(報道官)アフガニスタンにおける邦人誘拐事件についてですが、先ほどこの場で山本副大臣がご説明申し上げたこと以上に、外務省として確認している情報はありません。また事態の進捗がありましたら、会見を開くことがあるかもしれませんが、現時点では山本副大臣の説明に付け加えることはありません。そのことをまず申し述べておきます。
(問)現地の職員の方は、ジェララバードに日本時間午後7時位に到着になるということですが、確認作業はどの位掛かりそうでしょうか。
(報道官)大変恐縮ですが、今はお答えする材料を持っていません。我が方の大使館員がジェララバードに向かって、日本時間午後7時頃現地に赴いて遺体の確認を行いますので、その作業を待ちたいと思います。当方の対応振りについては、山本副大臣が申し上げましたが、若干補足致しますと、現在、領事局の山本参事官他1名の合計2名ですが、本日の夕刻にも現地に派遣する予定で調整中です。
(問)今回の事件を受けて、例えばJICAの活動を縮小するなど、そのような影響が出るのかあるいは、外務省として検討している他その辺りの状況と、今後の方向性の認識などについてお聞かせ下さい。
(報道官)今回このような起こってはならない、大変不幸な誘拐事件が現地で起こった訳です。これまでも邦人の現地での安全対策としては、外務省としてアフガニスタン全土に危険情報を発出して、また、そのどうしても真にやむを得ない状況で現地に残留せざるを得ない場合には、必要かつ十分な安全対策をとっていただくような要望をしています。今年に入って、アフガニスタンにおける色々なテロ事件が、多発していたということがありまして、そのような事態の都度、危険情報(スポット情報)ということで、その事案の詳細について、現地で活動しておられる在留邦人の方に情報を提供をして注意を呼びかけてきた訳です。 他方、日本は20億ドルに上るアフガニスタン復興支援、色々な形で協力して来ています。それとはまた別に、インド洋における補給支援活動も行って来ている訳ですが、現地においては、今後は援助関係者については、遠隔操作方式というイラクで行って来た方式ですが、そうした方式導入による事業の実施ということも考える必要があるかもしれません。実際に現地において活動しておられるNGOの方を含めて、どのようにすべきかという今後の方向性については、私共としては、今回の事案の起こった背景あるいはその原因というものをしっかり把握した上で検討していくことになります。
(問)今後詳細を調べて検討していくということですが、遠隔操作方式の導入になると、国際社会は様々な形で行っているアフガニスタンの復興支援において、日本の存在感が薄れてしまう恐れはないでしょうか。
(報道官)ですから、誤解を招いてはいけませんが、今現在も例えばアフガニスタンの国際空港の建設は無償資金協力で行っている訳です。日本企業の方も、援助関係者も現地で治安情勢に最大限の配慮をしながら、大使館の助言も得ながら、アフガニスタン政府の助言も得ながら、実施して来ている訳です。大事なことは、日本政府の現在におけるアフガニスタン復興支援、あるいは治安の維持、強化といったことあるいはテロとの闘いということへの支援コミットメントは不変だということです。国際社会の誤解を受けるようなことを打ち出すということは全くないとご理解頂いてよろしいかと思います。
(報道官)7月末に一部報道がありましたが、今般、当省職員が都内ホテルに宿泊し料金を払うことなく長期滞在していた事案について、昨日26日付で国家公務員倫理審査会の承認が得られましたので、昨日付で当該職員に対し、国家公務員倫理規定違反等を理由として国家公務員法に基づく懲戒処分を行いました。この件は、本省の経済局所属の外務事務官が、平成18年6月から平成19年4月まで都内ホテルに宿泊して宿泊代金を支払わずに退去し、その後も約10ヶ月間未払いの宿泊代金について特段の対応も行わず、本年7月に文書による請求を受けたことが明るみに出たものでありますが、その後当該職員がホテル側と話し合いを行い、未払いの宿泊代金の全額の処理について合意をみたものです。しかしながら、最終的に当事者間でその処理について合意をみたとはいえ、宿泊料金を支払うことなく長期間にわたりホテルに宿泊し、その後も10ヶ月にわたり特段の対応を行わないという行為は、結果として事業者等から社会通念上相当と認められる程度を超えた財産上の利益を受けることを禁止する国家公務員倫理規定第5条第1項に違反するものであり、また、国家公務員の信用を傷つけるような不健全な生活態度であったと言わざるを得ません。これを踏まえて、外務省としては、国家公務員倫理審査会に相談し、昨日に至って処分についての承認が得られたので、同日付で当該職員を懲戒減給処分(3ヶ月間10%カット)とするとともに、今後は職務の内外を問わず、公務員としての信用を保持するよう厳しく指導しました。
