(報道官)本日の午後、インドネシア東部において、かなり規模の大きい地震が発生しております。米国の地質調査所の発表によると、マグニチュード6.7ということです。マカッサルにある我が方の総領事館において、現地におられる若干名の在留邦人の方々と電話で連絡を取っておりますが、今のところ邦人に関する被害が発生しているという情報には接しておりません。引き続き、邦人の安否について確認を取っていきたいと思います。
(問)昨日の会見でもお伺いしましたが、インドネシアで日本人の方が行方不明になっているのではないかという事案ですが、最新の情報としてどのようなものが入っているのでしょうか。
(報道官)昨日この席で、インドネシア警察等からの情報に基づき、本事案の事件性は低いということを申し上げました。その後、事件性を疑わせるような新たな情報は入っておりません。従って、現時点では、当初懸念されたような邦人誘拐の事件ではないのではないかと思っております。
(問)一方で、日本人の方の名前が現地で報道されたということですが、この方の確認は取れたのでしょうか。
(報道官)人物の特定には至っておりません。昨日の時点でも人物の特定が出来ないということを申し上げましたが、その状況に変わりはありません。当時もシンガポールに住んでいる方なのではないか、マレーシアに籍がある方ではないかといった情報があり、そちらのほうにも連絡を試みていますが、該当する方に連絡を取るには至っておりません。その人物の名前がどのような経緯で固有名詞として出て来たのかについても、理由が分かっておりません。
(問)昨日、北朝鮮の備忘録に対して外務省が反論文書を発表されましたが、いわゆるプロパガンダに対して、あのような形で反論することについてはどのような背景、立場があったのでしょうか。
(報道官)備忘録についてですが、北朝鮮は過去にも何回か備忘録という形での発表を行っております。
記憶に新しいところでは、2005年1月に横田めぐみさんの遺骨と称するものについて、日本側の鑑定結果は捏造だとの非難を備忘録という形で出しております。その後、今年の5月にも、日本の歴史歪曲云々ということについて備忘録という形での発表が為されております。
北朝鮮においては、関係する色々な機関、或いは団体が一定の期間を経て、問題点についての経緯を整理し、過去に行ってきた非難、或いは主張を改めて取りまとめるような形で、これを備忘録として発表しています。今回、北京で六者会合を行い、且つ日朝の二国間会談を行った状況の中で、このような発表が為されたことについて遺憾であると思っております。特に、北京での日朝の二国間の会合、或いは六者の席でも日朝間の様々な問題について、その解決に向けて共に努力して行くということで一致したにも拘わらず、このような発表が為されたことに対して、きちんと反論しておく必要があると判断しました。
(問)インドネシアのジャワ島で日本人の男性が行方不明になっていて、誘拐の可能性も否定できないという話があるようですが、事実関係は如何でしょうか。
(報道官)昨日来、日本人を含む数名がインドネシアのスラバヤで誘拐されたのではないかという話が報道されており、我が方の大使館、総領事館においても現地の警察当局等に協力要請をしているところですが、現時点でのインドネシア側からの情報によれば、本件について事件性は低いとの連絡を受けております。関係する邦人の方についても、現地の大使館、総領事館等で人物を特定すべく努めていますが、現時点ではその人物が特定出来ていないと聞いております。以上は、あくまでも「現時点で」ということで申し上げており、引き続き情報等の収集に努めていきたいと思います。
(問)邦人の安否は確認されているのでしょうか。
(報道官)関係しているとされる邦人の方の人物が特定されていない状況です。スラバヤの米国総領事館から特定の邦人の名前が出て来たとのことで、我が方の大使館、総領事館をあげて人物の特定をすべく努めておりますが、現時点でその方がインドネシアにいるのかどうかも含めて特定が出来ておりません。
(問)この件で警察に通報したインドネシア人の女性が狂言だったのではないかという報道が入って来ておりますが、この情報に関してどのようなご判断をされていますか。
(報道官)狂言と断定出来るかどうか、今この時点で申し上げるのは過早だと思います。私の方から申し上げられるのは、インドネシア警察から「本件については事件性が低い」との説明を得ていること、及び関わりがあるのではないかとされる邦人について当局として人物が特定出来ていないこと、の2点です。引き続き情報を収集していく必要があるかと思いますが、現時点で邦人が誘拐されているという状況にはないのではないかという心象は強めております。
(問)女性の話は狂言ではないかと言われていることについては、入国している記録がないのではないかと思うのですが、その点の確認の方は如何なのでしょうか。
