演説

山中外務大臣政務官演説

第1回人権理事会ハイレベル・セグメント
山中外務大臣政務官ステートメント(日本語仮訳)

平成18年6月19日
於:ジュネーブ

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議長、国連総会議長、国連事務総長、人権高等弁務官、ご列席の皆さま、

 新たに創設された人権理事会の初会合にあたり、日本国政府を代表してステートメントを行うことは私の大きな喜びとするところです。まず、我が国は議長に就任されたデ・アルバ・メキシコ大使閣下に心より祝意を申し上げます。また我が国は、この初会合を成功に導くため議長を支持し協力していく所存です。

 また、アルブール人権高等弁務官が、新設の人権理事会の下において、国際的な人権の保護促進に一層重要な役割を果たされることを期待するものであります。

議長、

 今日、国連における人権の主流化は不可逆的な流れとして進行しております。昨年のアナン事務総長報告「より大きな自由を求めて」も、全ての分野での「人権の視点」の重要性を改めて指摘するとともに、「安全なくして開発はなく、開発なくして安全はない。両者は共に人権と法の支配に依存する」としております。我が国は、ここに述べられた人権理事会創設の意義を支持します。人権理事会が、今までの人権委員会の業績に基づき、その強みを受け継ぎ、更なる価値を付加するものと信じています。我が国は、人権の主流化に積極的に貢献していく所存です。

議長、

 我が国は、人権の推進において、「理念」のレベル、「実施」のレベル、そして両者のバランスを重視します。まず、理念のレベルにおいては、普遍的な価値である人権の保護促進を実現するとともに、各国の歴史、文化など固有の実状に配慮することです。次に、実施のレベルにおいては、「対話と協力」によるアプローチを重視しつつも、これが機能しない深刻な人権侵害に対してはより実効的アプローチが必要となります。最後に、議論を通じ相互理解を深める一方、具体的な協力策を実施しながら、「理念」と「実施」の間のバランスをとっていきます。我が国は、こうしたバランスのとれたアプローチを推進します。

議長、

 新設の人権理事会がその期待に応えていくためには、具体的な成果を国際社会に示さなければなりません。そのためには、「実効性」、「建設性」、及び「即応性」が重要となります。第1に、実効性については、人権理事会は早期に活動方法に合意し、実質的な活動を開始する必要があります。第2に、建設性については、人権理事会は相互理解を基盤に人権分野での新たな国際協力を構築していくべきと考えます。第3に、即応性については、人権理事会は大規模かつ深刻な人権侵害に機敏かつ柔軟に対応していくことが必要です。そして、これらの目標を達成するために最も重要なことは、加盟国が人権の保護・促進に自ら範を示すことにより責任を共有することです。また、理事国としての責任を担おうとする国は、我が国が提案したプレッジ・ペーパーという方式により自らの誓約を公にし、それが人権レビューによって適切に評価されることが重要と考えます。我が国は、これらの努力によって人権理事会が、効果的且つ結果重視の機関となることを望みます。

議長、

 世界の人権状況は、数十年前より大きく改善しています。民主化が達成された国も増えています。しかし、残念ながら世界には、深刻な人権侵害がまだ多数存在しています。新設された人権理事会の意義は、正にこうした深刻な人権侵害の解決への道筋をつけられるかどうかにかかっています。例えば、北朝鮮においては、重大な人権侵害があり、特に、北朝鮮は我が国に対し、かつて拉致を行った事実を認めております。北朝鮮による拉致問題は、我が国にとり未解決であるのみならず、複数の国に及ぶ国際的な広がりを持つ問題です。我が国としては、この問題の解決に向け、国際的な連携を強化すべく、今後、積極的に取り上げていく考えです。その一環として、強制的失踪条約の早期採択を積極的に支持します。人権理事会が国際社会の期待に応え具体的成果をあげる体制を一刻も早く整えることを強く望みます。また、我が国としては、北朝鮮が人権及び民主主義を尊重する国際社会の一員として責任ある対応を行い、もって国際社会と新たな関係を構築することを期待し、対話を通じこのような深刻な問題を解決していくことを希望します。

議長、

 我が国はその人権外交理念の具体化のため、相手国との「対話と協力」を重視し、多国間及び二国間の技術協力に積極的に取り組んで来ております。我が国は開発途上国の自主性(オーナーシップ)を尊重し、平和、民主化、人権保障のための努力を積極的に行う国に重点的に支援を行うこととしています。例えば、司法・法制度等に関する能力強化支援を行ってきています。また、児童の商業的性的搾取を含む人身取引対策について、アジアを中心に協力体制を構築して来ています。更に、障害者等新たな分野を含め国際人権規範の整備にも取り組んでいきます。

 一方で、21世紀におけるグローバリゼーションの加速に伴い、従来の制度の枠組みでは十分に対処しきれない脅威が増大しています。そのような中で、我が国は、人間一人一人の保護と能力強化、つまり、人権を含む生命、生活、尊厳に対する脅威のあらゆる側面を包含する「人間の安全保障」を積極的に推進しております。このため我が国は既に約280百万ドルを人間の安全保障基金に拠出しています。この取り組みは、コミュニティー・レベルからのボトム・アップ・アプローチや市民社会との協力を特徴とし、世界各地で貧困や差別の克服、女性や児童といった弱者の保護及び能力強化等広範な分野において具体的成果をあげてきております。

議長、ご列席の皆様、

 我々は、人権理事会の発足という歴史的節目にあたり、「人権の促進」という共通の目標を持ってここに参集致しました。この共通の目標を胸に、率直な対話と協力の精神をもって、新設の人権理事会がその期待にしっかりと応え、世界で深刻な人権抑圧に苦しむ人々にとって、「希望の光」とならんことを強く望むものであります。我々にはその責務があります。我が国としても有効に機能し実り豊かな人権理事会の実現に向け、建設的な役割を果たしていく決意です。

 ご静聴ありがとうございました。

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