演説

小野寺政務官演説

在京ノルウェー大使館・国連大学・外務省共催シンポジウム
「私達の明るい未来のために~ミレニアム開発目標を超えて」における
小野寺外務政務官基調講演

平成17年4月12日
14時50分~15時10分
於:国連大学

 皇太子殿下、ブレンデ貿易産業大臣、ヒンケル国連大学学長、紺野大使、そして多くのご列席の皆様、

 本日は、皆様の出席をもって、シンポジウム「私たちの明るい未来のために-ミレニアム開発目標を超えて」を開催いたしますことを大変嬉しく思っております。共催であります外務省を代表して一言述べさせて頂きます。

 世界には、生活費が1日1ドル未満という極度の貧困の下で暮らしている人々が現在でも約11億人おります。また、飢えに苦しんでいる子どもが3億人おり、そのうち約1億人は学校に通うこともできません。さらに、また、アジアで約7億人、アフリカで3億人が安全で衛生的な水を手に入れることができません。

 このような状況の中で、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで採択された宣言をもとに、本セミナーの主題であるミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)です。ご承知のとおり、MDGsは、極度の貧困及び飢餓の撲滅、全ての子どもの初等教育の達成、男女平等及び女性の能力強化、保健状況や環境の改善等の国際社会が達成すべき8つの目標をそれぞれ具体的な数値とともに掲げたものです。

 今年2005年は、このMDGsの達成に向けて極めて重要な年です。1月には実践的な行動計画としてミレニアム・プロジェクト報告書が、そして3月にはアナン国連事務総長報告が発表されるなど、9月の国連での首脳会合に向けて、国連内での議論が活発化しています。また、今月22日には、歴史的なバンドン会議の50周年を記念したアジア・アフリカ会議がインドネシアのジャカルタで開催されることになっている他、7月のG8グレンイーグルズ・サミットにおいても、アフリカ開発問題が主要な議題の一つとされており、開発に関する極めて重要な会議が目白押しになっております。

 皆様、

 日本は、1991年から2000年まで間の10年間、世界第一位のODA供与国でした。現在でも世界第二位の供与国であると同時に、MDGsの主要分野である教育、水、保健、環境といった分野においては、世界最大の援助国の一つとなっています。

 日本は東アジアの経験を踏まえ、MDGsを達成するために、経済成長を通じた貧困削減と人間中心の開発が重要であると考えています。「貧困削減」、「持続的成長」の重要性や「人間の安全保障」の視点を強調し、MDGsの達成を目指した取組を進めています。また、昨年はスマトラ沖大地震及びインド洋津波災害等自然災害が多く発生しましたが、これに対しても、迅速で大規模な支援を展開しております。

 日本は、「人間の安全保障」を外交の柱の一つと位置付けております。「人間の安全保障」は、人間一人ひとりの保護と能力強化を行うことにより人づくり、社会づくり、それを通じた国づくりを支援していくというというものです。この「人間の安全保障」の観点から、我が国は、包括的な対アフリカ支援策の一環として「アフリカン・ビレッジ・イニシアティブ」を提唱しています。これは、村の必要に応じて、例えば学校建設と同時に井戸の掘削や学校給食の提供、地域社会全体を対象とした保健サービスの提供などを組み合わせて支援することで、村落全体の発展を図るものです。すなわち、MDGsの達成に向けた日本独自の複合的支援アプローチとも言えます。

 「ミレニアム・プロジェクト」報告書及び事務総長報告で提言された「クィック・ウィンズ」行動に関連して、我が国は、殺虫剤を網に練り込むことによって、マラリア蚊に対して特に効果的な蚊帳を2007年までに計1,000万帳配布することを決定しております。ユニセフによれば、これらを5歳以下の子どもや妊婦が利用することで、2,000万人の子どもをマラリアから守り、その結果、年11万人~16万人の子どもの死亡を減らすことが期待できるそうです。蚊帳の配布はMDGs達成への小さな一歩かもしれませんが、幼い命が守られることは開発のために何よりも大切なことであると思います。

 皆様、

 国民の声や民間のイニシアティブに支えられ、本日のセミナーを共催して頂いているノルウェー王国においては、ODAの0.7%目標を既に達成されており、貧困削減、及び持続可能な開発の前提となる平和構築に積極的に貢献されています。

 我が国は世界第二のGDPを誇る経済大国として、これまで世界のODA量の約5分の1を担ってきています。MDGsの達成に向けて、各国の経済規模や国内の状況と照らし合わせながら、それぞれの役割に応じて取り組んでいくことが必要であり、我が国もMDGs向けのODAを増加させ、NGOのみなさんをはじめとする国民の一人一人と協力し、力を合わせて今後とも国際社会に貢献していきたいと思っています。

 日本は、諸外国や国際機関からの支援、そして教育を重視するという自助努力により、戦後、援助を受ける側から援助をする側へと至る過程を経験しています。

 このような我々の経験は、我々自身の国造りの哲学、MDGsの取組、今後の援助のあり方を考える上で重要な視点を提供するものと思います。我々がかつて貧しい国であり、他の国々の支援と我々の自助努力により、戦後、経済的発展を果たしてきた経験をもとに、我々はこの重要な年の国際的な議論に積極的に貢献していく考えです。

 最後に、本セミナー開催にあたり、共催者として尽力された在京ノルウェー王国大使館及び国連大学関係者の皆様方に対し、この場をお借りして感謝の意を述べさせて頂きたく存じます。本セミナーが参加の皆様にとり、実り多く意義あるものとなること、日本とノルウェー王国との友好関係がさらに深まること、そしてさらに今年が途上国の開発のために飛躍的な年となることを確信しつつ、私の挨拶とさせていただきます。

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