平成19年2月5日
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ドゥスト・ブラジ仏外務大臣、ベネマンUNICEF事務局長に対し、このような会議を開催していただいたことに感謝する。クマラスワミ紛争下の児童事務総長特別代表や、その他武力紛争と児童の問題に多大な関心を持つ多くの国からの閣僚、NGO代表者に並んでこの場に参加することを名誉に思う。
武力紛争が児童に及ぼす影響は、従来から取り上げられている。本日こうした国際会議が開催されているということは、武力紛争の下で児童が被る苦しみに国際社会が一層関心を払い、問題解決への望みをますます強くしていることを示しているという点で大変心強く思う。しかし、我々が集まるということは、依然悲しい現実があるということでもある。
児童兵の徴兵および使用やその他の児童に対する暴力は、個々の児童に癒しがたい心身の被害を与えるという点で、重大な権利侵害に他ならない。その意味で、児童の権利条約の選択議定書として「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書」が策定され、現在では我が国を含め111もの締約国があることを歓迎する。今後もより多くの国が同選択議定書を締結し、各国政府がその遵守に最大の努力を払うことを願う。
国際社会は、児童兵の徴兵が禁止されるべきものであり、これを行った者は罰せられるべきであるとの明確なメッセージを送っている。国際刑事裁判所(ICC)においては、15歳未満の児童を軍隊に強制的に徴集したケースの戦争犯罪の事件の公判が付託されている。また、安保理は、「監視・報告メカニズム」を確立した上、コンゴ民主共和国において、武力紛争下で強制徴集等を行う政治的及び軍事的指導者に制裁の対象を拡大する決議1698を2006年7月31日に採択した。将来の犯罪抑止・平和の確保に貢献するメカニズムを真に定着させるためには、規範の普及、規範の遵守の確保が重要である。このように国際社会が具体的な行動をとりつつあることを歓迎する。
我が国は、児童兵が、武器から手を離し、教育を受け、無事に社会に復帰し、自立を達成することが児童の権利の保護・促進、また、人間の安全保障の観点から極めて重要であると考え、そのために従来から様々な支援を行ってきた。一つの例は、人間の安全保障基金を通じた、UNDPによるコンゴ共和国の旧兵士の社会復帰・コミュニティ復興プログラムである。
若い人材の健やかな成長は、また、社会の安定・平和の土台である。また、平和と安定は、開発の前提条件であり、MDGsの達成にも、平和の構築が重要である。こうした考えから、我が国では、2003年より、ODAの重要課題のひとつに「平和の構築」を据え、小型武器回収・廃棄プログラム、兵士の除隊・社会復帰プログラム、児童等戦争被災者の精神的外傷に対するカウンセリング等を支援してきている。我が国は、この一環として、昨年3月に、「大湖地域元児童兵社会復帰支援プログラム」として約200万ドルをUNDP及びAUに拠出した。プログラムの実施機関としてのAUのオーナーシップは、支援の効果を長期的・安定的なものとする上で大変有意義であり、また、児童兵の問題解決に関する広域的な取り組みとして今後のよいプラクティスとなることを願っている。
徴兵により、児童は教育の機会を奪われ、健全な成長の機会を失うばかりか、兵役を解除された後も適切な社会復帰支援がないため、あるいは親を亡くしているために、学校に戻るケースが少なく、再び兵士となることがある。こうした循環の背景は複雑でより根本的に差別の解消、教育機会の充実、貧困の撲滅等あらゆるレベルの目標に向けて、我が国は、これまでUNICEF等と協力し、多くの分野で支援を行ってきた。今後、政府・国際機関・NGOが連携して一層の努力を払うことが求められる。
この意味で、今般UNICEFが専門家とともに問題解決のための具体的なガイドラインをグローバルな視点で策定し発表したこと、また、仏政府が、児童兵問題の解決に向けて我々の共同の決意を世界に発信する機会を設けてくれたことにあらためて感謝する。
これまで様々なフォーラムで蓄積されてきた我々の知恵を併せれば、この問題解決のため具体的な進展をみることができると信じている。世界の子どもたちが紛争の苦しみから解放され、子どもらしい希望を胸に抱きながら生きられるよう、われわれの責任を果たさなければならない。