平成19年12月1日
ご列席の皆様、
本日は、対人地雷禁止条約(オタワ条約)署名から10周年という記念すべきこの機会に、本シンポジウムが、特定非営利法人難民を助ける会と外務省の共催で開催されることを、大変喜ばしく思います。
本シンポジウムにはマラソン・ランナーの谷川真理氏を特別ゲストとしてお迎えしています。2000年から谷川さんは地雷廃絶のためのチャリティマラソン大会を主催される等地雷問題に深く関わられています。また、海外から国連PKO局地雷対策サービス部(UNMAS)を代表してノエル・ムリナー氏、地雷被害の甚大なカンボジアの国家除去機関であるカンボジア地雷対策センター(CMAC)のヘン・ラタナ氏及び地雷除去活動を行う国際NGO ヘイロー・トラストのキャメロン・インバー氏にもご参加いただいています。スピーカーとして海外をはじめ各地からお越しいただいた皆様、また、地雷問題に関心を持ちこのシンポジウムに参加された皆様を、心から歓迎いたします。
対人地雷禁止条約がカナダのオタワで署名されてから、10年がたちました。現在までに、世界中で156カ国がこの条約を締結するに至りました。この間、我が国政府や国際社会に加え、難民を助ける会をはじめとするNGO関係者、多くの市民の皆様が、さまざまな観点から対人地雷問題に熱心に取り組んできました。
オタワ条約は、対人地雷の使用、開発、生産、取得、貯蔵、保有及び移譲を全面的に禁止し、自国に貯蔵されている対人地雷について破壊することを、その締結国に求めています。その締結当時、我が国は廃棄すべき約100万個の地雷を有していましたが、2003年2月8日、私の地元でもあります滋賀県において「対人地雷最終廃棄完了セレモニー」を開催しました。当時の小泉総理大臣とともに私もこの式典に出席し、それらの対人地雷処理の完了に立ち会いました。これで、この目の前の地雷が誰かを傷つけることはないんだ、この日本に地雷は存在しないんだと思うと、非常に感慨深いとともに、いまだ多くの国では、まさに今この瞬間に被害にあった人がいたかもしれず、対人地雷問題に一層取り組んでいかねばならないと、強く誓ったことを思い出します。
こうしたオタワ条約にて求められる国内措置に加え、我が国は、1997年12月に「犠牲者ゼロ・プログラム」を提唱するなど、対人地雷禁止の実現と現場における地雷除去・犠牲者支援等の地雷対策支援の強化を推進しており、本年3月までの支援総額は280億円に達しました。これら支援は、国際機関を通じた資金協力、NGOの活動を助成する草の根・人間の安全保障無償及び日本NGO支援無償等により行われてきています。先ほどご紹介した、UNMASのムリナー氏には国連機関を代表して、CMACのラタナ氏には地雷被害国カンボジアの政府機関を代表して我が国が支援する地雷対策事業が、現場でどのような効果をもたらしているかについてもお話しいただけることになっています。
また、国連機関や被害国政府機関のみならず、この場には国内の多数の関係者もご出席いただいております。地雷対策支援が、企業やNGOの皆様の心強い協力によって、進められてきていることは言うまでもありません。地雷対策支援とひとことで申しましてもその内容は幅広く、地雷除去活動のほか、地雷探知・除去技術の開発もございます。地雷により被害にあわれた人々への支援、地雷により被害を受けないための教育活動もございますし、日本の皆様に広く地雷問題を知っていただくための活動もあります。ですから、本日はこれらの地雷対策について、分野別分科会を設け、ご出席の皆様が過去に取り組まれた分野、ご関心を有している分野について、これまで地雷対策に関わったそれぞれの立場から、過去の取り組みについて議論していただきたいと考えております。その上で、我が国としての今後の更なる取り組みの将来像についても議論していただければと考えております。
本シンポジウムは、ご出席いただいた皆様に、世界及び我が国がこれまでに歩んできた地雷対策の道のりを広く知っていただき、いまだ世界で多くの悲劇を生んでいる地雷問題の克服へ向け、一層のご理解を得る場になると確信しております。
本日のシンポジウムの成功を心より祈念して、私の挨拶といたします。