演説

伊藤外務大臣政務官演説

伊藤政務官の挨拶
「開発イニシアティブ」と対アフリカ協力に関するシンポジウム

平成18年3月14日
於:三田共用会議所

(写真)
(写真)

 大使閣下、
 ご列席の皆様

 本日は、「開発イニシアティブ」と対アフリカ協力に関するシンポジウムに参加頂き有り難うございます。

 この「開発イニシアティブ」は、昨年12月のWTO香港閣僚会議に先だって、我が国の途上国支援の一環として発表したものです。皆様の中には、「貿易自由化交渉をやっているWTOで何故途上国支援なのだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 世界経済はWTOの下で自由貿易を促進することで発展してきました。しかし、現在WTOに加盟する150ヵ国のうち、全体の5分の4を占める途上国の中には、自由貿易の利益を十分に得ていない国も少なくありません。特にアフリカの後発開発途上国など競争力の弱い国々が貿易を通して発展するには、様々な困難があります。したがって、WTOにおいても、途上国の支援は重要なテーマなのです。

 この開発イニシアティブを打ち出すにあたり、我が国は、これまでの欧米のアプローチとは異なる発想をしました。つまり、途上国が、開発を自分の問題としてとらえ、自分の力で発展できるよう促すにはどんな手助けをすべきか、というアプローチです。これは欧米流の慈善(charity)ではなく、連帯心(solidarity)をもって支援をすることです。すなわち、私たちは受益国と同じ視線(eye to eye)、同じ立場で考え汗をかきたいという誠意(sincerity)を表すものです。

 私は、アフリカを担当する大臣政務官であり、先般、リベリアの大統領就任式にも出席致しました。アフリカのように歴史の苦しみから抜け出して国造りをしようとしている国に連帯心(Solidarity)をもって臨めるのは望外の幸せです。

 さて、途上国がうまく貿易に加わるには、まず、売れる産品を発掘・開発する必要があります。次にその製品が円滑に輸出されること、そして最後に海外で販売され消費者のもとに届くことが必要です。この「生産」、「流通・販売」、「購入」という三つの要素は、通商を一本の鎖に喩えるなら、どれも欠くことのできない環をなすものです。「開発イニシアティブ」は、様々な手段を組み合わせて、これら三つのリンクをカバーするものです。今風に言うなら、一種のサプライ・チェーン・マネージメントです。

 我が国は、このイニシアティブの下で、今後3年間に合計100億ドルの資金協力、合計1万人の専門家派遣と研修員受け入れを行うと表明しました。今、我々はこの数字を達成するために努力しています。しかし、本当に重要なことは、こうした数字ではありません。どうしたら途上国の産品が国際市場で売れるようになるか。それこそが重要なのです。

 そこで外務省として、途上国にいる我が国の大使に、各国政府、国際機関、NGO等と意見交換をし、有望な産品や優良案件の発掘に努めるように指示を出しました。既に具体的な協力案件も動き始めており、9月には、TICADプロセスの下で、第4回アフリカ・アジア・ビジネス・フォーラムが開催されます。本日のシンポジウムも、こうした努力の一環なのです。

 このシンポジウムには、ベナンとケニアのジュネーブ代表部大使の他、WTO、UNCTAD、ITC(International Trade Center)の代表にもお越し頂いております。また、在京の各国大使、学界、産業界、NGOの方々にもご来場頂いております。

 是非とも、「貿易と開発」という問題について様々な角度から議論を頂き、日本などのドナー国、国際機関、NGO、そして途上国自身がどのようにこの問題に取り組んでいくべきかについて、ご意見を賜りたいと考えております。私どもは、皆様と手を携えて、開発イニシアティブの下で効果的な支援をしていきたい。そして一日も早く「これは日本の開発イニシアティブのおかげでできた」と言える成功例を作りたいと考えています。

 はるばる海外からお運び下さった皆様をはじめ、今回のシンポジウムにご協力下さった皆様、そして、日頃から途上国への支援にご尽力を頂いている皆様方に、心より御礼を申し上げて私の挨拶とさせて頂きます。

このページのトップへ戻る
政務官演説平成18年演説目次へ戻る