演説

菊田外務大臣政務官演説

女性・平和・安全に関する安保理閣僚級公開討論
菊田外務大臣政務官ステートメント

平成22年10月26日
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議長,
ご列席の皆様,

 カテガヤ・ウガンダ第一副首相のリーダーシップの下,各国よりハイレベルの参加を得て本日の公開討論が開催されることを喜ばしく思います。また,バン事務総長,バチェレUNウーマン事務局長,ル・ロワPKO局長,アリ経済社会理事会議長,市民社会諮問グループを代表してのセルマ・アウォリ女史の示唆に富んだブリーフィングに感謝申し上げます。

議長,

 はじめに,歴史的な安保理決議第1325号採択10周年に際し,女性の関与なくして恒久的平和は達成されないとの同決議の趣旨を皆様と改めて確認しあいたいと思います。今日までの10年間,加盟国,国連システム,市民社会の協同作業によって,女性の保護と参画の強化を通じた平和の実現のための様々な取組が行われてきました。しかしながら,紛争によって無辜の女性と子どもが未だに最大の犠牲者となっている現状を見れば,多くの課題が残されているのが現実です。こうした課題を克服するためには,国際社会が,予防,参画,保護及び復興に包括的に対応する必要があります。

 決議第1325号履行については,そのモニタリング実施が重要な課題とされてきました。我が国は,包括的な観点から決議第1325号が目指す履行と現実のギャップを特定するために,同決議の履行指標を重視します。これら指標は,紛争の再発防止と早期警戒の観点からグローバルに適用されることが重要と考えます。このため,我が国は,安保理として同指標を承認し,国連及び各国がその利用を開始することを支持します。

 また,事務総長自らのイニシアティブにより,ジェンダーに配慮した平和構築のための行動計画へのコミットメントが表明されたことを歓迎するとともに,このコミットメントが現場において着実に実現されることを期待します。

 平和構築戦略の実施に当たっては,当該国のオーナーシップを尊重しつつ,国連を含む国際社会が現場において如何に支援するかが重要です。特に,国毎に国連の支援体制が異なる中で,PKO,政治ミッションやカントリー・チーム等の統合を強化し,ジェンダーの視点に立った国別の戦略を構築する必要があります。我が国は,来年1月に設立されるUNウーマンが,バチェレ事務局長の下決議第1325号の履行の視点からリーダーシップを発揮することを期待します。我が国はUNウーマン初代執行理事国に立候補しており,その活動を積極的に支援していく考えです。

議長,

 我が国は,本年4月,岡田前外相の議長の下,平和構築に関する安保理閣僚級公開討論を主催しました。その際に採択された議長声明は,政治,安全,開発,人権,法の支配の一貫性を強化する統合的アプローチの必要性を指摘しています。このアプローチは,決議第1325号の履行にも有効であると考えます。

 紛争下においては,文民が暴力の犠牲になる例は後を絶たず,女性や女児を保護することは,国際社会の重要な課題です。これには,PKOが,人道機関との連携を強化し,現地の住民の要請を的確に把握し,対応すること,また,当該国の法の支配や人権の保護を含むガバナンスを強化し,軍や警察といった治安組織の改革を進めることが必要です。また,女性や女児を保護するためには,これらの全ての活動において女性の視点を活かすことが重要です。

 更に,平和と安全は,社会・経済開発と並行して進める必要があります。特に,国家レベルでの再建のみならず,紛争の影響を受けたコミュニティーの再建や人々のボトムアップによる能力強化が復興後の社会の安定の鍵を握ります。この際に,女性が社会の再建,開発や紛争後の戦略策定に参加することが重要です。また,市民社会との連携も不可欠な要素です。我が国は,こうした人間の安全保障アプローチを重視します。

議長,

 我が国は,2005年に発表した「ジェンダーと開発(GAD, Gender and Development)」イニシアティブにおいて,紛争中及び紛争後の国に対するODAの実施に際し,緊急人道援助から平和構築支援に至るまで,ジェンダーの視点に立って女性や社会的弱者のニーズを適切に反映する必要があることを明記し,決議第1325号の着実な実施に取り組んできました。

 例えば,多くの女性が依然として貧困や暴力等に直面しているアフガニスタンに対しては,これまでも女性の経済的能力強化,貧困削減等,女性を対象とした様々な支援を行ってきました。今後,アフガニスタン情勢が極めて重要な局面を迎える中,同国の女性の自立や能力強化に焦点をあてた具体的支援を更に強化し,アフガニスタンの女性たちを紛争の被害者から平和構築の主体へと変えていく考えです。

 更に,我が国は,PKOや平和構築の分野で女性の視点を活かすことにより,女性の専門家が益々活躍できるような取組みを行っています。 例えば,アフリカで行われたPKO要員研修に女性自衛官を派遣した他,将来の国軍要員となることが期待される東ティモール人女性を防衛大学校で受け入れています。また,コンゴ民主共和国では,平和構築のための警察民主化支援の一環として,女性と子どもの人権への擁護・促進の観点から,多数の女性警察官の研修を実施しています。更に,我が国が日本及びアジアの文民を対象として行っている平和構築人材育成事業は,この3年間で55人の女性を平和構築の専門家として育て,現在その多くが平和構築の現場で活躍しています。

議長,

 決議第1325号採択10周年に当たり,決議履行のための具体的行動への政治的コミットメント表明を目指し,国連ハイレベル運営委員会,市民社会諮問委員会が設置され,パートナーシップが強化されました。本日,我々は,次なる10年に向けて国際社会のコミットメントを再確認し,今次会合のモメンタムを維持することが重要です。我が国も改めて決議第1325号の実施の強化にコミットするとともに,今後の国際社会の活動に積極的に参加する所存です。

 ご静聴ありがとうございました。



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