演説

塩崎外務副大臣演説

塩崎副大臣スピーチ
OECDフォーラム 中東における地域統合と開発

平成18年5月23日
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1.冒頭

 先ず初めに、中東地域における統合と開発という大変重要なテーマについてのフォーラムに参加し、発言の機会を得たことは大きな喜びです。

 このテーマの核は、職を持った人々、希望を持った人々です。この確信を心に抱きながら、日本は、中東北アフリカ(MENA)とOECDの共同作業であるイニシアティブに積極的に関与してきました。

 このイニシアティブの両輪は「投資」と「公共ガバナンス」です。本日私は、開発という観点より「投資」「公共ガバナンス」の重要性と、日本の経験や中東地域への協力について発言したいと考えています。

2.投資・公共ガバナンスの重要性

 我が国は、開発において「人の開発」を最重視しています。これは、国造りが「市井の人々」の参加により実現されたという我が国の歴史に基づきます。人々のよりよい明日への希望と、社会経済活動への参加の意欲が開発のエンジンとなると信じています。その観点からも、「投資」と「公共ガバナンス」が最も重要です。「投資」は雇用や新規経済活動をもたらし、「公共ガバナンス」は、人々の活動を最大限にサポートし、かかる活動を行うための予見性を確実なものとします。

(1)投資の重要性

 「投資」について更に述べれば、「投資」は経済活動の起爆剤となるだけでなく、新たな技術やノウハウをも移転するものであり、ホスト国経済に多大な利益をもたらします。例えば、東アジア、東南アジアの国々は早くから民間投資を誘致する政策を進めた結果、1980年以降2004年までのFDI残高でみると、途上国全体の約2兆ドルのうち東・東南アジアが50%以上を占めています。

 実際のところ、民間資本は最大の利益を希求するものであり、また本来用心深いものです。そうした民間投資を引きつけるためには、当然のことながら、法的安定性、法的予見可能性、公正な競争、最大限の自由化、人的資源の向上という基礎的な環境が必要です。

 このような基礎的な条件に加え、民間投資を惹きつける要因は市場の大きさです。域内統合は、このように市場を大きくするのみならず、特に流通をはじめとする諸コストを削減します。

(2)ガバナンスの重要性

 公共ガバナンスについて述べれば、公共ガバナンスの改善というのは、単に国民の期待を満足させる行政ということではありません。生き生きと活力ある社会づくりのため、政府、ビジネス、市民社会の3セクターが相互作用することにより新たな関係を構築するプロセスと考えています。

 日本の経験について申し上げると、すでに中世より、第一に公共ガバナンス、第二に教育及び人材育成、第三にインフラ整備を重視してきました。付言すれば、日本には「人は石垣、人は城」という言い習わしが古くからあります。

(3)MENA/OECDイニシアティブへの評価

 このように申し上げてみると、一口に「統合」をバネに開発を進めると言っても、域内国が画一な行動をとるということにはなりません。まずは各国がそれぞれの社会に合った投資環境強化、ガバナンス向上を進め留必要があると考えます。そうすることにより、域内協力の機運が高まっていくものと考えます。その観点では、MENA/OECDイニシアティブはよりよい未来を気づこうというMENA諸国オーナーシップに他なりません。日本はそうした姿勢を支持するとともに、成功のため謙虚に連帯の手を差し伸べたいと考えています。

3.日本のMENA/OECDイニシアティブに対する姿勢

 ここで、日本が如何に人的、財政的な協力を通じてMENA諸国のオーナーシップに協力しているかをお伝えしたいと思います。投資プログラムに関しては、開始から約1年半、運営グループの議長を務めました。また、1年目、2年目の活動に対し、毎年23万ユーロを拠出しました。更に、公共ガバナンス・プログラムに関しては、運営グループ議長を務めてきたほか、日本UNDPパートナーシップ基金を通じて10万ドルを拠出しました。

 また、二国間のODAを通じた協力も行ってきています。日本は、持続的な発展には、人々の参加、すなわち人々に働く場が与えられることが不可欠であると考えます。またインフラ整備と人材育成によって、経済活動は活性化します。その意味において、高等教育や職業訓練の重要性にも留意しつつ、初等教育における科学と数学教育に特に重要性を置いています。例えば、中小企業支援のため1000万ドルを国際金融公社(IFC)に拠出したほか、MENAと近隣地域の1万人を対象とする職業訓練を約束しています。また公共ガバナンス分野では例えば、自治体行政、公共事業会計検査、政府の人事管理、警察行政などに関し、日本における研修事業を通じてノウハウの提供等を実施してきています。

 その際、MENA地域の多様性に留意しつつ、決して特定の価値観や制度の押しつけとならないよう、それぞれの土地の文化や伝統に敬意を払いながら、極め細かい協力を心がけています。

4.結び

 MENA/OECDイニシアティブは、これまでに投資分野における閣僚宣言や、投資及び公共ガバナンスの国別行動計画等、成果を上げています。日本はこれを高く評価しており、今後とも連帯していくことを約束します。

 中東北アフリカは古くから豊かな文明と伝統があり、かつてはヨーロッパに文明を伝承してルネサンスを生みました。今日、この地域が、経済・産業を核として新たな統合へと歩み始めたように見えます。経済統合を達成することにより、中東地域が、世界の人々を惹きつけてやまない魅力的な場所でありつづけることを心より祈念しています。

 ご静聴ありがとうございました。

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