(報道官)インドネシア警察当局からの情報提供の詳細に立ち入ることは適当ではないと思いますが、名前が挙げられた米国人、イタリア人等の方々についても実情が良く分からない、現地で通報された事件発生の状況等についても事実が確認出来ない等、事件性を疑わせるいくつかの情報があるということです。我が方で独自に特定の邦人の方についての人物特定が出来ないという状況からしますと、インドネシア側の説明のとおり、今回の件は果たして誘拐事件だったのかどうか、疑問があると受け止めております。
(問)六者会合のエネルギー作業部会が8月7日、8日に板門店で開かれるという報道が流れておりますが、事実関係についてお聞かせ下さい。
(報道官)六者会合の作業部会については、8月中に順次開催していくということで、それぞれ作業部会の議長国の方で調整をしている段階と承知しています。何れ固まった時点でお知らせ致します。現時点で経済・エネルギーに関する作業部会も含めて詳細が固まったという状況ではありませんので、もう暫く調整の結果を待ちたいと思います。先般の六者の首席代表レベルの会合において、8月に5作業部会を開催していくということで合意は出来ておりますので、8月の前半から順次開かれていくことになると思っております。
(問)「台湾」の名前で国連加盟を目指している台湾当局は先日、国連事務総長宛てに書簡を送りましたが、国連は書簡を送り返したとのことです。また、陳水扁総統は台湾構内で国連加盟を問う住民投票を実施しようとしているとのことですが、日本政府は台湾当局のこのような動きに対して、どのような立場と態度を取って行くのでしょうか。
もう一点ですが、陳水扁総統は台湾の独立を目指しているのですが、日本政府は台湾問題に対する立場への変化はあるのでしょうか。
(報道官)我が国の台湾に関する立場は日中共同声明にある通りで、台湾或いは台湾当局を国、または政府として扱うことはありません。このような我が国の基本的な立場を踏まえると国家であることを加盟要件とする国連への台湾の加盟は支持できません。何れにしても、台湾を巡る問題については、両岸当事者間の直接の対話により、平和的解決が図られる必要がありますし、そのための対話の早期再開を日本としては強く希望しています。その観点から、何れの側による、如何なる一方的な現状変更の試みについても支持できないということになります。お話の中に、台湾としての国連加盟については国連の事務局から申請が拒否されたという指摘がありましたが、我々もそのように承知しております。現在、陳水扁総統が執っている政策についての日本の立場は、日中共同声明にある通り、台湾或いは台湾当局を国または政府として扱うということはしないということに尽きていると思います。
(問)六者会合が終わりましたが、成果がないとの受け取りも多いのですが、それについて改めてお伺いするのと、日朝作業部会のスケジュール、展望についてお聞かせ下さい。
(報道官)大臣からもご説明しておりますとおり、今回の六者の首席代表レベルの会合について、一定の進展があったと思っております。長く懸案となっていた「初期段階の措置」について、IAEAの参加も得て実施され、現在はこの段階から次の段階の措置に移りつつあると思います。今回の首席代表者会合において、こうした点を確認しつつ、これからの作業を整理し、どのような段取りでそれらに取り組んで行くかということについて議論を深めることができたことについては、一定の評価ができるのではないかと思います。今年の2月の成果文書の中では、「次の段階の措置」として、全ての核計画の完全な申告、全ての核施設の無能力化がはっきりと示されております。この点について、完全な申告がどのような内容のものなのか、或いは無能力化とはどのような措置を取ることなのかという点について、作業部会で専門家によって、技術的な点も含めて整理していく必要があるのではないかとの首席代表レベルの判断があり、それを受けて、できるだけ早く作業部会を開催しようという現状にある訳です。5作業部会の中で今の点に関連するのは朝鮮半島の非核化に関する作業部会であり、そこで申告の問題と無能力化についての技術的な論点整理を行っていく必要があります。他方、それにあわせて、重油95万トン相当の支援に関し、具体的には何をどのような形で支援していくことを北朝鮮側として求めているのかという点について技術的な整理が必要になってくると思います。こうした作業を進めていく一方で、米朝、日朝の作業部会、或いは北東アジアの平和と安全に関する作業部会を8月末までに開いて行くという流れになると思います。これらの各部会において、専門家レベルによる作業をきちんと進め、9月に入ってからの六者協議の全体会合の成功を期していくことが今、求められていると思います。日朝の作業部会については、前回のハノイにおける協議が、何らの成果も挙げ得なかったことから、以上のような六者協議の作業の流れの中で、次回は是非、実質的な進展が出てくるように取り組んでいきたいと思います。
