平成18年3月6日
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議長、各国代表の皆様、ご来賓の皆様、ご列席の皆様、
本シンポジウムの主催者を代表して、世界中からご列席頂きました皆様に対して、感謝と心よりの歓迎の意を表します。
この国際シンポジウム「200海里を超える大陸棚の外側の限界の設定に関する科学的及び技術的側面」は、外務省及び国連大学の共催により、文部科学省、海上保安庁及び資源エネルギー庁の後援を得て開催されるものです。
日本の地理的特徴の故に、これまで我々には海洋を最大限活用することが重要であったし、それは今なお変わっていません。このため、日本は、様々な国際的な場における海洋関連の取り組みにおいて積極的に活動してきています。本シンポジウムの主催は、海洋分野における我々の強いコミットメントを示す数多の事例のうちの一つです。
私自身、長年、海洋関連の取組みにおける我が国の指導力発揮をゆるぎなく支持し推進してきました。昨年7月、私は、多くの同僚議員とともに、東京湾に停泊中の調査船に乗船し、調査船の機能や調査活動の実態について専門家と意見交換を行いました。本日は、会場の前方に、国会でのなじみの顔が見えます。我々は同じ志を共有しているが故に、本日、私の同僚が何人か列席しているのです。
シンポジウムの開会にあたって、私より、本シンポジウムのテーマに関する私の考え、及び本シンポジウムに対する期待について、皆様に述べさせて頂きたく存じます。
国連海洋法条約は、200海里を超える大陸棚の外側の限界の設定について規定しており、条約締約国は、限界設定のための情報の準備に10年の時間が与えられています。
大陸棚の外側の限界の設定について、いくつかの重要な側面を述べさせていただきます。
一つ目は、その経済的な重要性についてです。
現在のところ、海底の資源はほとんど利用されてきていません。我々の技術は未だそれには至っていないのです。しかしながら、このことは、こうした資源の経済的重要性を減ずるものではありません。今ではないかも知れませんが、将来には、海底に埋蔵されている資源は、単に沿岸国にとってのみならず、人類の豊かな未来にとっても、極めて大きな重要性を持つでありましょう。
大陸棚の限界の設定の利益は、経済的な意味のみに留まりません。
私は、これが海洋の地理的秩序を安定化するものでもあると考えます。この点は、この問題のもう一つの重要な側面です。前世紀中、我々は、海そしてその下の地理的秩序の確立に向け、精力的に作業しました。これが、国連海洋法条約の採択という画期的な成果に結びついたのです。そして、この条約は、大陸棚の限界の設定に向け、更なる課題を我々に与えてきています。大陸棚の限界が画定した際には、海洋の地理的秩序がようやく安定化するのです。
ご列席の皆様、
1999年、国連の大陸棚限界委員会は、200海里を超える大陸棚の外側の限界の設定に関するガイドラインを発出しました。それ以来、多くの国が同委員会に提出すべき情報の準備のため調査を開始しました。日本も例外ではありません。
しかし、発展途上国の中には、科学的・技術的な知識の不足のため、この取組みにおいて困難に直面している国もあります。
日本や他の多くの国は未だ調査の最中にありますが、我々は共有することのできる経験や知識を得てきています。既に情報を委員会に提出した国については、我々にとって有益たりうるノウハウを蓄積してきています。こうした情報の交換は、多くの国の情報提出準備を容易にするものであると、私は確信しています。
情報交換は、委員会の委員の方々にとっても大いに有益であろうと確信します。委員は、沿岸国が提出する情報を検討し、したがって、大陸棚の外側の限界の設定において何が重要であるのかを知っておく必要があるからです。
海底の地形と地質は大変に多様なものです。専門家の間では、北西太平洋の海底地形・地質は極めて複雑であることは周知の事実である、そのように私も聞いております。太平洋のこの部分に位置する国々は、情報の提出に際して同じ種類の懸念を有していると思います。故に、すべての関係者にとって、海洋調査の成果及び様々な海洋環境の分析について情報交換を行うことは、大変有益なことであると考えています。
ご列席の皆様、
さて、本シンポジウムに私が期待する三つの点について述べさせて頂きたく存じます。
まず、このシンポジウムが、委員会への情報の提出を準備している国々あるいはこれから準備に着手する国々にとっての一助となるような情報交換の場となることを期待しています。
本シンポジウムでは、オーストラリアからの同僚から、彼らの情報提出の際の経験を、我々と共有して頂けるものと聞いています。いくつかのアジア太平洋地域の国々の経験と彼らが直面する困難についても、話がある予定です。二つの国際機関、UNEP/GRID及びAB-LOS、並びに国連事務局の参加も、議論に有益であると確信しています。
第二に、このシンポジウムが、様々な地質学、地球物理学、水路学の情報交換の機会となることを期待します。本シンポジウムには、「活動的縁辺部」に関する世界的権威であるル・ピション教授の参加を頂いております。教授には、これについて明日お話を頂く予定です。その他にも、それぞれの分野における第一級の専門家の方々が本シンポジウムにお見えになっています。シンポジウム参加者が、活発な議論を通じ、最新の科学的知見と最先端の分析に関して知識を深めることを期待しています。
最後に、第三の希望は、本シンポジウムが、委員会への情報提出に関して発展途上国を助けるよう、国際社会に原動力を与えることです。大陸棚の限界を設定する機会は先進国にも発展途上国にも開かれたものです。その経済発展の段階や資源環境にかかわらず、この前例のない取組みから利益を得ることを望む国はすべて、そのようにならなければなりません。本日と明日の議論が、この観点において何らかの助けとなるのであれば、喜びに堪えません。
最後になりますが、本シンポジウムの成功を祈り、開会の辞とさせて頂きたく存じます。皆様方にとって、快適で充実した東京滞在となることをお祈りいたします。
ありがとうございました。