(問)処分の件ですが、給料3ヶ月間10%カットというのは、行った行為に対して、軽くはないでしょうか。
(報道官)この職員は宿泊代金を支払わないで退去し、今年7月に文書における請求を受けるまで特段の対応を行いませんでした。こうした行為は、事業者等から社会通念上相当と認められる程度を超えた財産上の利益を受けることを禁止する国家公務員倫理規定第5条第1項に違反するということで、また、国家公務員の信用を傷つけるような不健全な生活態度であったと言わざるを得ないという判断があります。それを前提として人事院規則を見ますと国家公務員倫理規定第5条第1項の違反がある場合は、減給または戒告が処分の基準であるとされています。従いまして、倫理審査会にきちんと相談をし、処分内容を含めて承認を得た上で、10%カットという懲戒減給処分ということを決めたのです。私共としては、適正な処分と思っています。
(問)大臣官房付になるような配置転換とか、再発防止についての考え方をお聞かせ下さい。
(報道官)今後、この本人の人事についてのご質問ですが、現在も経済局で勤務をしております。他方、やはり人事異動については、本件に限らず一般に個別の検討状況を明らかにすることは、人事管理に関する事務に関して、公正円滑な人事の確保に支障を及ぼす恐れがことから差し控えておりますのでご理解頂きたいと思います。再発防止については、今回の件はあってはならないということです。改めて全省員に対して倫理法遵守ということを周知徹底します。具体的には省内の全省的な会議でこの事例を取り上げて倫理法の遵守について改めて周知し、再発防止を徹底します。また倫理週間という機会がありますし、そのような機会に一層の注意喚起を行う他、新入職員や地方自治体からの出向者、在外公館への赴任者に対して行っている各種研修の中で、本件事例も取り上げ、利害関係者以外の事業者等との付き合い方等も含めて倫理法等について十分な説明を行い、職員の理解を深めていく所存です。
(報道官)アフガニスタンにおける邦人の誘拐事案について、説明させて頂きます。現地の国連機関からの情報を下に、我方在アフガニスタン大使館が、現地のペシャワール会ジャララバード事務所に、本日26日現地時間午前7時40分、日本時間で、同日12時10分頃確認したところ、アフガニスタンの東部において、邦人1名及び現地人の運転手1名が誘拐された模様であることが確認されました。ペシャワール会の説明によりますと、誘拐された邦人はペシャワール会ダラエヌール事務所職員の伊藤和也氏、男性で、生年月日は1976年11月19日、31歳、同氏は、2003年12月から、活動を開始したとのことです。このペシャワール会は、これまで現地で、医療、農業指導あるいは井戸掘りを含めた治水活動といった事業でNGOとしての活動を展開してこられたと承知しています。政府としては、第一報を受けて、関連情報の収集に、今全力を挙げて努めているところです。外務省では本件情報を受けて、本日の午後0時50分、領事局に深田博史局長を長とする連絡室を、また現地在アフガニスタン大使館に、佐藤特命全権大使を長とする現地対策本部を立ち上げた他、本日の午後1時15分には、総理官邸にも情報連絡室を立ち上げ、事件の対応に当たってきております。そして、先程、午後5時から、本省に山本副大臣を本部長とする本件の緊急対策本部を立ち上げ、その第一回会合を開催したところです。この第一回緊急対策本部会合においては、最新の現状の情報の報告、共有を受け今後の対処方針について議論し、とりあえず何を置いても、情報の収集を最優先として、迅速かつ慎重に本件被害者の無事解放を達成する為に全力を挙げるということを確認したところです。現地では、佐藤大使の指揮の下、アフガニスタン政府あるいはジャララバードの関係者あるいはペシャワール会にも出向き、アフガン政府との連絡を密にしながら、解決に向け全力を挙げているところです。いずれにしても、被害者が一刻も早く無事解放されるよう引き続き全力を挙げていきます。なお、被害者の無事解放が、最も緊急な課題ですが、これ以上の事案の詳細については、現時点で差し控えさせて頂きたいと思います。
(問)現時点で、誘拐された日本人の方の安否は、確認されているのですか。
(報道官)ただ今私の方から申し上げたこと以外の情報は、全て確認中です。
(問)犯人グループと見られるのは、タリバンだという情報もあるのですが、如何でしょうか。あるいは、銃撃戦があったという報道もあるのですが、如何でしょうか。
