平成18年6月26日
於:ニューヨーク・国連本部
平成18年6月26日、国連総会議場において、日本政府を代表して、演説を行う伊藤政務官
議長、
ご列席の皆様、
プラサード・カリヤワサム・スリランカ大使閣下に対し、国連小型武器履行検討会議の議長就任を心からお祝い申し上げます。今般、日本政府を代表して、小型武器検討会議において発言する機会を頂きましたことを光栄に思います。
(小型武器問題への取組の必要性)
非合法な小型武器は個人の生命及び安全に対する人道上の脅威です。国際社会は、このような武器の撲滅のために協力すべきです。私は、今年一月に公式訪問したリベリアで日本の支援を受けたUNICEF職業訓練所を視察しました。将来大工になるため、訓練所で一生懸命がんばっているんだと語ってくれた幸せな少年を思い出します。彼は昔少年兵だったのです。この少年が学ぶべきであったことは、武器の使い方ではなく、大工道具の使い方でした―――どのように壊し殺すかではなく、どのように建築し創造するかでした。人々を小型武器の脅威から守るため、この会議を是非とも成功させるために、我々は努力しなければなりません。
議長、
国連小型武器行動計画が採択されてからの5年間において、国家、地域及びグローバルなレベルにおいて、我々が誇ることのできる多くの進展がありました。行動計画は、非合法小型武器に対する包括的な規範的ガイドラインとして、その有効性が証明されたのです。さらに、市民社会による意義深い活動が行われました。しかし、解決すべき課題は未だ山積しています。
(我が国の2001年以降の貢献と実績)
議長、
我が国は、これまで、国際的枠組の構築と現場でのプロジェクトを推進してきました。我が国が、コロンビア及び南アフリカとともに提出した小型武器決議案は国際社会の取組の具体的道筋を示してきました。第一回中間会合には猪口邦子前軍縮代表部大使を議長として送りました。また、我が国は、過去5年間で2億7千万ドル相当に上る小型武器被害国におけるプロジェクトを支援してきました。
(我が国の小型武器政策・今次会議のフォローアップ)
議長、
国際的枠組の構築プロセスのために、我が国は引き続きこの会議の具体的成果に向け貢献していく所存です。最終文書において小型武器の移譲管理の重要性について強調すべきです。我が国は武器の輸出を行っておらず、私は、我が国の小型武器が世界各地で起きている紛争で使用されていないことをとても誇りに思っています。国際社会は、移譲管理につき国際的基準を設ける努力を行うべきです。最終文書は、実効性を確保するために、主要武器輸出国の参加を確保すべきです。
この関連で、武器貿易条約の構想は、通常兵器一般の移譲に関する管理の強化を目指すものであると承知しており、このような構想は我が国の考え方と基本的に合致していると考えています。
議長、
我が国は、今後、現場におけるプロジェクト実施において以下の3つの分野を優先的課題とします。
第一に、我々は、小型武器管理のための制度・能力構築支援を推進していきます。
国際社会が合意したルールは、各国において着実に履行されなければなりません。そのために、例えば、関連法律整備、関係当局等の法執行能力の向上を通じ、小型武器被害国のオーナーシップ強化を支援していきます。
第二に、我々は、紛争の影響を受けた個人及び地域コミュニティへ一層の配慮をしていきます。
小型武器が使用されている紛争では、児童兵、女性を含む多くの人々や関連するコミュニティが大きな被害を受けます。また、紛争後にも非合法な小型武器が流通することは、個人に対し脅威を与え続けるものです。人間の安全保障を確保すべく、我が国は、非合法武器の回収のほか、その家族やコミュニティへの支援も含め動員解除された兵士の円滑な社会復帰を支援していきます。
第三に、効果的な支援のための方策を探求します。
現場で活動するNGOの経験も含め、これまで実施されたプロジェクトのベスト・プラクティスを国際社会で一層共有すべきと考えます。また、「人々がなぜ非合法に武器を所持するのか」といった基本的な問題に取り組み、需要ファクターについても知見を深めることは、一層効果的なプロジェクトの形成のために有益です。
議長、
我が国は、このような政策に基づき、活用可能なスキームを使用していきます。例えば、アフリカの国々に対しては、本年1億2200万米ドルの紛争予防・平和構築無償の一部を、アジア地域に対しては、テロとの闘いをも重視している、本年3月に設立された7000万米ドルの日ASEAN統合基金を使用し支援をしていきたいと考えます。
さらに、今次会議での議論のフォローアップとして、小型武器プロジェクトのベスト・プラクティスや需要ファクターを含む国際支援に焦点を当てた東京ワークショップを、来年、開催したいと考えています。
議長、最後に、
昨年、コフィ・アナン事務総長は、NPT運用検討会議が実質的事項に合意できず、また、2005年国連首脳会合成果文書から核軍縮・不拡散への言及が削除されたことは、二度の失敗であると遺憾の意を示しました。このような状況から脱却するため、今次履行検討会議の成功が不可欠です。国際社会は、この問題の解決に向けた努力を倍加しなければなりません。私は、今次会議において力強く明確な最終文書が発出され、我々が進むべき具体的方向が示されると確信しています。我が国は、小型武器の惨禍をなくすことに努力する覚悟です。
議長、
皆さん、些細な国益を乗り越えようではありませんか。地球全体の利益を追求することにより、我々は全ての人々にとっての平和と安全という究極の目標を達成することができるに違いありません。より良い未来を創造する夢を実現しましょう。ここに一つの真実があります。
「夢は決して銃によって消されない。」