(英語版はこちら)
(はじめに)
議長,
これまで軍備管理・軍縮の基礎となる数々の軍縮条約を作成してきた軍縮会議(CD)において,発言の機会をいただいたことを大変光栄に思います。CDを長年の停滞から再活性化させるための議長の努力を強く支持します。
平成23年3月1日
(英語版はこちら)
議長,
これまで軍備管理・軍縮の基礎となる数々の軍縮条約を作成してきた軍縮会議(CD)において,発言の機会をいただいたことを大変光栄に思います。CDを長年の停滞から再活性化させるための議長の努力を強く支持します。
議長,
昨年以降,我々は多国間協調に基づき,核軍縮分野において有意義な進展を得ました。NPT運用検討会議では,CDの前進を含む具体的な行動計画に合意しました。国連事務総長主催軍縮会議ハイレベル会合では,前原外務大臣をはじめ,大多数の閣僚レベルの出席者がCDの再活性化を求めました。また,米露両国による新START条約の発効は核軍縮における重要な進展であり,我が国はこの発効を歓迎します。我々は,こうした国際社会の努力を倍加し,核軍縮の機運を維持・強化していかなければなりません。
CDはすべての核兵器国とNPT非締約国とが参加する唯一の多国間軍縮交渉機関であるからこそ,意義があることを強調します。2009年の作業計画の歴史的合意にもかかわらず,CDにおいて何ら前進が見られていないことは極めて遺憾なことです。広島や長崎を含む国際社会における期待の高まりを踏まえれば,CDが機能しない状況がこれ以上継続することは受け入れられません。すべてのCD加盟国が柔軟性と協調性を発揮し,この会議で実質的な作業を直ちに開始すべきことを訴えます。
2009年に交渉開始が合意された兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)は,我々の目標である「核兵器のない世界」を達成する重要な核軍縮・不拡散措置です。この条約により,兵器用核分裂性物質の生産を禁止し,また非兵器用の核分裂性物質が核兵器用に転用されないこと等を確保することを目指します。さらに検証制度を置くことにより透明性を高めるとともに,核セキュリティの強化も期待されます。
FMCTは,国際的な核軍縮・不拡散を前進させていく上で我々が取り組まなければならない具体的かつ喫緊の課題です。我が国は,CDにおけるFMCTの即時交渉開始を最優先事項として訴えます。また,条約発効までの間,すべての関係国が兵器用核分裂性物質生産モラトリアムを宣言し維持することを強く求めます。
先月,日豪両政府は,この条約の実質的議論を進展させるため,すべてのCD加盟国とオブザーバー国に開かれた形で,FMCTの定義に関する「専門家サイドイベント」を共催しました。今後,さらに技術的議論を深め,議長の責任でその結果をCDに報告することにより,来るべきCDの交渉に貢献することを強く期待します。
また,昨年9月に我が国が豪州他と立ち上げた核軍縮・不拡散に関する外相会合でも,同条約交渉の即時開始を優先事項として取り組んでまいります。
議長,
CDにおいて,他の主要事項の議論も前進させることが必要です。
我が国は,すべての核兵器保有国を巻き込んだ,核軍縮に向けた現実的かつ具体的なアプローチこそが,核兵器の廃絶という目的地に最も早く到達する方法であると確信していることを強調します。我々は核軍縮に向けた歩みを止めてはなりません。先に述べた米露両国の核軍縮努力が,その他の核兵器保有国も参加した世界的な核軍縮の前進につながることを強く希望します。また,米露両国が,さらなる核兵器削減のために引き続き努力することを期待します。すべての核兵器保有国による核軍縮努力が,透明性のある方法でかつ不可逆性や検証可能性の原則を伴い,実行されることが重要です。我が国は,更なる多国間核軍縮のあり方を議論する用意があります。
議長,
「核兵器のない世界」を実現するための具体的な第一歩として,我が国は核兵器の役割の低減を重視します。消極的安全保証の実効性を高める方途についても実質的な議論を深めることが必要です。核兵器国に対し,強化された安全保証の可及的速やかな供与を要請します。
議長,
我が国は,宇宙空間における軍備競争は防止されるべきであるとの基本的理念を支持しています。昨今の宇宙活動の活発化を背景とし,宇宙活動における信頼醸成措置の促進も含め,宇宙における軍備競争の問題に関する様々な論点につき,総合的な観点からCDで議論していく必要があると考えます。
議長,
我が国は,核兵器の惨禍の実相を将来の世代に継承していくことを自らの責務として,軍縮・不拡散教育に取り組んでまいりました。昨年のNPT運用検討会議の最終文書で初めて軍縮・不拡散教育が言及されたことは,これまでの着実な努力の表れといえます。
この分野の取組みとして我が国は昨年9月,菅総理のイニシアティブにより「非核特使」制度を立ち上げました。これは,被爆者の方々に自身の被爆体験を広く国際社会に伝達していただくことを委嘱する制度で,これまでに,計12件,延べ27名の「非核特使」が,世界の各地で活動しています。3月14日には,9名の非核特使が核軍縮のイベントの機会にジュネーブを訪れます。軍縮や人道に関心を有するできるだけ多くのジュネーブの仲間がこのイベントに参加されることを期待します。
また,我が国は,3月17日及び18日の両日,長崎市において,軍縮・不拡散教育グローバル・フォーラムを国連大学と共に開催します。政府,国際機関,市民社会から幅広い参加を得て,軍縮・不拡散教育の重要性の認識共有や連携の促進,さらなる取組の発展に寄与することを目指します。
議長,
核軍縮に向けた機運が高まる中,CDが「眠れる会議」に留まることは許されません。我々は,CDが本来の役割を果たせるよう再活性化し,「核兵器のない世界」に向けた具体的な取組を着実に積み重ねていかなければなりません。この観点から,CDが直ちに作業計画に合意できるよう,すべての国に協力を求めます。我が国は,各国と共にこのような取組を主導していく決意です。