(報道官)色々な情報が流れていまして、そうした報道はもちろん政府も承知していますので、今鋭意事実関係詳細を確認中です。ただ現時点において、何が真実なのかは、申し上げるのは差し控えたいと思います。いずれにしても、全力を挙げて、色々な情報収集中ですし、それらについての事実関係を確認中ということです。
(問)解放交渉のようなものが、具体的に始まったということはないのですか。
(報道官)先程、私が申し上げたことに尽きますが、現在、我が方においては、何よりも、現地の大使館、佐藤大使の下で、アフガニスタン政府と緊密な連携を取ってきていますので、まだ、時差の関係で言えば、向こうは昼の時間だと思いますし、この事案について全力を挙げて、色々な連携、調整を行っていると理解して頂いて結構です。
(問)犯人グループから何か要求のようなものはありましたか。
(報道官)その点について、今申し上げられることは、ペシャワール会の説明として、誘拐されたのは、本日の現地時間で午前6時半から午前7時頃までの間だということです。そのことについて現地住民から、ペシャワール会の現地事務所に通報があったということです。それ以上、要求があるかないかということについては、現時点ではコメントを差し控えたいと思います。
(問)自民党の松浪健四郎外交部会長は、今日の11時に現地に向かい、現地時間の午前10時頃に到着し、交渉を行うということが報道されているのですが、それについて、外務省としてはどのようにお考えですか。
(報道官)自民党の外交部会長のご意向ということは、別にして、外務省として、緊急対策本部を立ち上げたということで、とにかく、迅速且つ慎重にこの問題をどう解決するか知恵を絞っている訳です。現地の大使館の佐藤大使が、この問題解決に奔走しています。今現在そうしたアフガニスタン政府との連携を、とにかく強化しながら、この問題解決に向けて、ありとあらゆる可能性を念頭に措置を講じていくということが、私たちの今の立場と受け取って頂ければと思います。
(問)そういう中で、松浪氏が行くということについては、外務省は、どんなお考えなのですか。
(報道官)今の外務省としての立場としては、現在全力を挙げて取り組んでいる訳です。物事は時々刻々と進んでいる訳です。色々な情報が錯綜し、発信されています。東京、アフガニスタン、カブール、それぞれから色々な情報が出て来ると思うのですが、そういったことを確認しながら、私たちとしては、そうした事態の動きをしっかりフォローしながら、何をするべきかということを、色々なオプションを念頭に置いて、色々な情報収集活動を行っているということでご理解頂きたいと思います。
(問)外務省から誰かを派遣することは考えていらっしゃいますか。
(報道官)ありとあらゆるオプションがあると思います。今現在、誰かを派遣するかということをお尋ねであれば、今現在は迅速な情報収集活動、どういう対応がベストかということを、リアルタイムで現地と連絡を取りながら、考えているところですから、それ以上のことは申し上げられません。この後、時間の推移、事態の推移に従って、色々な措置を講じていくということになると思います。
(問)アフガンには、今退避勧告が出ているのですが、現在日本人は、何名位いて、そういう方たちとはどういう連絡を取るのかお教え下さい。そして、今回の事件がテロとの闘いへの貢献の議論となると思うのですが、如何でしょうか。
(報道官)最初のご質問ですが、私たちが現在時点で把握している邦人数は149名です。そもそも、アフガニスタンにおける治安情勢というのは、予断を許さない状況にあるということは、当然認識をしてきました。そして、アフガニスタン全土に対して、危険情報として、退避勧告を出しています。より具体的には、「退避を勧告します。渡航を延期して下さい」という危険情報をアフガニスタン全土に、それから首都のカブール、ジャララバード、ヘラート、マザリ・シャリフ、バーミアンの各都市においては、危険情報を出し括弧書きで、(真にやむを得ず現地に残留せざるを得ない場合には、政府機関、所属団体等を通じて、組織としての必要且つ十分な安全対策をとって下さい)ということを維持してきた訳です。併せて、色々な現地でのテロ活動が、起きている訳ですが、その都度スポット情報として、今年に入ってから40回以上、それを発出する形で、現地で活動している邦人の方には、広く注意喚起をして来たということがあります。それから、新たにアフガンに渡航しようとされている邦人の把握にも努めながら、渡航を差し控えるよう働きかけてきたという経緯もあります。他方で、危険情報のホームページをご覧頂くと分かると思いますが、危険情報というのは法令上の強制力を伴わない勧告でして、NGOの方が退避勧告にも関わらず、最終的に自己の判断で、アフガニスタンにおいて活動することまでは、政府としては阻止できないと考えています。