平成17年4月9日
エルサルバドル共和国副大統領アナ・ビルマ・デ・エスコバル閣下
米州開発銀行総裁エンリケ・イグレシアス閣下
各国政府代表の皆様
ご列席の皆様
今般、米州開発銀行(IDB)年次総会が、14年ぶりに日本で開催され、中南米各国をはじめ世界中の国々から、多くの方がこの沖縄の地を訪問されることは、大変喜ばしく、心から歓迎致します。IDBの総会が本年日本において開催されることは、小泉総理が昨年の中南米訪問の際に発表した「日・中南米 新パートナーシップ構想」に基づき、中南米諸国との友好協力関係をさらに強化する上で、大変時宜を得たものであります。
今回沖縄で開催される一連の会議、セミナーの中でも、この中米・ドミニカ共和国投資機会セミナーは、我が国にとり特別な意味をもっております。と申しますのは、日本と中米諸国及びドミニカ共和国は、本2005年を日・中米交流年とし伝統的な友好関係を更に強化していくことで合意しており、本セミナーは、この交流年の目的に正に合致しているからです。したがいまして、このセミナーは、日・中米交流年の行事の一つとなっております。
日・中米交流年は、本年が、いわゆる中米5ヶ国、すなわちコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアと日本との間の外交関係樹立70周年にあたること、及び、3月下旬から9月にかけて開催される愛・地球博に、これら5ヶ国が近隣国のパナマ、ベリーズとともに中米統合機構(SICA)加盟国として、中米共同館を立ち上げ共同出展することを記念し、実施することになりました。この交流年は、本セミナーと同様に、SICAに加盟している7ヶ国(ベリーズ、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、パナマ)及び、SICA準加盟国のドミニカ共和国の計8ヶ国を対象としています。なお、日・中米交流年を官民一体で積極的に推進していくとの趣旨から、佐々木日本経団連中南米地域委員会委員長はじめ中米と縁の深い企業の皆様の協力を得て「日・中米交流年2005」実行委員会を設立しております。
日・中米交流年においては、政治、経済、文化等様々な分野で総合的な記念交流事業が開催されます。去る2月には、中米5ヶ国及び日本において外交関係樹立70周年を記念する式典が開催されました。私自身もグアテマラで開催された記念式典に、我が国を代表して参加する栄誉を得ました。その際、日本と中米諸国との間の伝統的な絆の強さを実感するとともに、今後の関係強化に向け決意を新たにした次第です。さらに、8月には、日本・中米首脳会合(日・中米サミット)が予定されており、日・中米関係に新たなページを開く年にしたいと考えております。
日本が中米諸国及びドミニカ共和国との関係を強化しようとしている背景には、90年代以降、中米諸国が、中米統合機構(SICA)のもとで統合を推進し、一つの有力なグループとして国際社会におけるプレゼンスを高めている点が挙げられます。
政治面においては、SICAの枠組みにおいて、毎月のように首脳・閣僚レベルの会合が開催され、重要な国際問題について、中米諸国として共通のポジションを取るようになってきています。中米諸国は大変親日的で、これまで国連等国際社会の場において、日本の立場を支持してきてくれており、いわば心強い味方であります。我が国としても、日本が国際社会でより相応しい地位を得て活動するためにも、これまで以上に中米諸国と協調・協力していく必要性が高まっています。
また、今回のセミナーのテーマである経済面においては、地域統合の深化は一層顕著であります。中米諸国は、将来的に関税同盟を結成することを目指しつつ、現在は、域内における関税の撤廃の促進や、税関手続の簡素化、対外的な自由貿易協定の締結交渉の共同実施等を通じて、経済的なつながりを強めていると承知しています。中米諸国が一つの市場となれば、4千5百万人以上の人口を擁する、中南米でブラジル、メキシコに続く3番目に大きな市場が生まれることになります。また、昨年5月に、米国といわゆる中米5ヶ国の間で署名され、その後ドミニカ共和国も加わった自由貿易協定(DR-CAFTA)は、中米諸国が世界最大の市場である米国へのゲートウェーとなることを意味しています。米国に地理的に近接していることもあり、日本企業が中米諸国及びドミニカ共和国に投資するインセンティブが高まることが期待されます。
さらに、中米諸国は、米国と自由貿易協定締結交渉を実施した経験をもとに、EUや南米諸国との自由貿易協定の交渉準備中であると聞いています。将来、中米地域が、自由貿易協定のネットワークを構築して、世界貿易において重要な役割を果たすようになる可能性もあるでしょう。
さらに、中米地域におけるインフラ統合の動きにも国際社会が注目しています。こうしたインフラ統合は、域内の経済活性化はもとより、域外からの投資の促進にも寄与するものだからです。特に、今回のセミナーのテーマともなっているプエブラ・パナマ計画(注:メキシコ南部から中米地域にかけてのインフラ整備計画)については我が国も強い関心を有しており、積極的に協力していきたいと考えています。
今回のセミナーでは観光分野のセッションも設けられています。先般、私もグアテマラの古都アンティグアを訪れる機会があり、中米の豊かな観光資源の一端に触れることができました。中米地域は、このようなコロニアル風の街のほかにも、マヤ文明の遺跡、素晴らしい自然、さらには美しいカリブ海等、類い希な観光資源に恵まれ、今後大きな発展を望みうると思います。多くの日本人が中米地域を訪れ、日本と中米地域の交流がさらに広がりを持つことを願ってやみません。
これらの要因により、現在、中米諸国及びドミニカ共和国は日本企業にとって、大変魅力的な投資先、市場になってきていると思います。他方で、未だ、物理的な距離の大きさ、情報の不足等により、中米諸国及びドミニカ共和国に対する日本企業の投資は、その潜在力に比べ低い水準に留まっていると言えるでしょう。このセミナーを通じて、日本企業の方々が、中米地域の現状の知識を深め、将来的に、中米諸国及びドミニカ共和国における日本企業の投資・経済活動が活性化されることを期待します。
このセミナーが、中米諸国ひいては中南米諸国の方々と日本国民の間の協力と交流の推進に大きく寄与することを祈念し、私のご挨拶とさせて頂きます。
ご静聴有り難うございました。