日朝の作業部会の開催時期についてですが、大臣から今朝、「8月の中旬までには」との我が方の早期開催への希望を述べましたが、何れにしても8月の後半にはこれを開催することで、9月に想定されている次回の全体会合に繋げていきたいと思っております。
(報道官)包括的核実験禁止条約(CTBT)に対する、我が方の取り組みについてお知らせします。今年9月に第5回CTBT発効促進会議がウィーンで開催される予定です。この会議はほぼ2年に1度開催され、今回で5回目になります。我が国政府としてCTBT発効促進に向けた様々な努力を現在展開している中、具体的な取り組みの一環として、来週24日から27日までインドネシア政府のCTBT実務担当者レベルの方々を日本へ招待し、外務省、気象庁、国内データセンターなどのCTBT検証関連施設への訪問や、意見交換を予定しています。
特にインドネシアが重要であると考えている理由は、CTBTの発効要件国が44か国あり、そのうち34か国は既に批准が済んでいますが、残された10か国の中にインドネシアが含まれています。そうした事情を考慮して、インドネシアとの軍縮不拡散分野における協力関係をより強化し、このような招聘を通じて、インドネシアのCTBT早期批准に繋がっていくような形にしたいと考えております。CTBT発効促進会議の関係については、また日が迫ってきたところでご紹介したいと思います。
(報道官)日本時間で今朝、ブラジル、サンパウロのコンゴニャス空港にブラジルのTAM航空機が着陸に失敗し、滑走路をオーバーランして炎上するという事故が発生しています。TAM航空が乗客名簿を既に発表していますが、その中にアキオ・イワサキという名前があり、日本人ではないかということで、我々も確認に努めて参りました。その結果、つい先程、現地の連邦警察当局から、このアキオ・イワサキ氏はブラジル国籍の日系人であることが確認されました。勿論、その他日本人の搭乗者が居るのか否か、最終的な確認作業は継続しています。
(問)アキオ・イワサキさんの連絡は、連邦警察から現地の大使館に入ったのでしょうか。
(報道官)サンパウロ総領事館からの連絡です。ブラジルでは航空機搭乗の際、ブラジル人の方は身分証明書番号を書きますが、それを元に連邦警察の方で身元の確認をしたところ、アキオ・イワサキさんについてはブラジル国籍の方と判明しました。
(問)六者会合ですが、今日は中国などの二国間会談と、午後からは首席代表会合が始まっていると思いますが、現時点政府に入っている情報は?
(報道官)今日は午前中、ロシア及び中国との二国間会談を佐々江局長が行っています。それに続いて昼食会、引き続いて午後から首席代表会議が始まっています。予定より少し遅れて始まり、今現在も続いていると承知しています。会議の状況等についてはまだ進行中ですので、連絡はありません。
他方でIAEAのエルバラダイ事務局長がマレーシアのクアラルンプールで記者会見を行ったと承知しています。その席でIAEAとして、寧辺(ニョンビョン)の5施設の稼働停止を確認したと仰っているようです。一部の施設については封印に着手しているとのことですが、この点についてはIAEAからの直接の報告を待ちたいと思います。
いずれにしても、初期段階措置の実施状況をきちんと確認するというのが、今回の首席代表会合の我が方としての目的の1つです。IAEA事務局長の発言の通りに事が進行しているのであれば、非核化に向けた第一歩の措置にようやく着手したというところかと思います。引き続いての措置について、今回の首席代表会議を通じて、具体的に何をどういう段取りで実施していくのか、また作業部会あるいは閣僚レベルの会議に関わること等含めて、今後の段取りについての話し合いを取り進めていきたいと思います。
(問)今日の夕方の予定はどうなっていますか。
(報道官)現在の首席代表会合が何時まで続くのか、始まる前の時点では予定は特に聞いていません。見込みとしては、日本時間の5時半~6時頃に終わるかと思いますが、今日のその後の予定については特に何か入っているとは承知していません。
(報道官)明18日(水曜日)、東京において第12回日米科学技術協力実務級委員会が開催されます。この委員会には日本側から中根外務省軍縮不拡散・科学部長、米国側からハワード国務省次官補代理代行が代表として出席する他、関係する省庁等それぞれ出席します。委員会の場では、日米両国の科学技術政策の最新の動向、安全安心科学技術協力、地球環境科学、ナノテク、エネルギー、研究者交流等、幅広く日米協力のあり方について協議を行う予定です。
なお、この実務級委員会は1988年に締結された日米科学技術研究開発協力協定に基づいて開催されるもので、前回第11回は2年前の2005年7月に、ワシントンで開催されています。
(問)明日から、北京で六者首席代表会合が始まりますが、現時点で日朝二国間会談は予定されていま すか。また、求めていく考えがあるのでしょうか。
