平成19年4月30日
(英文はこちら)
議長、
まず、我が国として、新たなNPT運用検討プロセスの最初の準備委員会の議長に天野大使が選出されたことを光栄に思います。また、国連事務局の支援に感謝申し上げます。今年設立50周年を迎える国際原子力機関(IAEA)の本拠地であるここウィーンでの開催を喜ばしく思います。
去る4月18日、伊藤一長長崎市長が凶弾に倒れたことに深い悲しみと強い憤りを感じております。参加者の皆様の黙祷に対し、日本政府及び日本国民を代表して深甚なる謝意を表明いたします。日本政府は、同市長が核廃絶に向け精力的に活動されたことに深く敬意を表するとともに、日本国民共通の願いである核兵器のない平和で安全な世界の実現に向けて一層努力してまいります。
議長、
我が国は、唯一の被爆国としての立場から、また安全保障環境を改善するためにも、核軍縮・不拡散体制の礎であるNPTの維持・強化を極めて重視しています。現下のNPT体制は様々な深刻な挑戦に直面していますが、NPT締約国は、この挑戦をむしろ好機ととらえ、NPT体制の更なる強化に努力を傾注すべきです。
今回の準備委員会は、実質的な成果が得られなかった2005年運用検討会議後の新たな運用検討プロセスの始まりです。今次準備委員会では、核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用というNPTの3本柱についてNPT体制の強化につながる建設的な議論を行うことにより、NPT運用検討プロセスが現下の挑戦に対応する上で重要な役割を果たせることを国際社会に示し、NPTに対する信頼の維持に努めなければなりません。NPTが深刻な挑戦に直面する中、我々は2010年に向けた新たなスタートラインにおります。我々は、手続事項の合意に時間をとられ、実質事項の議論が十分できなかった2005年運用検討会議の失敗を繰り返してはいけません。わが国は、天野議長が提案した議題案が一刻も早く採択され、最初の重要な第一歩をともに踏み出せるよう、各国に対して一層の柔軟性を求めます。
議長、
我が国は今次準備委員会において特に以下の事項を重点的に取り上げて参ります。
核不拡散とともに核軍縮を推進することは、NPTを支える基本的なバーゲンの信頼性を高め、NPT体制の強化につながります。1995年の「原則と目標」や13措置を含む2000年の合意事項を最大限尊重しつつ、粘り強く核軍縮が促進されなければなりません。喫緊の課題はCTBTの早期発効及びFMCT交渉の即時開始及び早期の妥結です。現在、CDに提出されたCD6議長提案は、FMCT交渉を含めCD本来の任務の再開を可能とする現実的な妥協案であり、我が国はCD加盟国が同提案の採択に向け柔軟性を発揮するよう強く求めます。また、米ロによるモスクワ条約以上の措置の実施を含め核兵器国がすべての種類の核兵器の一層の削減措置を実施することが重要であり、すべての核兵器国から自国の核軍縮努力について透明性のある説明が行われることを求めます。
北朝鮮及びイランの核問題は、国際的な核不拡散体制に対する深刻な挑戦であります。これらに対する厳しい国連安保理決議の全会一致での採択は、国際社会の強い意志を示すものであります。我が国は、国際社会の一致した対応を歓迎し、すべての国連加盟国にこれら関連決議の実施を呼びかけます。
我が国は、昨年10月の北朝鮮による核実験を改めて非難します。北朝鮮による核実験は、弾道ミサイル能力の増強を併せ考えれば、我が国のみならず、東アジア及び国際社会全体の平和と安全に対する重大な脅威であり、NPT体制への重大な挑戦です。北朝鮮の核開発は断じて容認できません。北朝鮮が、安保理決議第1718号が定める義務に早急に従い、非核化に向けた具体的な措置を早急にとるよう強く求めます。我が国は六者会合を通じた北朝鮮の核問題の平和的・外交的解決に引き続き努めます。
イランについては、度重なる国際社会の呼びかけにもかかわらず、イランがすべての濃縮関連・再処理活動及び重水関連計画の停止を含む安保理決議等の要求事項に応じていないことは遺憾です。我が国は、問題の交渉を通じた平和的解決を強く望んでいます。イランがEU3+3による「二重の停止」提案に従い、濃縮関連・再処理活動を停止して、速やかに交渉プロセスに復帰するよう、同国に対し引き続きあらゆる機会を通じ働きかけていく考えです。
NPTの普遍性の拡大の観点から、インド、イスラエル、パキスタンに対して非核兵器国としてNPTに加入するよう改めて求めます。この関連で1995年の中東決議の重要性を改めて指摘します。
議長、
NPTが定める核不拡散の義務は、IAEA保障措置により担保される必要があります。IAEAがその重要な役割を十分に果たし、核不拡散体制を強化するためには、IAEA追加議定書の一層の普遍化が必要です。追加議定書の締結国は、NPT締約国の半分以下の78ヶ国に止まっており、追加議定書を未だ締結していない国に対し早期締結を呼びかけます。我が国は、特にアジアにおいて追加議定書の締結に向けた努力を行ってきており、今後も継続していく考えです。
近年拡大するエネルギー需要や、地球温暖化の観点から、原子力エネルギーの果たす役割が改めて見直され、国際的に原子力の平和的利用の推進の機運が高まっています。
原子力発電を含む原子力の平和的利用にあたっては、核不拡散、原子力安全及び核セキュリティを確保することが前提となります。特に原発の導入にあたってこの3点を確保することは、原発導入国のみならず、支援国、周辺国ひいては国際社会全体にとって重要な課題です。IAEAの諸活動はこのような課題に対処する重要な活動であり、我が国は引き続きIAEAを支援してまいります。特にテロリストなど非国家主体への核物質等の拡散防止を確保する核セキュリティの強化は国際社会として取り組まなければならない新たな課題です。我が国はIAEA核セキュリティ基金への拠出を通じて、核セキュリティ強化に努めており、本年3月、約125,000米ドルの追加拠出を行ったところであり、引き続きかかる支援を行ってまいります。
核不拡散を確保しつつ、如何に原子力の平和利用を進めていくかは大きな課題です。そのため、我が国による「核燃料供給登録システム」も含め様々な提案が出されていることを歓迎します。我が国としては、今後IAEAを中心に進められる国際的な議論に引き続き積極的に参加していく考えです。
議長、
NPTからの脱退は、国際の平和及び安全に深刻な影響を与えうる問題であり、2005年運用検討会議における有益な議論を基礎として更に深い議論を行うべきです。
軍縮不拡散は我々のような政府職員や専門家によってのみ推進されるものではありません。一般市民による平和への強い願いを、また、経験、知識を次世代に受け継ぐことが大切であり、我が国は軍縮不拡散教育の重要性を訴えて参りました。我が国は、今後、新しい試みとして、世界の学生どうしによる軍縮不拡散問題についてディベート大会の開催や我が国のポップカルチャーである漫画を活用した軍縮不拡散の知識の普及を行いたいと考えています。
議長、
我が国は、今次準備委員会に上記の重点事項を含む包括的作業文書及び軍縮不拡散教育の作業文書を提出しており、今後のクラスター別の議論にも積極的に参加してまいります。今次準備委員会においてNPT締約国間でNPTの強化に向けた率直な議論が行われることにより2010年のNPT運用検討会議に向けたプロセスが円滑裡にスタートすることを強く念願しております。
ご静聴ありがとうございました。