モハメッド・ナシード・モルディブ共和国大統領兼SAARC議長閣下,
SAARC加盟国及びオブザーバー国・機関の代表者,事務局の皆様,
ご列席の皆様,
この第17回SAARC首脳会議の場で,日本政府を代表し発言できることを幸い且つ光栄に存じます。ナシード大統領及びモルディブ政府の議長国としての見事な采配ぶりを高く評価し,我々参加者全てに対する心からの温かいおもてなしに感謝申し上げます。
議長閣下,
はじめに,東日本大震災にあたり,SAARC加盟国及びオブザーバー国の皆様から頂いた思いやり,連帯及び支援に対する全ての日本国民の深い感謝の気持ちを改めてお伝えします。一例を申し上げますと,モルディブからは,寛大な義援金に加え,約69万個のツナ缶の提供がありました。
国際社会からの支援と励ましのおかげで,被災地以外ではほぼ震災前の日常が戻っており,傷んだサプライチェーンはほぼ完全に回復しています。また,東京電力福島第一原発の事故は、着実に収束に向かっています。
日本国民は,震災に際し受けたすべての支援を決して忘れません。世界の平和と繁栄に積極的に貢献していくことで「恩返し」していく所存です。
このような取組みの一つとして,我が国は,2012年に国際会議を被災地の東北で開催し,東日本大震災を含む大規模な自然災害の教訓を参加国で分かち合い,国際協力を進めます。そして,その成果を踏まえ,2015年の第3回国連防災世界会議を日本に招致し,災害に対する強靱な社会の構築を目指して主導的な役割を果たしていきたいと考えています。
議長閣下,
我が国は,今回の首脳会議における環境や気候変動或いは自然災害の議論に引き続き高い関心を持っております。
まさに本日,災害緊急対応に関するSAARC協定が各国外相により署名されたことにお祝い申し上げます。これに関する我が国の取組みとして,自然災害に脆弱な国に対し,2012年末までに150億ドルの短期支援(Fast-Start Finance)を実施していくことを引き続き約束します。また,我が国は,SAARC地域でインド洋津波警戒システムに対する資金援助や情報共有を通じた支援を行ってきました。我が国の防災分野における協力のもう一つの例として,2007年にサイクロン・シドルがバングラデシュを襲った際に,早期警戒システムやサイクロンシェルターを整備していたことが,人的被害の軽減に貢献したことが挙げられます。我が国は,引き続きSAARC諸国の災害被害軽減措置を強化する支援を行っていきます。
国連の気候変動の交渉の場においては,COP17において国際社会が,全ての主要国が参加する公平且つ実効性のある国際的枠組みを構築する,新しい一つの包括的な法的文書の速やかな採択という最終目標に向けて明確な進展を示す必要があると固く信じます。我が国として,SAARC地域の最大の長期的脅威となっている気候変動に対応するために,SAARC諸国と協力していく所存です。
議長閣下,
我が国は,「架け橋をわたす(Building Bridges)」という今回の会議のテーマを全面的に支持します。各国首脳の開会演説の中でも地域協力の進展が強調されましたが,ナシード・モルディブ大統領が指摘されたように,まだまだ多くのことがなされるべきです。依然として分断されている国と国,経済と経済,人と人との橋渡しを進める更なる必要性に強く同意します。我が国は,ODA及び民間投資を通じ,SAARC諸国内及び諸国間の連結性(connectivity)向上の取組みを引き続き支援します。
我が国は,また,人的交流を通じた我が国とSAARC諸国の「橋わたし」を行いたいと願っています。日本政府は,SAARC地域を含むアジア大洋州地域との新たな青少年交流の実施を検討中です。
議長閣下,
最後になりますが重要なこととして,当地域の平和と安全に対する我が国の支援について簡単に触れたいと思います。我が国は,アフガニスタンの安定,パキスタンの民主政権と経済改革,ネパールの和平・民主化プロセス,ブータン及びモルディブでの民主主義の一層の定着,バングラデシュの更なる防災体制の整備を支援することを約束します。また,今回の首脳会議で海賊問題が我々の安全や安定に対する高まりつつある脅威として取り上げられましたが,我が国は,インド,スリランカ,モルディブからの協力を得ながら,ソマリア沖・アデン湾での海賊問題に取り組んでいます。
スピーチを締めくくるにあたり,SAARC各国首脳から,過去の首脳会議での議論を踏まえ,更なる行動を起こす決意が表明されたことを高く評価いたします。このような,より具体的な成果を求める決意に対し,我が国は,当該地域や世界の平和と繁栄に向け,南アジア諸国と緊密に協力していく決意を改めて述べさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。