演説

山中外務大臣政務官演説

軍縮会議(CD)における山中政務官演説の骨子

平成18年6月20日

本文(英文)はこちら

1.はじめに

 CDは、PTBT(部分的核実験禁止条約,1963年)、NPT(核兵器不拡散条約、1970年)、BWC(生物兵器禁止条約、1975年)、CWC(化学兵器禁止条約、1997年)、CTBT(包括的核実験禁止条約、未発効)等の重要な軍備管理・軍縮条約を交渉し、輝かしい実績を残したものの、作業計画の不成立により過去10年近くも停滞し、NPT体制への挑戦に対しても対応できないでいる。しかし、本年は集中討論の成果もあり、一筋の光明が差している。特に、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関する実質的な議論により、モメンタムが生まれ、具体的行動につなげうる可能性が生まれている。

2.CDの停滞の原因と克服の方法:FMCT交渉開始へ

(1)集中討議によりCDで実質的な意見交換を行うことができた。特に、5月中旬の兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)集中討議は生産的かつ有意義であった。我が国及び各国から専門家が派遣されるとともに、作業文書が提出された。特に、米国から提出された条約案及びマンデート案は、良い出発点となる。我が国は、ここに集まった知見を有する専門家のみなさんに、早期にFMCT交渉を開始しそれを締結するために米国の提案を活用するよう呼びかけたい。

(2)我が国の見解が全ての国により共有されているわけではないことは承知している。しかし、CDは行動を起こすことを躊躇してはならない。

(イ)第1に、合意できることから合意する。

 CD停滞の主な原因は、CDにて扱うべき事項に関するCD加盟国間の優先順位に差異があるということではなく、それらの事項間でリンケージがなされていることにある。自分の承知する限り、リンケージという手法が国際枠組みにおいて生産的な結果につながった例は極めて稀である。そのような手法は見直さなければならない。リンケージをやめることは、他の事項を無視することとは全く異なる。それぞれの事項にはそれぞれの長所があり、それら長所に即して取り扱うべきである。唯一反対がない事項であるFMCTについては、交渉の機が熟している。勿論、核軍縮、宇宙空間における軍備競争の防止(PAROS)、消極的安全保証(NSA)といった他の事項についても、引き続き議論を深めていくべきである。

(ロ)第2に、CDの過去の手法にとらわれるべきでない。

 作業計画についての5大使提案は成果を生み出していない。我々は、新たな視点で現状認識及び今後のとり進め方について検討しなおす時に来ている。この観点から、何らの前提条件なしでFMCT交渉開始に合意することはすべてのCD加盟国の利益となる。

3.結び

(1)今こそ、CD加盟国は政治的意思に基づいて柔軟性を発揮し、創造的かつ実際的な行動様式(modus operandi)を追求することが必要。本年のCD会期末までの3ヶ月間に、CDは、その長期停滞を打破するための努力を倍加すべきである。

(2)私はCD加盟国の深い知見と洞察力を信頼している。現状打開の機会は開かれている。それを掴むのは我々の責務である、なぜなら惰性もまた一種の大量破壊兵器であるからだ。

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