平成21年11月6日
於:国連大学(エリザベス・ローズ・ホール)
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御列席の皆様
本日は、平和構築人材育成事業・本コースの開講式にご参加いただき誠にありがとうございます。
紛争地域で苦しむ人々に思いをはせ、それらの地域で払われている平和構築のための努力に自ら貢献したいとする高い志にあふれた、日本から15名、その他のアジア各国から14名の研修員をこのコースに迎え入れることができ、心からうれしく思います。
今この瞬間にも、アフリカで、中東で、そしてアジアで、紛争により失われた平和を取り戻すことを切に願い、苦闘する国々の努力を、国連を始めとする国際社会が支援しています。平和構築は、国際社会全体が直面している課題であり、我が国も、国際社会において責任ある役割を果たすべく、現場における取組、知的貢献及び人材育成という面から様々な努力を続けてきました。
一例を申し上げれば、アフガニスタンを含む紛争地域においては、治安能力の強化、インフラ整備、農業・農村開発、職業訓練を含む人材育成など幅広い分野での支援を実施してきており、また、そのような支援を更に拡大する方途を検討しています。また、国連の平和構築委員会やPKO作業部会において、議長を務めることを含め、平和構築及び平和維持に関する議論を主導してきました。さらに、国際社会全体の平和維持能力を強化すべく、アフリカやマレーシアのPKO訓練センターへの支援を積極的に行ってきました。最近では、米国と共に、10月19日から30日に東京で国連PKO幹部訓練コースを実施し、PKOミッションの幹部候補となり得るアジア太平洋地域の関係者の層の拡充に貢献しました。
そして、平和構築の現場において、実際の活動に従事し貢献することのできる人材を、日本及びその他のアジア各国から輩出することを目指すこの事業は、我が国の平和構築に向けた努力の重要な柱の一つをなすものです。
2007年に開始されたこの事業も本年で3年目を迎えました。過去2年間のコースの修了生は、既にアフガニスタン、スーダン、シエラレオネ、東ティモール、スリランカなどにおける国連PKOミッションや国連機関の現地事務所を始めとする平和構築の最前線において活躍しています。また、各国の関係者の間でも、この事業は、複合的な平和活動に派遣される文民の育成に係る研究の有益なモデルケースであるなどとして高い評価を受けつつあります。これらの実績を踏まえ、この事業は、本年からシニア専門家向けコースの新設などにより拡充されました。この事業の立ち上げの時期から惜しみない協力をいただいている広島平和構築センター(HPC)、国連ボランティア計画(UNV)を始めとする関係者の皆様に改めて心からの感謝を申し上げます。
日本政府としても、皆さんがより積極的に活躍できる環境を整え、皆さんの力を結集してより効果的に機能させることができる施策をとっていく努力を継続していくことを約束いたします。
平和構築の現場や文民の訓練の分野において豊富な経験を有する国内外の講師陣による6週間の国内研修、また、国連ボランティアとして活動する1年間の海外実務研修は、研修員の皆さんが複雑で困難な平和構築の一翼を担うに十分な能力を身につける機会を提供するものと確信しております。また、講師陣や同じ志を有する研修員、特に責任のあるポストにおいて既に実務経験を有するアジア各国の研修員との間において、研修を通じて構築されるネットワークは、キャリアを更に発展させていく上で重要な資産となるものと考えております。
研修員の皆様がこのコースを経て、平和構築の分野において着実な一歩を踏み出すことを心待ちにしております。
以上をもちまして、私からの挨拶とさせていただきます。