(問)日朝作業部会が、3月7日、8日にハノイでと発表されましたが、日本代表団はいつ頃ハノイに入るのか、何人くらいなのかなど、細かいことをもう少し教えて頂ければと思います。
(報道官)ハノイに具体的にいつ入るのかは、これから確定しなくてはいけないことだと思いますが、6日に事前の準備的な打合せの会合を持つということで合意をしていますので、間に合うようにハノイに入るということを前提に日程を組むことになると思います。日本側の代表は、原口日朝国交正常化交渉担当大使ですが、アジア大洋州局から伊原参事官が補佐をするということでハノイに赴きます。佐々江局長は今回の会合には出席しません。
(問)課長は。
(報道官)その他の構成については、これから詰めていくということですが、原口大使を伊原参事官が補佐するというのを基本的な枠組みとして代表団を編成するということになります。
(問)3月1日から6日まで、ネグロポンテ米国国務副長官が来日されますが、具体的にどういう日程でどういう人と会われるのか教えてください。
(報道官)日程の詳細は手許に資料がないので申し上げにくいのですが、大臣への表敬、谷内事務次官などとの会見が行われると承知しています。会見では、アジア地域情勢を中心に意見交換をし、日米共通の関心事項を幅広くカバーして頂きたいと思います。副長官は、正式に就任したばかりで、最初の訪問地として日本を選ばれたということもあり、私どもとして大いに歓迎したいと思います。
(問)ネグロポンテ副長官のカウンターパートというのは、谷内事務次官になるのですか。
(報道官)日米それぞれ役所の仕組みが違いますので、誰をもってカウンターパートとするのか、必ずしも断定的には言いにくいところがあります。
(報道官)スリランカにおいて外国大使等が搭乗したヘリが砲撃を受けた件について、その後の現地からの連絡についてお知らせします。スリランカ時間で本日午前9時、日本時間では午後12時半、スリランカ政府のアレンジによって同国東部の視察に向かっていたヘリ数機のうち、米国、イタリアの大使及びスリランカ政府の災害管理人権大臣が乗ったヘリが現地の空軍基地に着陸した際、迫撃砲2発を受け、両大使及び災害管理人権大臣が軽傷を負ったとのことです。日本の荒木大使は後続のヘリに乗っていましたが、こちらは無事だとのことです。視察団の一行は、しばらく空軍基地の周辺で安全な場所を求めて待避していましたが、その後、日本時間の午後3時過ぎに首都に引き返すため出発するという連絡が現地から入ってきています。今回の迫撃砲による攻撃を行った犯人といいますか組織については、まだ特定されていませんが、こういう形で外交団の使節に対して攻撃を仕掛けてくるという卑劣かつ許し難い行為に対して、日本政府として断固とした非難の立場を表明します。いずれにせよ、こうした攻撃は、いかなる理由であれ正当化できないということで、然るべく、犯人が特定・逮捕され、法の裁きを受けることが必要であるという立場を表明したいと思います。
(問)荒木大使も一緒に引き返したのですか。
(報道官)そうです。
(問)スリランカの東部は政府の支配地域なのですか。
(報道官)ご案内の通り、タミール・イーラム解放の虎(LTTE)という反政府組織が、スリランカの北部の他、一部東部を拠点としていたわけですが、今年1月に、東部ワーカライ地域において、LTTEの拠点を政府軍が奪還したということがあり、そのワーカライ地域における奪還後の状況を視察しようということで、スリランカ政府がこの視察を企画し、主要国の大使ということで、先程申し上げました米国、イタリア、日本の他にドイツとフランスの大使もこの視察に加わっていますし、国際機関の代表の方々も同じくこの視察に加わって、数機でこの現地視察に赴いたわけです。ワーカライ地域から少し離れたところにバティカロワ空軍基地があり、そこに着陸し、そこからワーカライ地域への視察を行う予定であったわけですが、バティカロワ空軍基地に着陸した時点で1機目のヘリが砲撃を受けたということです。
(問)正確には何機だったのですか。
(報道官)現地から「数機で」と連絡を受けており、正確に何機であるのかの情報は手許にありません。
(問)日朝の作業部会について、麻生大臣は日朝と日米が同じ時期に開催されるとおっしゃいましたが。
(報道官)大臣は(今朝の記者会見で)、「似たような時期に行われる」という趣旨の発言をされたと承知しています。私から申し上げられるのは、日程については、引き続き調整中であるということです。米朝については、3月の5日、6日に開催されるとの報道がなされていますが、先程の米国国務省の記者会見でも、日程は決まっていないということを報道官が述べています。各作業部会については、現時点では、日程を含めて、なお協議が行われているとご理解頂きたいと思います。
(問)協議は、どこで、調整しているのですか。
