演説

西村外務大臣政務官演説

(仮訳)

第13回人権理事会ハイレベルセグメント
西村外務大臣政務官ステートメント

平成22年3月3日

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 議長、人権高等弁務官、ご列席の皆様、

 初めに、2月27日にチリで発生した大地震に関し、被災されたチリ国民及び同国政府に対し、深甚なるお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 日本国政府を代表して、人権理事会でステートメントを行うことは、大変光栄なことです。ヴァンメーヴェン大使閣下の人権理事会議長としてのリーダーシップに敬意を表します。また、ピレー人権高等弁務官及び同事務所の活動を評価します。


 議長、

 昨年9月に発足した我が国政権は、人権分野を含む国連の諸活動に積極的に取り組んでおります。鳩山総理は、就任直後にNY国連総会において、我が国は国連において、様々な国の間の「架け橋」として、より大きな役割を果たすことができると確信している旨述べ、国連重視の姿勢を打ち出すとともに、この「架け橋」という考え方に共鳴する友愛の精神に言及しました。友愛とは、自分の自由と自分の人格の尊厳を尊重すると同時に、他人の自由と他人の人格の尊厳をも尊重する考え方であり、我が国人権外交の推進に当たっても、この考え方を基本として積極的に取り組んでいきたいと考えています。


 議長、

 我が国はこれまで、人権理事会設立以来の理事国として、国際社会が関心を有する人権状況に取り組んできており、今後も人権理事会が期待された役割を果たせるよう積極的に貢献してまいります。

 特に本年は、設立後5年の節目を来年に控え、人権理事会にとって非常に重要な年です。来年の人権理事会レビューに向け、今後議論が本格化していきます。このレビューの最大の目的は、人権理事会が実際の人権状況の改善に役立つ活動を行い得るよう、特に深刻な人権侵害状況に有効かつ機動的に対処し得るよう、その機能を強化することにあります。我が国としても、そのために、各国とともに知恵を絞っていきたいと考えています。

 普遍的・定期的レビュー(UPR)は、我が国としても、各国が自国の人権状況を振り返り、国内での様々な関係者との意見交換や各国との対話を通じて改善に向けた示唆を得る上で有意義な制度と評価しています。我が国は、UPRの効果を高めるため、必要に応じて事前に対象国と対話の機会を設ける等の努力を行っていますが、フォローアップも含めUPRの運用をさらに改善するための方法を見出すべく、積極的に議論に参加してまいります。

 特別手続の制度も、人権理事会が国際社会の人権上の諸課題に有効に対処する上で重要な役割を果たしており、不可欠なものであります。UPRとは別に、「特別報告者」や「独立専門家」あるいは「作業部会」が、担当する国・地域又はテーマに関する人権状況を調査し、人権理事会に報告する本制度は、その専門性と中立性を活かして関係国から人権改善状況に向けたコミットメントを引き出す上で非常に有意義です。引き続き、UPRと特別手続は、相互補完的な役割を果たすべきと考えます。


 議長、

 普遍的価値たる人権の保護・促進は国家の第一義的義務です。この原点にたちながら、各国の人権状況の改善に当たっては、個々の国・地域の特殊性や様々な歴史的・文化的・宗教的背景も考慮に入れる必要があります。

 この文脈で、我が国は、過去数十年の間に経済的に大きく成長したアジア地域において、人権分野の意識が高まっていることを歓迎するとともに、人権等の普遍的価値の重要性を規定したASEAN憲章を高く評価し、ASEANが人権に関する政府間委員会を設立したことや、昨年鳩山総理が共同議長を務めたバリ民主主義フォーラムの下で民主主義の定着に向けた取組が行われていることを歓迎します。我が国は、引き続き、各国のそれぞれの事情にも配慮しつつ、人権状況の改善に向けて建設的な立場から積極的に取り組んでまいります。

 議長、

 このように、国際社会全体で人権分野での取組が強化される一方で、残念ながら、深刻な人権侵害が地球上からなくなったわけではありません。1つとして、北朝鮮において人権侵害が組織的にかつ広範に行われていることは、国連事務総長や特別報告者による客観的な報告書で指摘されているのみならず、北朝鮮人権状況決議の採択等を通じて、これまでも国際社会の深刻な懸念の対象となっています。

 また、北朝鮮は、各国からの度重なる勧告にも関わらず、国際的な懸念事項である拉致問題に真摯に対応していません。私の地元新潟からは、当時13歳だった少女を含めた複数の日本人が北朝鮮工作員により拉致されました。北朝鮮当局は、拉致問題の再調査を約束したものの、1年半以上もその約束を実行していません。

 かかる深刻な人権侵害が継続しているケースについては、国際社会としてあらゆる可能なツールを用いて対処することが求められます。このため、今次人権理事会では、北朝鮮人権状況特別報告者のマンデートを延長し、引き続き北朝鮮の人権状況をフォローし、国際社会の注意を喚起することが必要です。


 議長、

 鳩山総理は、1月の通常国会における施政方針演説で、「差別や偏見とは無縁に、人権が守られ基礎的な教育が受けられる、そんな暮らしを、国際社会の責任として、すべての子どもたちに保障していかなければなりません」と明確に述べました。

 その関連で、昨年11月、児童の権利条約は国連採択20周年を迎えました。同条約の実施は我が国を含む国際社会の重要な責務です。我が国は、同条約及び2つの選択議定書に基づき提出した政府報告について、本年5月に児童の権利委員会による審査を受ける予定であり、建設的な意見交換となることを期待しています。また、来る3月26日には、海外から国連関係者等も招待してシンポジウムを開催し、「児童の権利の尊重・保護」を促進するための提言等について議論する予定です。引き続き、同条約の国内実施に努め、子どもの相対的貧困を解消すべく努めます。

 また、差別や偏見をなくすとの観点からは、我が国は、ハンセン病の問題についても積極的に取り組んでいます。ハンセン病は、現代では治療可能な疾病であるものの、今なお誤った認識に基づく差別・偏見により、ハンセン病患者・回復者及びその家族に対する深刻な人権侵害が世界各地で存在している状況にあります。このような問題意識の下、我が国は、人権理事会に関連決議を主提案するなど、ハンセン病差別撤廃に関する原則及びガイドラインの策定を目指しており、今後とも国際社会において主導的役割を果たしていきます。


 議長、

 人権の保護・促進のためには、各国の不断の努力が必要です。我が国は、2009年7月に強制失踪条約を締結しました。また、同年7月には女子差別撤廃条約、本年2月には人種差別撤廃条約に基づく政府報告審査を受けたところであり、委員会からの勧告等については積極的に対応してまいります。特別手続マンデート・ホルダー等の国連関係者との対話・協力についても、継続・強化していきます。さらに、人権侵害を許さずその救済を速やかに実現する、政府からの独立性を有する国内人権機構の創設に向けて現在検討を進めています。


 人権の保護・促進に終着点はありません。粘り強く、かつ継続した取組が必要なことは言うまでもありません。我が国は、人権理事会に引き続き積極的に関与・貢献していく決意であり、今般、2012年の人権理事会理事国選挙に立候補することを正式に決定しました。我が国のこれまでの取組が評価され、我が国の立候補に対して、多くの国々から支持をいただけることを希望します。


 ご清聴ありがとうございました。

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