演説

浜田外務大臣政務官演説

軍縮会議(CD)における浜田大臣政務官演説

平成19年3月13日

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1.はじめに

 ジュネーブは最良の季節を迎えようとしている。CDも本格的な活動を開始する予兆が感じられる。
 軍縮不拡散をめぐる国際社会の取組は、地域の不拡散や非国家主体による核物質の取得の危険などの問題により引き続き深刻な困難に直面しているが、国際社会において軍縮不拡散に向けた取組が国連や地域的な枠組みを使って活性化されていることも注目されなければならない。
 本年は2010年NPT運用検討会議に向けた運用検討プロセスが開始されることから、核軍縮不拡散体制の礎の一つであるNPTにとり重要な年である。NPTは、国際の平和と安全の重要な枠組みの一つである。現在、NPTは深刻な危機に直面しているものの、その代替物はなく、我々に課された使命はNPTを維持強化することである。我が国が本年2月に共催したNPT日本セミナーにおいて、NPTの信頼性を維持することの重要性につき参加者の認識が一致したことは心強い。我が国は、本年4-5月に開催されるNPT第1回準備委員会に向けて議長国としてNPTの維持強化のために建設的な議論が行われるよう積極的な役割を果たしていきたい。

2.CDの機能の回復:FMCT交渉開始へ

(1)(CD全般)

 昨年の集中討議に続き、本年も年間6議長のイニシアティブで、有益な枠組み(organizational framework)が導入され、実際に活発な議論が行われていることを歓迎。他方で、CDが、「唯一の軍縮条約の交渉機関」の名にふさわしい機能を完全に回復する、すなわち軍縮条約の交渉を開始するためにはCD加盟国による更なる努力が不可欠必要である。
 本年6議長により導入された枠組みは、年間を通して特定の問題を扱う調整役が任命されたこと等により、全ての議題について実質的な議論を進めることが可能となっており、現状においては非常にバランスのとれた、包括的な枠組みである。また、実際に本日まで、議題のそれぞれの成熟度に対応した中身の濃い議論が行われてきたと承知している。したがって、交渉を行う段階にあることに核兵器国を含めていずれの国からも反対が表明されていないFMCTについて、交渉を開始するための環境が整ったといえるのではないか。合意できることから、合意するというプラグマティクなアプローチで、CDは本来の機能を回復しなければいけない。

(2)(FMCT)

 FMCTは、兵器用核分裂性物質の生産そのものを禁止することで、新たな核兵器国の出現を防ぐとともに、核兵器国による核兵器の生産を制限するものであり、核軍縮・不拡散の双方の観点から重要なmilestoneとなるものである。また、同条約は国際的な安全保障環境の安定にも大きく貢献する。FMCTは、早期に締結されてこそ意味があり、軍縮会議にとり速やかな対応が必要とされている。
 昨年5月の兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する集中討議及び本年2月及び先週(3月5-7日)のFMCT非公式会合は生産的かつ有意義であった。昨年、米国から提出された条約案及びマンデート案は、議論の良い土台となっており、既に同案をめぐって突っ込んだ議論が行われている。このことは、FMCTが交渉に入り得る段階にあることを改めて明らかにしている。我が国としては、第一会期の議論を土台に第二会期で交渉を開始することを希望しており、積極的な貢献を行うことをお約束する。

(3)(その他の事項)

 核軍縮、宇宙空間における軍備競争の防止(PAROS)、消極的安全保証(NSA)といった他の事項についても、引き続き議論を深めていくべきであり、我が国はいずれの議題においても、議論に積極的に参加していく。
 (核軍縮)核軍縮については、FMCTに加え、CTBTの早期発効が重要である。我が国は、未批准の発効要件国10箇国に対して改めて署名・批准を求めたい。我が国は、二国間の軍縮・不拡散協議の場などを通じてこれらの国に対しCTBTの早期批准を求めている。この関連で、我が国は、昨年10月9日の北朝鮮の核実験を改めて非難し、北朝鮮の核保有が断じて容認できないことを強調したい。2月の六者会合での合意は北朝鮮による核放棄に向けた前進であるが、2005年9月の六者会合共同声明の完全な実施に向けて努力を継続する必要がある。本年9月には第5回CTBT発効促進会議が開催されるところ、同会議に向けて早期発効に向けた機運を高めていきたい。
 米露がモスクワ条約に基づいて核軍縮を着実に実施していることを評価した上で、今後、両国が同条約を超える核削減に着手することを慫慂したい。その他の核兵器国に対しても核軍縮の努力を求めたい。
 (PAROS)PAROSに関して言えば、宇宙空間は人々の日常生活においてますます重要な役割を果たすようになっている。人工衛星は実際、通信、航行、測量等の幅広い分野で人類にとり不可欠な役割を果たしている。そのような人工衛星を含む宇宙物体(space object)の安全な運用に影響を及ぼし得る行為に関しては透明性をもった説明が行われることが重要である。

3.結び

 本年、CDは幸先の良いスタートを切った。CDがこれまでの進展からさらに一歩踏み出すべきであり、それはCD加盟国の創造性、柔軟性、そして実際的な対応にかかっている。我が国は、今後も、CDが機能を完全に回復し、国際社会の期待に応えられるよう努力を続けていく所存である。

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