(報道官)基本的には北京で外交ルートを通じて連絡を取り合っているということです。
(問)北京で、日朝それぞれの担当者が会っているのですか。
(報道官)会ってといいますか、連絡の取り方は色々あると思いますが、現時点で申し上げられるのは「連絡を取り合っている」ということです。
(問)場所については。
(報道官)それも含めて協議を行っているところです。
(問)日朝の作業部会の現時点での調整状況をお願いします。
(報道官)ご案内の通り、30日以内に各作業部会を開催するという合意ができていますので、それに沿って調整中です。日朝に限らず、他の作業部会についても、現在、調整が進められていると聞いています。
(問)今のところまだ決まったという発表ができるような状況ではないということでしょうか。
(報道官)そういう段階に至っておりません。
(問)今日中に発表されるということはありませんか。
(報道官)ないと承知します。
(問)日本側のメンバーというのは、だいたいこういう形で、団長が誰だとかの基本方針というのは決まっているのですか。
(報道官)代表をどうするかや開催場所をどうするか、そしてご質問の日程を含めて、全体をどのような形で実施するかということについて調整中です。もうしばらく調整を続けるという状況です。
(問)明日から、ロシアのフラトコフ首相が来日し、明後日、安倍首相と会談しますが、特に北方領土問題においてはどのような方針で臨むのかというのをもう一度言って頂いて、それをその後どのように結びつけたいのか、その辺はどうでしょうか。
(報道官)フラトコフ首相の明日の訪日については、今日、大臣とフリステンコ産業・エネルギー大臣が会談し、経済関係について、幅広く協力関係を築いていけるような議論ができたと聞いています。それを踏まえ、フラトコフ首相との話し合いを行いたいと思っています。基本的には、経済・貿易面での協議、実務分野の協力をどのように進めていくかということについて、既にある程度積み上げてきた事柄がありますので、それを踏まえて話をするということになると思います。領土問題についてご指摘がありましたが、度々申し上げていますが、フラトコフ首相自身は経済分野を中心に見ておられる方ですので、領土問題について突っ込んだやり取りが行われるということは想定していませんが、日本側としてこの問題を取り上げるということは当然考えています。基本的な立場として、日露双方にとって受け入れ可能な解決策を見出すべく、鋭意努力していこうということを両国で確認するということになるだろうと思っています。
(問)日朝の作業部会にどのような進展があるのかということと、チェイニー副大統領が来日していますが、改めて、どのようなことが一番重要なのかということについてお願いします。
(報道官)日朝の作業部会については、各作業部会を30日以内に開催するという六者の合意を踏まえて準備中であり、固まり次第ご報告したいと思います。チェイニー副大統領の関係では、本日の官房長官とのお話の中でも出ていましたが、東アジア情勢全般を話す中で、日朝関係について日本の立場を官房長官の方から説明し、副大統領の方から理解するという言葉を頂いたということです。特に、拉致問題について、副大統領ご自身も強い関心をお持ちですし、明日、拉致被害者のご家族ともお会いになるようですが、この問題についての日本政府の立場について、深い理解をして頂いていると受け止めています。
(問)拉致被害者の方と会うことで、大統領がこちらに来てから会う日程が組まれたのではないかと理解していますが、一方で、久間大臣の方から「会えないか」とリクエストがあったことに関しては「日程は固まっている」「タイトなので組めない」というのがあって、この辺の部分で齟齬があるという認識はお持ちでないでしょうか。
(報道官)副大統領の日程について、米側で検討する中で拉致被害者のご家族と出発間際にお会いする行事が急遽組み込まれたと聞いています。米国としては、全体の日程をやりくりする中でそのような判断をしたということだと思います。たぶん、出発間際のかなり忙しい中での会見、面会ということになると思いますが、逆に言いますと、それだけ副大統領の、拉致被害者家族とお会いすることについての強いご意向があったのかと思います。
(問)その経緯ですが、家族会からリクエストがあったのに対し副大統領が会うということですか。
(報道官)私も、細かい経緯は承知していないのですが、家族会の方で、機会があれば会いたいというメッセージを伝えていたように聞いています。そうした中で、副大統領サイドは日程的にかなり難しい状況だったようですが、出発間際で良ければということで、急遽そういう日程が入ってきたのかと思います。
(問)それはいつ入ってきたのですか。
(報道官)数日前ではなかったかと思います。