退避勧告にも関わらず、NGOの方が現地に留まって、活動するということは、それ自体は、好ましいことではないと考えますが、仮にそういうような場合が生じた時には、政府あるいは現地大使館、本省もそうですが、NGOの方々が、万が一の危険に遭遇しないように、治安情勢等の情報を提供して全力を尽くして、邦人保護業務に当たってきた訳ですが、今回は大変残念な形で、誘拐事件が起きたということだと思います。そして、この事件が、アフガニスタンにおけるテロとの闘いということの中で、どういう意味を持つかについては、今年に入って危険スポット情報を出すような事件が多発してきたというのは事実ですし、アフガニスタンにおいて、やはり退避勧告を維持せざるを得ないという厳しい現地における治安情勢が続いていたということだと思います。つまり、アフガニスタンにおいては、西側諸国が、色々な形でアフガニスタンの復興支援、あるいは治安維持回復に向けて、色々な取闡gみをしていまして、日本政府としては、現状における補給支援活動を行って来たということですが、この事件は、このような厳しい状況を改めて我々に認識させる事件なのではないかと思います。
(問)アフガニスタンの問題ですが、アフガニスタンで活動するNGOは、何団体、何人位でしょうか。
(報道官)私の手元には何団体とか人数がありませんので、後ほど事実関係をお伝えしたいと思いますのでご了解ください。(注1)
(注1)アフガニスタンで活動する邦人のNGOの団体数、人数に関する質問について、後刻確認したところ以下の通り。
1. 邦人のNGO団体数 8団体
内訳(五十音順):シャンティ国際ボランティア会、ジェン、難民を助ける会、日本国際ボランティアセンター、日本地雷処理を支援する会、BHNテレコム支援協議会、ピースウインズ・ジャパン、ペシャワールの会
2. 邦人のNGO関係者数 4名
(8月26日時点で、外務省が把握している数字)
(問)北朝鮮ですが、寧辺の核施設の無能力化作業を中断したという声明を北朝鮮外務省が発表してますが、それについて外務省としてどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。
(報道官)今ご指摘の事実については、私共ももちろん懸念を持って受け止めています。すなわち今仰ったように北朝鮮が寧辺の核施設の無能力化作業を停止したという訳ですが、これは私共としては、大変懸念をしております。政府としては、これまで同様、米国を始めとする六者会合の関係国と緊密に連携しつつ、北朝鮮が無能力化作業を再開して六者会合プロセスが前進するよう、引き続き努力する考えです。その考えに変わりはありません。
(問)声明の中で、この措置を14日に既に行っていると、それについては関係国に既に通知したと言っているようなのですが、その事実について日本政府としてこれまで把握されていたでしょうか。
(報道官)14日に無能力化作業を中断したということについては、事前に承知しておりました。但し、それ以上の関係国とのやり取りの詳細については、申し上げることを差し控えたいと思います。
(問)14日の段階で把握されていたということですね。
(報道官)申し上げられるのは、14日に無能力化作業を中断したということについては事前に承知していたということです。
(問)いつの時点でしょうか。
(報道官)それ以上は申し上げられません。
(問)無能力化中断ということで、北朝鮮が態度を硬化させたことで、先の日朝協議で合意した拉致問題再調査への影響は懸念されますでしょうか。
(報道官)それは今、私が申し上げることは差し控えたいと思います。何れにしても、この六者会合プロセスを通じて、非核化作業をこれまでも継続して来ている訳です。その非常に重要な六者会合プロセスを通じて、今北朝鮮側と合意しようとしていた非常に重要なことが、核計画の申告の検証の具体的な行い方、そのフレームワークも含めてですね、それについて合意が得られていない訳です。我々としては、北朝鮮側がそうした実効的な検証の枠組みを受け入れるよう働き掛けていくことが、非常に重要な課題であった訳ですから、引き続きその点において、努力を継続しなくてはいけないと思っています、と同時に今ご指摘頂いた日朝実務者協議においては、先般の11日、12日の実務者協議で北朝鮮が行う拉致問題の再調査の具体的内容に合意した訳です。今、まさにこの調査が前進して、生存者の帰国に繋がるような成果が早期に得られるよう、日本政府は全力を上げてこれに取り組むということです。我々としてはこの問題については、北朝鮮との間で前進するように北朝鮮側との折衝を含め、引き続き全力で取り組んでいきたいという立場に変わりはありません。
