(報道官)私から二点ご紹介したいと思います。一つは、お手元に資料があると思いますが、特別展示「日露関係のあゆみ:1855-1916」についてです。外務省は特別展示「日露関係のあゆみ」を9月5日(月曜日)から12月27日(火曜日)まで、外交資料館別館展示室において開催します。この特別展示は、本年が日魯通好条約調印150周年および日露講和100周年にあたることを記念して展示するものです。全体で23点あり、そのうち22点は現物、1点は写真ですが、非常に貴重な資料です。どういう資料かということについてもお手元に資料をお配りしましたが、例えばプチャーチン関係ですが、当時1855年に来日したプチャーチン提督がいかに日本について良い印象を持っていたか、あるいは日本との友好的な関係を維持したかということがわかる資料です。また、樺太千島交換条約批准書というのは、政府が持っている日露関係の文書として、いわゆる原本としては最も古いものです。日露講和条約、これは原本の展示はやはり極めて稀ですが、今回これを展示することにしました。またこの条約は、9月5日に調印されましたが、まさにその9月5日というのを記念してこの展示をすることにしています。また、日露戦争捕虜関係の資料は、当時日露戦争にあたって、日本もそしてまたロシアも、非常にお互いの捕虜を大事に扱ったという記録が残っていますが、こういう資料です。また、日露協約、これは第1回から第4回日露協約というものがありましたが、この協約が、秘密協約を含めて全部展示されるのは、日本では今回が初めてです。その他、大津事件でニコライ皇太子が日本に対して感謝の意を後で表明したとか、そういう資料もありますが、今回の展示において、日本とロシアの関係の様々な奥行きというものがいろいろな方にわかっていただければと考えています。そういう期待を込めて、今回こういう展示をするわけです。
第二点は、昨日、選挙の公示が行われましたが、本日から在外選挙が行われます。在外選挙は、全部で196公館で行われます。前回の選挙では、残念ながらまだ投票率は25.41%、これは平成16年7月11日の参議院選挙でしたが、私どもとしては、できるだけこの投票率を高めるべく、広報等に鋭意努力しているところです。なお、この選挙関連の資料については、8月17日に記事資料としてお配りしていますので、事実関係等についてはそれを見ていただければと思います。
以上私の方から二つご案内しましたが、その他に2点、最近の動向についてコメントを述べたいと思います。
一つは六者協議ですが、今般、北朝鮮が今週中の再開に応じないとしたことは残念であると考えていますが、北朝鮮側より具体的対案が出てきたことは、引き続き六者協議に関与しようとする姿勢の表れであると受けとめています。我が国としては、12日の週であれそれより早い期日であれ具体的な再開日程が早期に固まることを期待しています。
あと一点、東シナ海における中国による資源開発についてですが、中国海洋石油が「春暁」油・ガス田に関し、9月中に生産を開始し、10月には生産した天然ガスの供給を始めることが可能であるとの見通しを示したとの情報に接しています。東シナ海の日中中間線付近の「春暁」油・ガス田等は、その地下構造が中間線の日本側にまで連続しており、中間線の中国側における一方的な資源開発によって、我が国の主権的権利が侵害される可能性があることにつき重大な懸念を有しており、中国側に対し開発作業の中止と関連情報の提供を累次にわたり求めてきているところです。次回の東シナ海に関する日中協議を早急に開催することについては中国側と一致しており、現在日程を鋭意調整中です。このような中、中国側が一方的に開発作業を進めているとすれば、極めて遺憾であり、引き続き中国側の自制と責任ある対応を求めていきたいと考えています。以上については既に外交ルートでも中国側に対して伝えてあります。具体的には今日2時半、佐々江アジア大洋州局長から程永華(ていえいか)公使に申し入れています。また、既に申し入れが終わったかまだ報告は受けていませんが、北京でも同様の申し入れを行う手はずになっています。私からは以上です。
(問)六者協議ですが、12日の週での日程調整というのは具体的に議長国の中国を中心として始まっているのですか。
(報道官)中国を中心に今調整が進められていると理解しています。
(問)基本的に12日の週に再開ということですか。
(報道官)私たちとしては勿論それより早くてもかまいませんが、今、主として12日の週で調整が行われていると理解しています。
(問)東シナ海に関する申し入れですが、中国側の反応はどのようなものでしょうか。
(報道官)今日、佐々江アジア大洋州局長から程(テイ)公使に述べた事に対し、程(テイ)公使からは、「本件については、中国側の立場を多くは繰り返さないが、日中双方の係争のない水域における開発であると考えている。いずれにせよ東シナ海の問題について協議を通じて解決するとの考え方に変わりはなく、本国に早急に具体的な日程を示すよう意見具申したい。」これが先方の発言の主要点です。