(問)拉致を含めた日朝関係について、日本の立場を副大統領に話すということは、いつも話しておられたと思うのですが、今回、六者の進展を受けて、米朝が非常に対話モードになっているのだけれども、あまり日本を置いていかないでくれといったような角度から米国に改めてお願いするということになるのですか。
(報道官)日本としては、拉致問題について進展がなければ経済・エネルギー支援は難しいという立場を説明し、先方はそういう日本側の事情について理解しているというやりとりです。
(問)一部報道で、ロシアに核燃料の濃縮を委託するために、二国間の協定交渉に入る見通しという報道がありましたが、この問題についての検討状況と、来週、ロシアのエネルギー担当相、首相が来ますが、この問題を取り上げられるかどうかについてお願いします。
(報道官)日露間においては、以前から、双方の原子力分野における協力について、様々な可能性があるということで話がなされてきております。先般、専門家レベルでの協議も行われたわけですが、現在協議中の事項ですし、相手国との関係もありますから、今どのような状況なのかということについて述べるのは差し控えたいと思います。一部報道で、日本起源の回収ウランをロシアで加工するという報道がなされていましたが、それについては、事業者の方々が様々な可能性を探求する中で出てきている話かと思います。フラトコフ首相訪日の際にこの件が取り上げられるかどうかという点ですが、現在、どのような議題について同首相と話をするのかは調整中ですし、予断は控えたいと思います。ただ、フラトコフ首相自身は経済を中心に見ておられる方ですので、サハリン・プロジェクトや太平洋パイプラインを含む日露のエネルギー協力については話題にはなるだろうと思います。特に、フリステンコ産業エネルギー大臣が数日前から訪日されるということですので、そうした資源エネルギー分野での協力ということが主要な話題になるだろうとは思っています。そうした中で、原子力協力という特定のテーマがどのような形で取り上げられるのか、あるいは取り上げられないのかについては、今の時点では予断を控えたいと思います。
(報道官)本日2月20日出発の日程で、有馬中東和平担当特使が、エジプト、イスラエル及びパレスチナ自治区を訪問します。今日の昼過ぎに出発し、27日まで現地を訪問する予定です。パレスチナの問題については、特にハマスとファタハの間で、去る2月8日、サウジアラビアの仲介により、挙国一致内閣を成立させるということで合意ができており、現在、ハニヤ首相の元で組閣の作業が行われています。昨日には、現地において、米国のライス国務長官とオルメルト・イスラエル首相及びアッバース・パレスチナ自治政府議長との間で三者会談が行われています。このような状況を踏まえ、有馬特使が現地を訪問し、各国、各地で関係する要人と会うということは、現地での直近の状況についての情報を集めるということ、更に、日本としてのプレゼンスを示すといいますか、強い関心を伝えておくという意味で意義があるものと思っています。
(問)日朝の作業部会の調整の現状を、お話できる範囲でお願いします。
(報道官)今朝、外務大臣の方から、調整は順調に進んでいるという話があったようですので、そのように理解しています。具体的にどのような状況かという点については、現時点では未だご説明する状況に至っていないと理解しています。いずれにしても、北朝鮮側とは30日以内の開催ということでは原則的な合意があるわけですので、細かい点を含め、引き続き調整を進めていくということになろうと思います。
(問)それは、外務報道官も知っているけどこの場では言わないということですか。
(報道官)私も知っていることと知らないことがあるかと思いますが、現在の作業状況については、未だご説明する段階に至っていないとご理解頂きたいと思います。
(問)決まり次第発表という形になりますか。
(報道官)具体的な日時、場所、代表をどうするかということを含め、話が煮詰まった段階でご連絡したいと思います。
(問)発表はいつ頃になりそうですか。
(報道官)その段階が来たらお知らせする、ということ以上に現時点で申し上げられることはありません。
(問)北朝鮮側との調整というのは、どの外交のパイプといいますか、どういった所を通じて北朝鮮側と接触、アクセスしていらっしゃるのでしょうか。
(報道官)基本的には北京において連絡を取り合うことになります。
(問)北京のそれぞれの大使館の間で。
(報道官)大使館といいますか、北京には連絡を取れる先方の事務所がありますので、それとの間で連絡を取り合うことになります。
(問)取り合ってはいるのですね。やり取りは成立している。
(報道官)そうご理解頂いて結構です。
(問)今日、大臣の閣議後の会見のお話の中には、期日、場所、人選についてのお話が出たのですが、人選については、日本側がほぼ固まってきているということですと、これまでの私の理解では、当然、相手方のメンバーとのカウンターパートということになりますから、日本側が固まってきているということは、向こう側も固まってきているという理解でよろしいでしょうか。
