演説

山中外務大臣政務官演説

国連大学・ユネスコ国際会議「グローバリゼーション:科学技術の課題と機会」
山中外務大臣政務官挨拶

平成18年8月23日 10時
於:パシフィコ横浜会議センター

(写真)山中外務大臣政務官

 マハ・チャクリ・シリントーンタイ王国王女殿下
 ファン・ヒンケル国連大学学長
 松浦ユネスコ事務局長、
 ご列席のみなさま

 今年もここ日本の地に集い、グローバリゼーションと人々の幸福の関わり合いを、知恵を絞って考える日を迎えました。
 本事業の支え手の一人の外務省の大臣政務官といたしまして、また私自身、国連大学と長年深いご縁をもって参りました者といたしましても、いま再び「人間の顔をしたグローバリゼーション」について考える機会をもたれますことを、心よりおよろこび申し上げます。
 ただ、今日と明日繰り広げられます議論に、私自身参加し、いろいろと学ぶことができないことだけは、なんとも心残りでなりません。

 ノーベルが危惧したように、科学技術のマイナス面では、今こうしている間にも、紛争地域で人の命を奪っています。
 例えば地雷などの初歩的なものから、カラシニコフなどの小型武器、そしてクラスター爆弾に至るまで、これを技術の産物の一つと数えますなら、グローバリゼーションの波に乗って世界中に非合法に広がる場合は、最も安く、そして現実の殺傷規模という点では最も大きな、事実上の大量破壊兵器に数えることができます。
 グローバリゼーションと科学技術がもたらすこうした暗い側面を前にして、人類の通信簿は、到底及第点を頂けるものではありません。

 けれども、シニシストよ、去れ、であります。
 グローバリゼーションに「人間の顔」を与えようというからには、われわれはみな、「超」のつく、根っからの楽観主義者でなければなりません。
 本会議にご参加の皆様も、未来への希望を託してやまない方々であることを、私は信じて疑いません。

 またグローバリゼーションに人間らしい相貌(かお)を与えようとするならば、不可欠の前提として、科学者が、人類愛の人でなくてはなりません。
 貧困を憎み、欠乏を憂う、熱い血のたぎる人である必要があります。
 そのような、高次元の動機に突き動かされる人として、科学者は子供たちの尊敬を集める必要があります。
 そしてその業績が、正当に認められなければなりません。

 先月、コナレ・アフリカ連合委員長が来日された時、小泉総理は「野口英世アフリカ賞」という賞を作ると発表しました。
 科学者の努力を、正当に報いようとする私ども自身の試みとご理解ください。
 野口英世は、日本の子供たちはみな知っています。
 黄熱病の研究に一生を捧げ、自らも同じ病に倒れてアフリカに客死した人でした。先月末にハイチのドナー国会議、ペルーの大統領就任式に続けてエクアドルを訪れました。エクアドルは2001年の9.11の直後の10月にモデルUNの基調講演者として訪れた事があります。さて、今回は、野口英世が研究した研究所が現在も活動しており、野口英世の功績を称えたプレートが掛けられているのを見てまいりました。
 野口英世賞はアフリカで、感染症を始めとする疫病と戦い、目覚しい功績を挙げた研究者や医療従事者を顕彰しようとするものです。
 このような賞によって、科学者が次の世代にとってのロールモデルとなり、科学の奉仕すべき目的に、新たな関心が集まることを願ってやみません。

 21世紀、人類が当面する問題は次第に明らかとなりつつあります。
 地球環境の悪化に伴う生態系の変化であり、砂漠化であります。
 それに伴う水や食料資源の枯渇であり、満足な栄養を摂れない人々を狙い撃ちして始まる感染症であります。
 このどれ一つからも、だれ一人として、無縁でいられる者はありません。
 そしてこれらはすべて、科学者の英知と人間愛をこそ、必要とする問題です。

 結びに、日本に唯一ある国連機関の本部の国連大学、そして日本が中心的に支援しているユネスコの双方が、こうして再び重要なセミナーを開かれますことに改めて敬意を表し、会議の成功をお祈りいたしまして、ご挨拶といたします。

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