(問)14日に停止して以降に北朝鮮から通告があったという見解でよろしいのでしょうか。
(報道官)その点についてはたいへん恐縮ですが、確認をさせて下さい。(注2)
(問)通告を受けて発表が出来なかった理由ですが、また相手から公表しないでくれと言われたとか、あるいは官邸や警察サイドから指示があったのでしょうか。
(報道官)その質問に関しては、恐縮ですがコメントを差し控えさせたいと思います。
(注2)「北朝鮮が8月14日に無能力化作業を中断したことについて、日本政府は事前に知っていたのか」との質問について、後刻確認したところ以下の通り。
「北朝鮮が8月14日に無能化作業を中断したことについては、日本政府は本日北朝鮮が談話を発出する以前に承知していました。」
(報道官)冒頭、高村大臣のインド訪問について、その概要と評価につきまして簡単に述べさせて頂きます。私も大臣に同行しました。大臣は3日から5日にかけてインドを訪問して、今朝6日成田に戻られましたが、その間、ムカジー外務大臣と第2回外相間戦略対話を行いましたが、その他にマンモハン・シン首相を始めとしてインドの主要閣僚と会談を行いました。大臣は、5日にマンモハン・シン首相を表敬訪問して、秋に見込まれる同首相の訪日に向けて、EPA交渉をはじめ、戦略的グローバルパートナーシップを進めていくことを確認しました。また、シン首相からは、日本のODA(経済協力)に対する謝意表明がありました。それから、4日には、チダンバラム財務大臣、カマル・ナート商工大臣、5日にはアントニー国防大臣と会談を行いました。何れの会談でも、日印関係は極めて良好であるという点で一致するとともに、更なる関係強化に向けた協力を確認しました。
それから昨日午後、その時たまたま国賓としてインドを訪問していたカルザイ・アフガニスタン大統領を表敬訪問されて、アフガン支援に対して大臣から日本の考え方、立場をお伝えしたということです。
それからムカジー外務大臣との第2回外相間戦略的対話については、これが主たる目的だった訳ですが、非常に突っ込んだ意見交換、二国間関係を中心として、また地域と国際社会の課題について意見交換を行いました。二国間関係については、先程も触れましたが、シン首相の本年秋の訪日に向けた準備をしっかり行っていこうということで確認がされました。その中身としては、先程も触れましたが、経済連携協定(EPA)が同首相の訪日前に実質合意出来るよう交渉の加速化を図るということ、或いはもう既に安全保障、防衛面での交流が深化してきている訳ですが、そういった方向性についても、その方向性をはっきりと打ち出していくようなことで準備を進めていこうという合意も得られました。それから経済協力面においては、インフラの整備がインドの課題ですが、この面においても日本は協力をしてきていますが、引き続き支援をしていくことを伝えるとともに、今年度前期円借款案件として5件約1000億円の供与について、高村大臣からプレッジを行いました。これに対してムカジー大臣からも日本のODAに対する深甚な謝意表明がありました。それからもう一点二国間関係でご披露したいのは、日印の間では、人の交流、学術交流について色々行ってきておりますが、今回改めて高村大臣から、インドの理数系の高等教育の中核的な役割を果たしているIITというインド工科大学が全部で7校ある訳ですが、これからそれを10校に増やすということで、3校増やす中のその1校をハイデラバードというところに設立する訳ですが、そのハイデラバード校につきましては、ぜひ日本の科学技術の力、その最先端をいく分野での教育面での協力を頂けないかということで、日本から協力を進めたいということで、意見の一致が見られました。
それから最後に地域的、国際的課題について、二点重要なやり取りがありました。一つは、地球温暖化問題です。これについては高村大臣から、2050年までに世界全体の温室効果ガス排出量を50%削減するとの長期目標の重要性を強調され、またセクター別アプローチの重要性についての日本の考え方を説明するとともに、2013年以降の次期枠組みへのインドの積極的参加を強く求めました。これに対してムカジー大臣は、気候変動問題に対する日本のリーダーシップを高く評価するというコメントがありまして、その上でインドとしては、共通だが差異ある責任といった原則の重要性を指摘しつつ、今後とも国連気候変動枠組条約等の国際的な対話、交渉に積極的に参加していくという回答がありました。
