平成21年2月26日
ご列席の皆様、
本日は、「武器貿易条約(ATT)アジア太平洋地域会合」に、遠路はるばるお越し頂き、誠に有り難うございます。
遠路はるばると申し上げました。皆さんがそのような長い道のりを辿った由縁は何なのでしょうか。私は、一条の光明なのだと思います。武器貿易を責任あるものにしたい。そして紛争や武器による被害者を少しでも減らしたい。90年代後半、そのような理想が多くの人々の胸に芽生えました。幸いなことに、その考え方がNGOの方々と政府関係者とで共有され、政府とNGOの関係者による協力を通じてATT政府専門家会合の設置を決定する2006年の国連決議へと引き継がれました。
国連におけるATTの議論は、昨年の政府専門家会合における議論とATTに関する国連決議を受けて、来週からニューヨーク国連本部で開催されるオープン・エンド作業部会を皮切りに、2011年まで計6週間の一連の会合が行われることになっております。この国連プロセスのレールが敷かれるまで、長い道のりがありました。各国から様々な意見が出され、それらの意見を聞き、難航する調整を行い、ここに至っているのです。
武器貿易には各国の様々な立場があり、それはそれらの国々にとって安全保障という国益に関わる重要な問題です。その背景には国際政治も絡んできます。輸出国や輸入国の立場もあります。大国、小国もあります。様々な国々からの様々な意見、それらは、各々の国の立場からもっともなものでありますが、そのような意見を調整・集約しながら、今後、国連での議論が進められることになります。
今回のこの地域会合は、国連での会合に先駆けてアジア太平洋地域で会合を行い、国連における議論を活性化しようとするものであります。この会合に、昨年の政府専門家会合議長を務め、また来週から始まる作業部会の議長を務めるモリタン大使をお招きできたことをうれしく思います。
このようなATTの議論において、ATTの作成過程の議論に不可欠な要素とは何でしょうか。段階的アプローチ、透明性、幅広い受益者、普遍性など色々考えられます。これに加えて、私は、ATTの議論を進めて行くに当たって、もう一つ重要な要素があると考えます。それは平和を希求する真摯な心とそれを実現するための強い政治的意思です。我が国は、1991年に当時のEC諸国と協力して、各国の信頼醸成、過度の軍備の蓄積の防止を図ることを目的とした国連軍備登録制度を発足させました。また、小型武器決議や核軍縮決議も毎年国連に提出し、圧倒的支持を得ています。日本も「真摯に」平和を希求する道を強い政治的意思をもって歩んでいるのです。
冒頭、私は一条の光明と申し上げました。10年以上も前に多くの人々の胸に芽生えた光明は、長い時をかけて各国の政府関係者の人々に広がり、国連における議論へと引き継がれました。私は、ATTの今後のプロセスにおいて、国連加盟国の間で議論の重要性が認識され、より広く、より深まっていくことを願っております。そしてATTの議論を通じて、平和を希求する真摯な心を未来の子孫に引き継いでいける財産にして欲しいのです。「より良い明日」への財産に。
今回の地域会合の意義は、正にそのような議論の活性化にあると考え、実りある議論が行われることを祈念して私の挨拶とさせて頂きます。
御清聴、有り難うございました。