(問)申し入れは佐々江局長が程(テイ)公使を外務省に呼んだということですか。
(報道官)そういうことです。
(問)併せて佐々江局長の発言も教えていただけますか。
(報道官)主要点は先ほど私が冒頭で述べた点です。
(問)北京での同様の申し入れというのは、日本の大使館から外交部へですか。
(報道官)今考えているのは、堀之内政務公使から孔鉉佑(コウゲンユウ)アジア副司長に、基本的には本日の夕方ですが、まだ終わっているとは聞いていません。
(問)口頭で申し入れですか。
(報道官)口頭です。
(問)パキスタンからアフガンに向かったとされている邦人二人が行方不明になっていますが、これまで外務省で把握されている事実を整理してお話ください。
(報道官)今のところ、この2名の方の安否についてはまだ承知していません。引き続き、在アフガニスタン大使館が中心となって動向を調べていますが、残念ながら今のところ具体的に申し上げる情報は持っていないというのが実状です。
(問)米国でのハリケーンですが、現時点で邦人が巻き込まれた、怪我をした、行方不明などという情報はないのでしょうか。
(報道官)結論として言えば、現時点で邦人が何らかの形で深刻な状況、あるいは何らかの形で巻き込まれたという情報には接していません。しかしながら、現地の通信事情、交通事情が非常に悪いので安否確認はまだ継続しているところです。現地の、特に主要企業で総領事館に在留届け等を出している方のうち60名程度の方については安否が確認されていますが、なかなか安否確認が困難な面もあるので、引き続き安否確認は継続しているところです。ただ現時点で邦人が行方不明になっている等の情報には接していません。
(問)60名というのはどこの人数ですか。
(報道官)ニューオーリンズの総領事館に登録されている大手企業の方々です。ただニューオーリンズにはその他にも長期滞在している方、あるいは勉強されている方などいろいろな邦人がおられるので、引き続き調査を継続しているところです。
(報道官)私から一点、第21回日・ASEANフォーラムの開催についてご説明します。第21回日・ASEANフォーラムは、8月25日(木曜日)、26日(金曜日)の両日、ホテルニューオータニにおいて開催されます。このフォーラムには、我が国から西田外務審議官及び藪中外務審議官が、ASEAN各国からは外務次官級が出席します。この日・ASEANフォーラムは、1977年以来、これまで20回開催されてきています。原則1年に1回、場所は日本とASEANで持ち回り、日本とASEANの対日調整国が共同議長を務めます。現在はマレーシアです。今度の日・ASEANフォーラムの主要な議題は、政務関係では、12月に開催される東アジア首脳会議の問題、地域国際情勢についての意見交換等です。また、経済関係では、「アジアにおける新たなパートナーシップ構築」、これは今年4月のバンドン会議50周年記念のアジア・アフリカ会議において我が国が提案したものですが、この「アジアにおける新たなパートナーシップ構築」の問題、あるいはアジア・アフリカ協力の問題等が議論されます。今次フォーラムを通じ、東アジア地域協力の中核である日・ASEAN関係の一層の強化を期待していくものです。
(問)6者協議の再開に向けて、武大偉外務次官やイ・ジョンソクNSC次長らの来日が相次いでいますが、そういった動きについてどのようにお考えですか。
(報道官)今、飯倉公館で行われているイ・ジョンソク韓国国家安全保障会議次長との会談は、ちょうど15分くらい前、4時50分前後に終わったと聞いています。いずれこの問題についてはブリーフィングが行われることになります。これまでの会議において、私が報告を受けているのは、武大偉外務次官との会談ですが、この会談については、8月29日の週に六者協議が再開ということでしたが、29日の週に予定通り再開できるように調整を進めようということ、中国側が作成した第4次案をベースに協議していこうということ、日本としては核兵器及び核計画の完全な廃棄、これが基本的な立場であるという点等が確認されたということです。
(報道官)私の方から二点ご報告します。一つは、中米統合機構加盟国・準加盟国首脳等の訪日についてです。来週、中米統合機構加盟国及び準加盟国首脳が訪日します。各国首脳は、18日、小泉総理大臣との間で日本・中米首脳会談を行い、日本と中米諸国との関係強化、国際場裡における協力などについて幅広く協議するほか、19日、愛・地球博における「中米の日」の式典に出席する予定です。これら各国とは、ニカラグア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、この5ヵ国から大統領が訪日します。パナマ、ドミニカ共和国からは副大統領が訪日します。全部で7カ国です。我が国は、95年より毎年、中米統合機構諸国との間で政策協議、これは次官級ですが、実施してきていますが、首脳レベルの会談は96年コスタリカにおける会合以来、9年ぶりです。各国首脳には、外務大臣、あるいは副大統領も同行しますが、17日の夕刻及び18日午前にバイの外相会議が行われる予定です。以上、中米統合機構についてです。
