演説

小野寺外務副大臣演説

第二回イラクの安定化に関する周辺国拡大外相会合
小野寺外務副大臣 ステートメント

平成19年11月3日
於:トルコ・イスタンブール

 ズィーバーリー・イラク外相閣下、
 ババジャン・トルコ外相閣下、
 ご列席の皆様、

 はじめに、第二回イラクの安定化に関する周辺国拡大外相会合の開催を歓迎するとともに、開催に向けたトルコ政府のイニシアチブ及びマーリキー首相を始めとするイラク政府の意欲を高く評価します。
 5月のシャルム・エル・シェイク会合以降、治安、エネルギー、難民・避難民の3つのワーキング・グループが開催され、イラク周辺国間の協力が進展していることを歓迎します。イラクの安定化には周辺国及び主要ドナー各国の協力が不可欠であり、本会合の開催は適切かつ時宜を得たものとして評価します。

(イラク政府・周辺国の努力)

 イラク国民及び政府は、引き続き、治安改善、国民融和、経済復興等の困難な課題に直面しています。
 これらの問題の解決のためにはイラク政府自身による努力が不可欠との考えから、我が国は、マーリキー首相のリーダーシップの下、イラク政府が問題の解決に向け努力していることを支持します。石油・ガス法採択、非バアス化の見直し等の重要課題について早期に成果が上がることを期待しています。
 また、周辺国からの協力が重要な鍵であり、本日もお集まりのイラク周辺各国には、民主的に選ばれたマーリキー政権を支えるため一層の協力を呼びかけます。

(イラク・コンパクト)

 さらに、こうした努力を支える国際社会の支援は不可欠です。イラク政府のオーナーシップと国際社会の協力により、イラク・コンパクト・プロセスが進展していることを、高く評価します。

(国連の役割)

 イラク復興支援における国連の役割の重要性はくり返すまでもありませんが、8月の国連決議1770の採択により国連イラク支援ミッション(UNAMI)のマンデートが拡大されたこと、及び9月の国連でのイラク・ハイレベル会合にて潘事務総長からイラクにおける国連のプレゼンス拡大が発表されたことを高く評価しています。今後、デ・ミストゥーラ新国連事務総長特別代表によるリーダーシップの下、国連が一層の役割を担うことを期待します。また、我が国は、我々が集まっているこの枠組みを一層有効なものとするための国連事務総長の提案を支持します。

(我が国の支援)

 我が国はこれまでイラクに対し、マドリッド会合での50億ドルのプレッジの着実な実施、60億ドルの債務救済、自衛隊による復興支援等、様々な支援を一貫して実施してきました。また本年2月には難民・避難民支援を含む1億ドル以上の追加支援を実施しました。我が国は、イラクの安定化は国際社会共通の課題であるとの認識の下、引き続き支援を継続していきます。

(難民・国内避難民問題)

 とりわけイラクの安定のために重要な問題として、イラクの難民・国内避難民の直面する深刻な状況を深く憂慮します。これまで多くの難民を受け入れてきた周辺国の努力を評価するとともに、ワーキング・グループの議論も踏まえ、このような人道危機に対して国際社会はさらに一致して取り組んでいく必要があると考えます。
 これを踏まえ、我が国はこの場で、難民・国内避難民を支援するための新たな資金協力を行う旨を発表したいと思います。我が国は、UNHCRと協力し、ヨルダン及びシリアのイラク難民支援のため約400万ドル、また、ICRCと協力し、イラク国内の避難民等のために約118万ドル、計約518万ドルの支援を新たに実施します。今回の支援は、本年2月に発表した支援に加えて、この問題に取り組む強い決意を示すため、追加的に実施するものです。こうした支援をも活用し、危機的状況が一刻も早く改善されることを強く期待します。

(クルド情勢)

 なお、この機会にPKKを巡る最近の情勢に対する懸念を表明します。テロは如何なる理由でも正当化されず、我が国はPKKによる一連のテロ行為を強く非難します。我が国としては、トルコとイラクの両当事国が、これまで粘り強く外交的解決に向けた努力を行ってきたことを評価します。その上で、我が国は引き続きイラク当局が北イラクに潜伏するPKKのテロ行為を停止させるため適切に対応するよう、また、トルコが最大限自制するよう求めるとともに、トルコ、イラク両当事者を含む関係国の協力によって問題の解決が図られることを期待します。

 我が国は、イラク問題の安定化に向けた周辺国の一致した取組の必要性を強調するとともに、今後もイラクの安定化に向けて、協力を継続してまいります。ご静聴ありがとうございました。

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