(報道官)その点も含め、いずれ具体的にお知らせできる段階が来れば発表したいと思います。
(問)六者会合で合意した5つの作業部会ですが、設置に向けた関係国の調整というのはもう始まっているのか、あるいはまた、どういう形で進めていくのかについてお話を伺ってよろしいでしょうか。
(報道官)六者会合で5つの作業部会が設置され、30日以内に開催するということになっていますし、次回の第6回六者会合が3月19日からということですので、当然、早急に開催に向けた作業に着手するということになると思います。ある意味では、六者会合が今回北京で終了した時点から、作業部会の開催に向けたプロセスが始まっていると受け止めて頂いて差し支えないと思います。
(問)作業部会の日本側の代表者というのは、5つの作業部会いずれも外務省から出ると考えてよろしいですか。それとも、他の省庁の起用も考えられるのでしょうか。
(報道官)5つの作業部会全てに日本側から出席するということではないと思います。例えば、北朝鮮と米国の関係正常化に関する作業部会について日本側が出席するということはまずないだろうと思います。日朝を含む残りの4つの作業部会については、それぞれ関係者が参加するということになると思いますが、今の時点では、開催の時期、場所、代表のレベル・構成をどうするかということについては検討段階と受け止めて頂きたいと思います。
(問)今のお話からすると、日本からの作業部会の参加というのは、米朝はちょっとないと、他の部会には出席があるだろうという見込みなのですが、そうしますと、逆に、日朝の正常化の部会に参加する国というのは、現在どういうところが想定されているのでしょうか。
(報道官)基本的には、日本と北朝鮮との間の関係正常化について作業を行う部会ですので、第3者といいますか、第3国が参加することについては想定されておりません。他方、六者の首席代表者会合の場、本会合が行われる段階で、それぞれの作業部会の進捗状況を報告するということになっていますので、仮に作業部会の段階で第3国が参加していないとしても、作業結果が報告されるということで、六者会合代表者のレベルでは、それなりの意見は交わし得ると思います。
(問)首席代表会合は局長級及び次官級ということで構成されていると思うのですが、部会は日本の官僚でいうと、例えば参事官級であるとか審議官級であるとか、その辺のクラスのイメージというのは、何か今おありでしょうか。
(報道官)全て相手のあることですので、一方的にレベルを確定するということはできないと思います。北朝鮮側との間で、各々どういうレベルで協議をするかということを早急に詰める必要があると思います。
(問)合意文書の中にある、「米国によるテロ支援国家指定の解除作業への着手」という項目ですが、拉致問題を進めるという観点から、日本がこの盛り込みを求めたという話があるようなのですが、こういう事実というのはあるのでしょうか。
(報道官)どこからどういう形で本件項目が出されたのかという点について、私は特段の情報を持っていません。基本的に、その部分については、米国及び北朝鮮の間で話が行われたと思いますし、テロ支援国家指定の解除問題はもともと米朝間での懸案事項の一つであると受け止められていたわけですので、そのことを事実として書き込んだものであると受け止めています。大事な点は、直ちにテロ支援国家指定を解除するということではなく、それに関わる作業を開始するという合意ですので、今後、様々な要素を勘案しながら作業が行われるだろうということです。その際には、拉致問題の解決も重要な要素の一つとして考慮されると考えています。
(問)テロ支援国家指定の件ですが、米国の方から、解除にあたって拉致問題の解決とリンクしているというような言質を得ているという理解でよろしいでしょうか。
(報道官)米国がテロ支援国家の指定を行う際に、拉致の問題についてこれを重要な要素の一つとするという決定を行っているわけですので、今後の解除に関わる作業の中で重要な要素として考慮されていくのは、いわば当然のことであると思っています。随時の米国側とのやり取りの中で、様々なことについて話が行われていますので、その辺についても、日米間で相互の理解に齟齬があるとは思っていません。
(問)今回の合意文書の中に、現有の核兵器に関しての記述及び濃縮ウランに関しての記述がないということに関して、党あるいは政府の中からも、一部不安の声があるようですが、この辺に関しての解釈は。
