みなさん、おはようございます。
ヴィルサック米国農務長官、またクリスティー夫人
そして、ルース駐日米国大使、
ドールアメリカ穀物協会会長、
御列席の皆様、
始めに、世界の食料安全保障という極めて重要な問題につき、日米の政府関係者や有識者を始め多くの方々の御臨席を得て、本日のシンポジウムを開催された米国政府及び関係者の御努力に敬意を表します。
(基本認識)
世界における食料不安の増大は、途上国の人々の欠乏からの自由を脅かし、人間の安全保障上の脅威となっております。また、最近の経済危機は、ミレニアム開発目標(MDGs)の目標である貧困削減や飢餓撲滅の目標達成に悪影響を及ぼしております。4人のうち3人が農村地域に居住し、農業に生計を依存している途上国の貧困層において、経済成長を通じた貧困削減を達成するには、何が必要とされているのでしょうか。我々は責任あるドナー国として、途上国における持続可能な農業開発に一層力を入れていく必要があります。
(日米の共同の取組)
「飢餓のない世界」の実現に向けて、日本は、このような認識を米国と共有し、世界の食料安全保障について緊密に連携しています。昨年のG8ラクイラ・サミットでは、途上国主導の農業開発計画への支援と、200億ドルの資金コミットが表明されました。こうした成果を評価し、これは日米のリーダーシップがもたらしたものだとの声が国際社会の中にあることは喜ばしいことです。 また、先週、岡田外務大臣はクリントン国務長官と会談し、日米が議長を務める2010~2011年のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)において、両国が協力して食料安全保障分野での具体的な行動を示していくとの決意を確認しております。
(我が国の農業開発支援)
我が国は、ラクイラ・サミットで表明したとおり、2010年から2012年の3年間にインフラを含む農業関連分野において、少なくとも30億ドルの支援を着実に実施してまいります。
特に我が国は、生産段階における水資源や農地資源の開発・管理、流通段階における輸送や貯蔵、積出港の整備を含め、生産から流通までのバリューチェーンを通じた幅広い分野での支援が重要と考えております。これは、途上国で生産される食料の相当数が収穫後に損失されていることを踏まえ、生産された農作物が生産者から消費者に損失なく届けられることを確保することが大切であると考えるからです。こうしたアプローチは、途上国からも強い支持を得ております。
(農業開発支援の具体的な事例)
例えばアフガニスタン東部では、稲作農業技術の改善のための協力を実施し、支援地域でコメの収穫量の3倍増を達成するなど、同国の食糧自給率の向上及び持続的・自立的発展に貢献しております。
また、モザンビーク北部では、ブラジルの熱帯サバンナ地域・セラード地帯での20年間にわたる農業協力の経験と知見を活かした支援を行うなど、ブラジル及びモザンビークとの間での三角協力を実施してまいります。
サブ・サハラ・アフリカのコメ生産量を10年間で倍増することを目標に、「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」を立ち上げました。今後の支援の中で米国国際援助庁(USAID)によるコメのバリューチェーンの調査結果を活用するなど、今後の日米協力が期待をされております。
(責任ある国際農業投資)
「飢餓のない世界」を実現するためには、ODAだけではなく民間投資を促進する必要があります。
我が国と米国は、この点においても認識を共にしておりまして、「責任ある国際農業投資」を促進するためのイニシアティブを進めております。近年、一部の途上国への投資案件が、「新植民地主義」あるいは「農地争奪」として批判されております。イニシアティブでは、投資受入国の政府、現地の人々、投資家という三者の利益の調和及び最大化を実現するための原則を策定し、それを具現化することを目指しております。
この取組の一環として、我が国は、昨年9月に開催した高級実務者会合に続き、今月25日にワシントンでそのフォローアップ会合を米国と共催いたします。この取組が世界の食料安全保障に関する新たな日米協力として今後更なる発展を遂げるよう、日本政府としても積極的に推進をしてまいります。
(終わりに)
以上のように、日米両国は、緊密なパートナーシップの下、様々なかたちで世界の食料安全保障の強化に取り組んでいきます。最後に、このような日米協力の一里塚として、今回のシンポジウムでの議論が有意義なものになるように祈念し、私の挨拶とさせて頂きます。
ご清聴ありがとうございました。