次に、石綿条約についてです。これは石綿の使用における安全に関する条約ですが、この石綿条約は、1986年6月のILO総会で採択され、89年6月に効力を生じています。我が国は、今年の7月15日の衆議院本会議においてこの条約が承認されたことを踏まえ、明11日に在ジュネーブの日本政府代表部藤崎大使が国際労働事務局に批准書を寄託する予定です。公布は12日の予定です。我が国についての発効は、1年後の来年8月11日が予定されています。石綿に晒されている労働者の安全の確保は、国際的に喫緊の課題となっており、速やかな対策が求められているが、我が国もこの条約への加盟によって、国際的に安全を重視する国の仲間入りをするということになります。以上、私から二点ご報告します。
(問)日本・中米首脳会談が9年振りに行われるということですが、これはどういうタイミングで、何故なのでしょうか。
(報道官)今年は、「日・中米交流年2005」になっています。何故、今年が交流年かというと、先ほど述べた7カ国のうちニカラグア、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスと日本との外交関係樹立70周年になります。そういうことで「日・中米交流年2005」ということになっていますが、この首脳会談は「日・中米交流年2005」のハイライトとなります。
(問)中国が春暁ガス田で採掘を開始したという報道がありますが把握されていますか。
(報道官)春暁ガス田につきましては、9日、在中国大使館から中国外交部に対して、日本側として、中国側が「春暁」等における開発が進んでいるとの情報を得ており、仮に事実だとすれば厳重に抗議すると伝達し、改めて関連情報の提供と開発活動の中止を求めています。また、日中間の次回協議を出来るだけ早期に開催すべく引き続き鋭意調整をすることで一致しています。
(問)昨日の段階で公表されなかったのには何か理由があるのでしょうか。
(報道官)それは私承知していませんが、特に公表してはいけないということは もちろんありません。
(問)ここ数日間大規模な市民デモが続いていて、これはどのように政府として把握されているのかということと、現在行っている陸上自衛隊の復興支援活動への影響はあるのでしょうか。
(報道官)現状をどう認識しているかということですが、御指摘の通り、サマーワでは県政に対する不満もあってデモや衝突が起きていますが、9日現在、サマーワ市内の情勢は平穏な状態に復帰しているとの報告を外務省の連絡事務所より受けています。勿論、サマーワの情勢について引き続き予断は許さないものと考えていますが、やはりイラクの他の地域と比較して安定しているとの認識に変化はありません。今後とも現地の情勢には十分注意を払って対応していきたいと思っています。
(問)六者会合の現状は。
(報道官)昨日までの話は皆様ご存じのとおりであり、昨日午後5時15分まで鋭意協議を行って解散しています。雰囲気は、かなり激しい議論も行われていたようですが、各代表団共、真剣かつ建設的に、歩み寄りの姿勢を持って協議に臨んだということです。論点は相当煮詰まってきたと承知していますが、まだ基本的な問題について意見の対立が残っています。従いまして、この交渉自体があと時間的にどれぐらいかかるかということは今予断できない状況にあります。特に核問題については北朝鮮の核廃棄の対象、平和利用の扱いが中心的な論点です。我が国としては、北朝鮮に全ての核兵器及び核計画の廃棄に対するコミットメントを引き出すことを今次会合の大きな目標としております。そのために関係国と協調しつつ、引き続き努力をしていくという立場です。また国交正常化の問題についても議論の対象となっていて、我が国は六者会合の最終出口として国交正常化も視野に入れ、そのための基本的問題であるミサイル、人権・人道問題の包括的解決が必要であると述べています。最終的な合意文書の内容について今は予断できません。我が国としてこの点は強く主張しており、引き続き、関係国の理解を得つつ、日本の主張を反映さえるための努力を傾注していきたいと考えています。また、本日の会議の状況については、新しい情報は持っていません。
(問)今日4時から首席代表会合をする予定だと思いますが、見通しはどうでしょうか。
(報道官)私は現時点で首席代表会議の見通し、あるいはいつ開かれるかという情報は持っていません。
