サール在京アフリカ外交団長代行,
オスターヴァルダー国連大学学長,
ご列席の皆様,
ただいま御紹介いただきました外務大臣政務官の西村智奈美でございます。
皇太子殿下の御臨席の下で,本日のアフリカ・デー・シンポジウムにおいて基調講演を行う機会をいただき,大変光栄に存じます。
私は,昨年9月の着任以来,アフリカや環境問題,ODAを担当する外務大臣政務官として,アフリカを含む世界各国の方とお会いしてきました。政務官としての活動を通じ,私は,日本外交にとってのアフリカの重要性を認識し,アフリカとの信頼・協力関係をさらに強化する必要があるとの思いを強くしています。私自身としても,アフリカの皆様と緊密に連携しながら,環境問題を始めとする諸課題への取り組みについて力を尽くしていきたいと考えています。
(第2回TICAD閣僚級フォローアップ会合)
まず始めに,5月2,3日の2日間,タンザニアのアルーシャにて開催された第2回TICAD閣僚級フォローアップ会合について御紹介させていただきます。今回の会合は,2008年の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)開催からちょうど2年を迎え,フォローアップを重視するとの観点から,昨年3月にボツワナで開催された第1回フォローアップ会合に続いて開催されたものです。この会合には,日本からは岡田外務大臣が出席して共同議長を務め,アフリカ42か国の他,多くの地域・国際機関,NGO,民間セクターなど総勢約430名が参加しました。
この会合では,第1にTICAD IVで発表された「横浜行動計画」の履行状況と今後の課題,第2に世界金融・経済危機の影響からのアフリカの回復努力,第3にMDGsの達成,そして第4に気候変動対策について活発な議論が行われました。今回の会合は,鳩山新政権として初めてのTICAD関連会合であり,アフリカ諸国から31名の閣僚級の参加を得て,アフリカが直面する課題について議論できたことは大きな成果です。
岡田大臣からは,TICAD IVの公約を必ず実行することをアフリカ側出席者の前でご自身の言葉で表明し,アフリカ諸国からは,TICAD IVで発表された横浜行動計画の着実な実施に対する評価が示されました。
会合終了後,これらのメッセージを含むコミュニケが採択されました。日本としては,その内容を,6月のG8サミットやG20サミット,9月のMDGs国連首脳会合,そして11月のCOP16等に向け,「アフリカの声」として届けたいと考えています。
今回の会合の準備にあたっては,在京アフリカ外交団には大変大きな役割を果たしていただきました。この場をお借りして,ご協力に感謝申し上げます。
(アフリカと環境)
さて,本年のシンポジウムのテーマ「環境:アフリカの挑戦,日本の役割」は,アフリカが抱えるまさに喫緊の課題であり,このテーマを取り上げることは大変時宜にかなったものです。
アフリカと言えば,一般的に自然にあふれ,サファリでは動物が走りまわっている姿が想像されます。しかし,実際には,アフリカでも地球温暖化により,干ばつや洪水が頻発・激化し,マラリア等の感染症の範囲も広がり,降雨量が変化することにより農業生産も不安定化しています。森林が耕地の拡大や燃料・木材の調達のために大規模に伐採されることでCO2の吸収力が低下し,温暖化に拍車をかけ,生物多様性が脅かされています。また,経済成長に伴い,大気汚染等の環境問題も深刻となってきています。国際社会が一致団結してこれらの問題への取組を強化していくことが必要です。
鳩山政権は,環境問題を外交の最重要課題の一つとして取り組んでいます。 日本は,環境先進国として,環境分野で世界に誇る高い技術を有しています。日本の技術を活用すれば,この分野でアフリカに協力できることがたくさんあります。アフリカの持つポテンシャルを最大限発揮させつつ,環境問題に対処し,持続可能な成長と両立させることが重要です。この観点から,日本は,2008年のTICAD IVにおいて,「環境・気候変動問題への対処」を重点事項の一つとして掲げ,様々な支援を行ってきました。
10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会合(COP10)を開催します。地球規模での生物多様性の保全と持続可能な利用を実現するため,ポスト2010年目標設定を目指し,国際的リーダーシップを発揮していく考えです。
(気候変動問題)
環境分野の中でも,とりわけ喫緊の課題となっているのは,気候変動問題です。開発途上国,とりわけ新興国における温室効果ガスの排出量が急増している中で,如何に全体の排出量を削減するかが課題となっています。
日本は,この問題に関して,アメリカや中国などのすべての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みを構築すべきと考えています。
昨年末のCOP15でコペンハーゲン合意がまとめられたことは,法的拘束力を持つ国際的合意に向けた重要な第一歩です。現在までにアフリカ36か国を含む120以上の国が同合意への賛同を表明しています。また,アフリカ諸国の中にも自ら目標や具体的な行動をきちんと打ち立て、積極的に対策に取り組む国が増えてきていることは心強いことです。岡田大臣以下,私も含め,あらゆる外交の場を通じてアフリカ諸国にも賛同の輪に入るよう呼び掛けてきており,前向きな感触を得ています。
また,途上国との関係においては,気候変動問題に対応する途上国自身の努力を後押しするため,日本は,昨年のCOP15において,2012年末までの約3年間で,官民あわせて世界全体で1兆7500億円(150億ドル)の支援を行うとする「鳩山イニシアティブ」を発表しました。総計では既に50億ドル以上を実施に移しました。アフリカ向けでは,レソトやマリ等のLDC諸国への適応支援無償やガーナやボツワナへの太陽光エネルギー導入計画支援無償,あるいはケニアの地熱発電計画への円借款,エチオピアやガボン,コンゴ民主共和国等への森林保全計画無償等50件以上の支援プロジェクトが含まれています。
今後も,コペンハーゲン合意としっかりと関連付けて「鳩山イニシアティブ」の実施を進めていく考えです。
(アフリカとの協力)
さて,先述のTICAD閣僚級フォローアップ会合では,日本とアフリカの間でよい成果を生み出すことができました。まず,次期枠組み交渉において,新しい一つの包括的な法的文書の採択に向け,日本とアフリカ諸国の協力を強化することで一致しました。
また,アフリカとの協力を強化しつつ,気候変動問題に関してイニシアティブを発揮するため,1)日本・アフリカ間の気候変動政策対話の推進と 2)10月の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の機会をとらえ,森林保全と気候変動に関する閣僚級関心国会合を開催することを岡田大臣から提案し,支持をいただきました。まさに,明日27日には,オスロで,「気候と森林に関するオスロ会議」が開かれます。日本からは,福山副大臣が出席し,アルーシャ会合の結果も踏まえ,日本の取り組みを紹介し,関係国が具体的な取り組みを速やかに開始することが重要であることを主張していきます。日本としては,今後とも「アフリカの声」をしっかり受け止めながら,本年11月にメキシコで開催されるCOP16,さらに南アフリカ共和国が議長国となる来年のCOP17に向けて,精力的に交渉に臨んでいきたいと考えています。
(最後に)
最後になりましたが,本日のシンポジウムの実現にご尽力された在京アフリカ外交団及び国連大学に御礼申し上げます。本日のシンポジウムでは,環境をテーマにパネル・ディスカッションを含め様々な議論が行われると承知しています。本日のシンポジウムを機会として,今後環境分野を含む日・アフリカ協力が一層深化することを期待しています。私自身としても,外務大臣政務官として,アフリカ問題や環境問題に引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
御清聴ありがとうございました。