演説

遠山外務大臣政務官演説

国際エネルギー・ビジネス・フォーラム
(平成18年4月22日、於:ドーハ)
遠山外務大臣政務官スピーチ(仮訳)
セッション4:「パートナーシップ」“バランスの探求"

平成18年4月24日

 本セッションでは、官民の協力体制向上の方法、エネルギー安全保障の意味合い等が議論されると承知。自分としては、我が国民間企業の意見も踏まえて、官民協力、環境とエネルギーの両立、途上国支援の3点について意見を述べたい。

1.官民協力

 その国が置かれた状況によって、様々な官民協力の形態がある。我が国においては、政府は、我が国企業による上流事業の発展を政策的に支援することを期待されている。例えば、産油国の求めるもの(:技術協力、インフラ整備、水資源開発、緑化等)と石油開発権益とのパッケージ・ディールが実現可能となるような官民協力、資源外交の必要性について要望がある。また、政府によるリスクマネーの供給、資源金融、貿易保険等のカントリーリスク対策の拡充についても要望がある。

 また、民間企業は、石油・天然ガス開発を行う若手技術者の確保と技術の伝承、教育等に重点を置き、産油国、産ガス国へのエネルギー効率向上を含む技術指導等を行う等、幅広い分野で、産油国・産ガス国と協力することが重要。

 このような官民協力のあり方について、関係国間で議論を深めていくことが有意義と考える。

2.環境とエネルギーの両立

 エネルギー安全保障の中核的な柱の1つは、環境とエネルギーとの両立である。我が国自身1950年代及び60年代の公害問題や1970年代の石油危機を克服した経験を活かして、省エネやエネルギー効率の向上、太陽エネルギー等の再生可能エネルギーの開発・普及のための取組みに貢献。

 我が国のエネルギー効率は、GDP当たりの一次エネルギー消費量で、OECD諸国平均の2分の1、世界全体平均の3分の1。また、経済発展の過程で招いた公害への反省から、環境にやさしいクリーンな技術の開発に向け努力し、GDP1単位当たりのCO2排出量も、日本は世界で最も少ない国となった。以下に、我が国の官民が取り組んでいる案件を3つのみ紹介したい。

(1)サルファー・フリー燃料

 日本の石油業界では、世界に先駆けて2005年1月より、サルファー・フリー燃料の全国供給を世界に先駆けて開始した。これは、新技術の研究開発や脱硫設備の新設など、企業努力の結果である。これにより、ガソリン車においては、燃費に優れた「直噴エンジン」の導入が可能となり、ディーゼル車においては、さらなる燃費の向上が期待できる。また、2010年には年間120万トンのCO2の排出量削減が期待される。

(2)バイオエタノール

 日本の石油業界は、2010年度を目処にバイオエタノール混合ガソリンの導入を目指している。大気汚染対策や品質保証の観点から、導入はガソリンへETBE(Ethyl Tertiary-Butyl Ether)を添加するという方法が取られる予定で、今後化学物質リスクに関する調査等は必要であるが、もし実現されれば、CO2排出量を通常のガソリンと比べて2%削減することができるとの試算もある。

(3)随伴ガス対策

 本日、我が国民間代表で参加されている佐谷副社長の新日本石油では、ベトナムのランドン油田において随伴ガスを回収し、新たに海底に敷設したパイプラインにより供給、発電所等で有効活用することにより、温暖化ガスの総排出量を削減することに成功。この事業は、随伴ガスの回収、有効利用というクリーン開発メカニズム(CDM)の方法論(国際ルール)の確立、CDMの申請書作成、審査、承認に至る全工程を新日本石油が行い、2006年2月にCDMとして、京都議定書関係機関へ登録された。随伴ガスの活用は、ベトナムに限らずロシア等、他国においてもエネルギー効率改善、温室効果ガス削減に役立つものであり、IEAの試算によれば、ロシアでは随伴ガス対策によりロシアの対西欧ガス総輸出量の20%相当を節約できる由である。よって、こうしたベスト・プラクティスを広めて行くことが重要。

3.途上国支援

 以上のような官民の取り組みを活かしつつ、我が国は開発途上国に対して、この分野の技術のみならず、制度や人材育成の面での協力を進めて行きたい。

 例えば、我が国は、中国に対して、クリーン・コール・テクノロジーや環境に優しい天然ガス供給施設の供与、省エネルギー関連の技術協力を行ってきた。また、インドや東南アジアに対して、発電効率の高い発電所の建設、森林保全等を通じたエネルギー・環境協力を実施してきた。今後とも、これらの分野で可能な協力を維持、拡大することは、我が国のみならず、この地域ひいては国際社会全体の利益につながると確信する。

 但し、今後のエネルギーと国づくりという話の中で、先進国の開発手法が現在発展途上にある国々全てに当てはまるとは思わない。例えば、途上国の村落電化を先進工業国が行ってきたような高圧線送電グリッドで行うのではなく、それぞれの村が置かれた状況を考慮し、小規模発電や太陽光発電など、テーラーメードでのエネルギー供給策を進めることも考えられるのではないだろうか。

4.結語

 最後に、本年は、G8サンクトペテルブルグ・サミットにおいても、エネルギー安全保障が主要議題として取り上げられる予定である。本日の「ビジネス・フォーラム」において、我が国としては、産油国、消費国双方の民間の代表の方々の意見を良く聞かせて頂き、G8サミットでの首脳間の議論に向けて、我が国の準備に反映させて行きたい。

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