平成18年3月16日
本セッションでは、既存の多国間枠組みの評価、需要増削減の方策としてのエネルギー効率向上、エネルギー供給の多様化、クリーンなエネルギー技術の促進等が議論されると承知。議長の問題意識を共有する。自分としては、3点ほど意見を述べたい。
昨年、国際エネルギー機関(IEA)を通じ備蓄放出を行い、全体としては石油市場の沈静化に一定の効果を発揮したと評価。最近の地政学上の動きを踏まえ、今後石油供給の途絶のような事態がある場合には、迅速かつ円滑に備蓄放出を行う必要がある。このような今後の新たな安全保障上のリスクにも対応して、IEAの協調的備蓄放出の仕組みを一層強化することを検討すべきである。
また、経済発展の過程で招いた公害への反省から、環境に優しいクリーンな技術の開発に向けて努力し、GDP1単位当たりのCO2排出量も、日本は世界で最も少ない国となっている。強風にも耐えうる風力発電や、太陽光発電など、エネルギー技術の開発もめざましい。こうした経験や技術を活かし、我が国は開発途上国に対して、この分野の技術のみならず、制度や人材育成の面での協力を進めて行きたい。例えば、中国に対しては、クリーン・コール・テクノロジーや環境に優しい天然ガス供給施設の供与、省エネルギー関連の技術協力を行ってきた。また、インドや東南アジアに対しては、エネルギー効率の高い発電所の建設、森林保全等を通じたエネルギー・環境協力を実施してきた。今後ともこれらの分野で可能な協力を維持・拡大することは、我が国のみならず、この地域、ひいては国際社会全体の利益につながると確信する。
ただし、今後のエネルギーと国づくりという話の中で、自分としては先進国の開発手法が現在発展途上にある国々全てに当てはまるとは思わない。例えば、途上国の村落電化を先進工業国が行ってきたような高圧線送電グリッドで行うのではなく、それぞれの村の置かれた状況を考慮し、小規模水力発電や太陽光発電など、テーラーメードでのエネルギー供給策を進めることも考えられるのではないだろうか。
いずれにしても、エネルギー問題は、市場メカニズムに基づいて解決されるべきであること、そして、この問題を自分たち一人一人の問題として意識し、個々人が参加できるインセンティブを作り出していくことが重要と考えられるところ、21世紀にふさわしいエネルギー政策やその実現のためのエネルギー外交を展開していきたい。
最後に、ロシアにおける投資環境を改善しうることから、エネルギー憲章条約を批准することがロシアにとり有益であるとの考えを申し添えたい。