(報道官)現時点で北朝鮮の代表である金桂冠(キム・ゲグァン)外務次官との二国間会談の予定はありません。他方で、我が方としては常に二国間会談へのドアは開いているという立場であり、今後の成り行きの中で、どういう形になっていくか見極めていきたいと思います。
なお、北京での佐々江局長の今日の予定は、韓国の千英宇(チョン・ヨンウ)朝鮮半島平和交渉本部長及び米国のヒル国務次官補との二国間会談です。同次官補とは東京でもお会いしましたが、北京でも再びお会いすることになっています。
(報道官)河野外務審議官は、7月17日(火曜日)から20日(金曜日)まで、インド、パキスタンを訪問します。インドでは今回初めて開催される日印経済戦略会議に日本代表として出席する他、ナート商工大臣をはじめ、インド政府の要人と会談する予定です。また、パキスタンでは、日本代表として第3回日・パキスタン・ハイレベル経済会議に出席する他、カル経済問題担当国務大臣をはじめ、パキスタン政府要人と会談する予定になっています。日印経済戦略会議は昨年12月、インドのシン首相訪日にあたり、経済分野で幅広い協力を推進することで合意しており、それを受けてこの度の戦略会議の開催になります。なお、安倍総理のインド訪問が8月に予定されていますので、今回の会議は、それに向けての準備も兼ねて開催されます。パキスタンとのハイレベル経済協議は、第1回が平成16年2月にイスラマバードで開催され、第2回は翌平成17年7月に東京で開催されており、それに続く第3回目のハイレベル経済協議となります。
(問)インドとの経済協議の主な議題ですが、温暖化対策とか、日印EPAとか、その辺りをお話になる予定なのでしょうか。
(報道官)両国間の重要なテーマとして、経済連携に関する作業が行われているところなので、当然、それに関する議題が挙げられます。また、もう一つ重要なのが環境問題です。特に気候変動問題は重要な国際的な課題になっていますので、それらの問題を重点にして協議が行われます。その他、ODAに関わる問題、或いは科学技術等々、幅広く意見交換をする予定です。
(報道官)先にタジキスタンにおいて、国連タジキスタン監視団の政務官として活躍しておられた秋野豊さんが、9年前に武装勢力の襲撃を受けて殉職されましたが、このほどタジキスタンのラフモン大統領から同国の平和構築に功績のあった22名の内の一人ということで勲章が授与され、その勲章が届きましたので、本日中にご遺族の秋野洋子さんにお届けすることになっています。既に先月の6月25日にタジキスタンで「タジキスタンの和平と国民に関する包括協定10周年記念国際会議」が開催されており、その席上で授与式自体は行われています。我が方大使館員が代理でこれを受け取り、その勲章が本日、本省に届いたということで、ご遺族にお届けする予定です。
(問)勲章が本省に届いたのが本日であり、それから発送されるということですか。
(報道官)ご遺族の方は北海道に住んでおりますが、今日中にお届けするということです。
(問)北朝鮮が、米朝の軍事会談を開こうという提案をしたそうですが、これについて日本政府としての受け止めは如何でしょうか。
(報道官)私共も、今日そのような報道がなされたということで、それがどういう意味合いを持つものなのか、これから子細に見ていく必要があると思いますが、直接的には米国との係わりに関することですので、現時点で我が方からコメントするのは如何かなと思います。いずれにしても、六者会合の首席代表会議が来週開催されるので、そちらに専念して、取り組んで参りたいと思います。
(問)こういった動きが出ると、どうしても六者の中でも米朝主導で会議が進んでいくのではないかという懸念もありますが、その辺は日本政府として、どういった対応をするおつもりでしょうか。
(報道官)六者の枠組みと関連する形で、朝鮮半島における恒久的な平和体制の構築という課題があり、これについては適当な話し合いの場で、直接の当事者間の協議を行うと、2月の成果文書の中で確認されています。従って、そういう平和体制の構築に関わる事柄のひとつとして、今日のような発表が出てきているのかなとは受け止めますが、現時点でそれ以上立ち入ってコメントするのは控えたいと思います。
前にも申し上げた通り、朝鮮半島の恒久的な平和体制の構築の話は、合わせて北東アジア地域の永続的な平和と安定の為の共同の努力ということと密接に関わってくる事柄ですので、そうした大きな図柄の中で平和体制に関わる問題に関心を向けて参りたいと思います。来週の首席代表レベルの協議でも、将来的な作業の段取り、とりわけ次の段階の措置に向けて、我々としては最優先の課題として取り組んでいきたいと思っています。朝鮮半島の平和体制の構築の問題は将来の課題として出てくる訳ですけれども、まずは当面の関心事項に集中して成果を上げていきたいと思います。