(報道官)今回の合意文書自体は、一昨年9月の共同声明を実施するためのものであり、その共同声明における約束を真剣に実施するということを六者がこの合意文書の冒頭で述べております。翻って、一昨年9月の共同声明をみますと、「北朝鮮による全ての核兵器及び既存の核計画の検証可能な放棄を行うこと」が目標の一つであると明確に書かれており、そのことを実施するための合意文書であるということですから、全ての核兵器及び既存の核計画が放棄されることは、今回の合意文書の前提になっていると受け止めるべきです。逆に言いますと、一昨年9月に合意されていることをもう一度ここで書き込むということは、それについて再度交渉したような意味合いになりますので、むしろ今回はそのことを敢えて書き込む必要はないというのが、合意文書を作成する上での当然の前提であったということです。もう一点は、今回の合意文書の第4章の冒頭に書いてありますが、「北朝鮮による全ての核計画の完全な申告の提出」、これは初期段階の作業に続く次の段階の措置として書かれています。私どもは、「全ての核計画の完全な申告の提出」という中に北朝鮮が保有する核兵器が含まれることは明らかであると受け止めていますので、この面からしても、既存の核兵器等について個別の言及がないことが文書上何らかの欠落を意味するとは全く受け止めていません。
(報道官)昨2月12日、ベン・ヒル氏が著作した「Princess Masako」という本に関し、著者及び出版社に対し、上田駐オーストラリア大使発の書簡及び渡辺宮内庁侍従長発の書簡を手交の上、抗議を行い、先方に対し、謝罪及び速やかに適切な措置をとるよう強く求めました。この「Princess Masako」は、皇室に対する事実無根の侮辱的・抽象的な内容を有する極めて問題の多い書籍であったために、今回の抗議を行うに至ったものです。なお、同じ2月12日、上田駐オーストラリア大使より、グレイ豪州外務貿易省副次官に対し、本件に対する我が国の取り組み、考え方等について説明の上、我が方の重大な懸念を伝達しました。
(問)配布された資料の日付は2月6日になっているのですが。
(報道官)手紙を書かれたのは2月6日ですが、それを現地に届け、実際に先方に渡して抗議の旨を伝えたのは昨日2月12日のことです。
(問)「事実無根の極めて侮蔑的な記述」と書いてありますが、具体的にどこがどう違うのかということと、なぜこれがこの時期に宮内庁ではなく外務省なのか、外交的意味を含めたのかということをお願いします。
(報道官)まず後者の質問からお答えします。なぜ外務省からなのかという点ですが、この書物については、「日本国の象徴」であり「日本国民統合の象徴」としての立場にある天皇陛下をはじめとする皇室の方々、更には日本国民を侮辱するとともに、実態と乖離した皇室像を描いていることについて、日本政府としてこのような書物を看過することはできないということで抗議を行ったものです。同時に、渡辺侍従長より、天皇陛下の御公務について、明らかに誤った記述があるということで、特にハンセン病の件についての天皇陛下の御公務について、常にお側におられるお立場から、侍従長が公務内容を詳しく説明し、先方に回答を求めるという書簡が同時に発出されているという形になっています。内容に関して、どの部分が侮辱的なのか、どの部分が誤りなのかという点についてはいくつかあるわけですが、特に、御公務についての誤った記述というものは、渡辺侍従長の書簡、これは先程、宮内庁の方で記者に書簡の写しが配られているかと思いますが、そこに詳しく誤りの内容が記載されています。更に2・3の例ということで申しますと、例えば、186ページに、女性の着物について、これは従属の象徴であるという記述が見られ、これは事実を誤認していると思いますし、更に、200ページに、日本の政治制度に触れた中で、これを欧米スタイルのいじけた猿真似であるという記述があります。これについても、日本側の長きにわたる民主的な制度に対する明らかな事実誤認であり、かつ、極めて侮辱的な表現であると受け止めています。
(問)抗議の書簡を、なぜ著者と出版社だけでなくオーストラリア政府という著者の国を相手に出したのか、その点について教えて頂けますか。
(報道官)今申し上げたように、大使からグレイ副次官の方に伝えたわけですが、これは、日本国の象徴である天皇、更に国民に対する侮辱ということで、オーストラリア政府にもこのような事情を知っておいて頂くということと、同時に、日本政府として大変懸念しているということを、オーストラリア政府にも伝えておくことが適当であると判断したものです。
(問)先方の反応というのはどういうものだったでしょうか。
(報道官)昨日、先方に伝えたわけですが、先方は、本著作について特段の問題はあるとは考えていないという立場を述べつつ、いずれにしても、今後の対応については検討したいということを述べています。更にグレイ副次官は、豪州政府としては、一般論として、国家元首に対ししかるべき敬意が払われるべきだろうとした上で、本件については、出版社、著者と日本側との問題であるので、事態の推移を見守りたいといった反応でした。
