平成21年10月19日
於:外務省760国際会議場
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ご列席の皆様
本日は、日米両政府共催で行います国連平和維持活動幹部要員訓練コースの開講式にご参加いただき、誠にありがとうございます。
このコースに参加するため、アジア太平洋地域の13ヶ国から、PKOミッションの将来の幹部となることが期待される25名の軍人、警察官、文民の方々に日本にお集まりいただきました。また、世界の各地から、経験豊かで有能な15名の講師陣の方々にご参加頂きました。厚く御礼申し上げます。
近年、国際紛争の様相は大きく変化し、民族的・宗教的対立による国内・地域紛争やテロなどが多発するようになっています。
このような変化を受け、国連PKOは、その設立数が増え、また、その活動も小規模で停戦監視等機能が限られたものから、大規模で多機能なものへと変化しています。さらに国連PKOは、安定した和平合意がない中、激しい内戦状態や国家機能が脆弱化した地域にも展開するようになりました。
国連PKOの規模も予算もかつてないほどの規模となり、また、国連PKOが必要とする人材も多様化し、治安部門の改革を担う警察要員や法の支配を担う文民など、慢性的に供給不足に陥っている人材もあります。
こうした事情から、国連PKOを包括的に見直すべきだとの声が叫ばれるようになりました。
この見直しの意見の中に、派遣される要員の質を問題とする指摘があります。派遣される要員の中には明らかに準備不足の者がおり、僻地での危険な活動にこうした者が派遣された影響は特に深刻である、というのです。このため、国連は、訓練の基準を設け、世界各地で要員の訓練コースを行っています。こうした国連の努力を、加盟国である日本と米国が支えるのが今回の訓練コースの趣旨です。
鳩山政権は、直面する外交の諸課題に全力で取り組む所存であり、平和構築分野における取り組みもその例外ではありません。先般の国連総会において、鳩山総理は、我が国が世界の「架け橋」となって挑むべき挑戦の一つとして平和構築の問題を掲げました。日本は、鳩山新内閣の友愛の理念の下、紛争後の地域とその人々が、その安定と復興のために注ぐ努力を国際社会とともに積極的に支援して参ります。
その観点から、本日は、国連PKOに関連して我が国として重点的に取り組むことをいくつか申し上げたいと思います。
第1に、我が国は、平和構築を専門とする文民の育成に尽力します。
第2に、我が国は、国際社会全体の平和維持能力の強化に取り組みます。
第3に、国連PKOへの要員派遣についても積極的に検討したいと思います。
第4に、我が国は、国連PKOの見直しに関する議論に積極的に貢献したいと思います。
第1の、平和構築を専門とする文民の育成についてですが、
平成19年度より、外務省は、平和構築分野の専門家を育成する人材育成事業を実施しており、このコースの修了者は、スーダンやシエラレオネなど世界各地の平和構築の現場で既に活躍しています。和平合意の達成やその実施を含め、平和構築の様々な分野で国際社会をリードできるような人材が育つことを切に期待しております。
第2の、国際社会全体の平和維持能力の強化ですが、
昨年以降、我が国は、エジプト、ガーナ及びマリのPKO訓練センターに対し、自衛官及び文民の専門家を講師として派遣しました。さらに、アフリカ8ヶ国(ガーナ、マリ、ケニア、エジプト、ルワンダ、ベナン、ナイジェリア及び南ア)及びマレーシアのPKO訓練センターに対する支援を行っています。
今回の訓練コースは、アジア太平洋地域諸国の国連PKOへの参加能力の向上につながるものと確信しております
第3は、国連PKOへの要員派遣についても積極的に検討することです。
今この瞬間に、世界各地で11万人以上の方々が、PKO要員として働かれている事実に照らせば、日本はまだまだ努力できる余地が多いのではないかと思っています。鳩山総理は、9月、潘基文国連事務総長との会談において、平和維持活動における我が国の人的貢献は十分ではないが、今以上に努力しなければならない分野であると考えている旨述べられました。
第4に、我が国は、国連PKOの見直しに関する議論に積極的に貢献したいと思います。
我が国は、本年1月から国連安保理で非常任理事国を務めており、また、安保理の下でのPKO作業部会の議長も務めています。特にPKO作業部会では、秋以降、安保理メンバーや部隊・警察要員派遣国の参加を得つつ、部隊派遣国その他利害関係国との関係の強化について議論を深めたいと思います。
今回の訓練コースにより、事務総長特別代表、副特別代表、官房長、軍司令官、警察長官といった幹部ポストに就く可能性のある方々を対象に、ミッションの計画、準備、運用や指揮に関する訓練を行うこととなっております。
ご案内のとおり、現在の国連ミッションの中には、困難に直面しているものもあります。こうした困難なミッションを成功に導くためにも、皆様に対する期待は大きいものがあります。この訓練コースを経て、皆様が、国連PKOの幹部要員としてご活躍される日が一日も早く来ることを心待ちにしております。
以上をもちまして、私からの挨拶とさせていただきます。
外務副大臣 武正公一