(報道官)明日13日(金曜日)、ソウルにおいて第10回日韓環境保護協力合同委員会が開催されます。この合同委員会は日韓の環境政策、あるいは環境協力のあり方について包括的に話し合う枠組みということであり、日本側からは伊原純一外務省アジア大洋州局参事官、韓国側はキム・チャンウ外交通商部国際経済局環境科学協力官が首席代表として出席します。議題については、地球規模の環境問題、日韓両国の環境政策、更に北東アジア地域の環境協力に関して議論が行われる予定です。なお、参考までに申しますと、この合同委員会は平成5(1993)年の日韓環境保護協力協定に基づいて設置されたもので、これまで9回、東京とソウルで交互に開催されており、明日開かれるものが第10回目です。特に今回の議題の中では、北東アジア地域における環境協力の体制をどう構築していくかが重要なテーマになろうかと思います。
(問)先程、中国が日程を発表したのですが、改めてBDA(バンコ・デルタ・アジア)問題をきっかけに六者会合も遅れている状況の中で、それについての受け止めを。
(報道官)初期段階の措置については、2月の合意に基づいて4月には本来実施されていなければいけなかったものです。それが3ヶ月近く遅れて、現在、寧辺の核施設等の稼働停止、封印の話が動き出し、それに合わせてIAEAの方も理事会の承認を経て、監視・検証のための専門家チームが今、北朝鮮に入ろうとしています。
何度も申し上げている通り、BDA問題等で初期段階措置の実施が大幅に遅れてきたということは、日本の立場からは大変遺憾なことであると受け止めております。速やかに初期段階措置を実施していく必要があると思っています。
その上で、次の段階でどのような措置を、どういう形でとっていくのかということについて、更に具体的な詰めの作業を急ぐ必要がある。ある意味では、失われた時間を取り戻していかなければいけないと思っています。来週の首席代表の会議は、初期段階措置の実施を改めて確認しつつ、次の段階に向けての作業に入っていく重要な機会になるだろうと思います。また、今後の作業の段取りについて作業部会の開催、あるいは本来の六者会合の開催、更には2月の合意で触れられている閣僚レベルの会議をどうしていくのかといった今後の作業の段取りも合わせて、来週の会議において十分、話し合いをしてほしいと思っています。
(問)今の六者会合に関連して、次回、次の段階に向けて色々と話し合うということになっていると思います。日本政府として何に最重点を置いて臨むのでしょうか。
(報道官)2月の成果文書の中でも明らかにしている通り、次の段階の措置として、「全ての核計画の完全なる申告」、それから「黒鉛減速炉及び再処理工場を含む全ての既存の核施設の無能力化」を含めることで合意しています。また、その流れの中で、初期段階の措置の一つとして、全ての核計画の一覧表について、北朝鮮側が五者と協議することが合意されています。この一覧表についての協議は、先程触れた「全ての核計画についての完全な申告」につながっていくものですが、今回の会合では、そういった流れをきちんと作っていく必要があるのではないかと思います。
(問)日本政府の対処方針の中の、拉致問題と北朝鮮支援の関係について、改めて見解をお聞かせ下さい。
(報道官)日朝の国交を正常化する中で、拉致問題の解決は不可欠です。次の段階の措置として、残り95万トンのエネルギー支援の話がありますが、日本としては拉致問題の進展を受けて、このような支援に参加していける形を整えていきたいと思っています。
つまるところ、この六者会合全体の目的は、朝鮮半島を非核化した上で、北東アジア地域における平和と安全のメカニズムを六者の間で整えていくプロセスと理解しています。その中で日朝の国交を正常化するということは、全体の中の不可欠の一部ですし、バランスのとれた形で全体の議題、議論が進行していくことが大事だと思います。そういう意味でも、ご指摘になられた拉致問題を含む日朝の国交正常化について、きちんと具体的な形で、成果のある形で進展していくための話し合いの場というものが設けられていく必要がある。それは他の作業部会も同様に重要ですけれども、全体としてバランスの良い形で進行していくことが重要だと思っています。
(報道官)明日、第21回参議院選挙の公示が行われますが、在外公館投票に関して改めてご紹介します。在外公館における投票は平成12年に始まり、今回で6回目になります。公示の翌日である13日(金曜日)から、在外200公館において投票が開始されます。過去で最大規模の公館数での投票になります。在外選挙選挙人名簿への登録者の数は、先月末時点で10万7000人と、登録者数の方もこれまでで最大の数です。今回の在外選挙から、これまでの比例代表選挙に加えて、初めて選挙区選挙、或いは補欠選挙も実施されます。これに伴い、在外公館が取り扱う票の数も倍増するので、円滑・安全・公正な形で投票が取り行われるよう、また、在外公館で預かった票が、確実に日本まで運搬されるよう、外務省を上げて万全の体制で望みたいと思っています。前回の投票数は2万人を少し超える数でした。来たる選挙では、在外選挙登録された方々が、一人でも多く投票に足を運んでほしいと思います。
