演説

山花外務大臣政務官演説

世界難民の日2011シンポジウム「日本の難民保護の30年-これまでの道のりと今後の展望」
山花外務大臣政務官挨拶

平成23年6月20日
於:国連大学

 御来席の皆様,

 外務大臣政務官の山花郁夫です。本日は,急な出張により,恐縮ながらビデオメッセージの形でご挨拶をさせていただきます。
 本日ここに特定非営利活動法人なんみんフォーラム主催,国連難民高等弁務官事務所の共催による「世界難民の日2011シンポジウム『日本の難民保護の30年-これまでの道のりと今後の展望』」が開催の運びとなりましたことに対し,外務省を代表して,心からお祝い申し上げます。

 本年は,日本が昭和56年に難民条約に加入してからちょうど30年という節目の年にあたります。そして,本日6月20日,「世界難民の日」に,このようなシンポジウムが開催されますことは,我が国にとっても,大変意義深いことです。

 この30年間,我が国は難民を巡る諸課題に対して様々な取組を進めてまいりました。
 我が国は,難民条約に加入する以前から,人道上の国際協力という面のみならず,アジアの安定という面からも,インドシナ難民の方々を受入れ,その定住促進を支援してまいりました。今では,約1万1千名にのぼるインドシナ難民の方々が我が国に定住されています。

 また,難民条約との関係では,特に近年,難民認定申請を行う人々の数が増加の傾向にあります。こうした中,外務省においては,難民認定申請者のうち生活に困窮する方々に対し,生活費や住居費などのいわゆる保護費を支給しているほか,難民と認定された方々が日本社会に円滑に定住できるよう,定住支援事業や各種相談事業を実施しております。

 国際的にも,我が国は,「人間の安全保障」の視点を重視しつつ,UNHCRを始めとする国際機関と協力しながら,アジアやアフリカ地域をはじめとする世界各地の難民・国内避難民への人道支援を積極的に実施しております。

 さらには,我が国は昨年度からアジアでは初となる第三国定住による難民受入れを開始しました。昨年9月及び10月には,タイのメーラ・キャンプで避難生活を送られていたミャンマー難民の方々,5家族27名が来日し,メディアでも大きく取り上げられるなど,大きな注目を集めました。

 第三国定住とは,例えば,ミャンマーからタイへ逃れた難民を,別の第三国である日本が自発的に受け入れるというものであり,以前に住んでいたミャンマーへの帰還又は逃れてきたタイでの定住に次ぐ第三の選択肢と位置づけられています。また,難民問題に関する負担を国際社会において適正に分担するという観点からも重視されております。
 このことから,政府は,平成20年12月,難民問題への取組における国際貢献及び人道支援の観点から,パイロットケースとして,毎年約30名,3年間で合計約90名を受け入れることを決定しました。
 我が国の第三国定住の取組は,今はまだ始まったばかりですが,アジア地域で初の試みであり,我が国の難民政策の新たなページを開くものであり,国際社会からも大変高い関心と期待が寄せられています。

 政府は,昨年第一陣として来日された5家族27名の方々に対し,約180日間の総合的な定住支援プログラムを実施しました。
 週5日間,毎日6時間の定住支援プログラムでは,関係省庁が連携し,大人から子供までを4クラスに分けて,レベルに応じた日本語教育を行ったほか,生活ガイダンス,職業紹介などを丁寧に行いました。私も日本語の授業を2回ほど拝見しましたが,その間の難民の方々の日本語の上達ぶりに驚かされました。

 定住支援プログラムを修了後,3家族は三重県鈴鹿市を,2家族は千葉県八街市を定住先として選ばれ,本年3月中旬から,新しい生活をスタートされました。ご両親は,いずれも農業に従事され,子供たちは元気に学校や保育園に通っています。どのご家族も皆,これからの日本での将来を真剣に考え,前向きに頑張っておられると聞いております。
 政府は,この自立生活の開始を支援するため,引き続き職場適応訓練の受講期間を設け,生活指導員や日本語教育相談員による定期的な指導・助言を行っております。

 これまで,5家族のそれぞれの定住先の自治体や地域住民の皆様方,職場関係者の皆様方など,地域社会の温かいご理解とご協力を頂いており,心より感謝いたしております。

 私としましては,我が国が受け入れた第三国定住難民の方々が,後進の方々の道しるべとなるとともに,今後,我が国社会の一員としてしっかりと根付き,日本社会に欠くことのできない一員になることを期待しております。

 我が国における難民保護の問題は,21世紀の日本の社会の在り方そのものにかかわる重要なテーマであります。
 難民の方々が日本社会の中で夢や希望を持って生きていけるよう私たちに何ができるのか,本日は,関係機関,NGO,有識者の方々及び難民の皆様等により,日本の難民保護に関するこれまでの取組や,今後の展望について,有意義かつ活発なご議論が行われますことを期待しております。

 そして,本日,「世界難民の日」に開催されるこのシンポジウムが,国民の皆様の難民問題についてのご理解をさらに深めていただくための良い機会となりますことを心より期待して,私のご挨拶とさせていただきます。ご静聴いただきありがとうございました。

 (注:当日,政務官はビデオレターで挨拶を行いました。)


このページのトップへ戻る
政務官演説平成23年演説目次へ戻る