平成19年3月27日
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ご列席の皆様、テロ防止関連条約締結セミナーの開催に際しまして、日本政府を代表して、各国より参加された皆様方及び関係各位に対し、心より歓迎の意を表したいと思います。
我が国は2004年以来、条約によるテロ行為の犯罪化を進める上で不可欠なテロ防止関連条約の締結促進を目的とし、関係各国の経験と知見を共有する本件セミナーを開催して参りました。今回、皆様に参加頂いたことに感謝申し上げます。
世界のテロ情勢を俯瞰すると、国際社会はテロとの闘いにおける協力を強化し、多くの進展が見られました。しかしながら、昨年7月のムンバイにおける列車爆弾テロ事件、同8月の英国における航空機爆破計画未遂事件、同12月のバンコクにおける同時爆弾テロ事件等の他、各地におけるホーム・グロウン・テロの増加等、国際テロの脅威は依然として深刻です。東南アジア地域においても、各国政府・当局の取り締まりが強化され、大規模テロ組織の活動は弱体化しつつも、テロの脅威は引き続き深刻であります。こうした状況の中で、テロリストから国民と国家の安全を守るためには、様々な分野において、国際的基準に基づき、各国及び国際社会全体のテロ対処能力を強化する取り組みが必要であります。
こうした取り組みを進める上で、中でもテロ防止関連条約の締結と国内履行は重要な分野であります。アジア太平洋地域の全ての国において、これら条約の締結と国内履行が確保され、テロ行為が犯罪化されれば、関係国政府間での円滑な犯罪人引渡や司法共助が容易となり、テロリズムの抑制に極めて効果的であることは言うまでもありません。
本年は、昨年のセミナーでの成果を踏まえ、(1)発効済のテロ防止関連12条約締結に向けた各国の現在の取組を確認するとともに、(2)最近採択された「核テロ防止条約」や「海洋航行不法行為防止条約」の改正等について、その内容についての理解を深めたいと考えます。「核テロ防止条約」につきましては、我が国自身、2005年9月の国連首脳会合の場で同条約に署名し、現在締結のための国内手続きを進めているところであります。(3)また、ASEANにおいては本年1月、ASEANテロ防止条約が採択されました。我が国としては、テロに対処する法的枠組の促進に向けたASEAN国の取組を評価し、歓迎するものであり、今次セミナーの機会にその内容についての理解を深め、今後の協力の可能性を探る上での一つの機会としたいと考えております。
テロ防止関連防止条約締結に向けて、国内プロセスを進めていくためには、条約締結のための政治的意思の確認と条約履行のために必要な人的資源の能力向上をはかることが重要です。
我が国は、今次セミナーが各国による条約締結に当たっての技術的障害を取り除く上で大いに貢献できることを切に希望しております。
また、テロ対処能力向上支援のための我が国の努力は、テロ防止関連条約に限られたものではありません。我が国はこれまで、法執行、港湾保安、航空保安、出入国管理・税関、CBRNテロ対策といった各分野において、支援を実施して参りました。さらに、本年度は取組を一層強化することとし、「テロ対策等治安無償」、「ASEAN統合基金」の両スキームを新設するとともに、2006年6月及び8月にそれぞれインドネシアへの巡視艇供与、カンボジアへの国際港湾保安施設・機材整備支援を決定しています。今後もこれらスキームを活用してテロ対策支援を強化していく考えであり、このため各国へのテロ対策協力のあり方を具体的に議論する日ASEANテロ対策対話を立ち上げたところです。また、UNODCの技術支援プログラムに引き続き協力していく所存であります。
最後に、皆様の訪日とセミナーへの参加をあらためて歓迎申し上げるとともに、特に初回のセミナーから引き続き本セミナーに協力頂いているUNODC、国連アジア極東犯罪防止研修所(UNAFEI)、豪州及び米国からの参加に謝意を表したいと思います。そしてこのセミナーが実り多く意義あるものとなり、条約締結の促進に貢献することを希望しております。有り難うございました。