(問)政府として特定の書物にこうした抗議をされたことというのはこれまで何度かあるのですか。
(報道官)最近の事例で、特に皇室関係ということで申しますと、2002年6月に、ジャパンタイムズの報道で、陛下の御公務に関連して、日本国民に触れ合う機会が少ないのではないかという、これは元駐日英国大使であったヒュー・コータッツィ氏の文章がジャパンタイムズに掲載されたものに対して訂正を要請するということがありました。更に最近の事例ですと、2005年6月、南ドイツ新聞に雅子様の結婚に対する考えについて、これを後悔しているといった趣旨の記事が出まして、これに関し、大使館の方から、先方に対して訂正を申し入れたという事例があります。過去、古きにさかのぼって全てどうだったのかという点までは調べていません。
(問)大概は皇室に限ってということなのですか。それとも、他にも。
(報道官)外国の様々な報道が、日本政府の立場あるいは総理、閣僚等についてコメントする中で、明らかに事実関係を誤っている、取り違えているというケースにおいては、しばしば我々は訂正を求めたり、意見投稿というのでしょうか、意見をそれぞれのメディアに伝えるということをしています。その意味では、むしろ皇室以外の関係で非常にしばしば行っていると申し上げた方が正しいと思いますが、皇室に関して、特に外国のメディアに限れば、先程申し上げた2件が最近の事例と承知しています。
(問)今挙げた訂正を求めた2つの例なのですが、2回とも、先方の反応というのはいかがだったのでしょうか。
(報道官)ジャパンタイムズの2002年6月の報道については、訂正といいますか、事実関係に関わる説明がなされています。2005年6月のドイツの新聞の事例ですが、これは翻訳上のミスがあり、内容が逆に捉えられたというケースだったようで、つまり、「雅子妃殿下が結婚を後悔しているということはありません」という関係者の話を、「後悔しています」と取り違えたという翻訳のミスがあったという説明がなされたと承知しています。
(問)事実関係の確認なのですが、出版社は、これもオーストラリアの出版社ということでよろしいでしょうか。
(報道官)ランダム・ハウス・オーストラリアという出版社です。
(問)北京での六者会合ですが、協議の方は難航したようですが、今日、とりあえず共同声明でまとまる見通しが立ったと日本政府として認識しているのでしょうか。
(報道官)今日、昼を挟んで行われた六者の代表会合では、合意文書の中身について基本的な合意があったと聞いていますが、正式な形では本国に一部の国は確認を取った上で、北京時間の午後4時半(日本時間5時半)に全体会合が開催され、そこで最終的に合意できるのかどうかの確認がなされると聞いています。
(問)5つの作業部会が設置されるという見通しになるのかと思われますが、この作業部会の設置あるいはメンバー、今後の進め方というものについては今どうなっているのでしょうか。
(報道官)この合意文書の中に、作業部会の設置についても所要の事項が記載されると思っていますが、実際に設置される作業部会がそれぞれどのような形で、どこで開催し、誰が出るのかということについては、これから個別に話をしていくということになるのかと思います。勿論、設置されるということになれば、出来るだけ早い機会に会合が開かれることが望ましいのは当然です。
(問)一時は協議がかなり難航したと思うのですが、流れについて今回はどうなのでしょうか。
(報道官)ご案内の通り、北朝鮮の非核化に向けて出来る限り具体的な措置についての合意をすること、更に、日本の場合には加えて拉致の問題についての解決に向けた具体的な話し合いをしなければいけないということで臨みました。事前に米国と北朝鮮がベルリンで会合する等の話し合いが行われ、比較的早く合意に到達できるのではないかという期待もあったようですが、実際に文言として合意内容を確認するということになりますと、それなりに様々な意見が出て難しい局面もあったわけです。最終的にはとにかくこの六者会合において合意を達成するという議長国中国始め、参加各国の思いが、徹夜も辞さずということで昨晩も遅くまで協議を行い、何とか受け入れられそうな文書が作成されました。昨夜、議長から改訂案が出された訳ですが、話し合いを前へ進めるということでは、参加六者がそれぞれ今回合意を達成できなければ、その後の局面は更に難しくなるという思いを共有して、合意に向けた最大限の努力が行われたと思っています。内容的にも評価できるものに近づいてきていると思っています。
(問)日本としては、大臣も仰ったように、まず最初に拉致の進展がなければ支援することはできないという話があったと思うのですが、初期段階の措置が履行された段階で、それでも尚かつ日本は出せないのか、日本としてどこならやるという見通しなのでしょうか。