(問)日本の国際海洋法裁判所への提訴についてですが、ロシア当局の一部の報道にもありましたが、船長を残して16日以降に返すという話もあるのですが、その際の訴訟の対応はどのようになるのでしょうか。
(報道官)「第88豊進丸」、「第53富丸」の両方の関係で、国際海洋法裁判所に早期釈放の提訴を行っておりますが、今のところロシア側からは船舶・船員の釈放の時期、或いはその方法について、具体的な回答がありません。具体的な回答があれば当然、その内容について検討することになりますが、満足な解決を得ることが出来なければ私どもとしては、粛々と国際海洋法裁判所の判断を仰ぎたいと思っております。
なお、提訴は先週6日(金曜日)に行いましたが、海洋法裁判所の規則によると、この種の早期釈放事案では、15日以内に口頭弁論が開かれることになっておりますので、来週の後半には行われることになります。また、口頭弁論後、14日以内に判決を出すという規則になっておりますので、8月の初めには判決が出ることになります。勿論、その前にロシアから釈放について満足すべき回答があれば当然、それを考慮することになると思います。
(問)「満足すべき回答」についてですが、船長を除いて船員を返すというような対応をした場合には、どのようになるのでしょうか。
(報道官)船員及び船体の両方の早期釈放を提訴の対象にしております。「満足すべき回答」とは何かですが、先ずはロシア側から保証金を設定してくることになると思うのですが、その額が十分合理的なものであるかどうか。また、船長についても、現地における身柄の拘束、抑留が長引く中で、どの範囲まで真に取り調べに必要なものか、合理的な範囲での説明があるかどうか、ということになります。いずれにしろ、今、申し上げたとおり、来週の後半には口頭弁論が開かれます。勿論、この1~2週間の間に好ましい方向に事態が進展していくのであれば、それはそれで大変結構だと思います。
なお、国際海洋法裁判所に提訴された過去の早期釈放事案は1999年に裁判所が出来てから7件あります。その内5件については釈放義務を認める判決、つまり、原告側の勝訴、残りの2件については口頭弁論に至る前に釈放等されたケースです。いずれにしろ、今回の提訴は、戦後、初めて日本が原告となる国際裁判ですので、きちんとした形で対応していきたいと思います。
(問)六者の首席代表会合などの、今後の日程は如何でしょうか。
(報道官)議長国・中国が開催に向けて日程を調整中です。今日の中国外交部の記者会見では、7月中旬の開催に向けて調整中であると発表したようです。まだ全ての国からの回答が出揃っていないため、日程の確定を得ていないやに聞いています。いずれ、近いうちに日程の確定が得られるかとは思っていますが、他方で昨日のIAEAの特別理事会でIAEAの監視、検証チームの派遣について、理事会の承認が得られましたので、IAEAとしての作業をいつでも行える状況にあります。日本としては、六者会合の開催とは別に初期段階の措置、とりわけ寧辺の関連する核施設の活動停止、封印について、速やかに措置が取られることを強く求めたいと思います。
(問)近く開かれる六者の首席代表会合ですが、日本としてどのようなところがポイントだと思いますか。
(報道官)何度も申し上げている通り、初期段階の措置について、当初予定されている期限が大幅に遅れて、未だに実施に至っていないという状況は大変遺憾であると思います。この間、北朝鮮サイドからはBDAの送金の問題がある、或いは韓国から送られる重油の第1陣の輸送、到着を待つといった考えが表明されてきていますが、我が方からは、そのような状況の中で初期段階の措置が速やかに実施される必要があるということを常に繰り返し申し上げて来ました。その立場は現在も変わっておりません。最近に至り、様々な方面から北朝鮮による初期段階の措置の早期実施についての考えが伝えられておりますので、早期に着実に寧辺の核施設の活動の停止、封印の措置が取られる、そして、IAEAの専門家による監視・検証がきちんと行われることを見極めていきたいと思います。その一方で、3月の会合では、「次の段階の措置」についての話合いが全く行い得ないまま終わっていますので、早い段階で「次の段階の措置」について、6者としてどのようにするかということを話し合う必要があると考えております。
(問)日朝の作業部会についても早期再開が取り沙汰されているところですが、それについて北朝鮮側から何らかの報告があるのか、若しくは日本側から今後どのような対応を求めていくのでしょうか。
(報道官)日朝のバイ会合について、先のハノイでの会合では、あのような形で全く進展のないまま終わっていますので、次回は成果のあがるような具体的な話合いの場を持ちたいということを様々なルートで北朝鮮側に伝えています。ご案内のとおり、ヒル国務次官補が先に北朝鮮を訪問した際に日本の考えを伝えたと言っておりますので、メッセージは確実に伝わっていると思います。日朝のバイの話し合いの場では当然、拉致の問題も出て来ますので、是非、北朝鮮側が誠実に具体的な話し合いが出来るような形で対応し、早期にこれを再開する必要があると思っております。
