平成21年3月12日
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議長及び御列席の皆様、
まず、1998年国連麻薬特別総会のレビューを行うに当たり議長(ナミビア)が発揮されてきたリーダーシップに敬意を表するとともに、国連薬物犯罪事務所(UNODC)及び国際麻薬統制委員会(INCB)の貢献を高く評価したいと思います。
10年間の我々の努力にもかかわらず、アフガニスタンにおける麻薬問題、高濃度大麻の世界的拡散、アフリカを中継する薬物不正取引の急増等、依然、多くの課題が山積し、人類に深刻な脅威を与え続けています。
この10年間、日本は、薬物対策を我が国の開発援助政策の重要課題とし、また、人間の安全保障の観点から、特にアジアを中心に積極的な支援を行ってきました。10年前に世界最大のアヘン生産地域であった黄金の三角地帯でケシ栽培面積が8割も減少した背景にも、代替開発支援等の我が国の貢献があります。
国内においては、1998年以降、5年毎に国家戦略を策定し、これらに基づく徹底した薬物乱用防止策を実施してきました。日本は、世界においても薬物乱用率が最も低い国の一つになっており、昨年来日したINCB調査団も我が国の取組を高く評価しました。
私は、改めて「共有責任」の概念の下で、国際社会が薬物対策に取り組む必要があることを強調します。
薬物を規制するには、不正薬物を生産する者、消費する者、不正取引に関与する者の問題があり、対処の上での比重は異なりますが、いずれの国や地域もこれら問題に無関係ではありません。
各国は、先ずは国内の問題に応じた取組を強化する必要があります。麻薬生産国は代替生計支援などの取組を推進し、消費国は予防・啓発活動等によって需要の削減に取り組み、また、中継国は、流通経路を絶つための法執行を強化すべきです。
その上で、国際協調の下、援助国が得意分野を活かした支援を実施していくことがポイントです。
日本について申し上げれば、我が国は、消費国として国内で薬物乱用の防止策を一層推進するとともに、我が国の知見・経験を活かした以下の3つの分野での国際協力を推進していく所存です。
(代替開発支援に焦点を当てた開発援助)
貧困から生じる経済的・社会的不安は不正薬物を蔓延させます。日本は、現在アフガニスタンにおいても実施しているように、今後も、代替開発支援としての農業・農村開発支援を積極的に実施していく所存です。
(合成薬物対策)
日本は、戦後直後より覚せい剤の乱用問題と闘ってきた経験に基づき、効果的な対策を講じています。日本は、これまでアジアを中心に合成薬物対策を支援してきましたが、国際的にもこの分野での取組が推進されるよう、更なる貢献を行う所存です。
(予防政策の推進)
我が国は、薬物乱用防止の成功国として、「ダメ、ゼッタイ」の精神に基づいた我が国の乱用防止政策を世界に広め、この世界から薬物乱用を根絶したいと考えます。
国連加盟国政府のハイレベルが結集したこの会合において、私達が「共有責任」を再認識し、世界から薬物乱用を根絶させるための具体的な行動計画を打ち出し、それを着実に実施するという政治的意志を共有するよう強く望みます。生産国、消費国、中継国は各々の責任を果たすとともに、このグローバルな課題に対処するため、協力と調整を強化しなければなりません。
私は、国際社会が今回の会合で一致して求めるグローバルな戦略に基づいて行動するため、日本が引き続き、世界を先導していくことをお約束します。