
御法川外務大臣政務官演説
世界経済・金融危機と開発への影響に関するハイレベル会合における
御法川政務官ステートメント(骨子)
平成21年6月25日
(英語版はこちら)
1.脆弱層支援に当たり必要な視点~「人間の安全保障」
- 世界は、食料価格高騰、エネルギー価格の乱高下、気候変動問題等に加え、100年に一度と言われる世界経済・金融危機という新たな地球規模課題に直面。特に、途上国の脆弱層への影響は深刻であり、これまでのMDGs達成に向けた努力が水泡に帰す可能性あり。
- 東アジアは、1990年代に深刻な経済危機を経験。その際に我々が学んだ教訓は、突然の景気下降に直面した時、常に、貧困層と声なき人々の生命、生活、尊厳がまずは脅威にさらされ、最も苦しむということ。
- これが日本が人間の安全保障を提唱し始めた理由であり、各国と国際社会は包括的かる分野横断的な人間中心の措置を実施する努力を行うべき。個人及びコミュニティーを保護するのみならず、人間の安全保障は我々が今直面している危機に立ち向かうための考え方の指針を示すもの。人々が自ら危機に対処する能力を強化すべき。
2.世界経済・金融危機への対応
- 世界経済の回復のためには、先進国と途上国とが一丸となって、あらゆる財政・金融上の措置を含むあらゆる対策を講じていくことが必要。国家、地域、世界レベルでの議論やG8およびG20における議論は排他的になってはならず、相互に補強されるべき。
- 我が国は、1990年代の危機の教訓も踏まえ、今回の危機への対応策として、1)金融市場対策として、銀行システム維持のための流動性供給、不良債権処理、金融機関へ資本注入等を実施すること、2)大規模な財政出動を通じ、景気を刺激すること、3)1929年からの世界大恐慌の経験を踏まえ、保護主義を抑止すること、及びWTOドーハ・ラウンドの早期妥結により自由貿易体制を強化すること等が極めて重要であることを主張。これらの必要性についてはロンドン・サミットでも確認された。
- 我が国は、財政の持続可能性に配慮しつつ、これまでに総額約2,700億ドルの財政措置を実施。各国も、成長力を強化し、内需を拡大する必要性を理解し、必要に応じ更なる行動をとることを決意すべき。
- 世界で最も大きな潜在力を有し、「開かれた成長センター」として世界経済に貢献することが期待されるアジア諸国が、危機の影響に対し協力して迅速に対応するとともに、成長力の強化及び内需拡大を図ることが重要。我が国は、アジア支援策として表明した最大約2兆円規模(200億ドル相当)のODA、アジアを中心とした220億ドル規模の追加的貿易金融支援による支援を表明。この一環として、緊急財政支援円借款約30億ドル(3,000億円を上限)を活用し、世銀及びADBとも協調して、内需拡大のための資金を機動的に供給する。
- 今回の危機克服に当たり、国際金融機関の果たすべき役割は極めて重要。これまでのIMFや世銀の迅速な危機対応策、途上国の意見をより反映させるための投票権と参加に関する改革プロセス等を評価。また、ADBの一般増資が先般合意されたことを歓迎。我が国は、IMF及びIBRDの協定改正を国会にて審議しているところであり、早期に受諾したい。
3.MDGs達成に向けた全員参加による努力
- ドナー諸国は、危機の状況にあっても、既存のコミットメントを着実かつ迅速に実施し、MDGs達成に向けた歩みを後退させないことが重要。
- 一方で、危機の状況下、途上国のオーナーシップに基づく持続的経済成長の達成がこれまで以上に重要。ODAのみならず、国内資金動員、海外直接投資等の幅広い財源確保も重要。
- 開発資金には限りがあることから、ドナー諸国間の一層緊密な協調、開発資金の効果的・効率的活用が重要。さらに、途上国からドナー、新興経済国、国際機関、民間財団、企業、学界に至るまで幅広い関係者の力を結集する「全員参加型」のアプローチも重視されるべき。
- このような観点からも、本年7月ジュネーブで開催予定の第2回「貿易のための援助」グローバルレビュー会合で積極的な議論が行われることが重要。我が国もその議論に積極的に貢献する考え。
- 日本は、前述のアジア支援策やTICADフォローアップを通じたアフリカへのODA支援倍増を含め、自らのコミットメントを着実に実施していく。他のドナー諸国に対しても、既存のコミットメントを着実かつ迅速に実施するよう呼びかけたい。