(報道官)日本の基本的な立場については、拉致問題について具体的な進展が無ければエネルギー支援に協力することは出来ないということであり、この立場を一貫して主張し、それについて米国も中国もそれぞれ理解を示してくれていると受けとめています。それでは、将来どうなっていくのかという質問ですが、少なくとも現在の日本の立場それ自体が変わっていくことはありません。勿論我々としては拉致問題について具体的な進展が得られて、日本として協力が可能となるような状況が生まれてくることを強く期待しております。
(報道官)浜田外務大臣政務官は、来週2月12日(月曜日)からタンザニアで開催される「第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラム」に出席されます。このフォーラムは、我が国の対アフリカ外交の基軸であるアフリカ開発会議(TICAD)プロセスの一環として開催されるもので、日本政府も共催者に加わっています。フォーラム自体は、アフリカとアジアの間の貿易投資促進を図ることを目的に、アジア・アフリカ両地域の企業に対して商談の場を提供するとともに、アフリカのビジネス環境についての情報提供も行います。アフリカ53カ国、アジア12カ国から200社以上の企業が参加し、会議が行われます。アフリカの開発という観点からも重要な会議であると位置づけています。
(報道官)南米ボリビアにおいて、昨年12月末から断続的に豪雨が続いており、かなり被害が広がっております。現時点で、死者27名、被災者約10万人が出ている状況です。このような状況に対し、ボリビア政府からの要請を受け、約1,200万円相当の緊急援助物資を供与することを本日決定しました。緊急援助物資の中身は、テント、毛布、スリーピング・マット、浄水器といったものです。
(問)明日から六者協議がいよいよ再開されますが、改めて、日本政府が今回の六者協議に期待されている部分と、逆に課題といいますか、この部分が交渉の鍵になるのではないかという、焦点みたいなものを教えてください。
(報道官)たびたび申し上げている通りですが、六者協議において、朝鮮半島の非核化、北朝鮮による核兵器・核計画の放棄を実現するということ、加えて、日本の立場からは、拉致問題についても解決を図っていくというのが基本的立場です。一昨年9月の六者協議における共同声明に、実現すべき目標が定められていますので、その実現に向けて最大限の努力をするということが基本になります。特に焦点がどこにあるのかというお尋ねでしたが、ひとつは核の問題についての北朝鮮の対応、姿勢。昨年12月の協議においては、米朝間の金融問題がネックとなって全く進展を見なかったことを大変遺憾に思っていたわけですが、今回、具体的な進展を見ることができるかどうか。具体的な進展を見なければいけないわけですが、まずはこの点について、北朝鮮がどのような姿勢を見せるのかということに最大限着目をしたいと思います。そして、拉致の問題ですが、拉致の問題に限らず日朝間の諸懸案の解決に向け、やはり北朝鮮側がどのような姿勢をとるのかということがもうひとつの大きなポイントになると思います。そして、こうした日朝間の問題について、踏み込んだ形で話し合いを行う場を設けるということが是非とも必要であると思います。それが作業部会という形になる可能性もあるわけですが、今回の六者協議の期間において、バイの話し合いが行われる場を是非とも設けられるようにしたいと思います。全体として、六者協議が様々な課題、問題の解決にとって、有益な場として機能するということが極めて大切であると思います。明日からの協議においては、今申し上げたような事柄について具体的な進展を見るということ、ただ約束をするだけでなくそれを実行する過程というものをきちんと定めていく必要があると思います。
(問)今の、拉致の問題、バイなのですが、日朝間のバイが開かれるような環境作りとおっしゃいましたが、これは既にもう着手されていらっしゃるのか、もしくはこれから、北朝鮮に何らかのアプローチをすることをお考えになっているということなのでしょうか。
(報道官)日朝のバイの場を設けるということに関しては、昨年12月の協議の時点でも、日本としては基本的にそのような場を設けるということについてオープンであるというメッセージを送っていたわけですが、残念ながらそのような形にはならなかったということです。その後、議長国である中国をはじめ、六者協議の北朝鮮以外の国々と協議を重ね、日朝間のバイの場での話し合いというものが重要であるということを伝えてきましたし、私どもは十分な理解を得てきていると思っています。そういう意味で、日本の立場は変わっていませんし、議長国である中国が作業部会という形で提案をしていますので、そのような場が設定されるということを期待しています。
(問)日本が直接北朝鮮に、先日も次官が「お願いするわけではないけれども」ということを言っていたと思うのですが、直接連絡を取るということはあるのでしょうか。
