演説

武正外務副大臣演説

平成21年度平和構築人材育成事業 公開シンポジウム
"Building Civilian Peacebuilders
~日本のアフガニスタン支援、そして世界へ~" 武正公一外務副大臣挨拶

平成22年2月22日
(於:海運クラブ)


パネリストの皆様、
ご列席の皆様、

 本日は、広島平和構築人材育成センター(HPC)主催のシンポジウム「Building Civilian Peacebuilders ~日本のアフガニスタン支援、そして世界へ~」において開会のあいさつを行う機会を頂き、誠に光栄に存じます。
 このシンポジウムは、外務省委託の平和構築人材育成事業の一環として行うものです。このようなシンポジウムの開催は、我が国に蓄積された知見を発信する上で、重要な意義があると考えております。今日は、これから本事業の海外実務研修として平和構築の現場に旅立たれる研修員の方々もお見えになっていると承知しておりますが、その熱意にあふれたお顔を拝見することができ、とても嬉しく思います。

 我が国は、直面する重要な外交課題として平和構築に全力で取り組む方針です。先般、国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)への自衛隊部隊派遣を決定したことは、我が国の平和構築分野での積極的な取組を示す例の一つです。現在、世界で約10万人の方々がPKO要員として働かれている中で、我が国の最近の貢献は、決して十分と言えるものではありませんでした。こうした認識の下、今回のハイチへの派遣については、かつてなく迅速に政府としての意思決定をいたしました。震災国としての我が国の経験と技術が、ハイチの復旧・復興でも生かされることを願っています。

 冷戦の終結により紛争の様相は大きく変化し、国家間紛争よりも民族的・宗教的な国内紛争が頻発するようになりました。長年内戦の影響などを研究してきたオックスフォード大学のポール・コリエ教授によれば,紛争後最初の10年間は紛争に逆戻りする可能性が非常に高く、その率は約50%にも上ると言います。皆様のご高承の通り、長期的な平和の定着のためには、軍事・政治だけではなく、経済・社会、そして人間の安全保障の観点から包括的・長期的に関わり、人道、法制度整備、行政機能強化、民主化・治安部門改革、DDRといった多岐にわたる分野で支援していく必要があります。そして、このような分野こそ、文民の方々の知見や技能が必要とされているのです。

 我が国が、平和構築への貢献の柱として2007年に平和構築人材育成事業を立ち上げたのも、平和構築における人材の育成が国際社会の喫緊の課題になっていることに対する、我が国の取組の一環に他なりません。
 過去2年間に海外実務研修まで終了した研修員は約60名に上ります。修了生は、アフガニスタン、スーダン、シエラレオネ、東ティモールなどの国連PKOミッションや国連機関の現地事務所を始めとする平和構築の最前線で活躍しております。このような成功体験に基づき、本年度からは本コースの海外実務研修期間を1年に延長したほか、新たに平和構築に関する基礎的な理解を深めるための平和構築基礎セミナ-の開講、そして、既に専門知識や経験のある官民のシニア専門家を対象としたコースを新設致しました。今年度研修員の何名かは、既に海外実務研修を開始し、平和構築の現場での第一歩を踏み出されており、他の方々も、スーダン、スリランカ、リベリア等で、新たな一ページを切り開いていかれると承知しています。

 文民が平和構築において果たす役割の重要性は、今回のシンポジウムの特別セッションで取り上げられたアフガニスタン支援についても同様です。
 我が国は、アフガニスタンの問題を国際社会全体にとっての最重要課題の一つと捉え、積極的な役割を果たしてきています。我が国が、昨年決定した最大約50億ドルのアフガニスタン支援策の3つの柱として、第一にアフガニスタン自身の治安能力の向上、第二に元タリバーン末端兵士の社会への再統合支援、第三に持続的・自立的発展のための支援を掲げていますが、こういった分野においても、文民が果たす役割は極めて重要です。警察を始めとする治安部門の能力向上支援、武器を置く者が再び反政府勢力とならないための職業訓練、雇用を創出するための民生支援などは、まさに文民の活躍の場の例として挙げられると考えます。

 また、私は、平和構築の現場で活躍する日本人の方々は、日本と世界を結ぶ大切な役割を果たされていると確信しています。私自身、外務副大臣として中東を始めとする様々な国々を訪問する機会があり、日本に対する各国の期待の大きさをあらためて実感します。我が国が、明治維新や戦後復興などの困難を経験する中で、その長い歴史と独自の伝統・文化を守りつつ、経済発展を遂げたことに、驚きと尊敬のまなざしが向けられているように思います。人間の安全保障といった普遍的な価値観を掲げ、戦後の復興体験を踏まえて日本が行う支援が、平和構築の現場に、「明日は今日よりも良くなる」と希望を与える変化をもたらすことを切望します。単に与えるだけではなく、現地の人々と共に考え、共に歩むことによって、お手伝いする私たち自身も、一回りも二回りも成長することと信じています。

 平和構築を実践する方々が更に力をつけるためには、知見の共有が不可欠です。是非、既に十分なご経験と知識をお持ちのパネリストの皆様やご列席の方々にも先達としてご協力をお願いしたいと思います。

 最後に、平和構築人材育成事業の立ち上げ時からご尽力頂き、本シンポジウムも主催しております広島平和構築人材育成センターの関係者、国連ボランティア計画はじめ国際機関の関係者の方々、本事業にご協力頂いた内外の関係機関の方々に心からの感謝を申し上げ、私の挨拶とさせて頂きます。ご清聴有り難うございました。


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