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メコン各国政府及び民間セクター代表の皆様,ご列席の皆様,
本日はご多忙な中,「メコン地域における官民協力・連携促進フォーラム全体会合」にご出席をいただきましてありがとうございます。メコン5カ国の政府代表の皆様,民間セクター代表の皆様,若手実務者の皆様が,このフォーラムのために訪日されていることに対し心より歓迎の意を表します。
昨年11月の第1回日本・メコン地域諸国首脳会議において,日本とメコン地域諸国は,インフラ整備,天然資源の開発及び物流ネットワークの改善等,様々な分野における協力プロジェクトを効果的に実施するため,官民協力を促進することなどを確認しました。この会議でまとめられた「日メコン行動計画63」では,官民連携・協力の観点から議論する場を新たに立ち上げることが明記され,本日このフォーラムを開催する運びとなりました。
従来からアジア地域は,政治,経済,文化等様々な面において我が国と密接な関係にあり,我が国の政府開発援助(ODA)の重点地域となってきました。我が国は,公的資金と民間の活動を有機的に連携させて経済協力を進め,同地域の発展に貢献してきました。また,環境・気候変動対策,感染症対策,防災等の地球規模,地域全体の課題に対する取組に対しても支援を行ってきました。
近年我が国は,ASEAN域内の格差是正や一体性強化の観点から,ASEAN域内大陸部に位置するメコン地域への協力を重視しています。2009年の第1回日本・メコン地域諸国首脳会議においては,今後3年間で合計5,000億円以上のODA支援をすると表明し,着実に実施しています。本年7月の日メコン外相会議及び10月の第2回日本・メコン地域諸国首脳会議においては,これまでの様々な協力の進捗状況についてフォローアップを行いました。特に,首脳会議では,環境と調和したメコン地域発展のための協力をまとめた「グリーン・メコンに向けた10年」イニシアティブに関する行動計画を採択致しました。また,日本及びメコン地域諸国の産業界からの政策提言に基づき,ハード・インフラ整備,貿易円滑化・物流の改善,中小企業及び裾野産業育成促進,サービス,新産業の育成に関する取り組みをまとめた「日メコン経済産業協力イニシアティブ(MJ-CI)」の行動計画も採択しました。今後,これら行動計画の実施に向けて,メコン地域諸国と協力していく予定です。
また,我が国はASEANの人やモノ・サービスの移動を円滑にするための連結性向上支援も重要と考えています。本年10月28日のASEAN首脳会議において,「連結性強化のためのマスタープラン」が採択され,翌29日の日・ASEAN首脳会議においては,菅総理より,ASEANが進める「連結性」強化へのオールジャパンによる支援を表明しました。域内の生産拠点の最適分散を追求する日本企業にとっても,また,メコン地域の地元企業にとっても,連結性向上は円滑な事業展開に資するものであり,地域の潜在的な成長力を十分に開花させるためには不可欠な要素であります。
また,我が国は,これまでもASEAN域内の大陸部に位置するメコン地域のハード及びソフト面のインフラ整備を積極的に後押しし,連結性向上に資する支援を行ってきました。経済成長を牽引するのは,この物理的連結性と呼ばれるハード・インフラの部分のみではなく,ハード・インフラを運営していくための制度面の整備や人材育成も重要です。そして,そのような制度面や人材育成面での支援についても我が国は特に力を入れてきており,今後とも一層充実させていく所存です。
国境を越えた経済活動が加速する中,従来から東南アジアと日本とは農産品から工業品まで様々な財やサービスの貿易を行ってきました。さらに日本企業は,広いアジアの中でも経済活動のポテンシャルが高く,質の高い労働力を有し,社会が安定しているメコン地域内で製造業からサービス業まで様々な事業を展開していく意欲を有しております。
メコン地域でのこのような日本企業の活動の発展とメコン諸国のさらなる成長とを同時に実現するためには官民が協力していくことが重要です。近年,我が国は様々なスキームを利用し,官と民が協力・連携してメコン地域全体の発展を支える事業を推進してきました。
例えば,我が国の支援によりカンボジア,ラオス,ベトナムにビジネス人材の育成のための日本人材開発センターを設置し,ビジネスコースを開設しています。例えば,プノンペンやホーチミンの日本センターを通じて生まれた人的ネットワークは,南部経済回廊に沿ったメコン地域南部経済圏の産業振興に役立っております。
また,官民が合同で投資環境の整備について議論をする場として,例えばミャンマーでは「貿易・投資ワークショップ」を,ラオスでは「官民合同対話」を開催しています。4回目を迎える今年のラオスの「官民合同対話」は今週17日に開催される予定です。これらの対話を通じて日系企業の事業環境の改善を進め,投資拡大につなげていきたいと考えています。
その他にも,日本貿易保険の特別支援枠や国際協力銀行による金融面での支援を通じ,日本企業のメコン地域諸国への投資を支援しております。
しかし,大きな経済成長の可能性のあるメコン地域の開発を今後も持続的に進め,日本とメコン地域諸国の双方がwin-winの関係を築いていくためには,民間のニーズをいち早く把握し,民間の活力を取り込んでいくことが重要です。
ODAにおいても,民間提案型の案件を採択する制度を導入しています。この制度にもとづく初めての案件として,現在,ベトナムのラックフェンに新しい大水深港を建設する計画の検討を進めています。これは,収益性の低い港及び関連インフラの建設を我が国の円借款により実施し,運営により収益の見込まれるバース設備の整備と運営管理は複数の日本企業とベトナム企業の合弁企業が実施するものです。また,後ほどのセッションで詳しくご説明したいと思いますが,今年からPPPインフラ事業への投資を検討している企業からの提案に基づく調査を実施しています。
さらに,我が国は,現在「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」を立ち上げ,我が国の持つ有望な技術を結集し,案件をパッケージ化して相手国のニーズに応える仕組みを作ろうとしております。一部の大使館では,「インフラプロジェクト専門官」を指名し,情報収集や官民の関係者との連携の任に当たらせるなど体制の整備を行っています。
本日は,メコン地域諸国から政府代表者,民間代表者及び若手の実務者の方計60名以上に加え,日本側からは関係省庁,民間企業の方々多数にお集まりいただきました。今回のフォーラムで日本とメコン地域諸国の官民の協力・連携を一層進めていくために活発な議論が行われ,また,これを機に様々な立場の方々が日本とメコン地域で有機的につながり,今後のメコン地域の発展に資するような活動が生まれるきっかけとなることを願っております。ありがとうございました。