演説

伊藤外務大臣政務官演説

「第18回国連軍縮会議」における伊藤外務大臣政務官冒頭挨拶

平成18年8月21日

(写真)「第18回国連軍縮会議」における伊藤外務大臣政務官冒頭挨拶

パシフィコ横浜会議センターで開催された
本件会議の開会に際し、歓迎の挨拶を行う伊藤政務官

 ご列席の皆様、

 本日、ここ横浜で開催されます「第18回国連軍縮会議」に出席し、日本政府を代表して、ご挨拶する機会を得ましたことを、大変光栄に思います。会議開催のために尽力されました、国連軍縮局及び国連アジア太平洋平和軍縮センター、また、開催地として準備に奔走された横浜市の皆様に対し、心から敬意を表します。また、世界各国から横浜の地を訪問された参加者の皆様を暖かく歓迎したいと思います。

 我が国における国連軍縮会議の開催は、1989年の京都会議から、今回で18回目を数えるに至り、ここ横浜での開催は初めてとなります。この会議は、軍縮・不拡散に対する国際的な議論を活性化する上で、大きく貢献しており、国内外から高く評価されております。今回の会議が国際的な軍縮・不拡散の議論に大きな知的貢献をしてくれることを祈念すると共に、横浜市民の皆様、更には日本国民にとって、軍縮・不拡散と平和の問題をより身近なものとして捉えるための良き機会となることを心より願うものであります。

 現在の国際社会は、北朝鮮の核・ミサイル問題やイランの核問題、核拡散の地下ネットワーク等、核兵器をはじめとする大量破壊兵器、その運搬手段であるミサイル、そしてそれらを開発するための技術や資機材等の拡散の脅威に直面しています。国際社会は、このような脅威に対し効果的に対処するため、NPTを礎とする軍縮・不拡散体制の維持・強化に向け、今こそ一致団結する必要があります。

 こうした観点から、北朝鮮の弾道ミサイル発射に関し、7月15日、国連安全保障理事会において、国際社会の断固たるメッセージとして決議1695が全会一致で採択されたことは、軍縮・不拡散体制の維持・強化のために大きな成果と言えます。この決議採択にあたり、私自身もNYに赴き、国連安全保障理事会において様々な交渉を精力的に行い、国際社会が団結することが重要であることを強く訴えました。国際社会の平和と安定の実現は、国連加盟国の互いの信頼と協力の下に進められるものです。我が国としては、この決議の着実な実施に向けて最善を尽くす考えですが、国連加盟国もこの決議を着実に実施することを要請するとともに、北朝鮮が六者会合へ早期かつ無条件に復帰することを強く求めるものであります。

 また、イランの核問題についても、平和的・外交的解決に向け、国際社会として更に取り組んでいかねばなりません。7月31日に採択された国連安全保障理事会決議1696は、この問題に対する国際社会の断固たる姿勢をイランに対し示すものであり、また同時に、本件を外交的に解決していくための重要なステップであると考えます。我が国としては、イランが、EU3を中心とする主要国から提示された包括的な提案を一日も早く受け入れ、すべての濃縮関連・再処理活動の停止を含む今回の安保理決議の要求事項を遵守した上で、交渉プロセスに復帰することを強く期待します。またそのために、イランに対してあらゆる機会を通じ引き続き働きかけていく考えです。

 さらに、我が国は、南アジアや中東の安全保障環境にも注視しております。NPTが最も成功した軍縮・不拡散条約の一つであり、その普遍性が高まる一方で、NPT非締約国による核保有の問題は国際的な核不拡散体制における重大な脅威となっています。我が国はこれまで、NPT非締約国であるインド、パキスタン、イスラエルに対し、二国間協議などの場を通じ、遅滞なくかつ無条件にNPTに非核兵器国として加入することを求めてきております。この国連軍縮会議におきましても、核軍縮・不拡散体制の維持・強化に向けた多国間努力として、NPTの普遍性を高める方策についての活発な議論を期待します。

 これまで我が国は、唯一の被爆国として、核兵器が再び使われてはならないという強い決意のもと、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という非核三原則について、繰り返し表明しております。今後とも核兵器のない平和で安全な世界を一日も早く実現するために、国際社会の先頭に立って核軍縮・不拡散のための種々の外交努力を重ねていく所存です。具体的には次のような取り組みを行って参ります。

 まず、我が国は、1994年以降毎年、国連総会に核軍縮決議案を提出しています。この決議は、現実的、漸進的なアプローチにより核兵器のない平和で安全な世界を目指すものです。昨年の第60回国連総会では、NPT運用検討会議および国連総会首脳会合成果文書において軍縮・不拡散分野での実質的な合意ができなかったという、いわゆる「2つの失敗」を受け、核軍縮に向け簡潔で力強いメッセージを伝えるべく「核兵器の全面的な廃絶に向けた新たな決意」と題した決議案を提出しました。この決議案は、過去最多の支持を得て採択されました。今後も核兵器の廃絶に向け国際社会が優先して取り組むべき具体的課題を示した核軍縮決議案を国連総会に提出していきます。

 また、核軍縮・不拡散体制の礎として重要なNPTについても、我が国は、その維持・強化に取り組んできました。昨年の運用検討会議において、最終的に実質的な合意文書を作成できなかったことは、非常に遺憾であります。来年から2010年運用検討会議に向けた準備プロセスが始まりますが、我が国としては、NPT体制の維持・強化のために今後も積極的な貢献を果たして参ります。

 核軍縮を進めるための具体的な措置として、我が国は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効に向け努力をしています。昨年九月にNYで開催された第4回発効促進会議では、各国に対する条約の早期署名・批准の呼びかけや核実験モラトリアムの継続等を盛り込んだ最終宣言を採択しました。今年3月にはベトナムの批准という前向きな動きがありましたが、CTBT発効促進の機運を維持・向上させるために、我が国は今後も努力していく考えです。

 不拡散の分野でも、冒頭に申し上げたような核兵器を含む大量破壊兵器等の拡散を防止するために、国際社会としての体制を更に強化する取り組みが進められてきています。核不拡散の観点からは、そのための最も現実的かつ効果的な手段は、IAEA追加議定書の普遍化により、原子力の平和利用の透明性を十分に確保することです。さらに、それぞれの国が自分の国から大量破壊兵器等につながる資機材や技術の流出を防止するための輸出管理や、これを国際的な連携により補完する拡散に対する安全保障構想(PSI)などの取り組みも一層強化されてきています。

 そして、北朝鮮の問題一つをとっても、そのような国際社会の取り組みがアジアにおいて特に重要であることは論を待ちません。我が国は、アジア不拡散協議(ASTOP)の主催をはじめとするアジア諸国との政策対話、アジア輸出管理セミナーの主催をはじめとする能力向上支援をとおして、アジアにおける不拡散の取り組みを牽引してきています。

 以上、核軍縮・不拡散についての現状と課題、我が国の取り組みにつきまして、申し述べました。最後に改めて、太平洋に臨むここ横浜での「第18回国連軍縮会議」において、皆様の活発な議論により、世界の「太平」に向けた道筋(a path toward a pacific world)が示され、有意義な会議となることを期待しております。

 どうもありがとうございました。