(高島前外務報道官)高島です。3年間、外務報道官として大変お世話になりました。ありがとうございました。思い返してみると、北朝鮮、イラクでの武力行使、また国連改革、様々な出来事がこの3年間に起きて、日本外交の新たな展開を目の当たりにする思いでした。その中で日本の外交政策、それから日本の対外関係を果たしてどこまで皆様に正確にお伝えできたか、内心忸怩たるものもありますが、ただ、そうした大きな新しいうねりのようなものを少しでも私の感動と供に皆様にお伝えできていればと思う次第です。これから外務報道官組織が新しい陣容で仕事を続けていきますが、まだまだ問題は解決されているわけではありません。現在進行形の事があまりにもたくさんあって、その結末を外務報道官として見ることはできませんが、これからは一読者、一視聴者として皆様の仕事を通じて接したいと思います。その意味でも、私の後任となる前領事局長の鹿取さん、また新たに民間から加わってくれる谷口さんが、皆様と共に、プレスと官のスポークスマンの新しい関係を築きながら、日本のパブリック・ディプロマシーがより優れた形で展開され、日本外交に対する国民的な支援が高まっていって欲しいと心から願っています。本当に長い間、3年間皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。
(谷口副報道官)初めまして。今日からここでお世話になります谷口智彦と申します。二重の意味で外野から参りました。まず、役人になるというのは、自分の人生で想定したことすらなく、未だにその人生の航路の一過程にこういうプロセスがあったということが、我が身ながら信じられないというのが正直なところです。もうひとつ、記者クラブというものに属したことが全くありませんでしたので、その意味でも外野であろうと思います。しかし、外交政策というのは、もしかすると最も熟練の良質なメディアというものを必要としているのではないかと思います。いいプレスがあってこそ初めていい外交政策があるし、いいプレスのない国にはいい民主主義はないと信じています。「もの」をどう伝えるかという点では、皆様と私は未だに同じ土俵を共有していると思っています。そして、日本というこの商品をたくさんの方にいいと思っていただかなければならない、言ってみれば、日本株式会社のマーケティングと、それからプレスの一翼を担うという重責を与えられたわけですから、大変これはやる気に燃えているのですが、やる気に燃えているだけでは空回りすることは必定ですので、外務省のスタッフの方の力を借りながら、そして皆様に是非鍛えて頂きながら、これからの任期2年、頑張ってみたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
(鹿取外務報道官)本日、外務報道官の発令を受けました鹿取です。どうぞよろしくお願いします。私の先輩の高島報道官が3年間外務報道官として活躍され、高島報道官にいろいろと新しい道を外務省に吹き込んで頂いたと思います。その新鮮ないろいろな発想を私共としても引き継いで、また新しい発展ができればと考えています。先程もお話が出ましたが、私は外務報道官というポストに就けて自分では非常に光栄に思っていますし、嬉しく思っています。やはり外交というものは、外国に対して日本がどういう外交をしているか、あるいはどういう外交をしようとしているかということを的確にわかってもらわなくてはいけないと思います。また日本国内に対しても日本外交がどういう方向に進むのか、どのように考えているのかということをやはりきちっと明らかにできなくてはならないと思います。そういう意味で、外務省における外務報道官というのは、まさに日本の国民に対しても、また外国の国民に対しても非常に重要な接点になっていると思いますので、これから谷口副報道官と供に、できるだけそういう日本外交の進むべき道、あるいは日本外交について、日本国内に向けて、また海外に向けて発信できればと思っています。また、その際に是非皆様からいろいろな面でご支援頂ければと思います。どうぞよろしくお願いします。
(問)高島前外務報道官にお聞きします。イラク、北朝鮮、国連と課題を三つ挙げられましたが、特に3年間で印象深かった出来事、それから残念というか悔いが残ること、やり残したというようなことがもしあればご紹介いただけますか。