(問)ヒル国務次官補が週末にも日本に来るということで調整しているようですが、具体的な日程等は決まっているのでしょうか。
(報道官)その種の報道がなされていることは承知していますが、具体的な訪日日程が固まっているということはありません。先程、申し上げた北京での六者会合の日程の確定状況を見ながら米国の方も訪問計画を固めていくことになるのかなと思っております。
(報道官)第6回日韓ハイレベル経済協議が、今週11日(水曜日)及び12日(木曜日)にソウルで開催されます。日韓ハイレベル経済協議は、日韓間の経済関係全般について包括的に話し合う枠組であり、首席代表として日本側から、河野雅治外務審議官、韓国側からは趙兌烈(チョ・テヨル)外交通商部通商交渉調整官が、それぞれ出席する予定です。議題に関しては、「日韓両国のマクロ経済の現状と政策」、「日韓両国の通商政策」、「日韓EPAを含む両国間の経済分野の協力」、「環境・気候変動問題」等です。尚、先月の始めに韓国の済州島で日韓外相会談がありましたが、その場で7月11日にハイレベル経済協議を開くということについて合意していました。今週、その合意に沿った会議がソウルで開催されるということです。
(問)ハイレベル経済協議ですが、日韓EPAは、現在、中断しておりますが、その再開に向けた話し合いということでよろしいでしょうか。
(報道官)ご案内の通り、日韓間のEPAを巡る話し合いは、2004年11月を最後に途絶えています。当時の段階で、このEPA交渉の進め方について意見の相違があるということで、以後、開かれておりません。これは、外相会談でも言及されたことですが、日本側は、具体的な問題については交渉を通じて解決して行くということで、「いつでも交渉の再開に応じる用意がある」という立場をとってきております。
これまでも、今、申し上げたハイレベルでの日本側からの働きかけに加え、事務レベルでも、日韓EPAの話し合いを再開する必要があるということは言ってきております。今回の会議でもEPAにおける相互の考え方については、意見を交わされるだろうと思います。
(報道官)今月6日(金曜日)、外務省において第4回日・イラン人権対話が開催されます。この人権対話には、日本側から木寺昌人総合外交政策局審議官(国連担当大使)、イラン側からはターヘレ・ナザリ外務大臣顧問兼外務省国際女性・人権局長が出席します。
日・イラン人権対話は今回で4回目ですが、これまでの3回は、いずれもテヘランで開催されています。前回、第3回は2004年6月でしたので、ほぼ3年ぶりの開催となります。この対話の場では、人権問題に関する基本的な立場について互いに説明をし、人権の促進に向けた二国間の協力の可能性、或いは国連の人権理事会及び国連総会における人権分野での協力について話し合う予定です。
(問)先程、麻生大臣が宮城・嘉手納町長に感謝状を授与されましたが、この感謝状の意義付けと、今までこういうものがあったかどうかを教えて下さい。
(報道官)嘉手納には極東最大の米軍の飛行場があり、宮城町長は平成3(1991)年の町長就任以来、嘉手納町と在日米軍の相互理解、友好促進に尽力されてきたということで、このほど外務大臣より感謝状を授与したという経緯です。
過去に同様の例があるのかという点については、直近で今年の5月、三沢市長がお亡くなりになられた際、大臣から同市長に感謝状を送っています。三沢市長は在職21年、基地の安定に尽力してこられたということで、感謝状を差し上げています。
(問)沖縄の自治体に対しては、過去、このような感謝状を授与した例というのはあるでしょうか。
(報道官)沖縄の例については、詳らかに致しません。
(問)米国のジョゼフ核不拡散担当大使が、原爆投下を容認するかのような発言を記者会見で行ったという報道がありますが、外務省としての事実関係の把握と受け止めをお願いします。
(報道官)ジョゼフ核不拡散担当大使が、昨日、ワシントンでロシアとの核不拡散に関する協議の後、ロシアの外務次官と一緒に記者会見をされ、その際、質問を受ける形でジョゼフ大使から、ご指摘になられたような発言があったようです。私も記者会見の記録等は読みましたが、その中で、「結果として」ということだと思いますが、「戦争が続いた場合に、数百万の日本人が亡くなったかもしれない。それをむしろ未然に防ぐことになった」という意義を指摘し、「ほとんどの歴史家が、そういう評価について同意して頂けるのではないか」という発言だったように思います。
