平成21年5月4日
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議長、
シディアウシク大使の議長就任に祝意を表します。我が国は2010年NPT運用検討会議の成功に向けて、貴議長を最大限支援します。
現在の国際社会が核開発の脅威や核テロの危険の下にある中、去る4月5日のオバマ大統領の演説でも示された核軍縮の機運を、2010年NPT運用検討会議につなげていくことが必要です。
我が国は、唯一の被爆国として、非核三原則を堅持し、核軍縮を通じて平和で安全な世界の実現に向けて主導的な役割を果たしてまいりました。
これまでも、国連総会において圧倒的支持を受けている核廃絶決議の提出、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進や、若い世代を含む市民社会における軍縮不拡散教育の推進を行ってきました。また、豪州とともに立ち上げた、セカンド・トラックの核不拡散・核軍縮に関する国際委員会が、有意義な報告書を提示するよう期待しており、最大限の支援を継続していきます。
NPT体制の維持と強化のために、NPTの完全な実施とNPTの普遍性の実現は本質的に重要です。
第一に、現在の国際社会においてその核問題が深刻な国への対応が必要です。北朝鮮に対しては、安保理決議第1718号と六者会合共同声明を実施するため、具体的行動をとることを求めます。一般的に、NPT上の平和的利用の権利を濫用した上で脱退を図るといった脱退の権利の濫用は認められません。特に、違反し脱退した国に対し、国際社会が一致して適切に対応することが重要と考えます。
また、イランについては、同国が国際社会の信頼を回復するために、適切な政策を選択することを期待します。
第二に、3つのNPT未加入国について、NPTに非核兵器国として加入するようねばり強く求めていかなければなりません。この関連で中東決議の内容を如何に実現するかという課題もあります。
先月、我が国の中曽根外務大臣は、世界的核軍縮を進めるため、3つの基本分野から成る11の指標を提案しました。この指標が明年のNPT運用検討会議の合意形成のための土台となることを強く期待します。
第一の基本分野は、すべての核兵器を保有している国(核保有国)による5つの核軍縮措置です。
第一に、米露によるリーダーシップの発揮です。これまでも積極的に核軍縮を進めてきた米露が、START I後継条約の交渉で妥結することが一つの鍵です。
第二に、中国を含むその他のすべての核保有国が透明性の向上を伴った核兵器削減を含む核軍縮措置を行うことが必要不可欠です。また、これらの国々が米露の核軍縮努力と逆行するような運搬手段を含む核兵器開発を凍結することを強く求めます。
第三に、すべての核保有国が、自らの保有する核兵器数、余剰の核分裂性物質や運搬手段等、核軍備についての情報を、定期的且つ十分に開示することを強く求めます。
第四に、すべての核保有国の不可逆的な核軍縮措置です。核弾頭の廃棄、核実験場の閉鎖等の不可逆的な核軍縮措置が重要と考えます。
第五に、検証です。核兵器解体についての技術的研究の必要性を指摘します。
第二の基本分野は、国際社会全体による措置です。
第一に、CTBT早期発効です。米国の新政権がCTBTの批准に前向きであることを歓迎し、2010年NPT運用検討会議までの早期批准を期待します。また、我が国は「発効促進プログラム」を策定し、中国を含む他の発効要件国による早期のCTBT批准を促す考えです。
第二に、兵器用核分裂性物質生産禁止条約の早期交渉開始及び妥結です。同条約ができるまでの間の兵器用核分裂性物質生産モラトリアム宣言を強く求めます。
第三に、弾道ミサイルの規制です。米露による中距離核戦力全廃条約のグローバル化の提案、EUによる短距離・中距離地対地ミサイル禁止条約の提案を我が国も支持します。
第三の基本分野として、エネルギー安全保障や地球温暖化の観点から原子力の平和的利用も必要であり、その際に重要な3つの指標を申し上げます。
第一に、国際社会は、原子力導入国による核不拡散/保障措置、原子力安全及び核セキュリティなどに関する基盤整備に対する協力を実施し、原子力発電の適切な国際展開を支援すべきです。我が国は人材育成を含む一層の国際協力を行っていく考えです。また、核燃料供給保証については、各国の供給能力をIAEAに登録するシステムの創設を提案する等、我が国は議論に積極的に参加していきます。
第二に、保障措置体制の強化です。我が国は、原子力の平和的利用を行うすべての国が、NPTに基づく包括的保障措置協定及びモデル追加議定書を実施することが重要と考え、これらの普遍化を推進します。
第三に、核テロリズムの防止です。すべての核物質や放射性物質の管理を強化すべきであり、オバマ大統領による「核セキュリティに関する世界サミット」の提案を歓迎し、米国と協力していきます。
議長、
我が国は、今次準備委員会に先の11の指標を含む作業文書を提出しました。また、2010年NPT運用検討会議に先駆けて、世界的核軍縮に関する国際会議を開催する考えです。