(報道官)全体の議論をどのような形で進めていくのかという協議の枠組みに関わる議論の中で、作業部会をいくつか設けるというアイディアがありますし、その中に日朝の国交正常化に関する作業部会についても設けてはどうだろうかということで、議長の提案があるわけです。全体の枠組みをどのように進めるかという議論の中で、バイの話し合いの場をどのように設定するのかという話が出てくると思います。まあ、同じ会議場でずっと関係者が会議をするわけですから、前回12月の時もそうでしたが、北朝鮮の代表との接点という点で言えば、言葉を交わす機会も当然ありますでしょうし、各代表が集まったところで成り行きを見ていきたいと思います。
(問)北京入りした代表団の本日の行動として、予定として、例えば米国のヒル国務次官補は昨晩、今日北京入りした中国側もしくはロシア側ともバイで会う予定があるというようなことを言っていましたが、日本側としてはどうでしょうか。もう既に会っているのか、もしくは今晩これから会うような予定なのか。
(報道官)具体的に、現時点でどのようなスケジュールになっているのかということは、詳細は聞いていません。いずれにしても、会議が始まる前に、議長国である中国の武大偉外交部副部長とは会うでしょうし、その他の代表との個別の話し合いの機会も、順次設けられるのではないかと思っています。
(報道官)本日、平成18年度の補正予算が成立しました。外務省の補正予算について、ODA、非ODA含め総額1800億円ほどが認められ、重要な予算が多々盛り込まれいます。その中から一つ、従来ご紹介する機会がなかった項目ですが、国連民主主義基金への拠出というものがあります。この基金は一昨年7月に国連事務総長により設置されたもので、国連加盟国において民主主義を根付かせるための国際協力を行うものです。この基金に対する1000万米ドルの拠出が盛り込まれています。麻生外務大臣の外交演説においても、「自由と繁栄の弧」の形成を新しい外交の柱であるという位置づけをしていますし、民主主義あるいは人権といった普遍的価値に基づく外交を重視していくという観点から、今回の民主主義基金への拠出をとりわけ重視したものです。ちなみに、この基金は、通常5万ドルから最大50万ドルくらいの規模のプロジェクトを対象とし、民主主義制度を定着させる努力をしている国々に対して様々なプロジェクトを形成し、支援をしていくというものです。直近の時点では、この基金に対する拠出国は、欧米諸国を中心に26カ国、総額5400万ドルの資金が拠出あるいはプレッジされております。政府としては、今回の民主主義基金への拠出を受け、この種の活動に積極的に取り組んでいきたいと思っています。
(問)中国が、日本の東シナ海EEZ内で、事前通報した海域と異なる海域で海洋調査を行い、これについて中国側がこれを正当化するかのような発言を行ったやに聞いていますが、そのことについて日本外務省としてどのように受け止めているかを教えてください。
(報道官)大臣の方から申し上げたとおりですが、先般、中国の船舶が尖閣諸島近くで海洋調査を行い、そのことについて事前通報がなかったということは、大変遺憾なことであると思っています。尖閣諸島については、歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土であるということは明確ですし、その我が国領土周辺の海域において海洋調査を行うにあたって、事前通報をしないということは、2001年2月に設けられた事前通報の枠組みに沿うものでないと思っています。そういう立場から、昨日、中国側から回答があった内容は、到底日本として受け入れることはできないということで、事前通報の必要性という観点から、改めて、中国側に説明を求めております。
(問)15日に李肇星(り・ちょうせい)外交部長が来日されますが、日中外相会談の場でもこういった姿勢を改めて伝えると理解してよろしいでしょうか。
(報道官)外相会談の場で議題として何を取り上げるかについて具体的に調整しきっているわけではありませんが、事前通報の枠組みの尊重は当然、我が方にとって大きな関心事でありますので、これから中国側と議題等を調整する中で、日本側の関心事項として取り上げる方向になると思います。
(問)最近、ガス田とか海洋船とか、衛星の爆破ですとか、若干、関係が悪くなるというか、神経を逆なでするということが相次いでいるように見えるのですが、この点についてはいかがでしょうか。
(報道官)最近になって特段関係がぎくしゃくしてきているというようなことはないと思いますが、お互いの立場が異なる事案について、一種の危機管理メカニズムとでもいうのでしょうか、協議や話し合いの場が設けられている中でこうした事態が生ずるということは誠に遺憾に思います。きちんとした話し合いをしながら、こうしたことが繰り返されないように対応していきたいと思います。