このジョゼフ大使の発言については、繰り返し述べていますように、広島、長崎に対する原子爆弾の投下というものが、如何に悲惨なものであったかということに、むしろ思いを馳せて欲しかったと思います。そうした人道上、誠に遺憾な事態を生じさせたことからこそ、二度と核兵器が使用されることがないよう、我々は核廃絶に向けた努力をしていかなければならないと考えます。
昨日、国際法上の問題に触れましたが、原子爆弾という兵器の持つ殺傷性、破壊力からして、原子爆弾の投下は国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないというのが、私どもの理解です。そういう点からみても、ジョゼフ大使の「ほとんどの歴史家がそう思うだろう」という発言については、果たしてそうだろうかとの感じを持ちます。
(報道官)今週の5日(木曜日)、6日(金曜日)、豪州のケアンズで開催されるAPECの貿易担当大臣会合についてお知らせ致します。この会合に、外務省からは浜田大臣政務官が出席されます。この貿易担当大臣会合については、今年の9月、シドニーでAPECの閣僚会議・首脳会議が行われますが、これに向けた、ある種の方向性を示す重要な会合であると受け止めています。
この会合では、主にWTOドーハ・ラウンドの交渉の問題、地域経済統合のあり方、更にはAPECの枠組で推進されている貿易円滑化等について、議論が行われる予定です。尚、経産省からは甘利大臣が出席予定と聞いています。
(問)久間防衛大臣が、ご自分の発言を理由に辞任され、後任の大臣には小池百合子氏が就任するという報道があります。原爆に関する発言で辞められたということで、この問題に関する外交上の日本政府としての立場というのは、何かあるのでしょうか。
(報道官)今朝も、麻生大臣の方から原爆の問題についての外交上の立場についてお話になっていましたが、その際に言及された国際法上の考え方について、私どもが拠り所として理解しているのは、1996年に国際司法裁判所(ICJ)が国連総会の求めに応じ提出した、核の違法性についての勧告的意見です。その際の国際司法裁判所の意見は、「核兵器による威嚇又はその使用は、武力紛争時に適用される国際法の規則、特に人道法の原則と規則に、一般的には反する」というもので、それに照らし、日本政府は、広島、長崎に対する原子爆弾の投下は、国際法の思想的基盤である人道主義の精神に合致しないと考えています。
改めて申すまでもなく、原子爆弾の投下は、極めて広い範囲に害が及ぶ、人道上、極めて遺憾な事態を生じさせるものであるということから、そういう原爆の悲惨さというものにも鑑みて、今、申し上げたような国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しないという立場をとっています。今朝、麻生大臣が国際法上の考え方に触れた背景は以上のようなことであると思います。
(問)久間大臣の後任に小池百合子氏という話が出ていますが、今、首相補佐官として(日本版)NSC(国家安全保障会議)を担当されるのが小池氏の役割だと思います。今後、NSCの問題は、小池氏が防衛相になることによって、どのように進めようとお考えになっていますか。
(報道官)内閣を中心に、NSCのあり方について議論を続けて頂けると思います。外務省としては、内閣総理大臣の指導の下で必要な協力をしていきます。(空席となる補佐官ポストをどうするかという)人事上のことについては総理のご判断をお待ちするということに尽きると思います。
(問)原爆投下に対する政府の立場ですが、これは国際法に照らして違法であるという立場と理解してよいのでしょうか。
(報道官)核の違法性ということに関して、国際司法裁判所は、先程申し上げたような勧告的意見を出しています。政府は、そういう意見に照らしても、原子爆弾の投下は国際法の思想的基盤にある人道主義の精神に合致しない、という受け止め方をしております。更に、そういう立場から、人類に多大な惨禍をもたらす核兵器が、将来、二度と使われることがないように、核軍縮に向けた外交的努力が、今、求められているという理解です。
(問)今回の久間大臣の発言に関して、外交的には「日本は核兵器の廃絶に向けて努力していく」ということですが、その一方で「米国の核の傘に依存するという現実が、こういった発言を生んだのではないか」という指摘もあります。その点は如何でしょうか。
(報道官)久間大臣のご発言の真意は、大臣ご自身が、その後、説明しておられますので、そのまま受け止めたいと思います。核爆弾についての国際法の思想的基盤にある人道主義の精神は、爆弾そのものが持っている悲惨さ、惨禍の広がりから、国際司法裁判所の意見という形でも示されています。そのためにこそ、全体としての核軍縮努力というものが求められていると思います。日米関係、更には日米安保体制については、政治上の現実的な対応の問題としてある訳ですが、その一方で、究極的には、核兵器廃絶の方に向かって進んでいくことが、外交上の長期的な課題であると受け止め、政府としてそのような努力を行ってきているとご理解頂きたいと思います。