演説

小野寺政務官演説

ESCAP第61回総会
小野寺五典外務大臣政務官(首席代表)による政策演説

平成17年5月16日
(英語版はこちら)

議長
事務局長
ご列席の皆様

 我が国は、国連加盟よりも前の1954年に、ESCAPの前身であるECAFE(国連アジア極東経済委員会)に加盟して以来、アジア太平洋における域内協力の恩恵を受けてきました。今日、我が国にとって、アジア太平洋地域との協力関係の重要性はますます高まっています。今後も、歴史を振り返りながら未来を見つめ、ESCAPをも通じて地域の経済、社会の発展に引き続き協力し、地域諸国との友好関係を増進していきたいと考えます。

議長

 過去1年のアジア太平洋地域の経済社会開発に最も深刻な影響を与えたのは、スマトラ沖大地震及びインド洋津波災害でした。28万人余りもの貴い人命を奪い、84億ドルの物的被害をもたらした未曾有の災害に際して、わが国は、アジアのパートナーとして、5億ドルの無償支援の実施、自衛隊部隊を含む国際緊急援助隊の派遣を通じた人的貢献、ユネスコ/IOC(国際海洋学会)を中心とした国際機関と協力しつつ津波早期警戒システムの構築に向けての知見の提供という3局面で最大限の支援を実施しました。わが国は、本年1月神戸での国連防災世界会議の機会に発表した「防災協力イニシアティブ」に基づき、各国の制度構築、人づくり、経済社会基盤整備などを通じて、アジア太平洋諸国を含む開発途上国を積極的に支援していく考えです。また、先般行われたアジア・アフリカ会議において、わが国として今回の地震・津波被害の復旧・復興や津波早期警戒システム構築を含め、防災・災害対策について、アジア・アフリカ地域を中心に今後5年間で25億ドル以上の支援を行う旨表明しました。

議長

 今年2005年は、2000年に採択されたミレニアム宣言の履行とミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けて極めて重要な年です。3月に発表されたアナン事務総長の報告では、開発、安全、人権は密接に連関しており、共に推進されなければならないという考え方が示されています。この考え方は、まさにわが国が押し進めている「人間の安全保障」の精神に合致するものです。「人間の安全保障」については、ESCAPの場でも、昨年総会で採択された「上海宣言」の中でその推進が謳われています。我が国としては、本総会において「人間の安全保障」の更なる推進のために決議案を提出しています。各国におかれては、わが国の提唱する「人間の安全保障」の趣旨に理解頂き、この決議案への支持を得たいと思います。

議長

 わが国は、MDGsの実現に強くコミットしており、モンテレイで構築された新たなグローバル・パートナーシップの考えを踏まえ、途上国、他の先進国、国際開発機関などのパートナーと協働して開発アジェンダに取り組んできました。MDGsの達成には、途上国自身の「オーナーシップ」が不可欠ですが、わが国は、東アジアの経験を踏まえ、教育、人材育成への投資等によるキャパシティ・ビルディングを通じ、「人づくり」を進めることで「オーナーシップ」を進めることを重視しています。

 「東アジアの成功」は、ODA、経済インフラ整備、官及び民間セクターの人材育成、海外直接投資の流入等が有機的に連携したことによってもたらされました。わが国は、MDGsに寄与するためにODAの対GNI比0.7%目標の達成に向け引き続き努力する観点から、わが国にふさわしい十分なODAの水準を確保していきます。また、モンテレイ合意でも指摘するとおり、貿易・投資は経済成長の原動力です。わが国はインフラ整備や人材育成の支援と併せ、WTO・ドーハ開発アジェンダ等多角的貿易体制の推進やLDC産品の無税無枠の市場アクセスの拡大に積極的に努めてきたところであり、あらゆる資金源の動員による国際的に合意された開発目標の達成というモンテレイ合意の実現に向けて取り組んでいます。この他、わが国は、モンテレイ合意で推進が謳われている南南協力についても積極的に支援しています。

 これらに関し、最近ではバンドンでのアジア・アフリカ首脳会議の際、小泉総理よりLDC産品の更なる市場アクセスの拡大、両地域間の関係国間の貿易投資促進のための新たなイニシアティブや、アジアの若者がアフリカの青年とともに未来に向けた人造りを推進するためのアジア青年海外協力隊の創設を提案しました。

議長

 グローバル・パートナーシップの考えの下では、MDGs達成に向けて、ESCAPを含む国連諸機関や他の国際開発機関が果たす役割も重要です。我が国は、ESCAPがアジア太平洋地域に相応しい開発モデルを創出し、地域の経済社会開発に一層貢献することを期待しており、これまで日本エスカップ協力基金等の拠出金を通じ、アジア・ハイウェイ・プロジェクト、クリーンな環境のための北九州イニシャティブ、障害者の権利に関するびわ湖ミレニアム行動計画等を支援してきましたが、今後も引き続き支援していく考えです。特に、障害者の権利に関するびわ湖ミレニアム行動計画については、我が国は、そのフォロー・アップの更なる推進のために、本総会に決議案を提出しており、各国からも支持を頂ければ幸甚です。

 本年は、国連にとって重要な年です。安全保障理事会の改革が重要なことは言うまでもありませんが、国連のハイレベル委員会報告書及びアナン事務総長報告書は、平和と安全、開発、人権を含んだ幅広い国連の強化の重要性も強調しています。アジア太平洋地域においては、経済社会理事会の下部組織であるESCAPがリーダーシップを担うべきものと考えます。そうした期待に沿うようESCAPの今後の活動の方向を考える上では、他の国際機関や地域期間との重複を避け、比較優位のある分野に活動を特化するとともに、機構の効率化を図ることが重要です。そうした活動を通じ、ESCAPが国連の地域経済委員会として、グローバル化の進む新しい時代に即した存在理由を見出すことを切に祈念します。

 ご清聴どうもありがとうございました。

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