演説

浅野外務副大臣演説

第4回日印シンポジウム
「アジア地域統合の時代における日印戦略的パートナーシップ」
浅野外務副大臣基調講演(仮訳)

平成19年3月9日
於ニューデリー

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ご列席の皆様、
 本日、第4回となる日印シンポジウムに、日本政府を代表して基調講演を行う機会を与えて頂き、真に誠に光栄に思います。
 昨年、日印関係は飛躍的な発展を遂げました。昨年12月のシン首相の訪日の際、日印両首脳は「戦略的グローバル・パートナーシップ」の構築に向けて協力することで一致しました。本年、既に第1回EPA交渉が行われ、今月末には初めての外相間戦略対話が日本で開かれます。年内に安倍総理の訪印が予定される中、こうした一つ一つの取組が着実に進展していることは誠に喜ばしいことです。

ご列席の皆様、
 本日のテーマは「アジア地域統合の時代における日印戦略的パートナーシップ」です。「アジア地域統合」と聞いてまず思い浮かぶのが、来月当地で開催される第14回SAARC首脳会議です。日本を含む域外国が初めて参加する本会議には、日本からも麻生外務大臣の出席を希望しています。また、東アジアでは、ASEAN、APEC、ASEAN+3、そして東アジア首脳会議等、様々な枠組みが重層的に進展し、将来の東アジア共同体の構築が地域の共通目標として認識されるようになっています。
 こうした中、日印両国はどのように協力していくべきなのでしょうか。皆様に討議頂く前に、二、三私の考えを述べたいと思います。

 第一に、日印両国は自由や民主主義といった普遍的価値観を共有していることを協力の出発点とすべきだと思います。
 1月の東アジア首脳会議において、安倍総理は、普遍的価値の共有を基礎に地域協力を進めることを表明しました。また、麻生外務大臣は、普遍的価値を基礎とする豊かで安定した地域をユーラシア大陸の外周に沿った一帯において形成していくという「自由と繁栄の弧」という概念を、新たな外交方針として打ち出しています。
 例えば、日本は「自由と繁栄の弧」の最前線にあるカンボジア、ラオス、ベトナムのCLV三カ国にまたがるメコン地域を経済協力の重点地域としています。今年1月、私が三カ国の国境貧困地帯に対して2000万ドルを新たに供与する旨表明したのもこの表れの一つです。
 いわんや、南アジアはこの「弧」の中心に位置し、和平や民主主義の道を歩み出した国がいくつも存在します。「良い統治」の確保が国家の経済的発展にとり如何に重要であるかは、アジアの二大民主主義国である日本やインド自身の経験も証明しています。日印両国は、この分野で緊密に協力していくべきと考えます。

 第二に、アジアにおける地域統合は、民間を主要な牽引力とする「事実上の統合」がその特徴です。このような統合の形は、政治体制や経済レベルの差異の大きいアジアにおいて現実的なアプローチです。
 民間主導の統合を後押しするため、日本は様々な協力を推進しています。例えば、先般の東アジア首脳会議で、安倍総理は、省エネやバイオマスエネルギー推進のため、今後5年間で1500名の研修生を受け入れるほか、今後3年間で20億ドル規模のエネルギー関連ODAを実施する旨表明しました。
 南アジアにおいては、インドの2005年度の成長率が9%に達したのを始め、軒並み高い伸びを示しています。こうした中、南アジアのビジネス界においても、南アジアの巨大な市場を全体として活用しよう、そのため政治的障害を取り除き地域協力を進めようとの気運が生まれるのではないかと期待しています。日印両国としては、そうした動きを後押しするための協力を強化していくべきと考えます。

ご列席の皆様、
 こうした考えの下、具体的に日印間でどのような協力を進めていくべきでしょうか。これは日本の対SAARC支援の重点分野とも重なります。
 まず、普遍的価値という点に関し、日本は南アジア各国の平和構築、民主化プロセスを積極的に支援します。例えば、日本は自衛隊員を国連ネパール政治ミッションへ派遣する準備を進めています。また、来年憲法制定、総選挙を控えたブータンの民主化への取組を支援するため、高裁長官や選挙管理委員長を日本に招へいする予定です。日印がこうした分野における連携を深めていくことを希望します。
 経済連携の分野では、日印EPAの意義につき指摘したいと思います。日印EPAには両国の経済関係の強化の他、アジアにおける「開かれた地域主義」の拡大に向け、クォリティの高い経済連携のモデルを示すとの意義があり、これを実現するため印側の積極的取組を期待します。
 更に、SAARC域内のconnectivityの改善のために、インフラ整備を始め、制度のハーモナイゼーションといった課題にも取り組むべきです。日本はこの地域における主要なドナーであり、2006年度、SAARC諸国に対し合計約26億ドルの二国間ODAを提供します。南アジアの地域的ダイナミズムを考える時、こうした支援をSAARC地域全体のプロジェクトのためにより有効に使う方法が見つけられるのではないかと思います。こうした分野でも、日印両国は相互の連携の在り方について協議できます。

ご列席の皆様、
 日印両国はアジアの平和と繁栄に共同して責任を負っています。日印両国が、アジア地域統合を一層推進すべく協力することは、両国及びこの地域全体の利益に合致します。この観点から、両国は「日印戦略的グローバル・パートナーシップ」の強化に向けて協力すべきです。
 先ほど述べました諸点は、両国共通の目標達成に向けた取組の一例に過ぎません。本日参加頂くスピーカーの方々からは、より多面的角度から有意義な議論を展開して頂けると確信しています。本日のシンポジウムが、新たな時代における日印関係の進むべき方向性を探求する上で、有意義な会合となることを祈念します。

ご静聴ありがとうございました。

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