最後に米印民生用原子力合意に関連したやり取りがありました。これはムカジー大臣から、民生用原子力協力に関する米印合意への支持を求められましたが、それに対して高村大臣から、インドの民生用原子力利用は、一方において温室効果ガスの排出抑制、気候変動問題に対するインドの取り組みを進めていく上で意義があることは理解するが、その上で同時に日本は唯一の被爆国として核軍縮、不拡散、更には究極的な核廃絶という悲願に向けて努力してきており、このような国際的な核不拡散体制に支障がないことを納得する必要があると高村大臣は述べました。その上で、更に高村大臣からインド政府に対し、引き続き非核国としてのNPT条約への加入、CTBT(包括的核実験禁止条約)への早期の署名、批准を求めていく立場に変わりはないと述べて、このやり取りは終わりました。何れにしても、日印の間では、近年価値を共有するということもありますし、或いはインドがアジアでは第3位の経済大国として立ち現れているという中で、日印のグローバルかつ戦略的な関係を更に強化しようという意味において、今回の高村大臣の訪印は非常に成果があったと外務省としては考えています。
(問)米国のブッシュ大統領が、8月11日のテロ支援国家指定解除が遅れる可能性を公言しました。それについての日本政府のお考えは如何ですか。
(報道官)米国政府が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する意図を議会に通報したのは6月26日でした。その際ブッシュ大統領は、この8月11日までの期間において、米国は北朝鮮の行動を注視して、それに相応の行動をとるという立場を明確にしていると理解しています。北朝鮮のテロ支援国家指定解除の問題は、米国内法の適用に関する問題でありますが、一義的には米政府が判断すべき問題と考えております。日米ともに早期に具体的検証のあり方について合意をして、検証が開始されることが重要であるという点については一致していますので、引き続き米国やその他の六者のパートナーと連携していきたいと考えています。
(問)中国餃子の問題ですが、一部の報道で中国外務省が中国国内で中毒事件があったことを認めたということですが、それについて何か把握していることはありますか。
(報道官)中国側がそういった発表を行ったということは承知しています。我が方の大使館から中国外交部に確認をしたところ、次のような回答が得られました。中国の国内で餃子による中毒事件が発生したことは事実であるというのが第一点です。第二点として、本件と中国における中毒事件と日本で生じた事件の関連性を含め、引き続き捜査の必要があるということ。三点目として、中国側は、本件を引き続き重視しており、公安部で捜査を展開しているという事実を確認しました。日本政府としては、これを契機に捜査が進展して、一刻も早く事件の解決につながることを期待しています。これまでもそのようにしてきた訳ですが、日中間の協力、情報交換を更に進めていきたいと思います。
(問)今述べられた三点は、中国側に確認したのでしょうか。
(報道官)我が方として本日確認をしました。
(問)何時頃ですか。
(報道官)時間までは承知していません。
(問)午後でしょうか。
(報道官)本日確認したということです。
(問)中国では何件くらい事件が発生したのでしょうか。
(報道官)今確認したということ以外、情報を持ち合わせていません。
(問)中国側から日本政府に連絡があったとのことですが、その事実関係は如何でしょうか。
(報道官)先ほども申し上げましたが、これまでも日中間では真相究明のための協力を行ってきていますが、やはりこの問題は、捜査に係わることですので、その内容につきましては、一切コメントは差し控えるということでご理解頂きたいと思います。
(問)連絡はあったのでしょうか。
(報道官)ですから、そのようなことも含めてコメントは差し控えたいと思います。
(問)6日の原子力潜水艦の漏水の話もそうですが、情報が入っていたにも係わらず、他に連絡をしないとか、或いは公表をしないとか、外務省の姿勢を問うような批判もあったと思うのですが、捜査上のこととは思いますが、このようなことが多いのではないのでしょうか。
(報道官)一般論として情報公開、共有についてどうあるべきかということを、申し上げるのは適当ではないのかなと思います。先程ご指摘の原子力潜水艦の問題に関しては、外務省としても反省をして措置を取っています。繰り返しになりますが、その話とこの餃子の話は別の問題であり、かつ捜査の核心に係わる問題です。捜査がまだ進行中ということですから、そのような立場から個別の捜査過程でのやり取りや、情報についてはコメントするべきではないということが日本政府の一貫した考え方と承知しています。その上で敢えて申し上げると、その食の安全と安心の確保の為に、一刻も早い事案の解明を目指して努力をしているということには変わりはありません。そこは誤解のないようにご理解頂ければと思います。