演説

福山外務副大臣演説

海外日系人大会における福山副大臣祝辞(於:憲政記念館)

平成21年10月14日

 記念すべき節目となる今大会においてご挨拶をする光栄をいただきました。この機会を通じまして、これまで移住者・日系人の方々が歩んでこられた道のりや、日本政府として行ってきた支援事業に思いを致すと同時に、今日の日系人と日本との交流をめぐる課題を検証し、将来のあるべき方向について私の考えを申し述べていきたいと思います。

 日本人の海外移住は、141年前に始まりました。移住者の方々は、たゆまぬ御努力により、さまざまな困難を乗り越え、移住先国の発展に貢献をされ、深い尊敬の念をもって受け入れられておられます。このことは、私ども日本国民にとっても大変名誉なことでございます。この間、日本政府としても、移住者の方々に対し、さまざまな支援を行ってまいりました。

 他方で、海外移住の長い歴史は、移住者・日系人の方々の苦難の歴史でもあります。中でも、ドミニカ共和国においては、社会の著しい混乱や自然災害の頻発に加え、移住事業における事前調査、情報提供が適切に実施されなかった等の事情により、移住者の方々が多大な困難に直面をされました。政府といたしましては、平成18年6月に下されたドミニカ共和国日本人移住者損害賠償請求訴訟の第1審判決を踏まえ、政府の当時の対応により移住者の方々に多大なご労苦をおかけしたことについて、率直に反省しお詫びを申し上げる内容の総理大臣談話を発表するとともに、特別一時金の支給等も実施いたしました。私どもといたしましては、こうした経緯を真摯に受け止め、ご高齢の方々や、現在も困難を抱えておられる移住者の方々に対し、今後とも支援事業を継続してまいりたいと考えております。

 ひるがえって、移住者・日系人をめぐる状況は大きく変わりつつあります。送出事業による組織的な海外移住は、平成5年度に終了した一方、個人単位で欧州や東南アジアに移り住まれる等これまでとは異なる形で海外に新天地を求められる方々も増えています。また、日系人社会においては、世代交代が進みつつあります。こうした変化に伴い、日系人の活躍の場やすそ野が広がる一方、伝統的な日本人社会の特徴である、同質で密度の濃いコミュニティがやや薄れてきているのではないかということも危惧をしています。

 また、金融危機に伴う世界的な景気後退の波は、雇用情勢の悪化を招き、特に、日本で働かれている日系2世、3世の方々に対し深刻な影響を及ぼしました。

 こうした状況に対し、日本政府としては、就労準備のための研修や、「生活者」としての日本語教室設置等、日系人集住地域を中心に、日系人の方々の就労やその子弟の教育を支援してまいりました。さらに、帰国を希望する方々に対しては、帰国のための支援金を支給しております。しかしながら、この帰国支援事業については、当初、永久的に日本に戻ってこられないのではないかという誤解を招き、同様の身分に基づく再入国制限を見直し、原則として「3年をメド」とした結果、利用者も着実に増加をしています。

 その関連で申し上げれば、日系人の方々に対する支援について、これまで、政府として統一的な取り組みができていなかった面があると思います。私どもとしては、今後は、自治体との連携も含め、政府全体として総合的な施策をいっそう進めていく必要があると考えております。

 具体的に、生活環境の整備や子弟への教育の充実、日本にお住まいの日系人の方々に対する支援を強化していきたいと思っております。

 もうひとつは、それぞれの現地社会で活躍されている日系人の方々、特に若い世代の方々は、我が国にとって重要な資産であるとの観点から、日本語教育、留学支援等の施策を通じ、若い世代の交流を促進し、絆を深めていくことが重要であると考えております。

 政府といたしましては、今後とも皆様の御意見に耳を傾けつつ、施策を具体化してまいりたいと思います。

 本日ご参集いただきました皆様のますますの御健勝と御多幸、そして本大会の成功を心から祈念を申し上げまして、私の挨拶とさせていただきたいと思います。

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