(高島前外務報道官)一番残念で、今でもああでなければと思ったのは、イラクで二人の外交官を失ったことでした。私自身が個人的にも存じ上げていた方々だっただけにこれは残念でたまりません。そのことと共にもう一つ痛感しましたのは、その後の人質事件、また残念ながら命を落とされた日本人の方もおられるわけで、そうした出来事を思えば思うほど、日本という国、それから日本国民が世界の大きなうねり、新たな動きの中に否応なしに巻き込まれて行かざるを得ない。その時に、日本人、それから日本をどう守っていくのかということ。もう一つはそうした大きなうねり、大きな動きに日本がどのようにして主体的に関わっていくのかという二つのことが今問われているように思います。出来る限りそうした二つのことについて、報道官という仕事を通じて、広く国民の皆様、世界の人々に知ってもらいたいと思って情報提供に努めて参りましたが、そればかりではなくそうした理解をもっと得るための努力を今後とも形は変わっても続けていきたいと思います。例えば、今行われている国連安全保障理事会の常任理事国入りもそうした動きの一つですし、六者協議、更にイラクでの自衛隊の活動、全て、大きな目で見ると日本が新しい日本の形を作るいろいろな試みをしているし、関わりをしているということではないかと思います。こうした努力も、本当の意味、本当の効果、まだまだ改善すべき点、そうした点を、これから立場が変わっても十分考えながらいろいろな形で意見を述べたり、また意見を述べるだけでなく実際の行動の中で少しでもお役に立つことができればと思っています。重ねて申し上げますが、そうした新しい動きの中では残念な出来事もありました。しかし、その残念な出来事を教訓として、これから先、日本も更に発展していく、そうした新しい道を切り開いていく、そのお手伝いを少しでも出来たらと今でも念じているところです。
(問)高島前外務報道官はメディア出身ということで、報道官の仕事をされた上で有利な事、それから逆に忸怩たる思いをされた点とあったと思いますが、それぞれどういったところですか。
(高島前外務報道官)有利だった点は、私が自分でメディアの仕事にかかわっていて、起きている出来事について、報道官というフィルターを通したり、もしくは第三者の言葉を通じて見たり聞いたりすることに慣れていたというところです。報道官としての3年間、特に外務大臣の随行の機会が大変多くありましたので、改めて日本外交が現場でどういう動きをするのかという事を目の当たりにし、実感する事が出来ました。これは大変に私にとってプラスになりましたし、その実感に基づく情報を、記者の皆様もしくは国民の皆様にもお伝えできるよう努力したつもりです。もしそれが少しでも効果をあらわしていたとすれば望外の幸せです。一方、難しかった事と言えば、もっと言いたい、もっとお伝えしたいと思いながら、なかなかいろいろなしがらみがあって出来なかった事も、正直言ってありました。内心忸怩たるものがないわけではありませんが、どちらかというとそうした制約の中で精一杯出来る限り情報を外に提供していくという仕事に努めたつもりです。
(問)高島前外務報道官にお聞きしますが、外務省の不祥事を受けまして、外部から報道官を起用しようということで就任され3年経つわけですが、そこでご覧になって外務省の改革というのは達成できたのか。またご自分でご覧になっていてどういう事をお感じになられたのかお聞かせくださいますでしょうか。
(高島前外務報道官)外務省改革というのは、私が外務省に加わった3年前、当時の川口大臣の外務省における最も大きな仕事であったと記憶しています。その大きな仕事の一つの表れとして、外部から人間をどんどん入れていろいろなポジションに就けることにより、今までとは違うものの考え方、今までとは違うパフォーマンスの仕方を外務省の中に持ち込むという試みが行われたように思います。この試みは私自身の目から見ると大変成功したように思います。外務省の中で随分新しいものの考え方が広まりました。例えば、今までは「情報を外に出すことによって果たしてどんなプラスがあるのか。情報を出さない方が、外務省もしくは日本外交は守られるのではないか」という意識が多少なりともあったような気がします。それが逆にそうではなくて、出さない事によって生じるデメリット、出さないからこそ理解されない、理解されないから支持が得られない。従って外務省がどれ程努力をしてもなかなか外交が前に進まないといったように意識が変わって、各省員が積極的に情報を外に提供することによって理解してもらおうという努力を始めたように思います。これは私もその一翼を担ったというか、応援団として叫びましたけれども、それ以上に意識改革が進んだ表れだと思います。「開かれた外務省」という言葉もありましたが、かなり開かれたように思いますし、これが今後とも続いていって欲しい。その意味では、民間のジャーナリスト経験者である谷口さんが副外務報道官になられたということは、その松明が引き継がれたとことを意味するのではないかと思って、大変期待しているところです。それに敢えてプラスアルファでもう一つ述べますと、今、日本外交が問われているのは日本国内に対する発信だけではなくて、外国に対する発信だと思います。外国に理解してもらうという意味からすれば、谷口さんほど適任の方はいらっしゃらないと思うのです。外国経験が深く外国でジャーナリストとして大活躍をされた谷口さんに日本外交のPR役をしていただくということは、外務省のいわゆるパブリック・ディプロマシー、海外展開の上で大きなプラスになると思います。私は陰ながら応援団であり、また注目しながらの観客でありたいと思っています。