた国民の各位に平成元年に閣議了解ということで協力要請しております。報道機関の方達も日本国民であり、今申し上げた日本政府、日本国民の総意を受けた立場というものを尊重して頂く必要があるというふうに我々は思っております。それを踏まえた上で取材をして頂きたいと思っています。

(問)今日、外報官が申し入れをなさって、これでこの件は一件落着なのか、それとも日本テレビが措置を取らなければ、また更なる何かがあるのか、如何でしょうか。

(報道官)再発防止のための措置ということは具体的に、どういうふうにされるのかということを、我々は既に要請をしたつもりです。先方がそうした私どもの申し入れに対し、どう応えられるのかということは、しっかり見極めたいと思います。また、具体的な外務省としての措置はどうかということについては、今はまだ検討中ということです。

(問)何らかの措置を取らなければ、追加のペナルティが有り得るように聞こえるのですけれども、そういう趣旨と受け取ってよいのでしょうか。

(報道官)私はペナルティの追加等を申し上げたつもりではございません。今、現に起こった事案は、我々は大変重大な事案だと思っている訳です。まず、その事案の重大性についてしっかり受け止めて頂きたいと。先程も触れましたけれども、実際外務省に対して、この報道がなされたこと或いはこの事実が確認されたことによって、北海道の方や関係者の方から、大変な憤り、抗議の声が寄せられている訳です。ですからそういう状況の中でそういうことを受けて、責任ある報道機関として、それに対する立場というものをやはり明確にして頂きたいと、それを私どもはお願いをしているということでございます。

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報道官会見記録(平成21年5月12日(火曜日)17時01分~ 於:本省会見室)

ロクサナ・サーベリ女史の釈放

(報道官)ロクサナ・サーベリ女史は、イランにおいて、11日、執行猶予付きの判決により釈放されされたと承知しており、我が国としては、これを歓迎しております。これにつきましては、昨晩、大臣談話を発出させていただいております。我が国としては、先般の中曽根大臣のイラン訪問の機会にアフマディネジャード大統領及びモッタキ外相に対して、大臣の方から直接本件を取り上げ、イランの司法制度を尊重するとした上で、透明性のある訴追プロセスと公正かつ寛大な措置を期待している旨伝達され、それを含めて種々の機会を捉えて働きかけてきたものです。今回の釈放については、イラン政府として、我が国からの働きかけを含め種々の状況を勘案して自らの判断を下したものと理解しております。

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スリランカ情勢

(報道官)スリランカ情勢についてです。反政府武装勢力、LTTE系のWEBサイトであるタミルネットがスリランカ政府軍が5月9日の夜から朝にかけて安全地帯に対する攻撃を開始し、多数の住民が死亡するなど、犠牲者が出たと報じております。これに関して、我が方もスリランカ政府に確認をしたところですが、スリランカ政府の回答は、多数の住民がいる安全地帯への攻撃は行っていないと言っております。我が国としては現在も情報を収集中でございます。こういう状況の下ですが、改めてスリランカ情勢に関する日本政府の立場について申し上げたいと思います。実は色々な形で、スリランカ政府の和平プロセスが進むようにということで人道的な支援を含めて日本政府は取り組んできたということは皆様もご存じのところですが、新しい動きとして昨11日、ニューヨークの国連において、英仏外相の共催によるスリランカ情勢に関する安保理メンバーとNGOとの会合が開催され、この会合には日本政府から伊藤副大臣が出席されました。日本政府の立場については改めて次のとおり申し述べます。日本政府としては、多くの国内避難民が困難な状況に置かれている現状を強く懸念しており、現下の人道状況の改善のために、最優先の努力を行うべきであると考えます。この観点から、政府は深刻な人道状況に対する国連の活動を完全に支持してきており、また、5月1日、最大400万ドルの緊急人道支援を決定しており、国際機関と協力しながら支援を早急に進める考えです。追加支援についても検討中です。更に、4月30日から5月2日まで明石政府代表を現地に派遣して人道状況を視察すると共にスリランカ政府に対して働きかけを行いました。ラージャパクサ大統領は国際人道機関に既にアクセスを供与しており、また一定のアクセス拡大も検討すると述べておりますが、引き続きスリランカ政府の協力を期待したいと思っています。最も懸念されるのは安全地帯に捕らわれているスリランカ市民の状況であります。スリランカ政府には「ゼロ・シビリアン・カジュアリティー政策」つまり民間人、一般市民の犠牲を最小限に留める、犠牲を出さないようにするという政策の遵守を改めて求めると共に、反政府武装勢力でありますが、LTTEに対して武器の放棄と一般市民の移動の自由を認めるよう求めるものであります。また安全地帯への国連ミッショの派遣の実現を期待しています。いずれにしても、この紛争の永続的な解決のためにはスリランカにおける国民和ノ向けた政治プロセスが重要であり、その着実な進展のため日本政府としても引き続き関係各国との協力をし、貢献をしていきたいと思います。

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北方領土問題

(問)一部報道で札幌のテレビ局の記者がロシア政府からビザを取得して北方領土に入ったとされていますが、外務省としてはどのように事実関係を確認していますでしょうか。

(報道官)今ご指摘の件については事実関係を確認中ですので、誰がいつ、どこで、どうしたかについては確認中ということで申し上げることはできません。そう申し上げた上で、北方領土への入域に対する日本政府の立場を改めて申し上げたいと思います。政府としては平成元年ですが、9月19日付けの閣議了解、これに関連する一連の閣議了解によって日本国民に対し北方領土問題の解決までの間、いわゆる四島交流、自由訪問または墓参の枠組み以外による北方領土への入域を自粛するよう要請してきています。仮に、今ご質問を頂きましたが、ご指摘のようなことがあるとすれば、北方領土問題に対する我が国の立場及び北方領土問題の解決を願う国民の総意と相容れず、極めて遺憾なものと認識しています。特に、北方領土問題が未解決なために、自由に故郷を訪問することが出来ず、我慢を強いられている元島民の心情が考慮されて然るべきだと思います。

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