演説

西村外務大臣政務官演説

(仮訳)

西村外務大臣政務官
ジュネーブ軍縮会議演説

平成22年3月

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議長、

 (はじめに)
 本日、歴史あるジュネーブ軍縮会議の場に立つ機会をいただいたことを大変嬉しく思います。
 本年は、核セキュリティ・サミットやNPT運用検討会議が開催され、「核兵器のない世界」の実現に向けた重要な節目の年であります。我が国は、核軍縮・不拡散を、特に重点的かつ実際的方法で地球規模で取り組むべきものであり、この分野で主導的な役割を果たしていきます。

議長、

 (軍縮会議に対する期待)
 昨年、唯一の多国間交渉機関である軍縮会議が、11年の停滞を乗り越え、作業計画を採択したことは歓迎すべきことです。国際社会はこの動きに大きな期待を寄せましたが、その後、軍縮会議自らが採択した作業計画の実施について合意できなかったことを遺憾に思います。我々は、軍縮会議の具体的な前進を確保するために、軍縮会議加盟国と真剣に対話し、協調の精神で、改めて昨年の合意を基礎とした作業計画の早期の採択に力を結集すべきと考えます。現在の状況を打破するために、議長のイニシアティブを引き続き期待し、我が国は議長を最大限支援します。

議長、

 (我が国の取組)
 現在の国際社会が核開発の脅威や核テロの危険の下にある中、核軍縮・不拡散において着実な努力を進めることが、国際社会全体にとって重大な課題です。昨年9月の国連安全保障理事会首脳会合において、鳩山総理は、唯一の被爆国としての道義的責任に言及し、核兵器廃絶に向けて先頭に立つ決意を表明しました。また昨年、我が国は、87の共同提案国と共に、国連総会に核廃絶決議案を提出し、圧倒的支持を受けて採択を得ることが出来ました。その他にも、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進に向けた働きかけや、検証制度を確立するための技術面での貢献、追加議定書を含むIAEA保障措置の強化、市民社会における軍縮・不拡散教育などを通じて、積極的な核軍縮・不拡散外交を展開しています。また、昨年12月に報告書を発表した「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」を豪州とともに立ち上げ、最大限支援してきました。

議長、

 (核兵器のない世界のための具体的措置)
 我が国は、核兵器の脅威は人類が直面する最も深刻な問題の一つであるとの認識を共有します。我が国は、現在の国際的な核軍縮・不拡散体制の抜本的強化に向けて、国際社会の協力を深化させていく必要があると考えています。核廃絶に向けた努力は息の長い取組みであり、この過程で現実的な措置を着実に積み重ねていかなければなりません。このような観点から、我が国としては、以下の三点を強調します。

 第一に、すべての核兵器を保有している国(核保有国)による核軍縮が重要です。これまで積極的に核軍縮努力を行ってきた米露が、STARTI後継条約交渉を早期に妥結させ、国際社会に対し核軍縮の成果を具体的に示すことを期待します。また、米露のみならず、すべての核保有国が、透明性のある方法で更なる核軍縮に取り組むことを要請します。その核軍縮努力においては、不可逆性及び検証可能性の原則を適用することも重要であることを強調します。

 第二に、CTBTの早期発効が重要です。米中を含むすべての発効要件国がこの条約を早期に批准することを強く希望し、未署名国及び未批准国に対する働きかけや技術面及び人材面での協力を通じて、引き続き発効促進に取り組んでまいります。また、条約発効までの間、核実験モラトリアムの継続を強く求めます。

 第三に、カットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)については、昨年、その交渉開始を含む作業計画がコンセンサスで合意されました。この条約は、兵器用核分裂性物質の生産そのものを禁止することで、核保有国による核兵器の生産を制限するとともに、新たな核保有国の出現を防ぎ、核軍縮・不拡散の双方に、またその重要性が高まりつつある核セキュリティに大きく貢献することが期待されます。したがって、カットオフ条約は、核兵器のない世界を達成するために必ず必要な措置です。我が国は、軍縮会議におけるカットオフ条約の早期交渉開始・妥結を強く訴えます。ストックを含むあらゆる論点について交渉の過程で議論されるべきです。また、すべての核保有国に対し、条約が発効するまでの間、兵器用核分裂性物質生産モラトリアムを宣言・維持することを求めます。

 

議長、

 (2010年NPT運用検討会議)
 本年5月に開催されるNPT運用検討会議は、NPT体制が抱える課題を克服し、その信頼を向上させるため、各国が一致して取り組むべき重要な節目となります。先月、我が国の岡田外務大臣がスミス豪外務大臣とともに発出した共同ステートメントでも確認されたとおり、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」の報告書も参考にしつつ、日豪両政府でNPT運用検討会議に向けた実践的核軍縮・不拡散措置に関するパッケージを追求し、そのために、他のパートナー国とも連携していく考えです。
 NPT運用検討会議が、核兵器国と非核兵器国の「対立」の場ではなく「協力」の場となるよう、そして核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用について、 有意義な合意を達成できるよう、我が国はリーダーシップを発揮し、最大限貢献していく考えです。

議長、

 (結び)
明日、NPTが発効40周年を迎えるに当たり、我々は改めて軍縮会議が主要な国際的な軍縮条約を生み出してきたというすばらしい成果を思い起こします。冷戦の最中でさえも、軍縮会議は、NPTはもちろんのこと、生物兵器禁止条約のような重要な条約を交渉しました。
 皆さん、軍縮会議は、今こそ、その作業を開始して、その存在意義である唯一の多国間軍縮交渉機関としての本来の役割を果たす時です。この観点から、軍縮会議が本年早期に作業計画に合意し実施することを期待し、我が国もそのための努力と協力を続けることを約束します。


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